●前回のおさらい●
文化祭中、色々忙しくしていた倉津君は、ある1つの事をスッカリ忘れていた。
それは「真上さんがクラスの出し物を手伝いに来る」っと言った筈なのに姿を現さなかった事だ。
そんな折、第二音楽室に向かって歩いていた倉津君の前に、真上さんと一緒に遊んでいる筈の青山さん一行が現れるが、矢張りそこにも彼女の姿はなかった。
不審に思った倉津君が、その辺を青山さん達に尋ねてみると「昼前には真上さんと別れたので詳しくは解らない」っと言われた上に『彼女の悪い癖が出たのかも』っと言い出す。
その真相は「彼女は虚言癖の持ち主」との事。
これにより倉津君は青山さんに対して不信感を募らせるが、取り敢えず話を合わせる。
「そぅ。じゃあ、信じてくれるって言うなら話すけど。……倉津さん」
「うん?なんだよ?」
「さっき、此処の校庭で、岡田君に逢ったよね」
「岡田?……あぁ、アノなんか、如何にも爽やかそうな奴な。アイツが、どうしたんだよ?」
「うん、そう、その子。その子なんだけどね、実は……」
「あぁっと、因みにだが、刃傷事件の被害者だって話だったら、もぅとっくに知ってるぞ」
「あぁ、そうなんだ。じゃあ、もっと話が早いよ。実は、あの事件ってね。外部には漏れていない、別のソース(情報)があるのよ」
「別の情報?なんだよ、それ?」
「実はね。あの事件を起させた張本人って『真上本人』なのよ」
はぁ?
なんか真顔で言われてるんだけど、イキナリ、キナ臭い話になったな。
そりゃあな。
真上さんを奪い合って起こった事件だから、彼女自身が事件の張本人と言えば、張本人だがな。
この場合の彼女は、馬鹿な男2人の被害者であって、どうやっても加害者には成り得ないと思うんだがな。
なんで、そんな当たり前の話を、敢えて、此処で突きつけて来るんだろうか?
「まぁ、そりゃあよぉ。捉え方によっちゃあ、そう言う風にも捉えられるだろうが。明らかにアレって、恋愛絡みで男同士が刺し合った結果だったんじゃないのか?俺は、そう聞いてるぞ」
「それが、そうじゃないから、ワザワザこんな話をしてるの。あの事件。事の発端は、真上が何気に言った、たった1言の言葉が引き金に成ってるのよ。それが、全ての発端にも成ってるしね」
「はぁ?どういう事だ?それじゃあ全く話が見えないな」
「ごめん。話を端折り過ぎて、これじゃあ話が全然見えないよね」
「いや、そのままで構わねぇから、話を続けてくれ」
継続を促そう。
話に嘘が混じってる場合は、必ず、何所かで破綻してくる筈だからな。
もし、ツッコミを入れるタイミングがあるとすれば、恐らくは、そのタイミングだろう。
それまでは、大人しく彼女の言い分を聞いて置こう。
「あっ、うん。じゃあ、まず、その時に言った真上の1言から教えるね」
「あぁ、頼むな」
「うん。あの子ね、刺した元彼の事を、岡田君に、こう囁いたの。『付き纏われて迷惑してる』って」
「いや、それだと、ただ単に、事実を述べただけの事じゃないのか?」
「うぅん。それは違う。その元彼は、既にその時点で他に彼女が居たから、真上には、もう興味は示して無かったのよ。だから本来は、彼が真上に対して、迷惑を掛ける様な行為をする理由がないのよ」
いや……おかしいな。
一見すれば、辻褄が合ってるのかも知れないが。
これじゃあまるで、世間に流れている情報とアベコベじゃねぇか。
所謂、現状では、岡田って奴が刺されたって話なのに、元彼の奴が刺された様な話になってる。
なにがどうなって、こんな話になるんだ?
「ちょっと待て。それじゃあ、辻褄が合わねぇじゃねぇかよ」
「うぅん。これで合ってるの」
「なんでそうなる?」
「岡田君が、まるで真上の元彼が、自分を刺した様に仕向けたからだよ」
「はぁ?ちょっと待ってくれ。それに何の意味あがるってんだよ?そんなもん、ただイテェだけじゃねぇかよ」
「あぁっと、これじゃあ、また解り難いかな」
「なにがだよ?」
何の為に、岡田が元彼とやらにワザワザ刺されたフリをする必要があるんだ?
此処まで来ると、まったく理解出来ない行為をしてる様にしか見えないな。
それになにより、そこに至るまでの説明がない分、余計に混乱する一方だ。
もう少し建設的に説明出来ねぇもんかな?
「……えぇっと、まず、この件についての概要を話す前に、キッチリ理解して欲しいのは、刺された岡田君の家の事なのよ」
「家?つぅ事は、アイツの実家が、警察関係とか、そう言う類の話か?」
「うぅん、そうじゃなくてね。彼ん家ってね、実は、川崎じゃ、ちょっとした金持ちで有名な家庭なのよ」
「金持ちなぁ。……けどなんか、それだけじゃ、イマイチ、スッキリしない理由だな」
「そっか。じゃあ、それに付け加えて、学校じゃ生徒会役員を務めてる上に成績優秀で、先生や、生徒達にも人望も厚い、っと言ったら、何か感じない?」
「えっ?」
「それで序に言っちゃえば、岡田君を刺したとされる真上の元彼が、ちょっと馬鹿で不良がかってる子だって言ったら、更に話が見えてくるんじゃない?」
「オイ……まさか、それって」
「そぅ、そのまさか。仮に、この両者から『刺した』『刺してない』の話がでたとしたら、どっちを信じるって話」
「そりゃあ、その状況じゃあ、真面目な雰囲気の岡田を信じるのが一般的だろうな」
「そう言う事。真上は、そこまで計算して、この話を岡田君に持ち掛けたのよ」
なるほどなぁ、そういう話に成る訳かぁ。
けどまぁ、これもまた、一見すれば話を上手く構成してる様に見えるが、穴がない訳ではないし。
なんで、そんな展開になるのかが、全く謎のままだ。
真上さん自身が元彼に付き纏われていない以上、そんな馬鹿げた真似を、人に頼んでまでする必要が、どこにあるって言うんだよ?
話に身を任せたとしても、訳がわかんねぇぞ?
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>
なんだか文化祭の最後になって、ややこしい話に成って来ているのですが。
倉津君自身が、今までの真上さんの態度から、どうにも彼女が虚言壁を持ってるとは思えず。
青山さんの意見を聞きながらも、それを否定するチャンスを窺っているみたいですね。
だが、真実は曲がらない。
果たして、本当の嘘吐きはどちらなのでしょうね?
……ってな感じで。
次回も「同級生殺傷事件」と『真上さんの虚言壁』についての青山さんなりの真相が語りながらも、その真実に迫って行こうと思いますので、良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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