●前回のおさらい●
疲れて音楽室で寝てしまった倉津君。
だが目覚めたら、何故か素直ちゃんが背中に寄り添うように眠っていた。
この状況を不思議に思いつつつも、その寝てる様子を窺っていたら、倉津君が離れて寒くなったのか目覚める素直ちゃん。
そんな彼女だったが、少々寝ぼけており。
夢だと勘違いしてしまって……不意に、倉津君にキスをしてしまうのであった(笑)
取り敢えずは、上手く話しは持って行けた……筈なんだが。
どうにも素直の様子が変だ。
如何にも、なにかを言いたげな表情で、コチラをじっと見ている。
なんか嫌な予感がする。
そう思っていた矢先、素直が、その重い口を開き始めた。
「あっ、あの……あのね、真琴君」
「なっ、なんだよ?」
「こっ、これってぇ。例え事故だとしても、ファースト・キスにカウントされちゃうんですか?」
なっ、なっ、なっ、なんと!!
何を言い出すのかと思ったら。
今のキスは、素直にとってのファースト・キスだったのか!!
うぅうぅうぅううぅぅぅ~~~、ホントに、いつもいつも、スマンな素直。
オマエの大切なファースト・キスを、俺なんぞにさせてしまってよぉ。
だからオマエが嫌だったら、この事は綺麗サッパリ忘れて良いんだぞ。
そう言う思考でOKだからなOK。
……しかしまぁ、素直って、なんでこう毎度毎度不幸な目に遭うんだろうな?
俺同様に、悪戯好きの性質の悪い神様にでも好かれてるのか?
まぁ、なんにせよ不幸だよな。
「まっ、まぁ、あれだな」
「なっ、なんですか?」
「取り敢えずは、ノーカンって事で良いんじゃね?」
「えぇっと。じゃあ、ノーカンじゃない場合は、どうなりますか?」
「へっ?いやいや、それ、なんの話だよ?」
「えぇっと、僕がファーストキスだと認めた場合は、真琴君は、僕のファーストキスの相手だって認めてくれますか?」
なんと言う恐ろし様な難問を連続で投げかけるんですか、チミは?
あっしなんかじゃ、そう言う難問には上手く解答出来ませんぜ。
……っと言っても、これは女子にとっちゃあ重要な問題だよね。
素直は神妙な表情を浮かべながら聞いて来てる以上、男の俺が、この場で黙りこくってる場合じゃない。
「いや、あの、そりゃあなぁ。やった以上は認めざるを得ないよな」
「ぼっ、僕なんかでも嫌じゃないですか?」
「そっ、そりゃあな。素直の初めてのキスの相手ってのは、寧ろ、光栄な事なんだがな。オマエも知っての通り、俺には、奈緒さんって彼女が居る。それでも良いって言うなら、俺は、全然OKなんだがな」
「そう……なんですか。じゃあ、これは有効な方面で」
「いやいやいやいや、待て待て待て待て。冷静になれ冷静に!!オマエさぁ、ホントにそれで良いのか?あんな寝惚けた状態のキスじゃ、思い出も、糞もないぞ」
「良いんです。事がどうあれ、初めてのキスが、大好きな人と出来たんだから、僕は十分に満足ですよ。けど……」
「けど?」
『けど』かぁ……此処に来てまた、嫌な言葉が出てきたもんだな。
こんな馬鹿な俺でもなぁ。
この後、素直が口にする言葉ぐらいは予想は出来るんだよなぁ~。
多分、素直は1度やってしまった事を盾に、キスのやり直しを要求してくる筈だ。
けど、それを受け入れてしまって良いものか、どうかは別問題。
非常に微妙な話なんだよな。
確かに事実上、寝惚けていようと、寝惚けていまいと、素直が、俺にキスをしたのは紛れもない事実だ。
これは、どう足掻いても揺るが無い現実だ。
かと言ってだ。
今度、俺が素直にキスをするって事は、事故で済まされる問題じゃなくなって、明らかに自分の意思でやっちまった事になっちまう。
これ即ち、完全な『浮気』
それに、素直の恋心に、再び火が付きかねない。
此処が、一番俺の懸念する所だ。
……っとは言ってもな。
女の子のファースト・キッスって、結構、一生付き纏う話だろ。
こんな形でファースト・キスを終了させてしまっては、素直が余りにも不憫なんだよな。
この問題って……全てが、微妙なバランスを形成しすぎてるんだよな。
『まいったギャフン!!』
もぉ、これで勘弁してくれ。
「けっ、けどですね。出来れば真琴君から、1度だけ僕にキスをして欲しいです。その思い出だけは、絶対に欲しいんです。一生のお願いですから……『僕の夢』を叶えて貰えますか?」
なぁ……言った通りだったろ。
女子の思い出系の話って、絶対に、こう言う方向になるんだって……
解ってはいたんだけど、俺なんかじゃ対応が難しすぎるな。
どうせぇちゅ~んじゃ!!
「言いたい事は解るが……素直、それって、どうしても必要か?」
「あぁ、真琴君には、向井さんって彼女が居るので、流石に無理にとは言えないですけど、出来れば……お願いはしたいです」
「けどよぉ。例え、それをしたとしても、俺の気持ちは、なんも変んないんだぞ。それでもオマエは、それを望むのか?」
「……はい」
「もう一回確認するけど、自分が傷付くだけなんだぞ」
「はい。勿論、それも承知の上です。……けど、もし、して頂けるなら、もう1つお願いが有るんです」
「なっ、なんだよ?」
なんだ?
此処までの展開は、大凡の部分で予測は付いたが、これ以上となると、流石に俺なんかじゃ、なんも解らんな。
ホントになんだ?
「あっ、あの、あのですね。そっ、その一瞬だけ……その一瞬だけでも良いんで、僕の事を好きだと思って欲しいです。あっ、あの、こんなの、自分勝手な我儘なのは重々承知してるんですが……ぼっ、僕も、一瞬だけでも、真琴君に、あっ、あっ、愛されてみたいな。って。おっ、おっ、お願い……出来ますか?」
あぁもぉ、なにを言うかと思えば。
なんちゅう可愛い、お願いをするんだよ、オマエわ。
健気過ぎんだろ。
キス程度の事でな。
そんな真剣な眼差しで言われたら、もう『NO』とは言えないじゃねぇかよ。
はぁ~~~~~~。
「俺は構わねぇがよぉ。オマエ、ホントに後悔しないんだな?後で『無かった事にしたら良かった』って思っても、後の祭りだぞ」
「後悔なんてしませんよ。僕は、真琴君に、ほんの一瞬でも好きになって貰えたら、それだけで本望なんです。だから、それ以上は、向井さんが居る間は、決して望みません。……後はズッと待ちます」
こう言う処は一貫してるんだよなぁ、素直って……
しかしまぁ、コイツの精神って、どこまで一途に出来てるんだろうな?
俺なんかを好きにさえならなきゃ、こんな辛い恋愛を引き摺り続けなくても済むのによぉ。
もっと幸せになれる筈なのによぉ。
なんで敢えて、こんな『茨の道』を行っちまうんだろうな。
素直に、そこまで好きになって貰える程の、俺は大した人間でもないのにな。
「わかったよ。オマエの気持ちは良くわかった。もぅなにも言うな……」
「えっ?あっ……うっ、うん……うっ……あっ……」
……こんな事をやってる俺は、結局、一番最低なんだろうな。
浮気と知りつつも、俺は素直の要求に答えてしまった。
それも1度や2度のキスじゃなく、何度も、何度も、素直の唇を求め。
彼女が息も出来無い程のキスをし続けている。
……俺は、本当に最低だ。
素直が本当は傷つく事が解ってるクセに、コイツの健気さに打ち勝つ事が出来なかった。
これをしてやれば、ほんの短い時間でも、コイツが『幸せに成れるんじゃないかな』って思ってしまった。
……最低だ。
今はもぉ、その言葉しか、俺には浮かんでこなかった。
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございましたぁ<(_ _)>
とうとう、やってしまいましたね。
事故のキスなら、まだ許される範囲の話だったのですが。
自らの意志で、素直ちゃんの夢を叶えてしまったのでは、これはもぉ言い訳が効かない。
……っとは言え。
ズッと自分を慕ってくれ、献身的な態度をとり続けられた中学生男子が、こんな状況で『NO』っと言えるものでしょうか?
私は、浮気だと解っていても、100%『NO』とは言えない状況だと思います。
ただ、例えそうであっても『浮気をしても良い』と言う法則には成りませんので、此処からが正念場。
浮気をしてしまった自身の罪と向き合って、この後、どう言う態度に出るかが、男の見せ所だと思います。
ホント、此処だけは、倉津君を応援してあげたい気分です。
さて、そんな状況の中。
次回、倉津君は、ある決断をします。
その辺りが、もし気に成りましたら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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