●前回のおさらい●
奈緒さんに、初めて演奏した音を聞いて貰う為に『お互いの耳に、片方づつイヤホンをした』と言う神シュチュエーションの元、MDを再生させた倉津君と奈緒さん。
さて、その倉津君の演奏の評価は如何に!!
……曲が終わり。
奈緒さんは、直ぐにイヤホンを外して、俺をジッと見詰める。
だが、何故か、その表情は険しい。
矢張りまだ俺の演奏は、他人に聞かせられるレベルではなかったか。
それともまた、抱きつくくらい……
うんまぁ、後者は流石にないな。
自分で聞いてても、決して巧いと言い切れるレベルのものではなかったしなぁ。
寧ろ、下手糞が、必死になってる弾いてる様にしか感じなかった。
っとなるとだ。
やっぱり、奈緒さんにとっては、雑音程度の不快な音だったって事にしかならないか……
『騒音の為、ご迷惑お掛けしました』
けど、そうは言っても気になるのが人間の心情。
俺が演奏したベースの評価の確認だけはしてみる。
「どう……ッスか?やっぱ、酷かったッスか?」
俺がそう言った瞬間、奈緒さんは眉を『ピクッ』と動かせ、更に険しい顔になる。
こんなに不機嫌になるんだったら、マジで辞めときゃ良かった。
奈緒さんが、そんな俺を見ながら口を開いた。
「クラ……」
「ハッ、ハイ!!」
「一応聞くけどさぁ。これ、本当に自分で演奏したの?」
「あっ、はい……一応は」
「嘘……言ってないよね?」
「はぁ、この場で嘘を言っても仕方ないッスからね。それに、此処には俺しか居ませんでしたし」
「編集は?」
「あぁ、無理ッス、無理ッス。そんな器用な真似、俺には出来無いッス。MDの使い方も、崇秀の馬鹿に聞かなきゃダメなぐらい、良く解ってないッスから」
「そっか……じゃあ凄い♪」
今回は、さっきの事もあって、突然、抱き着いてくる様な事はなかったが。
笑顔が眩しく感じるぐらい奈緒さんは、ご機嫌な様ではある。
満足気に、笑顔のまま、何度もうんうん頷いている。
冷たい感じの奈緒さんも良いが、やっぱり女の子は、笑顔が一番だな。
にしても。
そんなに機嫌が良く成るぐらい、俺の弾いたベースの音は良かったのか?
「クラね、きっと音楽に向いてるんだよ。此処まで来たら音楽の神様に『かなり愛されてるんじゃないかな』って思えるレベルだよ」
「へっ?えっ?えっ?えぇええぇ~~~っ!!俺なんかがッスか?」
「うん、そぉ。クラがだよ」
「そんな褒めて貰えるほど巧かったッスか?」
「実際、上手いよ。……でも、それは、初心者のド素人が弾いたって事が前提だけどね」
どうせ、そんなこったろうと思った。
別に大して期待してた訳じゃないんだけどもだ。
奈緒さんのあの喜び様から見たら、もぅちょっと良い評価だと思ってた自分がいたりするんだよな。
けど、まぁ所詮はこんなもんだろ。
「やっぱり、そうッスよね。どんな世界でも、そんなに甘くはないッスよね」
「あぁ、勘違いしないでよ、クラ。ミスや修正点は、確かに一杯有るんだけど。それを差し引いても、初めてで、これだけベースを自由に弾ける人って稀にしか居ないんだよ」
まじッスか?
褒められて調子に乗る訳じゃないが、そんなに上手く弾けたのだろうか?
自分で弾いてた時は、頭が真っ白に有るぐらい必死だったので、良く憶えてないな。
「じゃあ1つお聞きしますけど。俺は、馬鹿秀よりも上手くなれる可能性ってのは有るもんなんっスかね?」
「仲居間さん超えかぁ?……どうだろうね?」
「……ヤッパ、その感じじゃ無理ッスかね?」
「うぅん、決して無理って訳じゃないんだけど。それ自体が、非常に難易度が高い事だけは確かだよ。楽器の演奏をする以上、如何に難易度が高かろうが、誰であっても、その可能性がない訳じゃないからね」
「あぁ……」
「ただまぁ、その可能性の話にしても……彼ぐらいのハイ・レベルな奏者を超えるとなると、ちょっとや、そっとの練習や努力程度じゃあ、どうにもならなのも現実だろうね。……あの人は既に、演奏がプロの域に達してる様な人だし、その上、性質の悪い事に『努力する天才』だろうからね」
楽器を弾いてるだけに、奈緒さんの崇秀に対する評価には説得力を感じる。
それにしても、奈緒さんの崇秀に対する評価は『努力する天才』かぁ……
でも確かに、アイツは、そう言う奴だよな。
抜け目が無いというか、隙が無いというか、兎に角、何事に対しても、完璧を目指す男だからな。
なら、此処最近ベースを始めたばかりの俺じゃあ、そんな奴には早々勝てそうにもないのも事実だろうしな。
なので、この奈緒さんの意見には納得。
しかしまぁ、なんだな。
ムカつく事に、アイツの評価は、誰に聞いても高いな、コンチクショウが!!。
「ッスね」
「ねぇ、そう言うって事は、クラは、仲居間さんに勝ちたいの?」
「あぁ、勝つと言うか、なんと言うか……まぁ同じ土俵に上がるんだったら、誰であっても負けても良いなんて理屈は存在しないっスからね」
「そっ。……でも、クラが本気でベースを弾く気が有るなら、仲居間さんに勝つ方法が、全然無い訳じゃないよ」
これは意外な提案だ。
今のベースを弾くのも覚束ない様な状態でも、崇秀に勝てる見込みがあるとの事だ。
ただし彼女の言葉には『本気』っと言う言葉が含まれていた。
なので、この話を聞いてしまえば、かなり苦労をしそうな気がしないでもないのだが……
此処で聞かない、なんて選択肢はないよな。
最後までお付き合いありがとうございました<(_ _)>
倉津君の演奏は、思った以上に高評価でしたね。
良かったですねぇ(笑)
でも演奏力で崇秀を超えるとなると、話は完全に別物。
奈緒さんは一体『崇秀超え』をどの様に考えているんでしょうね?
それはまた、次回の講釈、っと言う事で。
また遊びに来て下さいねぇ~~~(*'ω'*)ノ
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