最後まで奏でられなかった音楽

どこかお間抜けDQNな不良さんのゆったり更生日誌(笑)
殴り書き書店
殴り書き書店

064 不良さん、奈緒さんの判定にドキドキする(笑)

公開日時: 2021年4月10日(土) 23:40
更新日時: 2022年11月11日(金) 18:28
文字数:2,064

●前回のおさらい●


 奈緒さんに、初めて演奏した音を聞いて貰う為に『お互いの耳に、片方づつイヤホンをした』と言う神シュチュエーションの元、MDを再生させた倉津君と奈緒さん。


さて、その倉津君の演奏の評価は如何に!!

 ……曲が終わり。

奈緒さんは、直ぐにイヤホンを外して、俺をジッと見詰める。


だが、何故か、その表情は険しい。


矢張りまだ俺の演奏は、他人に聞かせられるレベルではなかったか。

それともまた、抱きつくくらい……


うんまぁ、後者は流石にないな。


自分で聞いてても、決して巧いと言い切れるレベルのものではなかったしなぁ。

寧ろ、下手糞が、必死になってる弾いてる様にしか感じなかった。


っとなるとだ。

やっぱり、奈緒さんにとっては、雑音程度の不快な音だったって事にしかならないか……


『騒音の為、ご迷惑お掛けしました』


けど、そうは言っても気になるのが人間の心情。

俺が演奏したベースの評価の確認だけはしてみる。



「どう……ッスか?やっぱ、酷かったッスか?」


俺がそう言った瞬間、奈緒さんは眉を『ピクッ』と動かせ、更に険しい顔になる。


こんなに不機嫌になるんだったら、マジで辞めときゃ良かった。


奈緒さんが、そんな俺を見ながら口を開いた。



「クラ……」

「ハッ、ハイ!!」

「一応聞くけどさぁ。これ、本当に自分で演奏したの?」

「あっ、はい……一応は」

「嘘……言ってないよね?」

「はぁ、この場で嘘を言っても仕方ないッスからね。それに、此処には俺しか居ませんでしたし」

「編集は?」

「あぁ、無理ッス、無理ッス。そんな器用な真似、俺には出来無いッス。MDの使い方も、崇秀の馬鹿に聞かなきゃダメなぐらい、良く解ってないッスから」

「そっか……じゃあ凄い♪」


今回は、さっきの事もあって、突然、抱き着いてくる様な事はなかったが。

笑顔が眩しく感じるぐらい奈緒さんは、ご機嫌な様ではある。


満足気に、笑顔のまま、何度もうんうん頷いている。


冷たい感じの奈緒さんも良いが、やっぱり女の子は、笑顔が一番だな。


にしても。

そんなに機嫌が良く成るぐらい、俺の弾いたベースの音は良かったのか?



「クラね、きっと音楽に向いてるんだよ。此処まで来たら音楽の神様に『かなり愛されてるんじゃないかな』って思えるレベルだよ」

「へっ?えっ?えっ?えぇええぇ~~~っ!!俺なんかがッスか?」

「うん、そぉ。クラがだよ」

「そんな褒めて貰えるほど巧かったッスか?」

「実際、上手いよ。……でも、それは、初心者のド素人が弾いたって事が前提だけどね」


どうせ、そんなこったろうと思った。


別に大して期待してた訳じゃないんだけどもだ。

奈緒さんのあの喜び様から見たら、もぅちょっと良い評価だと思ってた自分がいたりするんだよな。


けど、まぁ所詮はこんなもんだろ。



「やっぱり、そうッスよね。どんな世界でも、そんなに甘くはないッスよね」

「あぁ、勘違いしないでよ、クラ。ミスや修正点は、確かに一杯有るんだけど。それを差し引いても、初めてで、これだけベースを自由に弾ける人って稀にしか居ないんだよ」


まじッスか?

褒められて調子に乗る訳じゃないが、そんなに上手く弾けたのだろうか?


自分で弾いてた時は、頭が真っ白に有るぐらい必死だったので、良く憶えてないな。



「じゃあ1つお聞きしますけど。俺は、馬鹿秀よりも上手くなれる可能性ってのは有るもんなんっスかね?」

「仲居間さん超えかぁ?……どうだろうね?」

「……ヤッパ、その感じじゃ無理ッスかね?」

「うぅん、決して無理って訳じゃないんだけど。それ自体が、非常に難易度が高い事だけは確かだよ。楽器の演奏をする以上、如何に難易度が高かろうが、誰であっても、その可能性がない訳じゃないからね」

「あぁ……」

「ただまぁ、その可能性の話にしても……彼ぐらいのハイ・レベルな奏者を超えるとなると、ちょっとや、そっとの練習や努力程度じゃあ、どうにもならなのも現実だろうね。……あの人は既に、演奏がプロの域に達してる様な人だし、その上、性質の悪い事に『努力する天才』だろうからね」


楽器を弾いてるだけに、奈緒さんの崇秀に対する評価には説得力を感じる。


それにしても、奈緒さんの崇秀に対する評価は『努力する天才』かぁ……


でも確かに、アイツは、そう言う奴だよな。

抜け目が無いというか、隙が無いというか、兎に角、何事に対しても、完璧を目指す男だからな。


なら、此処最近ベースを始めたばかりの俺じゃあ、そんな奴には早々勝てそうにもないのも事実だろうしな。

なので、この奈緒さんの意見には納得。


しかしまぁ、なんだな。

ムカつく事に、アイツの評価は、誰に聞いても高いな、コンチクショウが!!。



「ッスね」

「ねぇ、そう言うって事は、クラは、仲居間さんに勝ちたいの?」

「あぁ、勝つと言うか、なんと言うか……まぁ同じ土俵に上がるんだったら、誰であっても負けても良いなんて理屈は存在しないっスからね」

「そっ。……でも、クラが本気でベースを弾く気が有るなら、仲居間さんに勝つ方法が、全然無い訳じゃないよ」


これは意外な提案だ。


今のベースを弾くのも覚束ない様な状態でも、崇秀に勝てる見込みがあるとの事だ。


ただし彼女の言葉には『本気』っと言う言葉が含まれていた。

なので、この話を聞いてしまえば、かなり苦労をしそうな気がしないでもないのだが……


此処で聞かない、なんて選択肢はないよな。


最後までお付き合いありがとうございました<(_ _)>


倉津君の演奏は、思った以上に高評価でしたね。

良かったですねぇ(笑)


でも演奏力で崇秀を超えるとなると、話は完全に別物。


奈緒さんは一体『崇秀超え』をどの様に考えているんでしょうね?


それはまた、次回の講釈、っと言う事で。


また遊びに来て下さいねぇ~~~(*'ω'*)ノ

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート