最後まで奏でられなかった音楽

どこかお間抜けDQNな不良さんのゆったり更生日誌(笑)
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第三十一話 開始前の少しの時間

168 不良さん、ライブハウスの空気を自分也に読む

公開日時: 2021年7月24日(土) 00:21
更新日時: 2023年9月5日(火) 13:35
文字数:1,743

第三十一話『ライブ前の少しの時間』が始まるよぉ~~~(*'ω'*)ノ

 031【開始前の少しの時間】


 『Live-oN』に到着したのは、ライブ開始2時間前。

当然の如く、現場では、今日も数十人のスタッフが慌しく動いている。


俺と山中は、そのスタッフ達に軽く挨拶を交わしながら、楽屋に向う通路を歩いて行く。


ただその時、少し嬉しい事があった。


道行く彼等の口々からは、必ずと言って良い程。

『頑張って下さい』

『頑張れよ』

『期待してるぞ』

っと言った様な、沢山の激励の言葉を掛けて貰った。

その後は勿論、肩をポンッと叩いて、忙しそうに自分の現場に戻って行く。


これはライブハウスなんかではよくある、極有り触れた社交辞令なんだろうが、俺にとっては、こう言うのは初体験。

それだけでも、勝手にテンションがドンドンと上昇する要因となった。


調子に乗ってる訳じゃないが。

今の状態なら、リハーサル無しの、ぶっつけ本番でもいけそうな勢いだ。


悲しいが、俺は、兎に角、単純な生き物の様だ。



それにしても、あれだな。

今回のライブに借り出されたライブスタッフの数は、尋常じゃない数の人間が動いてるな。

会場に来てから見たり、すれ違ったスタッフだけでも、前回のライブスタッフの数を軽く凌駕している。


何者かによって全てが徹底されており、ステージ作りにも、余念が無い様にも思える程だ。


そう考えた時、俺の頭に浮かび上がる回答は、いつも、たった1つしかない。

いや、それ以外は考えられない。


あの馬鹿が『徹底抗戦』を仕掛けて来たって事だ。


音響・照明・舞台設置・設備、その他諸々を完璧に仕上げ。

この俺達にとって『解散』が賭かった桧舞台を、後腐れが無い様にしている。


勿論『それ』=『一切の文句も、言い訳も受け付けない』と言わんばかりだ。


その為だけに、これ程までに完璧なものを構成しているのだろう。


……言うなれば、この会場は、あの馬鹿が仕掛けた、俺達の『棺桶』

1つ失敗をするだけで、全てが終了してしまう、恐ろしいモノになっていると言う事だ。


矢張り、此処で奴を甘く見るのは危険だ。


奴の頭には『友人に対する情』や『惰性』『妥協』などと言う甘い言葉は欠片も存在しない。

ただただ、見た物に冷静な判断を下すだけで

俺達が、本当の実力を見せつけないと、本気で解散させるつもりなのだろう。


そんな奴の強い意思が、このライブ会場からヒシヒシと伝わってくる。



……だが、勿論、コチラとしても、アイツがその気なら、それはそれで大いに結構。

俺も元より手を抜くつもりなんて更々ないし、最初から徹底抗戦を仕掛けるつもりだったからな。


奴が、その気なら、その目論見を粉砕してやるのが、俺達の仕事ってもんだ。


俺は、そんな思考があった為。

この会場に入ってからと言うもの、その辺は、意外な程冷静でいられている。


勿論、これだけのステージを見せ付けられれば、プレッシャーが無いと言えば嘘になる。

この作り込みは、素人バンドがやる様なステージじゃない。

寧ろ、プロのライブでも、此処まで金を掛けるのは難しいだろう。


だが、逆に、その作り込みを見れば見る程、この空間自体が『気持ち良く』とさえ感じている。


男なら、真剣勝負を挑まれたら、この感覚にならない方がどうかしてる。

緊張感やプレッシャーなんぞ糞食らえなぐらい、自分に酔っているのかも知れないが。


兎に角、良い感じに、俺の精神は安定している。



但し、この件に関して、1つだけ先に言って置きたい事がある。

別に良い感じだとか、安定してるとか言ってるが、いつもの様な『後はやるだけ』とか『どうにでもなれ』って言う、投げやりで、間違った悟りを開いてる訳では決してない。


どちらかと言えば、このライブ自体が、強いなにかに引っ張られている様な感覚が多大に見受けられる。


故に、確証が無いにも拘らず、何故か『成功する』以外に考えられない。


こんなものは、人から言わせれば『ただの感覚だけでモノを言ってる』だけに聞こえるかも知れないが……なにをどう考えても、俺の脳裏には失敗するビジョンが沸いて来ない。


こう言う感覚は、生まれて初めてなんだが、決して悪いものじゃない。

……寧ろ、これが、俺に『気持ち良い』『精神安定してる』と言わす理由の様だ。



今回のライブは、理由がアヤフヤとは言え、本気で崇秀に勝てそうな気がする。


俺は、そんな事を思いながら、楽屋の扉を開いた。


最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございます<(_ _)>


さてさて、もぉすぐ始まります『バンドの命運を賭けたライブ』

倉津君自身は、なんの緊張もなく。

ライブハウスの空気を、良い様に取っている様ですが……他のメンバーは、どんな感じなのでしょうかね?


なんか、本当に細かくなってしまうのですが。

その辺の他のメンバーのテンションを、次回は表現したいと思います。


ですので、良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(*'ω'*)ノ

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