最後まで奏でられなかった音楽

どこかお間抜けDQNな不良さんのゆったり更生日誌(笑)
殴り書き書店
殴り書き書店

402 漫画みたいに上手くはいかねぇが……それでも

公開日時: 2022年3月15日(火) 00:21
更新日時: 2023年9月9日(土) 16:26
文字数:4,094

●前回のおさらい●


 男だけでケーキを食べながらするティータイムが終わりました(笑)


さぁ練習だ!!

 開始時間9:30ジャスト。

此処から昼の12:30までは、まずは休憩無しのノンストップで練習をする。


この少々長めの練習時間を利用して、俺は、ある程度はバンドとしての最終チェックを済ませ。

『お互いの悪い所を言い合おう』ってのが、今回の俺の腹積もりだ。


っでまぁ今現在、グチのドラムの演奏や、カジの歌を何回か聴き終わって、俺の2人への感想はだな。


矢張り、前回同様の解答。

カジはボーカルだから、特に大きな問題も無く、ほぼ完成に近い状態なんだが……グチのドラムの方は、ところどころ、少々物足りない感じが否めない。


そりゃあな、俺だって楽器を触る人間なんだから、ある程度は『この辺が無理だ』ってのは、十分に解ってるんだぞ。

ほぼドラムド素人のグチが、たった1ヶ月と言う短い期間で、いきなりプロ顔負けのドラマーに豹変して、演奏が上手くなるとは、これっぽっちも思っちゃいない。

第一にして、この程度の練習しかしてないんだから、そんな漫画みたいな事が起こり得る筈が無い。


けど、なんて言うのかなぁ、それが解って居ても、やっぱ、まだまだ演奏でのフィーリングが不足してんだよな。


まだ、この曲に対しての理解力が低いから『どこで、何故こう言う風に作られたのか』ってのが、ほぼ全くわかってないって言うか……基本的に演奏に余裕がないと言うか……まだまだ自分の事だけが手一杯に成り過ぎて、そこまでの曲に対する感性が出来上がっていないが故に、そう言った感性を、演奏から全く感じないんだよな。


そりゃまぁな、ドラムって楽器はデカイから、俺が使ってるベースの様に、どこでも練習出来る訳じゃないし、期間が限られてる中で、此処まで仕上げて来たグチの努力には感心するんだが……


やっぱ、物足りないんだよなぁ~~~。


そこでだ。

此処で、困った時に出現する、俺の脳内選択肢が発動する。


①敢えて、此処を指摘するべきか?

②それとも、敢えて指摘しないべきか?

そんな如何にもゲームに出て来そうな、簡単で簡潔な2択が脳裏に過ぎる。


勿論、そんな選択肢と共に、あるレベルまでの解答も脳裏を過ぎる。


●指摘した場合●

成功:相手と話さえ合けば、レベルアップの予感。

失敗:相手が話を聞き違えると、テンションダウン。

ってな感じだ。


けどな。

これって両方、なんとも微妙なラインなんだよな。

どっちを選んでも、なんかイマイチ良い効果が出ないんだよな。


んな訳でだ。

俺は休憩がてらに摂った昼食の最中『やんわりと、それを指摘する』と言う、第3の選択肢を選択してみた。


するとだ……

『テンションがダウンして、妙なヤル気だけが残る』

と言う、なんとも良いのか、悪いのかが判断し難い、これまた微妙な結果に陥った。


っとか言いながら、本心では、この選択肢の結果に『完全にやっちまった感』が漂っている。


早い話、最悪な結果だ。



ただ、そうは言ってもだな。

今更、やっちまった事を後悔しても始まらねぇ。


現実的に見ても、文化祭までの時間も、あまりない事だし。

此処は1つ、基本ポジティブにモノを考えて、午後から練習に集中するのみだ。


***


 さて、午後からの部の練習は、昼食を挟んで1:30から開始したんだが。

現在ぶっ続けで午後の6:30まで演奏をやめる事無く、永遠と練習し続けた。


俺は、この5時間にも及ぶ集中した連続練習の中、ある事を心掛けていた。


その『ある事』ってのは……

練習中、2人のどちらかが、少しでも良い音を出した時は常に『そうそう』『そうだよ』『それだよ』の、最も解り易い褒め言葉を繰り返し使っていたんだ。


これはまぁ『褒め捲くって成長を促そう』と言う、非常に解り易い作戦だ。


この作戦の効果は、グチの下がったテンションを上げるのも1つの目的なんだが、もう1つ、別の理由でも使っていたんだ。


実はな、この俺が無駄に多く発して今の褒め言葉ってのはな。

『演奏時に出した良い音を、体で憶えさせる為の行為』でもあるんだよ。


詳しく説明するとだな。

ポイント・ポイントで出した良い音を、褒め言葉で印象付けて、再度そこを演奏する時には、前の良い音を思い出させ様と思った訳だ。


これなら、少しづつだが、無理なく完成度が上がって行く筈だからな。


言うなれば、こっちが本命の狙いだった訳だな。



……まぁ、つぅってもだな。

この作戦自体は、そんな都合良くは、大きな効果が得れるもんじゃないんだがな。


基本的には『超』が付くほど『地味な効果』しか上がらないのが現実だ。


第一にしてよぉ。

その良い音ってのも、元々無意識の内に出してる良い音だから。

次の演奏で、直ぐに反映出来る筈もなく、グチの完成度ってのは、そんなそんな上がっちゃいないのも現実だ。


現実社会では、矢張り、そんな漫画みたいな奇跡は起こらない。



それでもだ。

5時間もぶっ通しで演奏し続けたので、少なからず良い影響が出た様でもあったがな。


今日、練習を始めた時よりは、幾分マッシにはなってる気がする。



「あいよ、OKだ。最終的にだが、思ってた以上に良い感じに仕上がって来てるとは思うぞ」

「はぁ、はぁ、あぁ、やっと終わりかよ。……明日本番だってのに、喉がカラカラになるまで、普通は練習するかねぇ」


うん?

カジの奴、なに、この程度の練習でクレームなんぞを吐いてやがんだ?


こんなの普通の練習にも達してないレベルだろうに……


つぅかな。

簡単に喉がカラカラになる様な、無様な歌い方をすんなよな。


それって、腹で唄わずに、喉で唄ってる証拠だぞ。



「あのなぁ、なに言ってやがんだよ、オマエは。こんな程度の練習なんぞ、まだ序の口だぞ。俺が以前在籍してたバンドのボーカルなんてよ。丸2日間唄っても、平気な顔して学校行ってた様な人が居るって言うのによぉ。そんな情けねぇ事を言うなよなぁ」

「ウッソ!!なんだよ、そのバケモンは?冗談が過ぎるぜ、クラッさん」


そのお方は『向井奈緒』って人物の話ッスな。


俗に言う、誰もが認める、正真正銘の化物だ。

(↑崇秀のみ除く)


後、素直も、いつもそんな感じだぞ。



「誰が嘘なんぞ付くか。バンドマンってのは、基本、体力勝負。これ程、体育会系の文化部はねぇんだぞ」


俺の記憶が正しければ……山中のアホが、以前に、そんな事をゴチャゴチャぬかしてた気がする。


だから、真実は知らねぇ。


けど、体力作りをしているミュージシャンが、少なくねぇのも事実だな。



「って事はなにか?クラッさんも、なんか体力作りをしてるのか?」

「あぁまぁ、家で筋トレぐらいはしてるな」

「あぁ、だからか。細身のクセに、妙に筋肉が付いてて、仮面ライダーみたいな体型してるのは」


左様でごじゃるよ。

あっしの体は、こう見えても、ボクサー体型を理想として体を作り上げてるんでおじゃるよ。


まぁつってもだ、これ自体は、バンドをやる前からズッとやってた事なんだけどな。

なんせ、喧嘩する事が生き甲斐みたいな人生だったからな。

色んな所に、ある程度の筋肉が付いてないと、パンチや、キックがショボくなる。


元々は、その為のものだ。



「ふ~~ん。クラッさんって、変に真面目なんだな。まさか、そこまでストイックに自分を追い込んでるとは思わなかったよ」

「まっ、まぁな」


……すまぬ。

元を正せば、ロクデモナイ喧嘩の為ッスな。


大体にして俺が、そんなにストイックな人間な訳ねぇだろ。



「じゃあよぉ。俺の場合は、どこの筋肉を付けりゃ良いんだよ?」


知るか。

……って、質問されてるのに、突き放すのもなんだよな。


っとは言え、まぁ、実際知らないんだから、此処は憶測でモノを言うしかないんだがな。


そうだなぁ……今まで見てきた練習の感じで言えば、カジは、あんま体力がねぇみたいだから、まずは体力の付き易い『水泳』でもすりゃあ良いんじゃねぇの?


後はなぁ……


例えばなぁ……


有るとすればなぁ……


・・・・・・


うんうん、良し良し!!

これしかわかんねぇから、これを、それっぽく言ってみよ。



「そぉだなぁ。まぁ、俺はボーカルをやった事が無いから、詳しくはわかんねぇが。ボーカルの基本は肺活量と、全身の筋力をアップするのがベストだから『水泳』なんじゃね?」

「そうか、水泳かぁ。……うん、だったら、久しぶりに泳ぎに行くのも悪かねぇな」

「うん?なんだよオマエ?昔、水泳とかやってたのかよ?」

「あぁ、ガキの頃に週5で通ってたな。俺が、唯一得意な体育教科なんじゃね」

「へぇ~~~。っで、そんなに泳げるのか?」

「まぁ、自慢する程の事じゃないが、2~3kmなら平気で泳げるぞ」

「うぉ!!なんだそれ!!地味にスゲェじゃん!!」


ほぉ、基本の肺活量が、やけにデカイと思ったら、そう言う理由だったんだな。


ならコイツ、意外とマジで、ボーカルに向いてるかも知れないな。


今回の歌謡コンテストが終わったら、マジでカジをバンドに誘ってみっかな。



「まぁまぁ、そう褒めんなって……それはそうとさぁクラッさん。グチはどうやったら、もっと上手くなんだ?」


今度はドラムかぁ……


まぁ明確に解ってる事と言えば、やっぱ『筋肉』なんだよな。


ドラムって、勿論、リズム感も必要なんだがな。

これ自体はある程度練習をこなしてりゃ、自然に身に付いて行くもんなんだが。

そこへ行くと、この筋肉って方は、ドラムの練習だけじゃ付かないからな。


恐らく此処が、重点的に自己鍛錬する部分だろうな。


その証拠にだ、外国人のドラマーとかは、比較的デカくてマッチョな奴が多い。

やっぱ、パワフルな音作りをしようとしたら『筋力アップ』は欠かせ無いんじゃねぇかな?


山中のアホも、あれで居て、かなりの上質な筋肉を付けてやがるからな。



まぁただ、それが正しいのかは解んねぇけどな……



「あぁ、そうだなぁ。ドラマーだと、多分……」

「あぁいい、いい。俺の話はいい。俺は恐らく、今回の歌謡コンテストが終わったら、殆どドラムを叩く機会がなくなるから、そこまで言って貰う必要はない」


はっ、はぁ?


なっ!!なんでぇ?

なんで今、そんな発言が出て来るんだよ!!


折角、少しづつではあるが上手くなってきたのに、なんで此処で辞めんだ?


勿体無いって!!



2人をバンドに誘おうと考えてた矢先。

そんなグチの予想もしなかった反応に、俺は、かなり動揺していた。


最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>


なんだかんだと言いながらでも、結構、良い方向に進んでいるのに。

何故か此処で、突然、文化祭以降グチ君はドラムを続けない事を宣言してきましたね。


まぁ、此処まで読んで下さっている方なら、この理由はもぉお解りだと思うのですが。

勿論、理由は【彼の家庭の事情】です。


さてさて、グチ君の実質引退宣言を聞いた倉津君とカジ君は、どうするつもりなんでしょうね?


そこは次回の講釈。

また良かったら遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート