●前回までのあらすじ●
テスト泥棒をすると言う悪事を働かずに済ます為に、奈緒さんと素直ちゃんに勉強を見て貰う事にしたアホ2人組。
そして、その追試の用意をしに、素直ちゃんは一旦、家に帰って行った。
「ねぇ、馬鹿2人……所で、アリスが帰って来るまで、君達はどうするの?」
「そら、奈緒ちゃん。今からバリバリ勉強するに決まってるやんけ」
「どうやって?」
「いや、あの、それはやな。教科書と、ノート見てやな……」
「そうなんだ。君達、ちゃんとノート取ってんだ。取ってるのに50点も取れないんだ」
「すんません……取ってまへん」
「だと思ったよ。クラはどぉ?……って、取ってる訳ないか。ハァ」
いやいやいやいや、決め付けはいけませんよ、奈緒さん。
「・・・・・・」
「やっぱりね。……だったらほら、教科書出してみ」
「あっ、はい」
「うわっ!!汚っ!!ちょっとクラ。何所をどうやったら、こんなに汚くなるのよ?涎だらけじゃない」
奈緒さんは、俺の差し出した教科書を、人差し指と親指だけで摘む。
それはまるで、汚物を触る様に……
いや、だって、しょうがないじゃないッスか。
それ……ただの枕なんッスから。
「もぉ、こんなの汚くて使えないよ。……カズ、教科書貸して」
「あっ、はい」
「うわっ!!コッチも汚っ!!それになんで、君の教科書は、こんなに落書きだらけなのよ?君達、一体、学校に、何しに行ってるの?」
「いや、面目ない。そやけど、暇やと、つい、落書きしてまうやん」
「はぁ……もぉ、最初から絶望的」
そう言って、教科書を俺達に投げ返してきた。
勿論、この際も、教科書は汚物扱い。
……酷いッス。
「カズ……じゃあノート出して」
「いや、それは辞めといた方が良ぇで」
「ハァ……落書きだらけなのね」
「すんまへん」
「クラは……ハァ、無駄かぁ」
いやいやいやいや、だからぁ。
決め付けは、よくないッスよ奈緒さん。
教科書がダメだったからって、ノートを取ってないとは限りませんよ。
「・・・・・・」
「だよね。取ってる訳ないよね」
「すみません」
「あぁもぉ、早くもアリスが帰って来なきゃ。なんにも出来無いじゃない」
「「すんません」」
「もぉ良いよ。取り敢えず、使えそうなもの探すから、2人共、鞄、此処に置いて」
「いやいやいや、なんもないッスよ、奈緒さん」
「良いから、サッサと置きなさい」
「いや、奈緒ちゃん。奈緒ちゃんが期待する様なもんは、ホンマなんも入ってへんって」
「黙れ……置け」
「「あぁはい……」」
奈緒さんの威圧感に押され、2人して泣く泣く鞄を机の上に置く。
すると奈緒さんは、素早く、俺の鞄を自分の横に置いて100%俺が取れない様にする。
その上、山中の鞄を机の上でひっくり返す。
「なっ、なにすんねん!!なっ、奈緒ちゃん、やっ、やめて、やめてくれ~~~!!殺生やで」
そんで出て来た物は、大量の雑誌とノートが一冊。
それと、さっき汚物扱いされた教科書。
けど、その雑誌って言うのが、音楽関係の本と……エロ本。
人が行きかうファーストフードで、これは、完全な羞恥プレイだ。
「あぁああぁぁぁあぁ~~~~っ」
「もぉ、なによこれ?君さぁ、ホントに、学校に何しに行ってるの?」
「違うんや。違うんや。今日は偶々や偶々」
「ふぅ~~」
そうやって溜息を付きながら、奈緒さんは、山中のノートをペラペラ捲る。
恐らくは、ノートの取り具合でもチェックしてるんだろう。
それだけの事なのに、山中の顔は一気に蒼褪める。
いや、それ処か、なんか奈緒さんと視線を合わさない様に、キョロキョロして挙動不信になってきてるぞ。
なんだ?
「……ピキッ!!(怒りマーク)」
「うわぁ……見付けられた……最悪や」
「カズ、これ?……なに?なにかな?」
「いや、ちゃうねんって!!ちゃうねんって!!それに関しては、悪気なんて微塵もないねんって。全然、悪意とかないねんで」
なにを、そんなに焦ってるんだ?
こいつのノートには、奈緒さんが怒る様な、何が書かれてるって言うんだ?
気になった俺は、コソッと覗いて見る。
だがそこには、予想もしなかった驚愕なモノが描かれていた。
奈緒さんらしき人物と、素直らしき人物の『裸の絵』が書かれている。
まぁ此処は百歩譲れば、思春期の中学生のしそうな事なんだが……イラストの横に描いてあるセリフがよくない。
その奈緒さんらしき人物には『おっぱい小さいけど感度で勝負!!』ってセリフが書かれ。
素直らしき人物には『ボインボインだから、向井さんには負けないよぉ』って書かれている。
一目見るだけで、バンド仲間を、そう言う眼で見ているのがキッカリ解る、見るに耐えない小学生レベルの酷い落書きだ。
これじゃあ、奈緒さんが怒るのも無理はない。
大体にして、Bカップと、Fカップを比べる事自体、酷ってもんだ。
あぁ余談だが……俺は、小さい方が好きですよ、奈緒さん。
「君……死にたいの?誰の胸が無いって?」
「いや、ちゃうって、ちゃんと感度良いって書いてるやん」
「フォローになってない!!」
『ガンッ』っと言う音を立てて、山中の頭が机でバウンドした。
当然、奈緒さんが、その欲望に塗れたノートを丸めて、山中の頭を思い切り『どついた』からだ。
けど、あれは、恐らく山中お得意のリアクションじゃねぇな……どう見ても、奈緒さんのガチの威力が伝わって、あぁなったんだな。
アホが……イラン事するからだ。
「すんませんでした……もぉ2度としません」
「ハァ、もぉ良いよ。疲れた」
口とは裏腹に、奈緒さんは俺の鞄を手にする。
まぁ俺には、恐れるものなど、何も入っていないから、特別、ビビる必要はない。
敢えて言われるとすれば、山中同様『クラ……学校に何しに行ってるの?』ぐらいのもんだろう。
だから、俺は焦らない。
そう思っている内に、鞄はひっくり返された。
けど出て来た物は、汚物教科書と、ほぼ新品で明らかに使われていない数冊のノート。
今言った様に『ほぼ新品のノート』だから、山中みたいな馬鹿な目には遭わない。
けど、変な物が描かれてないか、奈緒さんはチェックする。
にしても、奈緒さん……生徒指導部の先公みたいですよ。
「ちょ……クラ」
「へっ?なんッスか?なんか変な事を描いてますか?」
「いや、違うんだけど……これって、君が描いたの?」
「どれッスか?」
手渡されたノートを見ると、確かに落書きがしてある。
まぁ自分で言うのもなんだけど、山中レベルの落書きよりは、大分マシな絵だと思う。
俺は造形マニアだから、多少の絵心は有るからな。
しかし、これ、何時描いたっけな?
まぁ多分、大分前に描いた絵だな……山中よりマッシとは言え下手だ。
「なんやなんや?オマエも、エロ落書きか?」
「いや、そんなんじゃねぇよ。……ただの落書きだ」
「ほんまかぁ?めっちゃエロいんちゃうんか?ちょっと見してみい」
「おぉ、まぁ見たいなら、勝手に見ろよ。ほらよ」
徐に、山中にノートを渡す。
どうせ落書きだし……
「はぁ?なんやねん、これ?落書きのレベルちゃうやんけ」
「そうかぁ?」
「オマエ、滅茶苦茶上手いやんけな。プロやなプロ」
「いやいや、待て待て、こんなの全然大した事ねぇよ。この程度の絵なら、誰だって10分もありゃあ描けるぞ」
「クラってさぁ。ホント、変な所に才能が有るんだね」
「はぁ……そうっすか?」
なんか気恥ずかしいな。
あんな落書きで、こんなに褒められるとは思いも寄らなかった。
まぁけど、何処かの誰かさんみたいにドン引きされるよりは、ずっと良いか。
「ねぇクラ……これ、ちょっと借りて良い?」
「あぁ、別に良いッスよ。そんなもんで良かったらあげますよ」
「良いの?」
「良いッスよ。……けど、そんなもん、なんに使うんッスか?」
「ふふっ……秘密」
あらら、また奈緒さん、なんか変な事を思い付いたな。
まぁ良いけどな。
大体にして、そんなもん悪用のし様も無いから、奈緒さんの思う様に、何にでも好きに使って下さいな。
「あの……戻りました」
「おぉ、おかえり。ワザワザ、悪いな……ぶっ!!」
俺は話の途中で、思わず噴出した。
そして山中も、俺同様に呆気にとられている。
―――何故かって?
いやな、勉強を教えて貰うんだから、素直が帰って来たのは良い……そこは問題無い。
だがな、素直の肩に掛かってる鞄が問題だ。
これでもかって程、鞄をパンパンに膨らませている。
おいおい……素直さん、その中には、一体、何が入ってるんだ?
まさか、それ、全部が勉強道具とか言わねぇよな。
言って置くが、勉強するのって、俺と、山中だぞ。
バンドきってのアホ兄弟だぞ。
嶋田さんや、奈緒さんや、オマエじゃないんだぞ。
俺と、山中は、素直の持つ鞄に、得も言えぬ恐怖を感じた。
「うん。じゃあ、行こっか?」
「あっ、はい」
なんか豪く仲が良いな。
素直の奴、女同士で腕なんか組んで、奈緒さんにベッタリじゃねぇかよ。
なんだ?
コチラにも、得も言えぬ不安を感じるぞ。
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>
これにて第二十七話『ライブ前日の試練・発動編』を終わりたいと思います。
一応、一人暮らしをしている奈緒ちゃんの家で、勉強を見て貰う事に成ったアホ2人組なんですが。
本当に大丈夫なんですかね?
そんな不安しか残らないまま。
次話、第二十八話『ライブ前の試練・勉強編』がスタートします。
結構、一夜漬けで点数を取るには良い方法だと思いますので。
良かったら、見に来てくださいです(*'ω'*)ノ
読み終わったら、ポイントを付けましょう!