最後まで奏でられなかった音楽

どこかお間抜けDQNな不良さんのゆったり更生日誌(笑)
殴り書き書店
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152 不良さん、持ち物検査をされる

公開日時: 2021年7月8日(木) 00:21
更新日時: 2022年11月26日(土) 22:28
文字数:3,475

●前回までのあらすじ●


 テスト泥棒をすると言う悪事を働かずに済ます為に、奈緒さんと素直ちゃんに勉強を見て貰う事にしたアホ2人組。


そして、その追試の用意をしに、素直ちゃんは一旦、家に帰って行った。

「ねぇ、馬鹿2人……所で、アリスが帰って来るまで、君達はどうするの?」

「そら、奈緒ちゃん。今からバリバリ勉強するに決まってるやんけ」

「どうやって?」

「いや、あの、それはやな。教科書と、ノート見てやな……」

「そうなんだ。君達、ちゃんとノート取ってんだ。取ってるのに50点も取れないんだ」

「すんません……取ってまへん」

「だと思ったよ。クラはどぉ?……って、取ってる訳ないか。ハァ」


いやいやいやいや、決め付けはいけませんよ、奈緒さん。



「・・・・・・」

「やっぱりね。……だったらほら、教科書出してみ」

「あっ、はい」

「うわっ!!汚っ!!ちょっとクラ。何所をどうやったら、こんなに汚くなるのよ?涎だらけじゃない」


奈緒さんは、俺の差し出した教科書を、人差し指と親指だけで摘む。


それはまるで、汚物を触る様に……


いや、だって、しょうがないじゃないッスか。

それ……ただの枕なんッスから。



「もぉ、こんなの汚くて使えないよ。……カズ、教科書貸して」

「あっ、はい」

「うわっ!!コッチも汚っ!!それになんで、君の教科書は、こんなに落書きだらけなのよ?君達、一体、学校に、何しに行ってるの?」

「いや、面目ない。そやけど、暇やと、つい、落書きしてまうやん」

「はぁ……もぉ、最初から絶望的」


そう言って、教科書を俺達に投げ返してきた。


勿論、この際も、教科書は汚物扱い。


……酷いッス。



「カズ……じゃあノート出して」

「いや、それは辞めといた方が良ぇで」

「ハァ……落書きだらけなのね」

「すんまへん」

「クラは……ハァ、無駄かぁ」


いやいやいやいや、だからぁ。

決め付けは、よくないッスよ奈緒さん。


教科書がダメだったからって、ノートを取ってないとは限りませんよ。



「・・・・・・」

「だよね。取ってる訳ないよね」

「すみません」

「あぁもぉ、早くもアリスが帰って来なきゃ。なんにも出来無いじゃない」

「「すんません」」

「もぉ良いよ。取り敢えず、使えそうなもの探すから、2人共、鞄、此処に置いて」

「いやいやいや、なんもないッスよ、奈緒さん」

「良いから、サッサと置きなさい」

「いや、奈緒ちゃん。奈緒ちゃんが期待する様なもんは、ホンマなんも入ってへんって」

「黙れ……置け」

「「あぁはい……」」


奈緒さんの威圧感に押され、2人して泣く泣く鞄を机の上に置く。

すると奈緒さんは、素早く、俺の鞄を自分の横に置いて100%俺が取れない様にする。


その上、山中の鞄を机の上でひっくり返す。



「なっ、なにすんねん!!なっ、奈緒ちゃん、やっ、やめて、やめてくれ~~~!!殺生やで」


そんで出て来た物は、大量の雑誌とノートが一冊。

それと、さっき汚物扱いされた教科書。


けど、その雑誌って言うのが、音楽関係の本と……エロ本。

人が行きかうファーストフードで、これは、完全な羞恥プレイだ。



「あぁああぁぁぁあぁ~~~~っ」

「もぉ、なによこれ?君さぁ、ホントに、学校に何しに行ってるの?」

「違うんや。違うんや。今日は偶々や偶々」

「ふぅ~~」


そうやって溜息を付きながら、奈緒さんは、山中のノートをペラペラ捲る。

恐らくは、ノートの取り具合でもチェックしてるんだろう。


それだけの事なのに、山中の顔は一気に蒼褪める。

いや、それ処か、なんか奈緒さんと視線を合わさない様に、キョロキョロして挙動不信になってきてるぞ。


なんだ?



「……ピキッ!!(怒りマーク)」

「うわぁ……見付けられた……最悪や」

「カズ、これ?……なに?なにかな?」

「いや、ちゃうねんって!!ちゃうねんって!!それに関しては、悪気なんて微塵もないねんって。全然、悪意とかないねんで」


なにを、そんなに焦ってるんだ?

こいつのノートには、奈緒さんが怒る様な、何が書かれてるって言うんだ?


気になった俺は、コソッと覗いて見る。


だがそこには、予想もしなかった驚愕なモノが描かれていた。

奈緒さんらしき人物と、素直らしき人物の『裸の絵』が書かれている。


まぁ此処は百歩譲れば、思春期の中学生のしそうな事なんだが……イラストの横に描いてあるセリフがよくない。

その奈緒さんらしき人物には『おっぱい小さいけど感度で勝負!!』ってセリフが書かれ。

素直らしき人物には『ボインボインだから、向井さんには負けないよぉ』って書かれている。


一目見るだけで、バンド仲間を、そう言う眼で見ているのがキッカリ解る、見るに耐えない小学生レベルの酷い落書きだ。


これじゃあ、奈緒さんが怒るのも無理はない。

大体にして、Bカップと、Fカップを比べる事自体、酷ってもんだ。


あぁ余談だが……俺は、小さい方が好きですよ、奈緒さん。



「君……死にたいの?誰の胸が無いって?」

「いや、ちゃうって、ちゃんと感度良いって書いてるやん」

「フォローになってない!!」


『ガンッ』っと言う音を立てて、山中の頭が机でバウンドした。

当然、奈緒さんが、その欲望に塗れたノートを丸めて、山中の頭を思い切り『どついた』からだ。


けど、あれは、恐らく山中お得意のリアクションじゃねぇな……どう見ても、奈緒さんのガチの威力が伝わって、あぁなったんだな。


アホが……イラン事するからだ。



「すんませんでした……もぉ2度としません」

「ハァ、もぉ良いよ。疲れた」


口とは裏腹に、奈緒さんは俺の鞄を手にする。

まぁ俺には、恐れるものなど、何も入っていないから、特別、ビビる必要はない。


敢えて言われるとすれば、山中同様『クラ……学校に何しに行ってるの?』ぐらいのもんだろう。


だから、俺は焦らない。


そう思っている内に、鞄はひっくり返された。

けど出て来た物は、汚物教科書と、ほぼ新品で明らかに使われていない数冊のノート。


今言った様に『ほぼ新品のノート』だから、山中みたいな馬鹿な目には遭わない。

けど、変な物が描かれてないか、奈緒さんはチェックする。


にしても、奈緒さん……生徒指導部の先公みたいですよ。



「ちょ……クラ」

「へっ?なんッスか?なんか変な事を描いてますか?」

「いや、違うんだけど……これって、君が描いたの?」

「どれッスか?」


手渡されたノートを見ると、確かに落書きがしてある。


まぁ自分で言うのもなんだけど、山中レベルの落書きよりは、大分マシな絵だと思う。

俺は造形マニアだから、多少の絵心は有るからな。


しかし、これ、何時描いたっけな?

まぁ多分、大分前に描いた絵だな……山中よりマッシとは言え下手だ。



「なんやなんや?オマエも、エロ落書きか?」

「いや、そんなんじゃねぇよ。……ただの落書きだ」

「ほんまかぁ?めっちゃエロいんちゃうんか?ちょっと見してみい」

「おぉ、まぁ見たいなら、勝手に見ろよ。ほらよ」


徐に、山中にノートを渡す。


どうせ落書きだし……



「はぁ?なんやねん、これ?落書きのレベルちゃうやんけ」

「そうかぁ?」

「オマエ、滅茶苦茶上手いやんけな。プロやなプロ」

「いやいや、待て待て、こんなの全然大した事ねぇよ。この程度の絵なら、誰だって10分もありゃあ描けるぞ」

「クラってさぁ。ホント、変な所に才能が有るんだね」

「はぁ……そうっすか?」


なんか気恥ずかしいな。

あんな落書きで、こんなに褒められるとは思いも寄らなかった。


まぁけど、何処かの誰かさんみたいにドン引きされるよりは、ずっと良いか。



「ねぇクラ……これ、ちょっと借りて良い?」

「あぁ、別に良いッスよ。そんなもんで良かったらあげますよ」

「良いの?」

「良いッスよ。……けど、そんなもん、なんに使うんッスか?」

「ふふっ……秘密」


あらら、また奈緒さん、なんか変な事を思い付いたな。


まぁ良いけどな。

大体にして、そんなもん悪用のし様も無いから、奈緒さんの思う様に、何にでも好きに使って下さいな。



「あの……戻りました」

「おぉ、おかえり。ワザワザ、悪いな……ぶっ!!」


俺は話の途中で、思わず噴出した。

そして山中も、俺同様に呆気にとられている。


―――何故かって?


いやな、勉強を教えて貰うんだから、素直が帰って来たのは良い……そこは問題無い。

だがな、素直の肩に掛かってる鞄が問題だ。

これでもかって程、鞄をパンパンに膨らませている。


おいおい……素直さん、その中には、一体、何が入ってるんだ?

まさか、それ、全部が勉強道具とか言わねぇよな。


言って置くが、勉強するのって、俺と、山中だぞ。

バンドきってのアホ兄弟だぞ。

嶋田さんや、奈緒さんや、オマエじゃないんだぞ。


俺と、山中は、素直の持つ鞄に、得も言えぬ恐怖を感じた。



「うん。じゃあ、行こっか?」

「あっ、はい」


なんか豪く仲が良いな。

素直の奴、女同士で腕なんか組んで、奈緒さんにベッタリじゃねぇかよ。


なんだ?


コチラにも、得も言えぬ不安を感じるぞ。


最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>

これにて第二十七話『ライブ前日の試練・発動編』を終わりたいと思います。


一応、一人暮らしをしている奈緒ちゃんの家で、勉強を見て貰う事に成ったアホ2人組なんですが。


本当に大丈夫なんですかね?


そんな不安しか残らないまま。

次話、第二十八話『ライブ前の試練・勉強編』がスタートします。


結構、一夜漬けで点数を取るには良い方法だと思いますので。

良かったら、見に来てくださいです(*'ω'*)ノ

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

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