●前回のおさらい●
以前なら、楽しく出来ていた山中君との会話も、眞子だとやや不快に感じてしまう中。
ある言葉を切欠に、2人の会話が噛み合い出す。
それは矢張り……『音楽の話』
「あぁ、いえ。弾けると言っても、趣味程度のものなんですよ」
「趣味とな?……そら、また、おかしな事言うなぁ。ヒデのアホが、その程度の腕の人間をサポートで連れて来る筈ないんやけどなぁ。……なぁ、眞子ちゃん。ライブは、やった事あるんかいな?」
「あぁ、はい。1度だけなら、この間に……」
コスプレのオマケ付きで……
もぅ2度と、あんな真似はしたくはありませんけどね。
「一回だけやて?ほな、尚更変やな。……って事はなにか?眞子ちゃん、ライブ経験が浅いだけで、実はメッチャ上手い実力者とかか?」
「あぁ、いえいえ。そんなそんな……あぁっと、なんて言ったら良いんだろ。あっ、あのですね。私、崇秀から、直接ベースを教えて貰ってるので、それで呼ばれたのかなぁって」
「『崇秀』?……なぁ、なんでさっきから、アイツだけ呼び捨てなん?」
えっ?そっち?
急に、興味がソッチに向いちゃッたんだ。
面倒臭いなぁ、もぉ……
別に良いじゃない、放って置いてよ!!
「えぇっと……崇秀は、真琴ちゃん同様、幼馴染なんで」
「あぁ、そう言う事かいな。……そやけど、アイツ、滅茶苦茶良ぇ男やから意識とかせぇへんのかいな?」
ホント大きなお世話だっての!!
意識はしないけど、最高の親友なの!!
まぁ……幼馴染から見ても、あれだけ親身に接してくれるんだから『滅茶苦茶良い男』なんだろうけどね。
意識だけは、絶対にしない。
「意識……ですか?あぁ、それは1度もないですね。ずっと仲の良いお友達なんで」
「うわっ、また天然系か……」
「えっ?なんですか?」
「あぁ、いや、別になんでもない。……それはそうと、さっきの話やねんけど。ベースの腕は、ホンマに趣味程度のもんなんか?前のライブの反応はどうやった?」
話が急に、また戻ったよぉ~~。
急展開をされると、非常に疲れるからヤメテ。
アッチコッチ行かず、話に方向性を持たせて下さい……お願いだから。
……煩わしいなぁ。
「えぇっと、それは、どぉ、お答えしたら良いんですか?」
「あぁ、そやなぁ。例えばやな。ライブ中、滅茶苦茶盛り上がったとか、全然盛り上がってへんかったとか」
「えぇっと、それは、私の主観で良いんですか?」
「まぁ、今の段階では『眞子ちゃんの主観』でモノを言うしかないわな」
「あぁっと……じゃあ、少し楽しそうでしたよ」
「『少し』かぁ。……どうにも腑に落ちんなぁ。なぁ、眞子ちゃん、楽屋に戻ったら、ちょっと音合わせさせてくれへんか?ライブ前に、一回だけでも眞子ちゃんの音聞かせといてくれや」
「あぁ、はい、それなら喜んで」
こう言う質問をするって事は、罷り也にも、ちゃんとライブの事を見据えて考えてるんだよね。
それなら『ウザく』もないし『煩わしい』事もないし『ウンザリ』もしなくて済みそうなので良いですよ。
奈緒さんの為なら、全然OK♪
……あぁでも、本当は、音合わせする程の心配は、なにもないんだけどね。
奈緒さんと、崇秀と、山中君だったら、私、絶対的に合わせる自信が有りますから。
それに、もぉ今更、ライブ出演は後には引けないからヤル気も十分だしね。
ドンッと来いってんだい!!
***
……そんな訳で、楽屋に戻ったら、奈緒さんと崇秀に山中君が飲み物を渡す。
その間に私は『Music-man 1979 Sting -ray bass』をソフトケースから出し。
近くにあった練習用の小さなアンプに、シールドをソッと差し込む。
そんな私の様子を崇秀が見て居たんだけど……
突然、なにを思ったのか。
差し込んだシールドを引き抜き、床にポイッて捨てる。
なになに?なにするの?
「あっ、あの……」
「おいおい、秀、なんしとんねんな?」
「いや、なにって。眞子のベースの音は、楽屋で響かせるもんじゃねぇの。それを、こんな所で弾かせるなんて冗談じゃねぇぞ。そんなもん愚の骨頂だ」
「いや、ちょ待てや。オマエ、相手の音も解らんのに、本番で、どうするつもりやねん?なんぼ熟練した奴でも、最低一回以上は音合わせするもんやぞ」
うん、確かに、そうだよね。
相手の実力が解らないんじゃ、音の合わせ様がないもんね。
それに本番を考慮するなら、矢張り、此処は音合わせするべき所なのになぁ。
……まぁ勿論、今のままでも、問題無く、私は合わせられるだろうけど。
私の演奏を知らない山中君にとっては、単なる『不確定要素』でしかない。
そんな奴の演奏レベルを知って置きたいと思うのは、至極当たり前の事。
此処は、ウザ中君の言う事が正しいよ。
「いいや、その必要は全くねぇな。オマエは、いつも通り、自分の演奏をすりゃあ良いんだよ。ただそれだけで、全てが万事上手く行く」
「はぁ~~~?どういう事やねんな、それ?」
「なぁにな。この眞子は、自分の感性だけで、人の音に合わせられる天才なんだよ。だから、そんな凡人の様な真似をする必要はない」
えっ?なんですかね、その奇妙奇天烈な新設定?
そんな真似をした覚えは、生まれてこの方1度たりともないんですけど……
それに奈緒さん、なんで崇秀の話を聞いて『クスクス』笑ってるんですか?
なんの虐めですか、これ?
それとも、ただの悪乗りをして遊んでるだけですか?
そうですね。
きっと……
「そんなアホな。ライブ経験が一回しかない子に、そんな器用な真似が出来る訳ないやろ」
「眞子にとっちゃ、ライブなんざ1回もやりゃあ十分なんだよ。コイツの才能は、マジで底が知れねぇからな。本番のステージで、オマエが一番驚く事になるだろうよ。……だよね、向井さん」
「うん、そうですね。その件については、仲居間さんの言う事が正しいですね。眞子は、間違いなく100%の確率で、カズのドラムに合わせられる」
「ちょっと待てって!!仮に、そうやったとしてもや。一回も練習せんでOKちゅうのは、流石に納得出来ひんで。……それに、さっきからなんか隠してへんか?」
「なにを隠すって言うのよ?……って言うかさぁ。秘密のベールに包まれてた方が、衝撃が大きくない?」
「アホな事を言いなや!!此処アリーナやで!!此処で大失敗なんかこいたら、取り返しが付かへんねんで。そんなもん、どないすんねんなぁ」
あの~~~。
そろそろ山中君が、マジ怒りになってきたから、潮時じゃないですか?
悪乗りも良いですけど、引き際も肝心ですよ。
「んあ?そんなもん、また最初からヤリ直しゃあ良いじゃねぇかよ。若しくは、眞子をステージから降ろして、ベースは向井さんが弾けば、なんの問題もねぇじゃかよ」
「オイオイ、正気の沙汰やないで。オマエ等、ホンマわかってんのか?此処アリーナやで、アリーナ。そんな大間抜けな失敗が許される様な場所やないんやないか!!」
あぁ~~~、なんか話が見えて来ちゃったぞ。
これは引き際云々より。
奈緒さんと、崇秀は、今此処で私がベースを弾いたら。
山中君が、真琴ちゃんと、私を重ね合わせて、全く同じな物と感じる可能性が高いから、この話を終わらせないんだ。
それで、本番の一発勝負を賭け様って腹なんだね。
でも……山中君も大概、頑固だから、絶対に折れない様な気がするね。
どうするんだろ?
「そうかよ。じゃあ、此処で1つ賭けをするか?眞子が本番で『失敗』するか?それとも『成功』するか?ってので、どうだ?」
「ふざけんなや!!こちとら仕事で音楽しとんじゃ!!遊びちゃうねんぞ!!」
「……乗った。私、眞子が完全に合わせられる方に『賭ける』よ。ライブのメインの人間が乗るんだから。それで良いよね」
いや、あの、奈緒さん、本気で煽って、どうするんですか?
此処は冷静に対処しましょうよ。
……ねっねっ。
「オイオイ、冗談ちゃうで、そんなアホな事させて堪るかぁ!!」
「ほたえるな。メインが決めた事に従うのが『バックバンド』の仕事だ。それが嫌なら、楽器で己を主張して、喰い合いすりゃ良いんだよ」
「アホかオドレは!!客は金払ろうて、音楽聞きに来とんねんぞ!!タダちゃうねんぞ!!」
「知るか。……あぁ、もぉヤメだヤメ。そんで、こんなツマンネェ賭けも一切ヤメだ。序に、協調ゴッコもお仕舞いだ。面倒だから、俺が、観客全員を喰らい尽くしてやるよ」
「なら、私も存分に食べさせて貰う。……全員、均等に、容赦なくね」
ちょ、ちょ、ちょっと、なんで喧嘩?
なんでそんな展開?
一番最初の、ほのぼのした雰囲気は、どこに行っちゃったの?
なにが起ころうとしてるの?
「あぁ、さよか。……ほな、もぉ勝手にさらせや。ワシも我慢の限界じゃ。オドレ等、吐いた唾飲まんとけよ。2人して覚悟しさらせよ」
「上等」
「負けて泣くなよ」
なんで、こんな事になってるの?
ってか、私、どうしたら良いの?
ってか、どうしよう?
「あっ、あの……喧嘩は……」
「じゃあ、話は終わりだ。また後で、ステージで会おうぜ。此処に来た事を後悔するぐらい、観客丸ごと、全員壊してやる。あははっはっはっはっは……」
いやいやいやいや、話が全然終わってないのに、なんで出て行こうとしてるの?
ってかさぁ、崇秀、なんで壊れてんの?
『ガチャ』
あぁ……行っちゃった。
「ほな、ワシも行かせて貰うわ。……仕事を遊びや思とる、蹴ったくそ悪い糞共には、目に物見せたらぁ!!」
「ちょ……」
『バタン!!』
うわ~~~!!
物凄い剣幕で、崇秀の逆方面に出て行っちゃった。
ホントどうなるの?
「あの、奈緒さん。流石に不味いよ」
「うん?なにヌルイ事を言ってんの?眞子も、私の敵だよ。……だから出て行って」
「奈緒さんダメだよ」
「ヤダ。私は、やるって言ったら、絶対にやる。それに、誰にも、絶対負けないから」
「奈緒さん……」
あぁ……完全に、闘争本能に火が入っちゃってる。
こうなったら奈緒さんは、中々クールダウンしてくれないからなぁ。
勝負事になったら、奈緒さん無駄に熱いんだよねぇ。
……しょうがない。
此処は、一旦出て行こ。
『ガチャ』
出て行こうと扉のノブを廻したら、奈緒さんが、背後から声を掛けてきた。
「眞子……」
「あっ、はい、なんですか?」
「1つだけ忠告ね」
「あっ、はい」
「今日のライブ。私を含めて、本気で全員倒す気でやって良いよ。私のライブなんて、滅茶苦茶に、全部壊しちゃえ」
「へっ?」
「私はもぉ、客に媚びるだけの、心の無いライブなんてウンザリなのよ」
「えっ?」
「わかった?わかったら、兎に角、今は出て行きなさい。自分の力だけを信じてね……」
そっか。
奈緒さん、今、自分自身がやってるライブに満足してないんだ。
だから、崇秀の、こんな無茶な提案に乗ったり、私を『サポートとして使おう』って気になってくれてたんだ。
……今やってるライブが、相当ツマンナイんだね。
・・・・・・
なら……此処からは私も、誰にも容赦なく。
全身全霊を賭けて、全開の本気の本気で行かせて貰いますよ。
私……さっきまで、アリーナの事でゴチャゴチャ考えてましたけど。
良く考えたら、観客が多ければ多い程、私のテンションって天井知らずで上がるんですよ。
本当に良いんですね?
「わかりました。……じゃあ、ステージで」
「うん。眞子、君が出来る最高の演奏を聞かせて……」
「はい。タップリ、ご堪能させてみせますよ」
ははっ……もぉ無茶苦茶だよ。
でも、そう言うのも、本当は大好きなんだよね。
今までの、この2週間余り。
かなりストレスが溜まってたから、全部、此処で発散させて貰お♪
オッパイばっかり揉む奈緒さんも含めて、全員死刑確定♪
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>
はい、またややこしい事に成って来ましてね。
まぁ此処で山中君に、眞子の正体を変に詮索されたくない所だったのでしょうが。
バンドメンバーが全員、協調性の無い状態に成ってしまったのは大問題。
さてさて、こんな酷い状態で、アリーナライブなんてしても大丈夫なものなのでしょうか?
その辺を次回は書いて行こうと思いますので。
良かったら、またお気楽な感じで遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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