最後まで奏でられなかった音楽

どこかお間抜けDQNな不良さんのゆったり更生日誌(笑)
殴り書き書店
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632 眞子の音は楽屋で響かせるものじゃない

公開日時: 2022年10月31日(月) 00:21
更新日時: 2023年1月17日(火) 16:11
文字数:4,575

●前回のおさらい●


 以前なら、楽しく出来ていた山中君との会話も、眞子だとやや不快に感じてしまう中。

ある言葉を切欠に、2人の会話が噛み合い出す。


それは矢張り……『音楽の話』

「あぁ、いえ。弾けると言っても、趣味程度のものなんですよ」

「趣味とな?……そら、また、おかしな事言うなぁ。ヒデのアホが、その程度の腕の人間をサポートで連れて来る筈ないんやけどなぁ。……なぁ、眞子ちゃん。ライブは、やった事あるんかいな?」

「あぁ、はい。1度だけなら、この間に……」


コスプレのオマケ付きで……


もぅ2度と、あんな真似はしたくはありませんけどね。



「一回だけやて?ほな、尚更変やな。……って事はなにか?眞子ちゃん、ライブ経験が浅いだけで、実はメッチャ上手い実力者とかか?」

「あぁ、いえいえ。そんなそんな……あぁっと、なんて言ったら良いんだろ。あっ、あのですね。私、崇秀から、直接ベースを教えて貰ってるので、それで呼ばれたのかなぁって」

「『崇秀』?……なぁ、なんでさっきから、アイツだけ呼び捨てなん?」


えっ?そっち?

急に、興味がソッチに向いちゃッたんだ。


面倒臭いなぁ、もぉ……


別に良いじゃない、放って置いてよ!!



「えぇっと……崇秀は、真琴ちゃん同様、幼馴染なんで」

「あぁ、そう言う事かいな。……そやけど、アイツ、滅茶苦茶良ぇ男やから意識とかせぇへんのかいな?」


ホント大きなお世話だっての!!

意識はしないけど、最高の親友なの!!


まぁ……幼馴染から見ても、あれだけ親身に接してくれるんだから『滅茶苦茶良い男』なんだろうけどね。


意識だけは、絶対にしない。



「意識……ですか?あぁ、それは1度もないですね。ずっと仲の良いお友達なんで」

「うわっ、また天然系か……」

「えっ?なんですか?」

「あぁ、いや、別になんでもない。……それはそうと、さっきの話やねんけど。ベースの腕は、ホンマに趣味程度のもんなんか?前のライブの反応はどうやった?」


話が急に、また戻ったよぉ~~。

急展開をされると、非常に疲れるからヤメテ。


アッチコッチ行かず、話に方向性を持たせて下さい……お願いだから。


……煩わしいなぁ。



「えぇっと、それは、どぉ、お答えしたら良いんですか?」

「あぁ、そやなぁ。例えばやな。ライブ中、滅茶苦茶盛り上がったとか、全然盛り上がってへんかったとか」

「えぇっと、それは、私の主観で良いんですか?」

「まぁ、今の段階では『眞子ちゃんの主観』でモノを言うしかないわな」

「あぁっと……じゃあ、少し楽しそうでしたよ」

「『少し』かぁ。……どうにも腑に落ちんなぁ。なぁ、眞子ちゃん、楽屋に戻ったら、ちょっと音合わせさせてくれへんか?ライブ前に、一回だけでも眞子ちゃんの音聞かせといてくれや」

「あぁ、はい、それなら喜んで」


こう言う質問をするって事は、罷り也にも、ちゃんとライブの事を見据えて考えてるんだよね。

それなら『ウザく』もないし『煩わしい』事もないし『ウンザリ』もしなくて済みそうなので良いですよ。


奈緒さんの為なら、全然OK♪


……あぁでも、本当は、音合わせする程の心配は、なにもないんだけどね。

奈緒さんと、崇秀と、山中君だったら、私、絶対的に合わせる自信が有りますから。


それに、もぉ今更、ライブ出演は後には引けないからヤル気も十分だしね。


ドンッと来いってんだい!!


***


 ……そんな訳で、楽屋に戻ったら、奈緒さんと崇秀に山中君が飲み物を渡す。


その間に私は『Music-man 1979 Sting -ray bass』をソフトケースから出し。

近くにあった練習用の小さなアンプに、シールドをソッと差し込む。


そんな私の様子を崇秀が見て居たんだけど……


突然、なにを思ったのか。

差し込んだシールドを引き抜き、床にポイッて捨てる。


なになに?なにするの?



「あっ、あの……」

「おいおい、秀、なんしとんねんな?」

「いや、なにって。眞子のベースの音は、楽屋で響かせるもんじゃねぇの。それを、こんな所で弾かせるなんて冗談じゃねぇぞ。そんなもん愚の骨頂だ」

「いや、ちょ待てや。オマエ、相手の音も解らんのに、本番で、どうするつもりやねん?なんぼ熟練した奴でも、最低一回以上は音合わせするもんやぞ」


うん、確かに、そうだよね。

相手の実力が解らないんじゃ、音の合わせ様がないもんね。


それに本番を考慮するなら、矢張り、此処は音合わせするべき所なのになぁ。


……まぁ勿論、今のままでも、問題無く、私は合わせられるだろうけど。

私の演奏を知らない山中君にとっては、単なる『不確定要素』でしかない。


そんな奴の演奏レベルを知って置きたいと思うのは、至極当たり前の事。


此処は、ウザ中君の言う事が正しいよ。



「いいや、その必要は全くねぇな。オマエは、いつも通り、自分の演奏をすりゃあ良いんだよ。ただそれだけで、全てが万事上手く行く」

「はぁ~~~?どういう事やねんな、それ?」

「なぁにな。この眞子は、自分の感性だけで、人の音に合わせられる天才なんだよ。だから、そんな凡人の様な真似をする必要はない」


えっ?なんですかね、その奇妙奇天烈な新設定?

そんな真似をした覚えは、生まれてこの方1度たりともないんですけど……


それに奈緒さん、なんで崇秀の話を聞いて『クスクス』笑ってるんですか?


なんの虐めですか、これ?

それとも、ただの悪乗りをして遊んでるだけですか?


そうですね。


きっと……



「そんなアホな。ライブ経験が一回しかない子に、そんな器用な真似が出来る訳ないやろ」

「眞子にとっちゃ、ライブなんざ1回もやりゃあ十分なんだよ。コイツの才能は、マジで底が知れねぇからな。本番のステージで、オマエが一番驚く事になるだろうよ。……だよね、向井さん」

「うん、そうですね。その件については、仲居間さんの言う事が正しいですね。眞子は、間違いなく100%の確率で、カズのドラムに合わせられる」

「ちょっと待てって!!仮に、そうやったとしてもや。一回も練習せんでOKちゅうのは、流石に納得出来ひんで。……それに、さっきからなんか隠してへんか?」

「なにを隠すって言うのよ?……って言うかさぁ。秘密のベールに包まれてた方が、衝撃が大きくない?」

「アホな事を言いなや!!此処アリーナやで!!此処で大失敗なんかこいたら、取り返しが付かへんねんで。そんなもん、どないすんねんなぁ」


あの~~~。

そろそろ山中君が、マジ怒りになってきたから、潮時じゃないですか?


悪乗りも良いですけど、引き際も肝心ですよ。



「んあ?そんなもん、また最初からヤリ直しゃあ良いじゃねぇかよ。若しくは、眞子をステージから降ろして、ベースは向井さんが弾けば、なんの問題もねぇじゃかよ」

「オイオイ、正気の沙汰やないで。オマエ等、ホンマわかってんのか?此処アリーナやで、アリーナ。そんな大間抜けな失敗が許される様な場所やないんやないか!!」


あぁ~~~、なんか話が見えて来ちゃったぞ。


これは引き際云々より。

奈緒さんと、崇秀は、今此処で私がベースを弾いたら。

山中君が、真琴ちゃんと、私を重ね合わせて、全く同じな物と感じる可能性が高いから、この話を終わらせないんだ。


それで、本番の一発勝負を賭け様って腹なんだね。


でも……山中君も大概、頑固だから、絶対に折れない様な気がするね。


どうするんだろ?



「そうかよ。じゃあ、此処で1つ賭けをするか?眞子が本番で『失敗』するか?それとも『成功』するか?ってので、どうだ?」

「ふざけんなや!!こちとら仕事で音楽しとんじゃ!!遊びちゃうねんぞ!!」

「……乗った。私、眞子が完全に合わせられる方に『賭ける』よ。ライブのメインの人間が乗るんだから。それで良いよね」


いや、あの、奈緒さん、本気で煽って、どうするんですか?


此処は冷静に対処しましょうよ。


……ねっねっ。



「オイオイ、冗談ちゃうで、そんなアホな事させて堪るかぁ!!」

「ほたえるな。メインが決めた事に従うのが『バックバンド』の仕事だ。それが嫌なら、楽器で己を主張して、喰い合いすりゃ良いんだよ」

「アホかオドレは!!客は金払ろうて、音楽聞きに来とんねんぞ!!タダちゃうねんぞ!!」

「知るか。……あぁ、もぉヤメだヤメ。そんで、こんなツマンネェ賭けも一切ヤメだ。序に、協調ゴッコもお仕舞いだ。面倒だから、俺が、観客全員を喰らい尽くしてやるよ」

「なら、私も存分に食べさせて貰う。……全員、均等に、容赦なくね」


ちょ、ちょ、ちょっと、なんで喧嘩?

なんでそんな展開?

一番最初の、ほのぼのした雰囲気は、どこに行っちゃったの?


なにが起ころうとしてるの?



「あぁ、さよか。……ほな、もぉ勝手にさらせや。ワシも我慢の限界じゃ。オドレ等、吐いた唾飲まんとけよ。2人して覚悟しさらせよ」

「上等」

「負けて泣くなよ」


なんで、こんな事になってるの?


ってか、私、どうしたら良いの?

ってか、どうしよう?



「あっ、あの……喧嘩は……」

「じゃあ、話は終わりだ。また後で、ステージで会おうぜ。此処に来た事を後悔するぐらい、観客丸ごと、全員壊してやる。あははっはっはっはっは……」


いやいやいやいや、話が全然終わってないのに、なんで出て行こうとしてるの?


ってかさぁ、崇秀、なんで壊れてんの?


『ガチャ』


あぁ……行っちゃった。



「ほな、ワシも行かせて貰うわ。……仕事を遊びや思とる、蹴ったくそ悪い糞共には、目に物見せたらぁ!!」

「ちょ……」


『バタン!!』


うわ~~~!!

物凄い剣幕で、崇秀の逆方面に出て行っちゃった。


ホントどうなるの?



「あの、奈緒さん。流石に不味いよ」

「うん?なにヌルイ事を言ってんの?眞子も、私の敵だよ。……だから出て行って」

「奈緒さんダメだよ」

「ヤダ。私は、やるって言ったら、絶対にやる。それに、誰にも、絶対負けないから」

「奈緒さん……」


あぁ……完全に、闘争本能に火が入っちゃってる。

こうなったら奈緒さんは、中々クールダウンしてくれないからなぁ。


勝負事になったら、奈緒さん無駄に熱いんだよねぇ。


……しょうがない。

此処は、一旦出て行こ。


『ガチャ』


出て行こうと扉のノブを廻したら、奈緒さんが、背後から声を掛けてきた。



「眞子……」

「あっ、はい、なんですか?」

「1つだけ忠告ね」

「あっ、はい」

「今日のライブ。私を含めて、本気で全員倒す気でやって良いよ。私のライブなんて、滅茶苦茶に、全部壊しちゃえ」

「へっ?」

「私はもぉ、客に媚びるだけの、心の無いライブなんてウンザリなのよ」

「えっ?」

「わかった?わかったら、兎に角、今は出て行きなさい。自分の力だけを信じてね……」


そっか。

奈緒さん、今、自分自身がやってるライブに満足してないんだ。


だから、崇秀の、こんな無茶な提案に乗ったり、私を『サポートとして使おう』って気になってくれてたんだ。


……今やってるライブが、相当ツマンナイんだね。


・・・・・・


なら……此処からは私も、誰にも容赦なく。

全身全霊を賭けて、全開の本気の本気で行かせて貰いますよ。


私……さっきまで、アリーナの事でゴチャゴチャ考えてましたけど。

良く考えたら、観客が多ければ多い程、私のテンションって天井知らずで上がるんですよ。


本当に良いんですね?



「わかりました。……じゃあ、ステージで」

「うん。眞子、君が出来る最高の演奏を聞かせて……」

「はい。タップリ、ご堪能させてみせますよ」


ははっ……もぉ無茶苦茶だよ。


でも、そう言うのも、本当は大好きなんだよね。


今までの、この2週間余り。

かなりストレスが溜まってたから、全部、此処で発散させて貰お♪


オッパイばっかり揉む奈緒さんも含めて、全員死刑確定♪


最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>


はい、またややこしい事に成って来ましてね。

まぁ此処で山中君に、眞子の正体を変に詮索されたくない所だったのでしょうが。

バンドメンバーが全員、協調性の無い状態に成ってしまったのは大問題。


さてさて、こんな酷い状態で、アリーナライブなんてしても大丈夫なものなのでしょうか?


その辺を次回は書いて行こうと思いますので。

良かったら、またお気楽な感じで遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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