最後まで奏でられなかった音楽

どこかお間抜けDQNな不良さんのゆったり更生日誌(笑)
殴り書き書店
殴り書き書店

121 不良さん、子供に言いくるめられる(笑)

公開日時: 2021年6月7日(月) 00:21
更新日時: 2022年11月21日(月) 13:39
文字数:7,230

●前回のおさらい●


 謎の子供、龍斗君に振り回されたまま、素直ちゃんはバンドの練習に。

そして倉津君は、龍斗君の謎の行動の理由を確かめる為に、2人で喫茶店に向かう。

 時間は7時半。

ガキに従うのは非常に癪だったが、近場の喫茶店に入って行く。


中に入ると、人気の少ない奥の席が空いていたので、そこに2人して座り。

注文を取りに来たねぇちゃんが、話の邪魔になっちゃイケねぇから、先にホットコーヒーを2つ頼んでから話を始める事にした。



「さて、場所も落ち着いた。早速だが、素直の件が、どういう事なのか教えて貰おうか?それと序に、オマエが何者かって話もな」

「良いよ。不必要な前置きなんか面倒なだけだからね」


相変わらず、堂々とした態度のまま話を始める。



「まず俺の正体って聞いてたけど。俺の正体は氷村雅斗ってコーディネーターの息子」

「ちょっと待て、氷村雅斗だと?」

「そうだよ」

「氷村雅斗って言やぁ、業界一のコーディネーターじゃねぇか」

「そう言う事……まぁウチの親父は、おにぃちゃんが言う様な大層なオッサンじゃないんだけど、取り敢えずは、これで、まずは最低限、納得はして貰えたと思う」

「あぁわかった。最低限度だが、オマエが、なんでガキの癖に金を稼いでるのかも良くわかった。親父のコネか?」

「そう言う事……まぁこれでも仕事は、キッチリやってるんだけどね」

「あぁそうなのか」

「まぁ、自分で言う事じゃないけどね。……さて、じゃあ1つ解決したから、次の話をするよ」

「あぁ」


質問を聞かずに、話を進める。



「第二の疑問……何故、素直おねぇちゃんに優しくするか?……だよね?」

「あぁ」

「あのライブ映像を見て『才能に惚れた』って言ったら、どう思う?」

「わからねぇ訳じゃねぇが、理由としてはイマイチだな」

「だよね。なら、キッチリとして理由を言わなきゃいけないね」

「なんで、最初から言わねぇんだ?」

「うん?それでわかったら楽だなぁとか思ったから」

「オマエ、馬鹿にしてるのか?」

「してない、してない。でも、ドン臭いとは思う」

「んだとコラ?テメェ、人が下手に出てるからって、あんま良い気になってんじゃねぇぞ」


まぁ、崇秀と長い付き合いがある俺だから、こう言った手合いは慣れているんで、今、少し怒ったフリをしたが、なにも我慢出来無い訳じゃない。


……が、ガキに此処まで言われる筋合いは無い。



「怒るかぁ。やっぱそうだね」

「馬鹿やろう。マジでブッ殺すぞ」

「あぁ違うな。これは、どちらかと言うと怒ってない方向か」

「なに言ってやがんだ。俺は、マジで怒ってんだぞ」

「『マジで怒ってる』って言う人は怒ってない証拠だよ。そんなの冷静だからこそ言えるセリフだよ」


腹が立つ。


マジで怒ってやろうか?


あっ……ホントだ。


冷静だ。



「まぁそんな事より、話を続けるよ」

「ちょっと待てオマエ。勝手が過ぎるだろ」

「待たない。ガキの言う事にイチイチ怒っててもしょうがない事ぐらい、おにぃちゃんは十分な程に理解してる筈だと思うけど」

「ったく、どこまでも生意気な野郎だな……んで?」

「うん……素直おねぇちゃんを買ってる理由だったね」

「あぁそうだ」

「簡単……今の業界はね。俺でもやっていける位、人材不足なんだよ。特にバンド系は酷い有様。粗製乱造がメインになってる。だから素直おねぇちゃんに限らず、あのバンドからは頗る美味しい匂いがすると思った。……なら、早目に手を付けておけば、後々あのバンドとの仕事がし易くなる。ただそれだけの事」

「じゃあ何か?オマエの好意は下心だらけって事か?」

「まぁそう言う事……納得出来た?」


納得出来たような、出来てないような……



「けどよぉ。あのシンセは、些かやり過ぎじゃねぇか?」

「あんなの安いもんだよ。高々14万程度で、後の仕事を買う。……逆に言えば、こんな美味しい話は無いと思うけど」

「オマエって、トコトン性根が腐ってるな」

「はぁ、まぁそう思われても仕方ないけどね」

「なんだよ?なんか理由でもあんのか?」

「いや……実はさぁ、全然関係ない話なんだけど……俺、好きな女の子が居てさぁ。ソイツを、どうしても幸せにしてやりたいんだよね。でも、なにをするにもお金が要るっしょ。だから貪欲に稼ぐ為に働く。ただそれだけの事」


ガキの癖に女の為って……その女、ドンだけ良い女なんだよ?


しかしまぁ、この年の餓鬼に、そこまで思われてるなんて、その女100%幸せもんだよな。



「なんだよ?オマエ、格好良い事してる割には、夢が小せぇんだな」

「うん、まぁね。でも俺、その女以外、全然興味ないんだよね。そいつが居れば、なにもイラナイ。だからソイツの為なら、どんな事でもする。ホントただそれだけ」

「なぁ。オマエの彼女って、そんなに良い女なのか?」

「良い女?……ぷっ……アイツが良い女?」


なんか知らないが、笑い出した。


なに思い出したんだ?



「おにぃちゃん、それは全然違う。アイツは決して良い女なんかじゃない。ただの幼馴染」

「なんだよ?オマエの口振りだと『凄ぇ良い女』に聞こえたぞ」

「まだ、そんなの判断出来無いよ。……だって俺、まだ小学三年生だよ。勿論、相手も小学三年生だから、胸もなきゃ、括れもない。そんなの良い女って言うには程遠いよ」

「はぁ?オマエ、今、なんつった?」

「胸も括れもない女」

「違う、その前だ」

「うん?小学三年生?」


ばっ、ばっ、ばっ、馬鹿な。

こんなガキ存在する筈が無い。

小学生で金を稼いで、将来の人生設計を立ててる奴なんて、絶対に居ない。


・・・・・・


いやいやいや待て待て……1人居たな、そう言う類のアホな人間が……


って事は、コイツも、あのアホの同類か……


なら、そう言う対応をしないとな。



「小学校三年生か……まぁ凄ぇな」

「一瞬驚いたけど、やっぱり、そこまでは驚かないか。流石、仲居間さんの幼馴染」

「まぁな……にしても、なんでおまえアイツの事を知ってんだ?音楽関係か?」

「あぁ、まぁそれで合ってるんだけど、正確には違う。どちらかと言えば『仕事関係』って言った方が、より正確だと思うよ」

「どういう事だ?」

「そっかぁ、その感じだと知らないんだ」

「なにをだ?」

「……仲居間さんの実家の理容店『バーバー仲居間』って、芸能人御用達の店だよ」

「はぁ?マジでか?」


知らなかった。

アイツの実家って、そんなに有名な店だったんだな。


……って言うか、あの野郎。

そう言う事は、キッチリと教えろよな。


誰が来てるのかは知らねぇが、有名人の『サイン』とか貰いてぇじゃねぇか。



「うん。オバサンの代から贔屓にしてる芸能人は多いね」

「凄ぇな、アイツん家」

「いや、それも、ちょっと違うんだよね。『オバサンの代から贔屓にしてる』って言っても、それは極一部の話。あの店を流行らせたのは、仲居間さん本人だよ」

「んだと?なんで、アイツなんかで流行んだよ?」

「率直に言うと『腕』だね。仲居間さんの腕は、芸能界で知らないのはモグリって言われるぐらい凄い。いや寧ろ、あれはエゲツない」

「マジか?」

「マジ……けど、彼の腕を知らない『駆け出しの新人芸人』とか『新人芸能人』は、安易に『おしゃれ』とか思って、青山とか、代官山に行っちゃう傾向がある。悪い訳じゃないけど、これはもぉ『お登りさんの典型パターン』って言っても良いね」


アイツは、どれだけ才能を持って生まれてきたんだ?


そりゃあよぉ。

アイツが努力してないとは、口が裂けても言わねぇよ。


けどよぉ、高々生まれて13年だぞ。

此処まで来たら、同じ時間を生きてる人間としては、納得出来ねぇよ。


なんなんだよ、アイツは?


それによぉ。

この餓鬼、もぅ一点気になる事を言いやがったな。



「なぁ、あのバカが有名なのは解ったが。なんで『青山』や『代官山』の美容室じゃダメなんだよ。腕の良い連中はこぞって、その場所に集まってるんじゃねぇのか?」

「確かにね。青山や、代官山には、腕の良いスタッフを沢山抱えてる店は多い。けど此処は、問題じゃないんだよね」

「じゃあよぉ、なにが悪いつぅ~んだよ?」

「忙しい店に行っても、基本的に相手にされてない事に気付いてない事。それと新人にカットされるだけって事が解ってない」

「んでだよ?特権階級みたいなもんで、芸能人だったら優遇されるもんじゃねぇのか?」

「な訳ないじゃん。そりゃあ『本当の有名人』なら、そう言った事も可能だろうけど。『駆け出しの芸能人』なんて一般客と、ほぼ何も変わらない。なら、キッチリ予約を取らないと、新人にカットされるに決まってるじゃん」


はぁ?芸能人って、誰でも優遇されるんじゃないのか?



「んでだよ?」

「死ぬほどダサイから」

「ダサいだと?」

「そぉ。駆け出しの芸能人なんて、ハッキリ言えば『素材』しか持たない、自意識が高いだけのイケてない連中が大半。予約を取らないと、お目当ての美容師にカットして貰えない事すらも知らない。そんなダサい奴が来たら、適当に対応するのは店としては当然だよね。わざわざ店のエース級を当てるなんて真似は、絶対にしないね」

「なっ、なるほどなぁ……じゃあよぉ。因みにだが、崇秀の店に行ったら、なんか変るのか?」

「全然対応が違う」

「どういう事だよ?」


訳がわかんねぇ。



「あの人は、誰が来ても知ってるんだよ」

「はぁ?」

「あぁ解り難いか……仲居間さんは、数社の芸能プロダクションと懇意にしてるから、有名芸能人に限らず、新人の情報が逐一仕入れている。だから、どんなド新人が来ても対応が出来るんだよ。あの人は、本当に妥協って言葉を知らない」

「ちょ、ちょっと待て……って事は何か?アイツの頭の中には、それだけの膨大な情報がインプットされてるって事か?」

「みたいだね」


信じられねぇ。


限度を越えた馬鹿だ。

どこまで手が抜けないんだアイツは……



「さて……一応、話は終わりだけど。納得して貰えた?」

「まぁ……まぁな」

「そっか、良かった。じゃあ、シンセ持って行ってくれるよね?」

「あぁそうだな……いや、ちょっと待て」

「ん?」


そう言えば、もう一個だけ疑問が有ったな。



「あのよぉ。オマエの言った事で、もぅ一個不思議に思った事が有るんだがよぉ」

「ん?」

「なんで、素直の指に指輪を嵌めたぐれぇの事で、シンセが上手くなるんだ?」

「あぁ、あれ」

「んだよ?そんな単純な話なのか?」

「勿論……でも、その指輪の効果を出す為には、おにぃちゃんがシンセを持って行ってくれる事が、必須条件だけどね」

「んだ?どういう事だよ?」


また訳の解らん事を……



「素直おねぇちゃんの性格を考えれば、至って簡単な事だよ」

「だからよぉ」

「素直おねぇちゃんって、どちらかと言えば、思い込み易い性格でしょ」

「まぁ、確かに、それは否めぇねぇな」

「じゃあ、そういう物だと、思い込ませれば良いんだよ」

「いや、確かに、そう言う風に思い込めば良いがよぉ。アイツは単純だが、そこまで馬鹿じゃないと思うが?」

「違う違う。そこじゃない。思い込ませるのは指輪だけじゃダメなんだよ。シンセを渡す事によって、初めて効果が出るって、さっき言ったじゃん」

「はぁ?」


なんのこっちゃ?



「早い話。手前味噌で悪いんだけど、俺って、シンセ弾くの上手いでしょ」

「まぁな」

「その俺が厳選したシンセを渡されたら、おねぇちゃんどう思う?」

「『使いこなさなきゃならない』と思うだろうな」

「ん。その通り……けど、おにぃちゃんが思う程シンセは、そんなに甘くない。練習を積み重ねなければ、そう簡単には弾けない。多分、挫折する」

「じゃあ、全然ダメじゃねぇか」

「そこで、お待ちかねの指輪が登場する訳」


さっきにも増して、全く意味がわからん……



「んで、どうなるんだよ?」

「簡単だよ。あれは素直おねぇちゃんの意識をシンセに束縛する為もの。挫折しても、辞めない為の保険。それだけのアイテムだよ」

「なんだそりゃあ?じゃあなにか?あれを着けたからって、急に上手くなるって訳じゃないって言う事か?」

「当たり前だよ。そんなオカルティックに上手くなるんだったら、あの指輪は、きっと、ピアニストとかにバカ売れするよ……けど」

「けど?」

「上手くなるって言うのは、あながち嘘でもないよ」

「なんでだよ?どこにでも売ってる様な代物なんだろ?」

「指輪自体はね……でも、その束縛力は本物だよ。特に思い込みが激しい素直おねぇちゃんなら、絶大な効果が出ると思う。彼女の性格を考えれば、これも簡単に答えが出る」

「オマエ、まさか……」

「そぉ、言うまでもなく、その通り。上手くなる道具が揃ってるのに上手く弾けないのは、素直おねぇちゃんだったら、他人のせいにせず、自分のせいだと思うよね……なら当然、未熟さを改善する為に必死に練習する。そうなったら必然的に上手くなってもおかしくはない……これが指輪の効果。完璧でしょ。……それにね」

「まだあんのかよ」


この嫌な話には続きがあるらしい。



「勿論あるよ。もし最初から上手く弾けたら、これは俺のお陰だと思うよね。そうしたら、素直おねぇちゃんの性格だと、きっと俺に感謝する。……っとなれば、後に、業界で仕事を始めたら、俺に肩入れしてくれる筈。そう言った効果も、あの指輪には含まれてる」

「そっ、そう言う事か……だからオマエは、最初に『契約』とか『先行投資』って言葉を使った訳だな」

「正解……付け加えるなら『契約』は、堅苦しい書面で記すより。心に楔を打った方が効果が高い。仕事をする際に、無理に俺を指名するんじゃなくて、自然に自分から頼む様にするのがテクニックってもんだよ。何事にも、相手の心の隙間に入り込まないとね」

「マッ、マジで最悪だな、オマエ」

「まぁ……それに関しては、反論の余地は無いね」


しかしまぁ、こうもアッサリ認めるとはな……


何か反論すると思ってたんだが……



「けどよぉオマエ。そんな重要な話を、俺にしても大丈夫なのかよ?俺がチクるとは考えないのか?」

「全然考えないね。おにいちゃんは、そう言った類の事をするタイプの人間じゃない」

「笑わせんなよ。……上手く言ったつもりだろうが、俺は馬鹿秀のツレだぞ。そう簡単に、オマエの言葉は信じるつもりはねぇぞ」


ホント、口が上手いな。


この話に乗らねぇつもりはねぇが。

こうもコイツの思い通りになるのは、どうにも癪だ。


なにか言い返さないと気が済まねぇ。



「なるほど……じゃあ、現実的な話をしようか?」

「んだよ、それ?」

「うん?素直おねぇちゃんのシンセが上手くなるのが解ってるのに、それを邪魔する奴はいないと思うんだけど……もし敢えて、そうするって言うんなら、その人は、きっと、素直おねぇちゃんの事が、相当嫌いなんだろうね。おにぃちゃん、素直おねぇちゃんが嫌いなの?」

「ぐっ」

「それにね。おにぃちゃんは、シンセを持って帰った時点で同罪だとも思うんだけど」

「じゃあよぉ、俺が持って帰らなかったら、どうするんだよ?」

「ないね」

「なんで断言出来る?」

「おにぃちゃんは、俺が考えた以上の手段を持っていない……バンドを上手く行かせたいなら、この話に乗らない理由は無い。ただそれだけ……っで、どうする?」

「なんて野郎だ……オマエ、信じられねぇ程、嫌なガキだな」

「だよね」


あぁやっぱりな。

餓鬼とは言え、コイツは、かなりの切れ者だ。


葉緑体じゃ相手にならねぇか……



「わかったよ。わかった。持って行きゃあ良いんだろ。持って行きゃあ」

「それは有り難いね」

「けどよぉ。話には乗ってやるがタダじゃダメだ」

「ん?これ以上、なにを求めるって言うの?」

「オマエの話だと、この話に乗ったら、俺も同罪になる訳だろ。俺に対してのメリットが、なにもねぇじゃねぇか」


不本意だが、こんな程度しか言い返せない。


悲しい……


ただ言って置くが、俺は見返りなんて欲しい訳じゃない。

家に金が有るんだから、敢えて、他人にそれを求める必要ない。


これは、俺の精一杯の嫌がらせだ。



「そうかぁ……確かに、言われて見れば、そうだよね」

「ほほぉ。じゃあ、どうすんだよ、オマエは?」

「俺に、何か出来る事はある?」


おっ!!豪く単純に乗ってきたな。


なら……

(↑直ぐに調子に乗る俺)



「そうだな……なら、オマエ、素直にシンセ教えろ」

「期間は?」

「上手くなるまでだな」

「無理だね」

「なんでだよ?」

「交換条件としては時間が長過ぎる……それに『上手い』の基準がなさ過ぎる」

「んだよ。ケチだな」


それだけ素直の事を買ってるなら、少しぐらい時間のロスぐらい投げ捨てろつぅ~の。



「あのねぇ、おにぃちゃん。なにもケチだけで、こんな事を言ってる訳じゃないんだよ。大体、期間も決めずに『上手くなる』なんてアヤフヤな条件だけだったら、モノを教えるなんて土台無理な話だよ。ダラダラしてたんじゃ、いつまで経っても上手くならないしね」

「だったら、どぅすんだよ?」

「期間を設けてくれるなら考えても良いよ。……勿論、ベストは尽くすつもりだけど、上手くいかなくても、それで御仕舞いって言うのが、絶対条件だね」

「なんだよ、やけに時間に拘るな?」

「当然。自分の使う時間と、儲けの比率が取れてないと意味が無いからね」

「そっかよ。因みにだが、オマエは、期間はどれぐらいだと踏んでるんだ?」

「2ヶ月だね。それ以降はバンドの売れ方次第」

「守銭奴め」


金にうるさい奴だな。


まぁ確かにな。

オマエの『幸せプラン』には必要な事なんだろうが、少しぐらい回り道しろ。


じゃねぇと、崇秀みたいな最悪な人間になるぞ。


人として更生するなら、今のうちだぞ。



「っで、どうする?」

「オマエの条件で良いから、好きにしてくれ」

「んじゃま、期間は明日から2ヶ月って事で交渉成立。一応、文面が無いけど口頭約束で良いよね?」


言葉を吐くと同時に、俺の回答を待たずになにやらメモを書く。


それをシンセサイザーのハードケースに入れ込むと、此処の伝票を持って立ち去っていく。


まぁ順当な線で、自分の連絡先でも入れたんだろう。



……にしても、普通、年下が伝票を持って行くか?


ホント最後まで、可愛げのねぇ野郎だ。



この日は、この後、いつものスタジオで練習をしてから帰宅したんだが……翌日、ガキは、素直にシンセを教える為に、わざわざ学校に来やがった。


なんとも律儀なこった。


最後までお付き合いありがとうございました<(_ _)>


これで、第二十二話は終了なのですが……

なんか最後のこの回、切れの良い所がなくて、めっちゃ長くなってしまいましたね。

ホント、長くてすみません( ;∀;)


さてさて、そうやって、素直ちゃんの買い物や、素直ちゃんのシンセの先生が決まった訳なのですが。

これが、良い方向に転がるのか?それともまた何か厄介事に成るのか?


それは次回から始まる第二十三話『除外』で明らかに成りますです。


なので、興味がございましたら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(*'ω'*)ノ

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート