●前回までのあらすじ●
借金取りの問題を、見事に全て解決した倉津君。
そして、借金取りに怯えていた椿さんの元へ
『ガラッ』
そんな風に扉を賭けてみたらだな。
予想に反する事無く彼女は、耳を押さえたまま、小さくなっている。
しかも、座布団を頭に被った状態で……
そんな彼女の肩を、俺はポンポンっと叩いた。
「うん?……後輩さん?」
小動物が縋る様な目をしながら、俺を見つめてくる。
「そうッスよ」
「あれ?さっきの怖い人は?」
「あぁ話し合い(拳)で、気持ち良く帰ってくれましたよ。多分、二度と此処には来ないッスけどね」
「ほんと?」
「ほんとッス。もぉ、なにも心配ないッスよ」
「うわ~~~♪ありがとぉ後輩さん」
「ッス」
いやいや、良い事をした後は清々しいな。
なんとも言えない充実感が有る。
まぁただ、今、こんな事を聞くのもなんなんだが。
嶋田さんが『なんであんなヤバイ会社に金を借りたのかの経緯』については、椿さんからシッカリ聞いて置かないとな。
じゃないと、次に、こんな事が起こっても対処しようが無い。
「所で椿さん」
「なぁ~にぃ?」
「なんで、あんな胸糞の悪い連中に、金を借りたんッスか?」
「・・・・・・うぅ」
黙っちゃったな。
まぁこの椿さんの態度で大凡の予想は付くんだが、違う場合も有る。
だから本来は、キッチリと、此処で彼女から確認を取って置きたい所なんだが……
まぁ本人が言いたくないんなら、それはそれで良いか。
追求するのも可哀想だしな。
「あぁ、言いたくないんなら、別に良いッスよ」
「あのね。……ホントの事を言うとね。こうなったのはね。椿が全部悪いの。椿のせいなの」
「へっ?なんでまた?」
「うんとね。少し説明するとね。椿ね。馬鹿だから、誰かに優しくして貰ったら、なんでも直ぐにホイホイ物を買っちゃったりするの。それでね、いつの間にか、一杯一杯借金を作っちゃってね。どうにも出来なくなっちゃったの。それで……最後には、いつもいつも浩ちゃんが肩代わりしてくれて……だから……」
あぁ~やっぱり思った通りだ。
この人は、善悪の判断を余りせず。
直ぐに人を信用してしまう傾向がある、典型的な騙され易いタイプの人間だ。
知り合いの彼女を、こう言っちゃあなんだが
『椿さんは、少し賢くない様だ』
だからと言ってだな。
狙って、こう言う純粋な人を騙す奴の気が知れない。
商売とは言え、人として最低ランクの奴等だ。
自分の無能さ加減を、弱者で補おうとするなんざ人間のやるこったねぇ。
その上、裏で闇金と通じてるなんぞ、もっての他だ。
マジ胸糞悪ぃな。
まぁ、それよりも問題なのは、そう言った悪徳業者を、のさばらせてる警察のクソ共だ。
俺なんぞに何回も職務質問する暇が有ったら。
その国民の血税を使った無駄な就労時間を、こう言う人間を救うか、悪徳業者を潰すかに使えつぅのな。
それともなにか?
なんもしねぇ無能な警察の替わりに、ウチの組で悪徳業者の一斉摘発でもして欲しいのか?
ほんと、ドイツもコイツも胸糞悪ぃ。
「なるほどね。そう言う事だったんッスか。だったら椿さんも、もう簡単に騙されちゃダメっすよ」
「うん。これでも椿もね。一杯反省したの。椿のせいで、浩ちゃんの大事なギターが一杯無くなっちゃったし……だからね、そんな悪い子の椿にはね。天罰が当たったの。だからもぉ絶対しない」
「そうッスね。……うん?ちょっと待って下さい。椿さん、奴等になんかされたんッスか?」
「……うん」
「なっ、なにされたんッスか?」
「さっきの人と、その人の友達がね。浩ちゃんの居ない時に来て、椿にHな格好させるの。それでね。その人達ね。自分でおチ〇チンを必死に弄くって、白い液体をね。椿に向かって一杯掛けるの」
「そっ、それから?」
先に言って置くがな。
何も興味本位で、この話を聞いてるんじゃねぇんだぞ。
俺だって年がら年中『エロイ』事バッカリ考えてる訳じゃないんだからな。
たまには、真面目に対処法を考えたりもするんだ。
良いか?
コイツは下手したら、裁判所に訴えられる様な案件なんだよ。
例えばだな、この事例の場合。
嶋田さんが椿さんの借金を肩代わりしていたとしても、椿さんが借金の保証人になっていない限り、例え、本人が作った借金であっても、彼女には支払い義務はない。
何故なら、2人が彼氏彼女の関係であったとしても、所詮『嶋田さんと椿さんは、赤の他人』だからだ。
それなのに、それを脅しに使い性行為を求めた場合。
これは強姦、若しくは、強制猥褻罪、脅迫罪に値する。
そうなれば、賠償責任が生じて、それに対する請求も相手に出来るだろうし。
こうなってしまえば、無能な警察共も悪徳業者に強制介入が出来る。
法をすり抜ける術を親父に叩き込まれたのが、役に立つかも知れないって話だ。
「それだけ……」
「へっ?」
「あのね。でもね、でもね、後輩さん。それね、すっごく臭いんだよ。匂いが部屋に充満して、窓を開けなきゃ、簡単には臭いが取れないぐらいクッサイの。それにね、それにね、それが眼に入っちゃったら、もぅ大変なんだよ。凄く痛いし。眼がね、真っ赤かになるんだよ」
なんだ、その奇妙なマニアック・プレイは?
まぁSEXを強要されてないだけでも、マッシと言うべきなんだろうが、これはチョット無いな。
まずにして、そんな高等なプレイは、ガキの俺には意味すら解らない。
……でも、確かに、あぁ言う連中は、相手が弱い立場と見たら、直ぐに無茶苦茶する。
まぁ此処までは良く解るんだが……
女の人にHな衣装着せてオナニーって……アイツ、どんな性癖してやがるんだ?
なにを考えてやがるのか、サッパリわかんねぇ。
斬新過ぎんだろ!!
まぁそうは言ってもだ。
結局、椿さんには何も無かったんだから、コチラの方が数百倍良かったと解釈すべきなんだろうな。
序に言えば、この時点で、俺のさっき必死に考えた思考は無駄だったって訳だな。
「よく解ったッス。椿さんが嫌な思いをしたのも、よく伝わったッス。けど、だったら尚更、嶋田さんの話をよく聞いて、それを守らなきゃダメっすよ。俺の時みたいに、簡単に部屋に人を入れちゃいけないんッスよ」
「うん……そうだね。椿が、いつまでも馬鹿のままじゃ、浩ちゃんが苦労のしっぱなしになっちゃうもんね。……うんうん、そうだそうだ。椿、頑張るよ!!」
「ッスね」
椿さんは大きくガッツポーズを取りながら、笑顔で俺に宣言する。
……まぁ、そう簡単には、その性格は治らないだろうけどな。
でも、こうやって、努力しようとしてる人間を、貶める必要はない。
それよりもだ。
この話ってよぉ。
よくよく考えると、俺達のバンドが、崇秀の馬鹿に頼ってるのと同じ様な話しなんじゃねぇのか?
椿さんが、嶋田さんに頼ってるのと同様に、俺達は崇秀に頼りっきりだ。
偉そうな事を言った割には、自分の方も何も出来ていない現状。
こりゃあ、人の事を言えた義理じゃねぇな。
それに……その報告をしに、ワザワザ嶋田さん家に来てる、俺ってなんだろうな?
なにが『今の現状を話す』だ。
一体、何を話すつもりで、此処に来たんだろうか?
……俺は、結局なにもしてねぇ。
椿さんが元気を取り戻したのを裏目に、俺の心はドンドン深い闇に沈んでいく。
最後までお付き合い下さり、ありがとうございますです<(_ _)>
無邪気な椿さんに対して『警戒心を持たなきゃいけないですよ』っと窘めた倉津君でしたが。
自分も椿さんと似た立場だと気付き、凹みましたね(笑)
そんな状態の2人ですが。
この後、一体、どうなって行くのでしょうか?
気に成りましたら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(*'ω'*)ノ
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