●前回のおさらい●
ライブでの自分の持ち時間に、ドンドンとGUILDのメンバーを呼び込む崇秀。
そして、普段、倉津君と演奏している時とは明らかに違う、生き生きしたバンドのメンバーを見せ付けられる。
そんな中、崇秀は、事もあろうか、ステージから飛び降り。
ステージにいるメンバーに演奏を任せて、自分は休憩に入ってしまうと言う身勝手さ(笑)
それを見ていた倉津君は、ステージに居るメンバーの協調性が心配になって来る。
(主に遠藤さんの演奏を懸念してる部分が多い)
この構成で、俺が一番懸念する部分は康弘だ。
勿論、これだけの盛り上がりをさせる康弘は只者じゃないだろう。
かと言って、丸々、それだけで信用するのは余りにも危険な話だ。
だってよぉ。
嶋田さん達の様に4ヶ月にも渡って、俺達と一緒にバンド活動をして来てくれた人なら、此処には何も問題はないだろうが……康弘については、その点では全く異質な存在。
幾ら、奴の知名度が高かろうと、バンドの演奏って奴は、ベースの腕だけじゃ補えない部分があるからだ。
それが上手く噛み合わないと、曲としては成り立たない事が多い。
バンドには、それぞれの『バンド内での呼吸』ってもんがあるからな。
その辺、大丈夫なのかアイツ?
そんな不安を抱えながら、素直の言葉で、演奏が始まる……
♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪--♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪--♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪--♪♪♪♪……
……マジか!!
康弘の奴、物怖じする事も無く、堂々とした演奏をしてやがる。
ってか!!なんだよ、あのファンキーなベース音は?
マジでなんなんだよ、あの日本人離れした演奏技術は?
一見……狂った様に演奏をしている様に見えるが、ベースから放たれるリズムは一向に外れる気配すらない。
俺なんかより……いや、奈緒さんより『Serious stress』を上手く弾いてやがる!!
コイツ……バケモンか!!
俺の中で、一瞬の様に時間が過ぎ、気付けば『Serious stress』は終わっていた。
「クハハ……こりゃあ、オモシレェな。もっとだ。なら、もっと面白くしなきゃな」
「まだ、なんか有るのかよ!!」
「あぁ、まだまだだ……これからが面白くなんじゃねぇかよ」
「なっ、なにをするんだ?」
「更に、音に深みを出すんだよ」
「なっ!!これ以上なんて、どうやって?」
「まぁ見てなって。演奏の難易度は今まで以上にドンドン上がるが、上手くいきさえすれば、今の演奏より、もっと面白くなるからよ」
「……この人、マジかよ?」
まだ更に難易度を上げるだと?
アイツ、なにをする気だ?
オイオイまさか……
「よし。んじゃあ、次の構成いってみっか。ヴォーカル椿。向井は、再度ベースに移動。アリスはシンセ。後ステラ、ギターでブーストを掛けろ。んで曲は『Hybrid Memory』……以上」
ヤッパリだ!!
ヤッパリあの馬鹿、何も考えずに、ステージにあげる人を、また増やしやがった!!
こんな事してたら、その内ライブが滅茶苦茶になっちまうぞ!!
そりゃあよぉ。
増員すればする程、オーケストラみたいに音の深みは増していくだろうけど……その分、曲を合わす難易度が天井知らずに上がって行く。
音が合わなきゃ、ただの雑音になるだけだぞ。
-♪-♪♪-♪♪♪-♪-♪♪-♪♪♪-♪-♪♪♪♪♪-♪-♪♪♪♪♪-♪-♪♪--♪-♪♪--……
だが……此処でも、俺の不安は一蹴される。
まず、椿さんのヴォーカルなんだが……ブッちゃけて言っちまえば、奈緒さんや、素直より断然に上手い。
声の伸びや、発声の仕方なんかは、とても素人とは思えない声量を持った歌声だ。
それにステラ。
奴のギターは、嶋田さんほど上手くはないんだが……何故か、全員の演奏や、椿さんの声をブーストアップさせていく。
そんで釣られて、観客の熱気を、そのまま上昇させていく感じだ。
以前、崇秀が、ステラは『狂気』を扱わせたら上手いって言ったのは、こう言う事だったのか。
崇秀の奴が言う『ステラの狂気』とは『客の熱気』や『演奏者のテンション』を上昇させる演奏の仕方、って事だったんだな。
そして今まで俺が、このステラの技術に気付かなかったのは、俺の演奏がショボイから、ブースト自体が掛からなかっただけの事だったんだな。
それに俺自身も、そんなステラの演奏に何も感じられず、今日の今日まで『ステラの演奏を、ただ上手い』としか感じなかった。
俺は一体、ステラのなにを見ていたのだろうか?
しかし、本当に、なんなんだコイツ等は?
常識じゃ考えられない様な上手い演奏を平然と醸し出している。
しかも、ステージに居るメンバー全員が、今までにない位生き生きと演奏をしている。
これには俺も、先程同様、他人が演奏する『Hybrid Memory』に聞き入り。
またもや、時間の経過を早送りしてしまった。
「さてさて、お立会いだ。俺の出し物は、まだまだ、これだけじゃねぇんだよな」
「仲居間さん。アンタ、まだあるつぅのか?」
「勿論、勿論……折角、見に来てくれた客には、目一杯楽しんで貰わなきゃな。俺は、自身のライブに訪れた客には、絶対、損はさせねぇ主義なんだよ」
「そっ、そうか……っで、なにすんだ、仲居間さん?」
「更に増員と、構成を変化をさせる、……ヴォーカル樫田・清水。コーラス向井・椿・アリス以上……曲は……そうだなぁ『Dash eater』って処か」
『Dash eater』……
確かにアホの樫田と、咲さんに宛がったプログラム通りの曲だが。
こう言う言い方をすれば、如何にも、今しがた即興で決めた様に聞こえなくもないな。
奴は、その観客の如何にもって感覚を使って、先で言った『即興』と言う『公約』を守るつもりらしい。
それと……奈緒さん・素直・椿さんをコーラスに廻す事で、アホの樫田や、咲さんの足りない部分を補ってやがる。
上手いやり方だ。
♪♪♪-♪-♪♪-♪♪♪-♪-♪♪-♪♪♪-♪-♪♪♪♪♪-♪-♪♪♪♪♪-♪-♪♪--♪-……
これに関しては、俺の予想は的中。
上手く3人がコーラスをこなし、アホの樫田と、咲さんのレベルアップを成し遂げた。
「おっし、良い感じだ。んじゃ次行くか」
「まだ……」
「当然……ヴォーカル『Fish-Queen』。樫田・清水はコーラス以上。曲は『Business zombies』ヨロシク!!」
♪♪-♪-♪-♪-♪---♪♪♪--♪♪♪-♪♪-♪--♪-♪♪♪--♪-♪--♪-♪-♪--♪-♪--……
コーラスの枚数を増やしたって事は、歌を唄う事に関して、ズブの素人の美樹さん達への考慮だな。
コンテスト荒らしをしていた樫田や、咲さんですらコーラスを付けたんだから、これは当然の処置だろう。
ただ……俺は、この時点で1つ見余っている事があった。
言うまでも無く、この見余りと言うのは、曲を、体で表現していると言う『彼女達のダンス』の事だ。
彼女達は、ステージを縦横無尽に動き回り、観客へのアピールが、兎に角上手い。
康弘に、横須賀のドブ板通りでは有名とは聞いていたが……あれ程、キレのあるアクロバティックなダンスだとは夢にも思わなかった。
その上、どれだけ離れていようと、彼女達の動きに寸分の狂いも無く。
歌詞からも外れた動きすら見せないんだから、観客が盛り上がらない理由はない。
4人のシンクロ率が尋常じゃ無く高い。
しかしまぁ、どれだけ練習すれば、あんな真似が出来るんだろうか?
・・・・・・
此処までの経過を見て。
俺は、自分が、このステージに立つ事が恥ずかしくなってきた。
今の美樹さん達のダンスが良い例なんだが、俺には、彼女達の様な完成されたパフォーマンスは出来無い。
それに、素直や、椿さんや、樫田や、咲さん、奈緒さんを加えたヴォーカル達の様に、上手く観客を魅了して盛り上げる事も出来はしない。
勿論、嶋田さんや、山中、それに康弘や、ステラの様な超絶演奏も出来無い。
どう考えても……今、出て行った所で、みんなにフォローして貰うだけの存在。
ステージに呼ばれたとしても、そこで恥を掻くだけのこった……
けど、なんで、これ程までに差が出ちまったんだろうか?
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>
倉津君が、メチャクチャへこまされてますね( ;∀;)
でも、こればかりは仕方がない事。
今まで培ってきた練習量や、ライブの経験値が全然違うのだから『敵わなくて当たり前』なんですよね。
それでも、今まで一緒にやって来たメンバーの、これ程までに生き生きした姿を見せられたのでは辛くなるのは解らなくもないですね。
さてさて、そんな中。
このステージに居る凶悪なメンバーに加えて、崇秀がステージに復帰する様ですが……まだ、絶対に何か企んでるのは明白。
この後、崇秀のアンポンタンが、なにをするか興味が少しでも湧きましたら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(*'ω'*)ノ
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