●前回のあらすじ●
素直ちゃんにシンセを教えに来てる龍斗君にかき乱され。
奈緒ちゃんと、上手くコンタクトが取れなくなっている倉津君。
当然、奈緒ちゃんの態度は冷たく。
倉津君を突き放すような言い方でスタジオから帰ってしまう。
そこに、誰かがやって来た……
「なんや、また喧嘩か?毎度毎度、オマエも飽きんやっちゃな」
そこに間髪入れず。
喧騒を聞き付けた死ぬ程鬱陶しい奴が、なにやら楽しそうな笑顔でやって来やがった。
この奈緒さんとのやり取りを見て、からかいにでも来たのだろう。
うぜぇ!!
「るせぇよ」
「おぉ~~~おぉっ、相も変らず、豪い息巻とるのぉ。鼻息で相模湾まで吹き飛ばされそうな勢いやで」
「るせぇ、つってんだろうがぁ。ツマンネェ事ばっかほざいてんじゃねぇぞ」
「まぁまぁ、そないに怒んなや。カルシュウム不足は、いつもの事やけど。そうカリカリしてても、なんも始まらん。……ホンで、なにがあってん?」
「んでもねぇよ。奈緒さんが、俺を放ったらかして用事で帰っただけだ」
「なんや、そないなショウモナイ理由で拗ねとったんかいな?オマエ等、ホンマ暇やのぉ」
「ショウモネェ事じゃねぇつぅ~の。俺に、とっちゃあ死活問題なんだぞ」
「なんでやねん?そない大層な話ちゃうやろ。奈緒ちゃんにフラれてんやったら、アリスに慰めて貰たらえぇやんけ」
なんちゅう馬鹿げた事を言うんだ、コイツは……
今現在、それが発端で、奈緒さんと揉めてるって言うのによぉ。
ワザワザこれ以上、被害を拡大させて、どうするんだ?
馬鹿かコイツは?
マジで馬鹿なのか?
「オマエねぇ、マジで山の中に生き埋めにすんぞ」
「なんでやねん?」
「あのなぁクズ中。俺は、テメェみたいに女に対してコロコロ心変わりしねぇの。基本的に俺は、奈緒さん一筋なの」
「アホクサ……なにが一途じゃ。一筋や言う割には、オマエ、最近アリスと居る時間の方が長いやんけ。奈緒ちゃん放ったらかしにしといて、どの口がほざきよんねん?それともなにか?好きやけど『釣った魚には餌やらん』言う奴か?」
「んな訳ねぇだろ。素直と居る時間が長ぇのは、シンセの件が有るからに過ぎねぇ。他意はねぇよ」
言い訳がましく聞こえるかも知れないが、全て事実だ。
俺は、地獄の閻魔に誓って、なにも嘘は言ってねぇ。
これが何も隠さない事実だし。
「アホが。何所までもメデタイやっちゃな。どこまで自分を正当化しようとしとんねん?」
「なにがだよ?なにも嘘は言ってねぇぞ」
「確かにな。嘘は言うてへんけどなぁ。奈緒ちゃんの気持ちを無視して、正当化しとるんも事実やろ」
「どこがだよ?俺は、此処にある事実を述べてるだけだ。それに奈緒さんの気持ちを踏み躙った憶えはねぇぞ」
「アホ言うのも大概にせぇよ。ほんだら逆に聞くけどなぁ。……オマエのその言い分やったら、奈緒ちゃんが他の男と楽器の練習をしてても怒れへん言う事やなぁ?一切、嫉妬もせぇへん言うこっちゃなぁ?」
無理だ。
「いや……確実にする」
「はぁ?相手の気持ちは無視するくせに、オドレは嫉妬するやと?オマエ、ホンマなに言うとんねん?自分で言うてて、よぅ恥ずかしないな」
「るっ、るせぇな。オマエには関係ないだろうがぁよぉ」
「アホか。大有りなんじゃ、こんボケ。えぇか?この辺については、7月に入ってからのオドレの無様な練習が、全て、それを物語っとるやないか。タダでさえ下手糞なクセに、オマエのベースラインは聞くに堪えん様なグチャグチャな音になっとるわ。そのオマエを気にして奈緒ちゃんのベースラインもグチャグチャ。これでも俺には、なんも関係ないちゅう~んか?もし、それでも関係ないちゅう~ねんやったら、オマエ等2人纏めて、自殺の名所で一回死んで来い。その旅費ぐらいやったら俺が全額負担したるわ」
確かによぉ。
最近あの糞ガキに振り回されて、俺自身が練習に身が入ってねぇのは認める。
これについては、俺も悪いとは思っている。
……が、奈緒さんは、別に、なにもしくじってないだろうに。
それ、オマエの完全な言い掛かりだぞ。
「ちょっと待て。確かによぉ、俺はダメかも知れねぇが。奈緒さんは、いつも通り、普通にやってんじゃねぇかよぉ。なに訳の解んねぇ事を言って、奈緒さんにまでイチャモンつけてんだよ」
「あれでか?あれで出来てる言うんか?オマエの笑いのセンスは最悪やな。全然笑えんぞ」
「あぁ?」
「……オマエの耳マジで腐っとんのとちゃうか?それとも、なにか?もう鼓膜も無いんか?」
「オマエ、ふざけんなよ。奈緒さんのベースに、どこに文句のつけようがあんだよ?」
「どこがやと?まだそんなツマラン冗談を言うつもりか?……そんなもん、どこもかしこもじゃ。あんな下手糞な演奏に付き合わさせられる俺の身にもなってみぃ。思い出しただけで寒気がするわ」
「オマエなぁ、ちょっと待てな。幾らなんでも『下手糞』と『寒気』は言い過ぎだろ。奈緒さんの演奏は、いつなんどきでも、ムラなく上手いちゅう~の」
「アカンはコイツ……脳味噌が腐って、耳から垂れとる。オマエ、完全に脳障害起こしとるぞ」
「んだとコラ?」
「オマエのぉ、このバンドを結成した意味わかってて、それ、言うとんねんやろうな?」
山中の、この態度……また、崇秀の馬鹿がなんかやらかしたのか?
だってよぉ。
コイツが、こう言う事を言い出す時って、必ずと言って良い程、アイツの影が見え隠れする時なんだよなぁ。
だとすると、ちょっと厄介だぞ。
「んだよ?馬鹿秀を倒す為に作ったバンドだろ。わかってんよ、それぐらい」
「そうか……俺には、なんもわかってへん様に思うんやけどなぁ」
『バサッ』
そんな音と共に、山中は、俺の顔面に目掛けて、思いっ切り雑誌をブン投げてきた。
不意に投げられた雑誌に見蕩れて、俺は無様にも顔面で、それを受け取る羽目になる。
なんだこりゃ?
最後までお付き合いありがとうございました<(_ _)>
まぁ、倉津君の気持ちも解らなくもないんですが。
この件に関しては、山中君の言う通り、どう考えても倉津君が悪いですね(笑)
そして、そんな山中君から投げつけられた雑誌。
これは一体、何を意味するのか?
そこは次回の講釈。
良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(*'ω'*)ノ
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