●前回のおさらい●
10日ライブの最中に、意識を失った眞子。
だが、そんな眞子は、何故か、霧がかった真っ白な空間の中を、ただ只管に歩き続けていた。
果たして、此処は何処なのか?
……一体、どれ程の時間が流れているのだろうか?
あれからも……いや、それ以前からもズッと歩き続けていたと言うのに、一向に事態の好転は見受けられない。
ただ、これだけ歩いたのにも拘らず、体自身が疲れた様子は一向に現れる気配はない。
体感的に言えば……もぉ数時間以上は余裕で歩き続けている筈なんだけど、見える景色はなにも1つ変わらない。
いや、それ以前の問題として、本当に此処には景色なんてものは存在するのだろうか?
まるで、なにもかもが真っ白な中にあるだけの『虚無』の中を歩いている様な気分だ。
此処に来て私は、本当は此処にはなにも無い様な感覚にさえ陥る。
それでも尚『足の感覚』『視覚』『聴覚』は、まだ完全に残っている。
これが残ってる以上、私は、決して諦めない。
それに、この3つの感覚の中では、此処数時間の間、特に『聴覚の機能』が一番よく働いてくれている。
あの偶に聞こえて来る例のクグモッタ奇妙な呻き声の様な物を捉え続けているのだから、この機能の『生』だけは間違いはないだろう。
・・・・・・
( ゚д゚)ハッ!……そうだ。
そう言えば、あの『声の正体』って、一体なんなんだろうか?
この謎に満ちた、人を狂気に落とし入れる様な空間にも、ひょっとして私以外にも『人』若しくは『なんらかの生き物』が存在すると言う証明なのではないのだろうか?
1人の心細さから、私は、思いも拠らない者に縋ろうと考え始めた。
その為にも、1度、全ての雑音を振り払うが如く、その場にピタッと立ち止まり。
その声が聞こえる方向と、それ自体が、なんなのかを確認する為に、全神経を耳に集中して耳を澄ませてみた。
『……エセ……エセ……ヲ……エセ』
少し離れたい位置ぐらいから聞こえる、その声は……まだ正確な確証にまでは至らなかったけど。
恐らくは、ある程度だけど『知性のある者の声』だと思われる。
しかも、聞き様によっては、相手が話している言葉は日本語である可能性が高い様にも思われる。
言葉自体は途切れ途切れだが、なんだか話すニュアンスが、日本語に似ている様な気がする。
もし仮に、そうでなかったとしても。
この事から、その意味の解らない言葉を発する未知の生物には『知性がある』モノだと言う判断できた。
少しだけ意味もなく安心感を持った私は、そのまま、あまり深くは考えず、声のする方角へと足を進めて行った。
もしかすると、此処を抜け出す為のなんらかのヒントが、そこに隠されているかも知れない。
今は、それに縋り付いて、ただなにも疑わずに、そう信じ込むしかなかった。
じゃなきゃ……心が保てない。
***
……再び歩き始めてみたものの、時間の感覚は、矢張り、なにも解らない。
ただ気のせいかも知れないけど。
少しだけ……ほんの少しだけ、声の主に向って近づいて行っている様な気にはなっていた。
けど……その確証すら、本当はなにも無い。
何故なら、時折、その声が途切れてしまうので、相手が存在してる方向自体が、完全に定まっている訳じゃないからだ。
声が聞こえてる間は、そうやって自信が多少なりとも持てるんだけど。
突然の様に、その声が途絶えてしまった時だけは、声に縋っているだけに、心が不安で一杯になり、一気に気が変になりそうになる。
でも……おかしくなりそうになった手前位で、また、その声が聞こえ始める。
そこで再び『向っている方向は間違いない』っと、自分自身を信じてあげるしかなかった。
けど……こんな時間が永遠に続いたら、マトモな精神じゃいられない。
この今の置かれてる私の状況から考えても、私が、こうやって冷静でいられる時間も、もぉ残り少ないだろう。
……いや、実際は、そう思っているだけで、もぉ既に、私の頭は、おかしくなっているのかも知れない。
考えても見れば、こんな未知の生物に遭って、一体なんになるんだろうか?
さっきは『助かるヒント』なんて思っていたけど。
その人が、この現状から脱出出来ていないのに、そこから一体、なんのヒント得られると言うのだろうか?
ただ、今の自分にとって、こんな状況の中を1人で居るのが嫌なだけなんじゃないのだろうか?
あぁダメだ。
一度疑い出したら、変な風にしか思考が廻ってくれない。
……あぁでも、こうやって思考してる間は、まだ、完全には、おかしくは成ってないのかも知れない。
だったら、この無駄とも言える思考迷路を続けよう。
兎に角、頭の回転さえ衰えなければ、これも生きている証になる。
私は、なにがあっても、こんな誰も知り合いの居ない場所で1人寂しく死にたくなんてない。
此処が何所かは知らないけど……絶対に帰るんだ!!
***
……そう決意して、再び、無限に続く道を歩き始めた瞬間『バッ!!』っと、突然の様に、自分の眼前に、ある男の顔が見えた。
「返せ!!返せ!!返せ!!俺の体は、そんな女の体なんかじゃない!!俺の体は女なんかじゃないんだ!!」
「えっ?……そっ、そんな……アナタは……そんな筈……」
真っ白なだけの空間から、その大きな影は、私に向かって襲い掛かってきた。
彼は、なにもかもを恨んだ様な形容し難い怒りの表情を浮かべて、私の両肩を掴み。
呪文を唱える様に、その言葉だけを、なんでも繰り返してくる。
「返せ!!返せ!!返せ!!返せ!!返せ!!返せ!!返せ!!返せ!!返せ!!……」
「いっ……嫌ああぁぁぁぁぁあぁ~~~~!!」
私は、余りにも有り得ない光景を目の当たりにしてしまい。
今までは何とか正気を保っていた筈の頭が完全に混乱し、身構える間もなく、大声で叫んだ。
その後『ガコッ!!』っと言う衝撃と同時に、なにかで頭を殴り付けられた様な感覚が、後頭部に走り……
そのまま、意識が消えていく……
「こんなの……イヤだ……」
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>
突然襲い掛かって来た生物の正体は、一体、なんだったのだろうか?
そのヒントとなるのが、相手から連呼される『返せ!!』の言葉。
当然、そうなると、相手の正体は「あの人物」しか居ない筈なのですが。
現状でそれは、眞子が存在しているだけに、絶対にありえない存在の筈でしかない。
さてさて、この矛盾だらけの現象は、一体どう言う事なのか?
次回は、その辺の謎に迫っていきたいと思いますので。
良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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