最後まで奏でられなかった音楽

どこかお間抜けDQNな不良さんのゆったり更生日誌(笑)
殴り書き書店
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268 不良さん、GUILDについての話題を振ってみる

公開日時: 2021年11月1日(月) 00:21
更新日時: 2022年12月14日(水) 14:26
文字数:3,741

●前回のおさらい●


毎度の事ながら、無意識のまま理子さんを納得させた倉津君なのですが。

そこでの話題が終わってしまい。

沈黙して、次の話題に困っていたら……ある疑問を思い出し、理子さんに聞いてみる事にした。

「あっ、あの、ちょっと聞いて良いッスか?」

「なに?」

「唐突で申し分けないんッスけど。……理子さん『GUILD』って言葉で、なにか知ってる事とか、心当たりってあります?」

「『GUILD』?……んと、どの『GUILD』の話かな?」

「えぇっとッスね。崇秀の馬鹿が関わってる確率が高い『GUILD』の話ッス」

「あっ、その事ね。……なんだ兄貴君、その様子だと、なにも知らないんだ」

「それって、有名な話なんッスか?」

「有名って言うか……『GUILD』って言うのは、今年の4月に仲居間さんが立ち上げた、音楽関係者ご用達の新しいホームページの事だよ」


なんだそりゃあ?

あの馬鹿、またなんかややこしいモン拵えてやがったのか?


なに考えとんじゃアイツは!!



「あの……それって、どういうもんなんッスか?」

「えぇっとねぇ、細かく話すと時間が掛かるから、ややこしい部分を排除して話すとね。完全登録制のミュージシャンのハローワークって所かな」

「うん?ハローワークって事は、一般的な解釈をすれば『就職斡旋』って事ですよね。なんでアイツが、そんな事してるんッスか?」

「さぁ、そこまで詳しい事情は解らないけど。登録数だけは多いみたいだよ」

「何故に?」

「そりゃあねぇ。たった4ヶ月で、業界一の就職率を誇っていれば、登録数も上がるんじゃないかな」


なるほど、なるほど。

全く見えなかった『GUILD』の正体が、理子さんのお陰で少し見えてきたぞ。


この『GUILD』って言うのは、要するにあの馬鹿のブランド名。

んで、やってる事は、以前からやっているアイツのホームページのパワーアップヴァージョン。

恐らく、前のホームページで登録してくれた客を、更に選りすぐり、業界関係者に紹介するシステムの事だな。


しかしまぁ、なんとも馬鹿げたものを作ったもんだ。



「なるほど……あの、序に聞きますけど。今回のライブとは、なんか関わりが有るんッスか?」

「そうだね。まぁ、有ると言えば有るかなぁ」

「なんか、歯切れが悪いッスね」

「あのね。実は、これ、オフレコなんだけどね……今回のライブに出る人って、要はそのホームページの中でも売れ残りの人なのよ。だから当然、昨日までのチケットの売り上げは芳しくなかった」


なるほどな。

どんなに有名なサイトであっても、売れ残ってる奴が居るのは、どこの世界でも一緒なんだな。


まぁ、それで俺が声を掛けた時に、奴は乗り気になった。

どうせ、ただ損をする位なら『奈緒さんの思い出作り』や『みんなの調和』の為に使うのも、悪く無いと考えたんだろう。


実にアイツらしいな。



「まぁ、そりゃそうッスよね。売れ残りの曲なんて、敢えて、聞きたいって物好きは、早々居ないッスからね」

「あぁっと、そうじゃないの……」

「えぇっと、なにがッスか?」

「うん、気を悪くしたら、ごめんね。……実はね。仲居間さん、私達全員が出る事によって、凄い収益を上げてるのよ」

「ちょ、ちょっと待って下さい。アイツ、俺達を出汁に使って、金儲けしてるって事ッスか?」

「言い方は、少し悪いけど。……うん、大凡は、そう言う事だね」

「けど、なんで理子さんが、そんな事を知ってるんッスか?」

「ごめんね。実は私も、昨晩から、その仲居間さんの片棒を担いでるのよ」


あぁっと理子さん、そんな神妙な顔しなくて良いッスよ。


商業ベースでモノを動かしてるなら。

当然、主催者は、金を儲ける為に四苦八苦するものッスからね。


だから俺は、この崇秀の行為自体、なにも悪いとは思ってないッスよ。

それに理子さんが手伝った事だって、賞賛に値する行為ッスよ。


まぁ、普段の俺がこんなだから、怒るとでも思ってんだろうな。



「あっ、あぁ、あの、理子さん」

「ごめんね、兄貴君」

「あぁ、そうじゃなくてッスね。俺、なんも怒ってないッスよ」

「えっ?怒ってないの?」

「いや、こんなの極当たり前の事だと思うんッスけど。アイツも商売でやってんッスから、此処は俺が怒る道理じゃないッスよ」

「えっ?兄貴君って、意外にドライな思考なんだね。もっとこぉ『あの野郎!!』とか言って、熱く怒るもんだと思ってた」

「いやいや、ナメ過ぎッスよ、理子さん。幾らなんでも、俺もそこまで青臭くないッスよ。それに、これでも俺、実家の手伝いとかで、色んな仕事やってっから、ソッチの経験値は、結構、高いんッスよ」

「そっ、そうなんだ」


まぁ……俺なんて、所詮そんなイメージなんだろうな。


暴力馬鹿で、世間知らず……そう思われてても仕方ないんだけどな。


けど、あれッスよ。

理子さんが思うより、昨今のヤクザ業界は頭が良いんッスよ。

あんなテレビみたいな派手に暴力を振るう馬鹿なヤクザなんて、そんなそんな居ないッス。


もし、まだ、そんな馬鹿な組があるとしたら……そんなものは『どこにも所属していないハグレの組』か『どこぞの外国人が構成した組』位のもんッス。


なので、それこそ、あんな馬鹿ヤクザの組は昭和の時代の遺物ッスよ。


それに、実際のところ、昔と違って、今は、ヤクザの看板すら足枷になる様な時代なんッス。

だから今は、各組が和平協定を結んで、競合して儲ける時代ッスからね。


少し、その辺のヤクザ業界の認識を改めて欲しいもんッスよ。



「そうッスよ。今の時代に必要なのは、お互い、どう儲けを産むかであって、潰し合うなんてナンセンス。……TVでやってる様な馬鹿組は、殆どないッスよ」

「ふ~ん。結構、ヤクザも組織的なんだね」

「そうッスよ」


感心してる。


けど、事実は、そんなもんッスよ。



「ところで理子さん。その崇秀の売り上げとやらは、どれぐらい羽上がったもんなんッスか?」

「結構、えげつないよ」

「因みにッスけど……どれぐらいのもんなんッスか?」

「うんっとねぇ……」


そう言って理子さんは、ノートパソコンを立ち上げる。



「まだ、最終の集計は取ってない状態だけど。恐らくは、昨日までの3倍ぐらいは確実かな」

「売り上げが3倍って事ッスか?そりゃあ確かに、えげつない話ッスね」

「うん、まぁ、単純に言えばね。……昨日の時点で8000人集客のステージで、売れていたチケットの数は約1500枚。それで今日の午前中だけで、みんなが捌いたチケットの枚数が4500枚。今現時点で6000枚売れてるって計算になるの」

「凄いッスね……けど、なんで、そこまで売れるんッスか?」

「これに関しては、明らかに知名度の差だね」


知名度の差?


普通に考えりゃ『売れ残り』と『俺達』の差って話になるんだろうが……なんか、それだとしっくりこないな。



「どういう事ッスか?」

「うん?凄く単純な話なんだけど。……まず『兄貴君達のバンド』。これはもぉ、ネット内では、結構、話題になってるバンドなのよ。だから、そのバンドが出演するってだけで人は集まる。まずは、これだけで、1000枚ぐらいの売り上げになるのは確実だろうね。なんせ、いつもチケットが完売して、入れない人が続出してるバンドだからね」


そっか……俺達って、そんな有名なんだな。


知らんかった。



「それに付け加えて、ウチの『Fish-Queen』……私達は、地元の神奈川をメイングランドにしてるユニットだから、観客が、近場の此処なら、直ぐにでも来てくれる可能性が高いのよ。……此処だと、比較的、移動距離が短く済むしね。地元ならではの集客法なんだけど、これは効果的……約1000枚は確実」

「おぉ、既に2000枚だ。スゲェ」

「それで、次に注目されるのは『椿さん』……彼女の知名度は、実は凄く高いのよ」

「ほぉほぉ」

「以前、嶋田さんとバンドを組んでいた時に付いた椿さんのコアなファンが、今でも根強く存在する。これだけで500枚」

「ほぇ~~、椿さんって、何気に凄いんッスね」

「だよ。……さて、そうなると、残り2000枚な訳だけど。これは、鮫ちゃんと、モヒ君&ロンちゃんのお陰」


うん?


鮫?モヒ?ロン?

なんでアイツ等が、そんなに集客力を持ってんだ?



「なんでッスか?」

「えぇっとねぇ、鮫ちゃんついては、詳しい情報はハッキリしないんだけど。昔からバンドや、アイドルの追っかけをしてたのが有名でね。だから実は、凄い集客力と、影響力を持ってる人なのよ。あの人が一声掛かれば、1000人単位で人が集まるんじゃないかな。……現に奈緒が、仲居間さんから預かったチケットを一番最初に完売したからね」


あのアホ鮫がねぇ……世の中わかんねぇもんだな。



「それにモヒ君&ロンちゃんの影響力も凄いのよ」

「あのアホコンビがッスか?」

「そっ……彼等はねぇ。兎に角、サクラが上手いのよ。例えばね『○○が来てるぞ!!マジ可愛い』とかを、浜辺に遊びに来た人に触れ回って、まずはバンドに興味をそそらせる。その上で、その販売所に行ってみたら、本当に『可愛い』と言われている本人がチケット販売をしている。男なら、ついつい女の色香に惑わされて購入しちゃう。……しかも、バスタオルの『オマケ』が付いているとなれば、尚更、お得感が増して購買意欲を掻き立てられる。……仲居間さんは、その辺を全て計算して、今回の業務に当たったって事なんだろうね」


……アホだアイツ。

ヤッパリ、本物のアホだ。



「後ね……」


まだ有るんかい!!

まだあのアホンダラァは、なんか企んでやがるのか!!


もぉ勘弁してくれ……


最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございましたぁ<(_ _)>


( ´,_ゝ`)プッ

流石、計算高い男、崇秀。

倉津君との契約を込みで、チケットの販売枚数を三倍にしてきましたね。


……っと言いますかね。

此処まで綿密に練り込んでいたのならば。

ひょっとしたら、倉津君が何かを頼んでくることを前提にして、前以てこの計画していた可能性もありますね。


何故なら……崇秀が、奈緒さんの海外行きを知らない訳がないですからね(笑)


さてさて、そんな状況の中。

チケット3倍程度で満足して留まる筈のない崇秀が、まだ何か仕掛けている様ですが。

一体、彼は、なにを仕掛けて来るのでしょうか?


それは次回の講釈。

また良かったら、遊びに来て下さいねぇ~~~(*'ω'*)ノ

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