●前回のおさらい●
海岸で自分のやれる事を終えた倉津君は、奈緒さんと仲良く、崇秀の待つホテルへ向かった。
そして2人で、ホテルマンに案内された部屋の前に立つ。
指定された場所は、このホテルにある最大の宴会場。
此処だけでも、優に二百人は収容出来るスペースを持った大宴会場だ。
そんな大宴会場に、廊下側の襖を開いて中に入ってみると、宴会場を2つに分ける様に襖で仕切りを作られ。
俺の入った部屋は、やけに小じんまりした部屋だった。
そして、奥の部屋からは、女の子達の声が聞こえている。
んで、問題の俺が入った部屋なんだが……
まず眼に入って来たのが、今回の仕掛け人の崇秀のアホンダラァ。
後、見知った顔と言えば、ジミーのアンポンタンと、あの糞生意気なクソガキの龍斗。
その他は、見た事もない年配の人間が数人いる。
……っと、もぅ1人、知り合いではないが、見知った顔があるな。
って!!確かアイツは『ZAP』の前田朔哉なんじゃねぇか!!
オイオイ……そんなロック界の大物が出てくるなんざ、一体、此処で、なにが行われ様としてるんだ?
不信に思い、周囲を見回すと……この部屋の中には大量の書類がバラ撒かれており。
その書類の全てに、赤ペンで『×』や『○』
若しくは、企画の修正点だろうか、修正文字が大量に書き込まれている。
この様子から見て、恐らく此処に居る男達は、崇秀が呼び出した業界関係者か何かだな。
しかしまぁ、どこまで広い人材を持ってやがんだ、コイツは?
「おぉ倉津、やっと来たか」
「あっ、あぁ」
「じゃあオマエは、これを持って、防音の効いたカラオケルームな。これについての事情は、嶋田さんに全部説明してあるから、後は、彼の指示に従ってくれ。……あぁそれと向井さんは、一番奥の突き当たりの部屋な。コチラも倉津同様、美樹さんと、ステラに詳しい事情は話しておいたから、ソッチで聞いて貰えば、話が早い……以上」
それだけ言って、崇秀は封筒をコチラに投げ、再び関係者と話を始める。
だが俺は、全く事態が理解出来なかったので、アホンダラァに質問を投げ掛ける事にした。
「いや、ちょっと待てよ、崇秀」
俺のこの言葉に崇秀は、素早く反応。
だが、その反応と言うのは、舌打ちをしながら、矢鱈と不機嫌そうな顔を向けてくるだけ。
なんだよ、その反応は?
「チッ!!るせぇな。ゴチャゴチャ言ってねぇで、サッサと行けよな。俺はな、テメェと違って忙しいの。テメェなんぞに構ってる暇は、もぉ一秒たりともねぇんだよ。……わかったらサッサと行け。オマエ、俺の指示に従うんじゃなかったのかよ?」
「ぐっ、テメェ……」
「あぁ?テメェは、まだわかんねぇみたいだな?俺はな、時間がねぇつってんの。サッサと行けよ、このタコ助!!」
「クラ、行こ。仲居間さん忙しそうだし、邪魔しちゃまずいよ」
「チッ……そうッスね」
俺は、少し乱暴に襖を閉めて、廊下に出る。
にしても、あの野郎、いつもと違って、なにか余裕のない横柄な態度だったな。
奈緒さんが、俺の袖を引っ張らなかったら、問答無用で、ぶん殴ってた所だぞ!!
……にしても奈緒さん、なんで、アイツの糞ムカツク態度に腹が立たなかったんだろうな?
普段の奈緒さんなら突っ掛かって行っても、なにもおかしくない状況だったのに。
廊下に出て直ぐに、その辺の奈緒さんの真意を確かめる。
「あの、奈緒さん」
「うん?なに?ってか、怒ってないんだ」
「あぁまぁ、アイツのあぁ言う態度には、ある程度、慣れこっッスからね……あぁじゃなくってッスね。奈緒さんの方こそ、さっきは、なんで怒らなかったんッスか?」
「私が怒る?……あぁとても、とても、そんな雰囲気じゃなかったからね。あれって、完全に仕事の現場の雰囲気だったんだもん。私なんかが気安く話し掛けて良いもんじゃないよ」
「怒って……ないんッスか?」
「う~~~ん。怒るって言うかね。あの時点で、感情に任せて仲居間さんに話し掛けてたら、多分、私の方が、こっぴどく怒られたと思うよ。だから、正直ビビッてたのかもね……ほら、それを証拠に、この手」
奈緒さんは、自分の手を俺の前に差し出した。
見てみると、そこには、グッショリと汗を掻いて湿った手があった。
……マジかよ?
鉄の心臓を持つと言われる奈緒さんが、此処までビビるあの現状って、一体なんなんだよ?
あそこで、なにがあったつぅんだよ?
「これで納得出来た?……くすっ、それ以前に、君も汗グッショリになってるんだけどね」
「えっ?そうなんッスか?」
俺は、自分の腕で、顔を一拭きしてみると、その腕には汗が大量に纏わり付いてくる。
それらの汗は、俺の腕を伝い無造作に床に落ちていった。
思った以上に大量の汗……だな。
「あっ……」
「こりゃあ、どうも一筋縄じゃ行かないみたいだよ、クラ。今回の仲居間さんは、どうやらマジモードみたいだね」
奈緒さんは、いつもにも増して神妙な顔で、俺にそう言ってくる。
「どっ、どういう事ッスか?」
「あぁ……これは、私の推測に過ぎないんだけどね。例えばね、あの『Live-oN』でやった仲居間さん主催のライブ」
「それって、あの俺達の初ライブの話ッスか?」
「そぅ。あの時ですら、仲居間さんは遊び感覚が抜けてなかったの。だからって訳じゃないんだけど、基本的には、あのライブですら、仲居間さんとっては、まだまだ余裕が有った。……けど、今回は見るからにして様相が違う。仲居間さんが、あんなに真剣に取り組んでるって事は、今回の件は、彼自身にも全く余裕が無いって事。いつもみたいな飄々とした感じが見当たらないのよ。だからって訳じゃないけど、私達も、相当、覚悟を決めてやらないと、豪い目に逢うよ。……それに、この企画には、私達が想像も付かない様な大量のお金が動いてる筈だしね」
……アイツ、俺と奈緒さんの為だけに、そこまでしてるのか?
ばっ、馬鹿じゃねぇのか?
高々、俺の我儘に付き合うだけの為に、なんて無茶しやがるんだ。
アイツはいつも、やる事、成す事、無茶苦茶だ。
此処までいったら、お節介の域じゃねぇぞ。
けどよぉ、アイツが、幾ら糞野郎とは言え、そこまでして貰って甘えてバッカリいる場合じゃねぇよな。
出来る以上の事をしねぇと、アイツが豪い損失を被る事になる。
それだけは、なんとしても避けなきゃな。
アイツの覚悟を奈緒さんに教えて貰ったので、俺は、自分で両頬を『バシッ!!』っと叩いて気合を入れる事にした。
「あぁ、兎に角ね。私達は出来る限り仲居間さんの期待に応えられる様にしてみようよ。幾ら求められても、出来無いものは、なにを言われても出来無いからね」
「けど、奈緒さん。なんで、そこまでヤル気十分なんッスか?」
「ハァ……君ねぇ。私が何も知らないとでも思ってるの?この企画、君が仲居間さんに頼んだんでしょ。それぐらいは、私でもお見通しだよ」
「……ッスよね」
ヤッパリかぁ。
まぁ、バレないと思う方が、よっぽど厚かましいよな。
けど、出来れば知られたくなかったんだよな。
この人、そう言うの知ったら、自分の事なんか無視して、直ぐに無茶な事をするからなぁ。
ホント、そう言う処は、崇秀ソックリなんだよな。
「まぁ、そう言う事だからさぁ。私は、出来る限り、張り切っちゃう訳なんだけど。……君は、どうするの?」
「そりゃあやりますよ!!あの馬鹿の度肝を抜いてやります」
「そっか……じゃあ、頑張りなよ、クラ。私に、君が、此処で誰よりも一番輝いてるって事を証明して見せてよ」
「ウッス!!任せといて下さい」
「うん、良い感じ♪」
此処で奈緒さんとは一旦別れて、御互いが、崇秀に指定された部屋に入って行く。
地獄部屋に……
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございましたぁ<(_ _)>
崇秀が、結構な本気モードに入ってるみたいですね。
倉津君にも、奈緒さんにも、その意志が伝わっていたみたいですし。
ただ……崇秀は、何処で、いつも通りに成るか解ったもんじゃないですけどね(笑)
さて、そんな中。
次回は、カラオケルームで倉津君を待ち構えていた地獄について解説していきたいと思います。
なので、良かったらまた遊びに来て下さいねぇ~~~(*'ω'*)ノ
読み終わったら、ポイントを付けましょう!