●前回のおさらい●
奈緒さんの一件を、どう言う言葉で許してあげようかと考える倉津君。
だが、アホなので、その言葉が浮かんでこないまま……(笑)
……っとまぁ、そんな風に、なにもしてあげられない。
若しくは、なにも考え付いてあげられなかった様な木偶の坊な状態のまま。
いつものチャリを停める場所に重々しくチャリを停め。
無様にも、そのまままだ悩みながらも、ノロノロと自室に向って行く訳なんだが……
そんな状態だから、なにも悪い事をしていない筈の俺なのに。
何故か、異様なまでに気が重くなったまま廊下を渡り、とうとう自室の前に到着。
此処まで来てしまった以上、もうこれ以上悩んでても仕方がないので、少々重い感じのする障子を開く。
すると……
「あっ……お帰りクラ。お疲れ様」
その妙に重い障子を開くと。
部屋の中央で正座をした奈緒さんが、沙那ちゃんを膝枕で寝かし付けながら座っていた。
取り敢えず、その姿を見て、少しだけ「ほっ」っとした。
……のは良いんだが。
矢張り、その座っている奈緒さんの表情が良くない。
出来る限り明るく振舞う為に、目一杯の作り笑顔で俺に対応はしてはいるものの。
まずにして、そんな笑顔とは裏腹に、顔色が全く持って良くない。
その上、昨日の昼の件からくる精神的な疲労が、完全に見え隠れしている様な表情を浮かべている。
この、そんな無理をしてまで取り繕ってる様子からして、奈緒さんの不安で堪らない感じだけがヒシヒシとコチラに伝わってくる。
どうやら彼女には、いつもの余裕なんてモノは、何所にも存在していない様だ。
……だとしたら、これは本格的にマズイな。
早期に『許してあげない』と疲労困憊で参ってしまいそうな感じ。
もぉ、色々考えてる暇は無い様だ。
「あぁ、ただいまッス。……あぁ、って言うか。奈緒さんの方こそ、沙那ちゃんの面倒を見てくれて、ご苦労様ッス。沙那ちゃん、本格的に寝ちゃったんッスね」
……違うんだよなぁ。
ホント、そうじゃねぇんだよなぁ。
今は、そう言う感謝の気持ちを奈緒さんに伝えてあげたいんじゃないんだよなぁ。
早急に『奈緒さんを安心させてあげれる言葉』を、このアホな口から、なんとか捻り出してあげたかったのによぉ。
無駄に俺は、こう言う余計な話を口に出しちゃうんだよなぁ。
……ったくもぉ、馬鹿じゃねぇのか俺?
ホント、まかりならねぇもんだな。
まぁけど、そうやって沙那ちゃんが寝てるとは言え。
イキナリ例の話をするのも、何か違うような気がしないでもないので、これはこれで間違ってないのかもしれないけどな。
どんな話をするにしても、タイミングって大事だしな。
「うん。クラから預かった時点で、沙那ちゃん寝てたから、抱っこして部屋まで連れて来たんだけどね。部屋に着いたら、ちょっと目が覚めちゃったみたいでね。少しの間2人でお喋りしてたんだけど。また直ぐに寝ちゃったよ」
「そうッスか。……にしても、可愛い寝顔で、良く寝てるッスね」
「そうだね。沙那ちゃん、クラに遊んで貰ったのが、相当嬉しかったみたいだったから、こんなに幸せそうに熟睡してるんじゃないかな」
俺が、今、こうやって幸せそうに寝てる沙那ちゃんの寝顔を作ったと?
いやいや、イカンイカンイカン。
これは本当にイカンぞ。
今は、そう言う話をしてる場合じゃないのに、ついつい、その話に興味を引いてしまった。
どんな状態であっても奈緒さんって、話をするのが上手いから、すぐに興味を惹かれちゃうんだよなぁ。
……かと言ってだな。
こうやって興味を示してしまった以上、恐らくは、その感情が俺の表情にまで現れてしまっているだろうし。
今、急に話を切るにしても、どうにもグツが悪いタイミングになっちまったからなぁ。
まいったな、こりゃあ。
取り敢えず、少し話を続けるしかなさそうだ。
「そうなんッスか?」
「そうだよ。だって、部屋に入ってからと言うもの。凄くクラの話を楽しそうにしてたもん。それに『クラが帰って来るのを起きて待ってる』って言って、はしゃいでたしね。けど、話し終わったら疲れちゃったのか、直ぐにウトウトして、私の膝で寝ちゃったんだけどね」
「そうッスか。それは、本当にお疲れ様ッス」
「うぅん。これぐらい……」
そうやって奈緒さんは納得しながら、俺に話を合わせてくれてるけど。
やっぱ、そうじゃないんだよなぁ。
幾ら話をするにしてもタイミングがあるとはいえ。
いつまでも、こんな話を長々と続けていても意味がないしな。
実際の話をすれば、俺は、なぁ~~~んか雰囲気に呑まれて、話を続けちまってるだけに過ぎない様にしか思えない。
いや寧ろ、沙那ちゃんの話を言い訳にして「奈緒さんとの話を先延ばし」してるだけ。
ホント、呆れるぐらいダメな奴だな俺は。
何処までヘタレなんだよ?
あぁけど、この会話で、なにも得るものがなかった訳でもない。
無理してるとは言え。
この会話があったからこそ、思ってた以上に奈緒さんが落ち着いてるのが解ったんだからな。
まぁ、これが『怪我の功名』って奴だな。
……ってか!!
もうそう言う余計な思考はしなくて良いんだって!!
ホント、俺が、いい加減にしろって話だよな。
だったら、もういい……
また余計な事を考える前に、此処は一発、今の俺の中にある素直な気持ちを奈緒さんにぶつけてやる!!
変に格好付けようとなんてしなくても良いんだよ!!
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです♪<(_ _)>
倉津君、非常に許し方に悩んでる様なのですが。
こういうのって、意外と難しいのではないかと思います。
眞子の時の様に、話の流れで許すのであれば、まだその場の雰囲気やノリなんかで、色々思いつく面もあるかもしれないのですが。
敢えて『許す』っと決めた状態で、許す相手が待ち構えてる場所に向かうとなると、人間って、変に悩んじゃう傾向がありますからね。
時間に余裕があるだけに、余計な事まで考えちゃいますしね(笑)
さてさて、そんな中。
いつまでも悩んでても仕方がないと思った倉津君。
意を決して、奈緒さんに許す言葉を掛けてあげるみたいなのですが。
果たして、どんな言葉が飛び出してくるのか?
次回は、その辺を書いていこうと思いますので。
良かったら、また遊びに来てくださいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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