最後まで奏でられなかった音楽

どこかお間抜けDQNな不良さんのゆったり更生日誌(笑)
殴り書き書店
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367 真上さんの笑顔に隠れているもの

公開日時: 2022年2月8日(火) 00:21
更新日時: 2022年12月26日(月) 13:10
文字数:2,769

●前回のおさらい●


 真上さんが良い人である事だけは、誰の目から見ても間違いない。

だが、それに反して、彼女には付き纏う『黒い噂』があるのも事実。


それらを山中君やカジ君から聞いた倉津君だが……彼は聞く耳を持たずに、真上さんの元へ手伝いに行ってしまった。

 はぁ、まいったまいった。

本当に、あの馬鹿共にもホトホト困ったもんだ。


なにが『魔性の女』だ。

なにが『人が扱い切れん魅力』だ。

なにが『奈緒ちゃんと別れる所を見たくない』だ。

そんなに『能力者の話』がしたいんなら、今の話を文章化して、角川の『ラノベ』にでも持ち込みやがれつぅの。

上手くやりゃあ『コミック化』されたり『アニメ化』されたりして、将来的に印税で飯喰えるじゃねぇの?


ったくよぉ、ツマンネェ事で時間取らせやがってよぉ。

俺は、オマエ等の編集者じゃねぇつぅの!!


まぁオマエ等全員が真上さんに惚れてる訳だから、俺に対して変な嫉妬をする気持ちは、わからなくはねぇがな。


けど、俺には、そう言うの無いからな。


心配すんな。


***


 ……ってな訳でだ。

そんな事を考えてる内に、やってまいりました川崎。


此処川崎は、俺達、京急沿線に住む人間にしたら、京急線一本で来れる便利な繁華街。

……で、ウチの学校の生徒も、日曜や休日になると、かなり出没している街。

現に今も、真上さんの店に向う途中にある『岡田屋モアーズ』を通り過ぎた時ぐらいに、学校の見知った顔に擦れ違って挨拶をして来たからな。

兎に角、学生~社会人(ややこしいのも含む)まで幅広く、多くの人間が溢れ返ってる街だ。


そんな街のアーケードの中にある、真上さんの店に入って行く。



「お~~っす。真上さん居る?」

「あっ、倉津さん。……今日は、どうされたんですか?もしかして、なにか衣装に不具合でもありましたか?」


真上さんは、俺が来店する毎に、必ず1度、この曇った表情をして、衣装の事を心配する。


けど、そんな心配しなくても良いのになぁ。

寧ろ、あれ程の完璧な物を作っておいて、なんで、そんなに心配するんだろうな?


まぁ恐らく真上さんは『より完璧な物』を提供したいと言う、彼女の『クリエーター魂』が、そう言った言葉を言わすのだろう。


だから俺は、そんな彼女に、出来る限りの笑顔でこう解答する。



「違うッスよ。近所まで親父の用事で来たんで、顔出しただけッス。ひょっとして迷惑でしたか?」

「そんな事は有りませんよ。お越し頂いて嬉しいです」


すると彼女は、打って変わった様に『笑顔』で、必ずそう答えてくれる。


その笑顔は、いつ見ても『癒される笑顔』だ。



「あっと、折角、おみえ頂いたんですから……お茶を用意しますね」

「あぁ、いいッス、いいッス。ちょっと顔を出しただけなんで、お構いなく」

「でしたら、少し私の我儘にお付き合い下さい。私も、今しがた休憩しようと思っていた所でしたので」

「良いんッスか?仕事の邪魔になってないッスかね?」

「はい。ご心配には及びませんよ。お付き合い下さい」

「あぁじゃあ」


そう言うと、彼女は微笑みながら、奥にある小さな給湯室に静かにお茶を淹れに行く。


この辺は、奈緒さんとは違う所なんだよな。


奈緒さんは、小さいから『ちょこちょこ』って感じなんだが。

真上さんは、そんなに小さくないから『しなりしなり』って感じなんだ。


当然、どっちが、どうって話じゃないんだがな。

真上さんって、一挙手一動足がスゲェ女らしいんだよな。


まぁ、彼女のこう言う所が『危険』だって、アイツ等は言いたかったんだろうな。

確かに、こうやって改めて真上さんを見たら、そう言う意見が出るのも、強ちわからなくもないからな。


まぁつっても、その程度の話だがな。


***


 そうこうしていると、奥から真上さんの声が聞こえて来る。



「倉津さん。宜しかったら、奥にどうぞ」

「はいッス」


これも、いつもの事なんだがな。

彼女は、必ず、奥に用意された小さなテーブルに呼んでくれる。


勿論、変な意味は含まれて無いぞ。

多分『店内じゃ落ち着かないだろう』って言う、彼女の也の配慮なのだろう。


どこまでも気遣いが出来る人だ。


さて、早く行って、ご馳走になろ。


あぁそれと……



「いつも、こんな狭い所で申し訳ないですけど。どうぞ、そちらにお掛けになって下さい」

「あぁ、すんません。あぁっと、これ、良かったら、食べて下さい」


俺は、真上さんの店に来る前に、地元のケーキ屋で買ったケーキを差し出した。


因みにだけどな、このケーキは、地元じゃ、結構、有名な店のケーキなんだよ。


木元って言うおっさんが家族経営してる『メルク』って、昔からあるケーキ屋が作ってるケーキなんだがな。

最近、TVで取り上げられて話題になってるから、遠方からワザワザ買いに来る奴が居る程の有名な店なんだよな。


だから、いつも直ぐに商品は即売してしまう。


なら、なんで、俺が買えたかと言うとだな。

木元奈津樹ってオッサンの娘が、昔からの知り合いだから、簡単に買えただけの事だ。


そんな単純な話だ。


あぁ、それと序に言っておくがな。

こんな物を持って来たからと言って、真上さんに対して下心なんてものは無いからな。



「ご丁寧に、ありがとうございます。ですが、これ、お高かったんじゃないですか?」

「いやいや、そんなに高くないッス。俺の小遣いでも買える程度の物ッスから。心配ないッス」

「そう……ですか。では、遠慮なく頂きますね」

「どうぞどうぞ」

「あぁっと、では、早速、頂きたいと思いますので。私、お皿に盛り付けてまいりますね」

「はいはい」

「クスッ、少々お待ち下さいね」


真上さんは、俺の返事を聞くと、微笑んだままケーキの箱を持って、再び、奥の給湯室に消えて行く。


ホント、良い笑顔ッスな。


さてさて、さっきの真上さんとの会話で、少し、このケーキの金額が気になったと思うんだがな。


―――なに?興味ないだと?


奮発して買ったんだから、ちょっとは興味持って聞け!!

(↑自慢したいだけの俺)


実は、あのケーキな。

ぶっちゃけて言うと1個1,200円程するんだよな。


少し驚いたかも知れないけど、俺は、なにも嘘は言って無い。

俺にとっちゃあ1,200円なんぞ、親父の仕事さえをすりゃ、幾らでも入ってくる。


それ=俺の小遣いなんだから、これは決して嘘じゃない。


まぁそれ以前に、値段の問題じゃねぇんだよな。

美味しいものを食べて、真上さんさえ喜んでくれれば、それで満足。


金なんてもんは、どこかで稼げば良いんだからな。


この『笑顔』の方が、数倍大切だ。



「はい、お待たせしました。どうぞ」

「あぁっと、俺の分とか持って来なくて良かったッスのに。家の人に食べて貰おうと思って、買って来ただけなんッスから」

「あぁっと、そう……でしたか。あぁでも、ウチの両親、交通事故で、今、入院してるもので」

「ご両親が入院してるんッスか!!じゃ、じゃあ店は、どうやって切り盛りしてるんッスか?」

「えぇっと、私が1人で……はい」


この人……そんな辛い目に遭ってるって言うのに、いつも、あんな癒される笑顔を、みんなに振り撒いてくれてたって言うのか?


オイオイ、どこまで凄い人なんだよ?


けど、そんな話を聞いたら、余計に真上さんの事を放って置けないよな。


最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>


本当に真上さんは、強くも、出来た子ですね。

自身が、どんな悲惨な状況下にあっても、それを一切表に出さず。

仕事に、ご両親の看護にと奔走し、人に対する心遣いすらも忘れない。


まさに神仏の如き精神の持ち主の様です。


ですが、そんな彼女だからこそ。

その精神が眩しく見え『自分だけの物にしたい』っと言う願望を異性に巡らせてしまう『魔性の女』な訳でもあるのかも知れません。


そんな『神仏が如き魔性の女』な真上さんに対して、本当に倉津君は彼女に嵌る事無く、事なきを得れるのか?


その様子の一部始終を、次回は書いて行きたいと思いますので。

また良かったら遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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