●前回のおさらい●
恋人である奈緒さんの横浜アリーナでのライブを忘れていた眞子。
当然、そんな馬鹿げた行為に崇秀は呆れかえるが。
それを踏まえても、何故、自分が此処に連れて来られたのかよく理解出来ていない眞子であった(笑)
……ってな訳でですね。
アリーナ内にあるスタッフ専用の廊下をコツコツと歩きながら。
崇秀が、此処に、私を連れて来た理由を話してくれたんだけどね。
いつも通り……いや!!今回に限っては、いつもにも増して無茶苦茶な話なのよ。
なんか崇秀が言うにはね……
今日、此処でライブをする奈緒さんのバックバンドの『ギター』と『ベース』が、練習中に必死になりすぎてステージから落ちたんだって。
当然、そうやって怪我をしてしまった以上、救急車で病院に運ばれて、そのまま入院。
そんでね。
此処からが一番問題なんだけど。
崇秀の作った『GUILD』って機関にはね。
アクシデントが起こった時の為に『GUILD特有のバンドお助けシステム』ってのがあるのよ。
まぁ、この『お助けシステム』を簡潔に言うと。
バンドに怪我人が出た時や、体調不良を起した時の為に、近くに居るGUILD登録者が、出演出来ない人に代わってステージに上がるって言うシステムなのよ。
だから、怪我人が出てしまって困った奈緒さんは、それを崇秀に急遽希望。
ほんで、奈緒さんが指名して来たのが『崇秀』と『私』って事らしいのよね……
・・・・・・
うん……こんなのは流石に、絶対に無理だね。
こんな大舞台で私が、プロのミュージシャンの大役なんて勤められる筈がない。
だって、だって、考えてもみなよ。
此処、横浜アリーナだよアリーナ……満員になったら、一体、集客数が何人になると思ってるのよ?
万単位だよ万単位!!
最大で17,000人だよ!!
しかも、ライブチケットの売れ行きを聞いたら……『ソールド・アウト』だよ。
そんなの無理に決まってんじゃん!!
大体ねぇ。
そんなに大勢の人の前で、私なんかのヘチョイ演奏を聞かせる訳にいかないじゃない!!
無理無理無理無理無理無理……
「ちょ、ちょっと崇秀。そんな無茶な事を、急に言われても困るって。常識的に考えても、私が、そんな大勢の前で演奏出来る訳ないじゃない」
「じゃあ、常識的に考えんな。はい、そんで解決」
「いや、そう言う問題じゃなくて……ねっ、ねっ、私の言いたい事ぐらいならわかるよね」
うん、今回に至っては、崇秀になに言われても無理。
しかも、私、普段着のままだし……ねぇ。
「あっそ。じゃあ、しょうがねぇな。オマエとの遊びは、此処で終わりだ。チケットやるから観客席にでも行って来い」
「えっ?でもでも、ベースはどうするの?」
「んあ?あぁ、それなら向井さんが、唄いながら、ルーズにベースを弾きゃあ良いんじゃねぇの?こんなの、別に大した問題じゃねぇし」
「あぁ、そうか……だよね」
……そうだよね。
元々奈緒さんの方が、私なんかより数十倍上手くベースを弾けるんだから、多少、ボーカル・ベース特有のルーズに弾いたとしても、特に問題はない。
此処で無理まで、私である必要性なんて、どこにも無いよね。
うんうん。
奈緒さんに迷惑が掛からないなら……じゃあ、それで納得。
「但しだ。オマエが、本当にそれで良いならな」
「なんで?別に、それで構わないけど……どういう事?」
「んあ?あぁ、向井さんと、オマエじゃあ、知名度に雲泥の差が在り過ぎるから、今後もセッション出来るチャンスは極めて少ない。それでもオマエが、なんとも思わないなら、なにも言わず、そのまま観客席に行きゃあ良いんじゃねぇのか。……って話だ」
「あっ……うん、そうなんだけどね。言いたい事は解らなくもないけどさぁ」
「そっかよ。まぁただ、こう言う機会だから一言だけ言って置くぞ。何故、向井さんは『今日休みの筈の遠藤さん』を指名せず。敢えて『倉津眞子』オマエを指名したんだろうな。……まぁ、やらないオマエには、こんな話、なんの関係もない話なのかもしれないけどな」
奈緒さんとかぁ……
う~~~ん、本音で言えば100%一緒に弾きたいと言えば、弾きたいんだけどね。
流石に、この状況は厳しすぎる。
ちょっと無理しか無い様な気がする。
ヤッパ、現状を把握しても……無理かな?
「あぁ、うん。奈緒さんの気持ちは有り難いんだけど。……これは、ちょっと無理だよ。私なんかじゃ、奈緒さんに迷惑掛けるだけだし……」
「あっそ。じゃあな、チキンちゃん。テメェとは、この分水嶺で、お別れだ。バイバ~~イなぁ~~。チキン、チキ~~ン」
「なっ!!なにも、そんな言い方しなくても……」
「やかましいわ。……テメェの彼女の指名を受けられない様なヘタレは、最初からステージに上がる資格なんてねぇ。テメェは、向井さんのファン倶楽部の奴等と一緒になって、必至にペンライトでも振って客席から応援してろ。それがテメェにはお似あいだ……このまぬけ」
なにも、そこまで言わなくても……
私だって……崇秀ぐらいの実力があったら、なにも恐れず堂々とステージインして、奈緒さんのサポートが出来るだろうけどさぁ。
私には、そんな『訳の解らない化物みたいな実力』なんか無いもん。
第一、奈緒さんの歌を聞きに来た観客が納得しないよ。
「私だって……私だって、奈緒さんと一緒に弾きたいよ。でも、どう考えても無理なんだもん」
「知るか、モブ雑魚が。……テメェの実力の無さを嘆くんなら、他所でやれ。ウザいんだよ、そういうの」
「ウザイってなによ?今まで、人を散々引っぱり回しておいて、なによ、その言い草?何様?」
「前から言ってるけど『俺様』……若しくは『世界が認める崇秀様』だ。わかったか背景モブ?」
もぉ……さっきまで、あんなに優しかったのに。
なんで急に、そんなに意地の悪い言い方ばっかりするんだろ?
楽器のプレイヤーに大きな実力差が有ったら、演奏全体にも影響が出て、酷いムラが出来るのなんて常識なのに。
そんな事したら、折角のライブが、滅茶苦茶になって、良いライブになる訳ないじゃない。
『世界が認める崇秀様』ともあろう物が、そんな事もわかんないの?
アンタ、馬鹿じゃないの?
「あっそぉ。……じゃあ、序に聞くけど。プレイヤー同士の実力の差は、どうやって埋めるつもりなのよ。答えてよ」
「ヤダね。ベースも弾けない様なモブ壁画のオマエには、なんも関係ねぇ話だろ。モブに話す言葉なんて、なんにもねぇよ」
いい加減、腹が立つなぁ……
我慢してたけど、もぉ限界!!
勝手な事を言い過ぎだよ!!
自分勝手にも程がある!!
「なによケチ!!それぐらい教えてくれても良いじゃない!!」
「別にケチじゃねぇし。背景モブとは、なにも話したくねぇだけだし」
「……あぁ、そうか、そうか、そうなんだ。自分じゃ、なにもわかんないから、そんな事を言ってんだぁ~~。ごめんねぇ~~、わかんない事を聞いちゃって」
「マジで一回死ね、このクズ。……オマエ、実力云々を、俺や、向井さんが、本当に理解してないとでも思ってるのか?もし本気で、そう思ってるなら……オマエは、正真正銘の、本当にクズだな」
「どういう事よ?アンタなにが言いたいのよ!!」
「いい加減にしろよな、この便所の糞カスが!!向井さんが、なにを思って、オマエを指名したと思ってやがるんだ。『同情』か『2人で演奏を楽しみたい』からか。……そうじゃねぇだろ。あの子は『テメェの思い出を上書きしてやろう』って思たからこそ、わざわざオマエを指名したんのじゃねぇのかよ?恋人を名乗るんならなぁ、それぐらいの事、即座に気付いてやれよ。馬鹿津じゃねぇんだから」
実力が解った上での指名……
それに『思い出の上書き』……
・・・・・・
あぁ!!そっかぁ!!
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>
眞子……倉津君同様に間抜けですね。
まぁ言うて、眞子自体が本人なのですから、これは仕方がないのですが……
最低限、恋人を名乗るのなら、少しぐらい彼女の予定を把握していても良い物だと思います。
さてさて、そんな中。
崇秀の説明で眞子が、なにやら気付いたようですが。
本当にちゃんと気付けているのか?
その辺を次回は書いていきたいと思いますので。
良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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