最後まで奏でられなかった音楽

どこかお間抜けDQNな不良さんのゆったり更生日誌(笑)
殴り書き書店
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024 不良さん 本日一回目の喧嘩の切欠を作ってしまう

公開日時: 2021年3月1日(月) 23:29
更新日時: 2022年11月4日(金) 20:35
文字数:3,634

●前回のおさらい●

学校でロクに授業も受けずに、寝捲る不良さん。

それを起こしに来た山中と一悶着あった末、漸く約束した第二音楽室に向かい始める。


そして到着後、何故か、不審に思った山中に第二音楽室に入る事を止められる。


一体、音楽室の中では何が起こっているのか?

 山中の制止を無視して、崇秀が待ってるであろう第二音楽室の扉を開こうとしたんだが……



「待て待て」

「なんだよ?」

「いやな、なんかおかしいねん」

「なにがだよ?」

「……どうにも俺が聞いた範囲じゃ、中に居る奴の声からして、どうも女みたいやねん」


はぁ?それこそ珍しくもない。

馬鹿秀が女を連れ込んでるなんて、そんなもん日常茶飯事……いつもの事だ。


寧ろ、アイツが、女と居ない時なんか有るのか?



「なに言ってやがる。んなもん、いつもの事だろうがぁ」

「まぁ確かに、言われてみたら、そやな。……そやけど、そうなると、アイツが『女とバンド組でる』って事になるんやけど……なんか変やないか?いまいちピンっとこえへんねんけど」

「なら、どうせまた、どっかの女を誑し込んでんじゃねぇのか?」

「いや、そやない。そう言う事を言うてるんやないやわ」

「じゃあなんだよ。それ以外に何が考えられんだよ」


今日は、やけにドイツもコイツも変な事ばかり言いやがるな。

馬鹿秀女とバンドするのが、そんなに驚くほど変な事なのか?


それこそ違う……勘違いだろ。

オマエ、あいつの事をなにも解ってねぇぞ。


アイツって、ロクデモナイ生き物はな。

昔から、男だろうと、女だろうと、自分に利益を齎すもんだったら、何でも受け入れるんだよ。

それに才能の有る奴を見つけたら、蛇の様に絶対離さない。


アイツは、そう言う効率を重視する奴だよ。


―――これは、俺の自分勝手な見解だがな。


それでも山中は、反論の意を変えない様子だ。



「特になんも無いんやけどやな。なんて言うんか、秀のイメージに合えへん事ないか?」

「まぁ確かに、イメージの話だけで言えば、そうなんだろうがよぉ。アイツは『超才能大好き人間』だからな。だったら、その中に居る女には、噂通りのスゲェ才能でもあんじゃねぇのか?」

「それは言い得て妙やけど……ホンマに、それだけやろか?」

「まぁアイツは、元々わかんねぇトコだらけの奴だからな。流石に断言は出来ねぇがな」

「へぇ~~~、そやかて付き合い長いと、他人同士でも、色々見えるもんやな」

「まぁよ……まぁそんな事より、さっさと中に入んぞ」

「そやな」


どうやら山中も納得した様なので、漸く、第二音楽室のボロイ扉を思い切り開く。


『ガラッ!!』


『ピシャッ!!』



「ちぃ~っす、お疲れぇ」

「おぉ、倉津か、やけに遅かったな……なんかやってたのか?」

「悪ぃな。ちょっと寝過ごしちまった」

「オマエ、それ、一寸ちゃうやろ。授業中、ズッと寝とったやないけ」

「倉津……オマエ、折角、学校に顔を出してるんなら、マジで少しは勉強しろよな。そのままじゃあ、馬鹿を通り越して、その先の訳のわからん生き物になっちまうぞ」

「勉強するぐれぇなら、その訳の解らん生き物になった方がマシだ」

「じゃあ、是非ともなってくれ。楽しみにしてる」

「多分、その訳の解らん生き物って、ヤクザだぞ」

「そっか。そりゃあ良かったな。じゃあ、ほぼ確定じゃねぇか」

「まぁそう言うこった」


やくざ=訳の解らん生き物。


まぁ正解だろ。


自分で言うのもなんだが、俺もそう思うぞ。



「んな事より、オマエに惚れ込んだ才能とやらは、どこに居るんだよ?」

「あぁ悪ぃ、忘れてた。おい、アリス」


アリスだと?

外人のねぇちゃんなんて、この学校に居たか?


交換留学生を受け入れるほど、この糞中学校の品が良いとも思えねぇし……一体、誰の事だよ?


俺の疑問に反して、その女は、崇秀の声に反応する事無く一向に出てくる様子はない。


なんだ、なんだ?

崇秀の奴、とうとう馬鹿を拗らせて、おかしな幻覚でも見える様になっちまったのか?



「出て来ねぇな。……ってか、オマエさぁ、頭大丈夫か?変な薬でもやってんじゃねぇだろうな?もしそうなら、シャブ専門のヤミ医者紹介するぞ」

「馬鹿言ってんじゃねぇぞ。アリスは、ちゃんと居るつぅの」


可哀想な崇秀。

現実と、妄想の区別もつかなくない程重症なのか?


でも、安心しろ。

オマエが治療不可能なキチガイになったとしても、今まで通り、俺達はダチだ。

それだけは何も変わらねぇ。


だから今は、大人しく病院に行け。

それが今のお前には、一番必要な事だ。


あぁそれとな。

オマエのおふくろさんの事も心配するな。

静流さんには、今まで色々世話に成ってる分、俺が、絶対に守ってやるからな。


心置きなく、治療に専念するんだぞ。



「重度の幻覚症状か……残念だが、オマエ、本当に心の病に掛かってるみたいだな。今、救急車を呼んでやるからな。大人しく病院行け」

「あのなぁ」

「もぉ何も言うな……良い医者に巡り合えると良いな」

「だから、聞けよ」

「なんだ崇秀君。最後に別れの挨拶か?」

「なにが君だよ。オマエ、馬鹿だろ。心配しなくても、俺は心の病なんぞ患っちゃいネェよ」

「病気の奴は、みんな、そう言うんだぞ……まぁ、オマエが入院しても、オマエのおふくろさんの事だけは、俺が身を挺して守ってやるからな。心配すんな」

「『!!』……オマエさぁ、もぉそろそろ黙れな。さっきから聞いてりゃ、なに似合わねぇ偽善者ゴッコしてやがんだよ?ムカツクったらありゃしねぇ」


おっ?なんか怒ってるな。

けど、もぅ少しぐらい、遊ばせろ……これは命令だ。


大体、その遊ぶ権利は、俺と山中には有る筈だぞ。

一番最初に『第二音楽室で遊ぼうぜ』って言い出したのは、オマエな訳だろ。


だからもぅ少し、からかわせてくれても、罰はあたんねぇんじゃねぇか?


それが言い出しっぺの、お前の背負わされた宿命だ。

それぐらいは『まっとうしろ』


……これは、絶対服従の命令だ。



「まぁまぁ、もぉそれぐらいにしとけや、マコ。この遊び、俺も飽きたし……時間勿体無いで」

「チッ、しゃあねぇな。山中に免じて辞めてやるよ」

「あぁ?なにが『しゃあねぇな』だ。あんま調子こいた事ばっかり言ってやがると、仕舞いにゃあ、向井を口説き落とすぞ」

「はぁ?ちょ!!オッ、オマエ、そりゃあ関係ねぇだろ!!」


なんで、そう言う事を直ぐに言かな、オマエは……今の話と、全然関係ねぇじゃねぇか!!

それに、向井さんを当て馬に使ってんじゃねぇぞ。


……気分悪ぃな。



「有るも有る。関係大有りだ」

「オイ!!もぉ解ったから、辞めとけって秀。からかわれてムカツクんは解るけど、それ以上は辞めとけ」

「んだと?なんの関係があんだよ!!意味の訳わかんねぇ事をのたまわってんじゃねぇぞ!!」

「マコも辞め。喧嘩しても、なんも始まらんやろ」

「黙ってろ、山中。これは、俺とコイツの問題だ。テメェには関係ねぇ」


ハン!!偉そうな口叩いてんじゃねぇぞ、ボケ。


高々、シャブ中扱いしただけじゃねぇか。

んなもんぐらいで、脳天まで熱くなってんじゃねぇぞ。


そんな事よりテメェは、向井さんを口説いて、どうするつもりなんだよ?

これ以上変な事を言って、向井さんの事を穢しやがったら承知しねぇぞ。



「関係ねぇのは、山中じゃなくて、向井さんだろがぁ。そんな事もわかんねぇのか?」

「あぁ?なに言ってやがんだ、オマエ……」

「オイ!!もぉ解ったから、それだけは辞め、秀!!それだけは、絶対に言うたらアカン!!」

「さっきよぉ。俺は、ツレに馬鹿にされたんだよなぁ?だったらよぉ、そのツレの大好きな女で、その傷を癒すのが順当なんじゃねぇのか?それが最高の復讐ってもんだろうに」

「はぁ?テメェはぁ!!自分でなに言ってんのか、わかってんだろうな」

「なんだよ?口惜しかったら、向井を口説いてみろよ。このヘタレがぁ。出来ねぇんだったら、家に帰ってヘンズリでも扱いてろ」


この野郎、まだ言いやがるか!!

しかも、そこまで言いやがるか!!



「向井さんは関係ねぇって、言ってんだろうがぁよぉ!!」

「向井さん・向井さん・向井さん、テメェが言われて嫌がるから、その名前を何回も出してんだよ。わかんねぇのか、ボケ」

「クソッタレがぁ!!俺が悪いんなら、そう言えば良いだろうがぁよぉ。何で関係ない向井さんの名前を出す必要があるんだよ。テメェのやり口は、陰険過ぎんぞ」

「あぁ?じゃあなんでテメェは、俺のお袋を引き合いに出した……それこそ関係ねぇだろがよぉ」


あぁ……そうか。

コイツが、ここまで怒るのは、なんか変だとは思っていたんだが……俺が、おふくろさんの事を言ったからか。


コイツのおふくろさんは、親父さんが、どこかに蒸発しちまってからと言うもの、崇秀を女手1つで育ててきた。

だから、コイツは、自分の母親の面倒を、自分じゃない他人が見る様な事を言われるのを、一番嫌う。


逆鱗に触れちまった訳だな。


はぁ~……だったら、どうすっかな?


確かに、俺は、向井さんが好きだが。

現段階ではベースの師弟関係には有っても、今の所は、全くの赤の他人。


それに引き換え、俺が、崇秀に言った売り言葉は、おふくろさんの話。

即ち、血の繋がった身内。

これじゃあ、比べ様がない位、圧倒的に俺が悪い。


なら、謝るか?

でも、この状況で謝っても、意味があるのか?


俺は、心の中で葛藤を繰り返す。


そんな俺が困り果てた状態の際に、山中が口を挟んだ。


なんだ?


最後までお付き合いありがとうございました<(_ _)>


倉津君、やらかしちゃいましたね。

崇秀の一番触れてはいけない所を、モロに触れちゃいましたね(笑)


お陰で喧嘩に成っちゃいました。


まぁでも、調子に乗った倉津君も悪いのですが、所詮は喧嘩両成敗。

幾ら逆鱗に触れたとは言え『向井さんを出汁に使った崇秀』も大人げないですね。


だから思う存分、どつき合いでも何でもしてください(笑)


さて、この喧嘩、どう収めるのか?

最後に山中君は、何を話し始めたのか?


それは次回の講釈と言う事で……


また良かったら、遊びに来てくださいねぇ(*'ω'*)ノ

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