最後まで奏でられなかった音楽

どこかお間抜けDQNな不良さんのゆったり更生日誌(笑)
殴り書き書店
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385 願いは届くか!!

公開日時: 2022年2月26日(土) 00:21
更新日時: 2022年12月27日(火) 19:01
文字数:3,595

●前回のおさらい●


 色々な事がありながらも、漸く本題である『追加のメイド服の話』に入る倉津君でした(笑)

「あっ、あのッスね。実は非常に言い難い話なんですが。……聞くだけでも、聞いて貰えますか?」

「はい、なんなりとおっしゃって下さい。私に出来る事でしたら、なんでもお手伝いさせて頂きますよ」


即答だよ……


この人、頼まれ事で『嫌』って言葉を知らないのか?



「あっ、あのッスね」

「はい、なんでしょうか?遠慮なさらずに、おっしゃって下さいね」

「いや、あのッスね。実はッスね。メイド服を5着ほど追加注文したいんッスけど……出来ますか?」

「メイド服ですか?えぇっと……あっ、はい、大丈夫ですよ。ですが、期間的にも少しギリギリなると思いますので、文化祭当日の受け渡しになりますが、それでも宜しいでしょうか?」

「勿論ッスよ!!コッチが無理言ってるんッスから、それぐらい当然ですよ」

「はい。でしたら、喜んで承りますね」


うわっ、また即答だ。


けど、これは、コチラが一方的に無理を押してるんだから。

せめて此処では、追加の金ぐらいはキッチリ受け取って貰わなきゃな。


これ以上真上さんに、金銭的な負担を書ける訳にもいかないしな。



「あの、流石に、追加料金は受け取ってくれますよね」

「要りませんよ」


出たよ。


やっぱり、この返事が返って来ちゃったよ。



「いやいやいやいや、真上さん、流石に、それは困るッス。こんな無茶な注文を、タダでやって貰う訳には行きませんからね」

「何故でしょうか?友達が困ってられるのに、助けないなんて、あまりにも理不尽なのではないでしょうか?倉津さんも、さっき、そうおっしゃいましたよね」


あぁダメだな。


確かに、俺は、そう言ったかもしれないッスけど。

それはプライベートの話で、ビジネスが絡んでる話じゃないんッスよ。


この人、武藤と、俺の話を全然理解してない様だ。


ってか、こりゃあ既に、染み付いた『悪い癖』だな。



「あのッスね、真上さん」

「はい?なんでしょうか?」

「それはそれ。これはこれッスよ」

「どうして分ける必要が有るんですか?倉津さんが困ってられるのには、なにも変わらない様に思うんですが」

「いや、これはッスね。前回の販促品同様、商売として頼んでるんッスよ。だから、お金を取らないなんてダメっすよ。論外ッス」

「はぁ、そうですか。……でしたら、一着3000円ほどで、お作りしますね。それで良いですよね」


3000円って……なんで、手作りの商品が、そんな値段になるんッスか?


安さ爆発!!ドン〇ホーテのペラペラメイド服でも、そんな金額じゃ買えないッスよ!!



「ダメです」

「どうして……ですか?倉津さんから、材料費を、ちゃんと頂いてるのですから、問題無いと思いますが」

「真上さん。それ、商売じゃないッスよ。それに自分の手作業が0円って、おかしくないですか?」

「あっ、はい。全然おかしくないですよ」


う~~~ん、もぉ困った人だなぁ。



「あの、なんで、そんな風に思うんですか?」

「えっ?だって倉津さんは、以前お越し頂いた時に『大口の仕事』を依頼して頂きました。ですから『サービスしなきゃいけない』っと思ったんですが……いけなかったでしょうか?」

「ぐっ!!」


俺には無い発想の、変な理詰めで返された。


流石、お客さんを第一に考え『真心』をモットウにするOHKAブランドだ。

ヤクザ稼業な俺には二の句が出ねぇ。


けど、此処で簡単に折れちゃあいけない。

GIVE・UPは、もう少し抵抗した後だ。



「どうかしましたか?」

「いや、あのッスね。真上さんの気持ちは非常に嬉しいッスけど。材料費だけじゃ割が合わないでしょ。せめて、もう少し色を付けないと、ヤッパ商売じゃないッスよ」

「そうですか。……では、手数料として、一枚につき500円下さい。3500円なら良いですよね?」

「いや、あのねぇ、真上さん」

「あっ、はい、なんでしょうか?まだ、なにか不都合な点でも有りましたか?」

「いや、あんなに丁寧な仕事が500円って、おかしくないですか?」

「おかしくないですよ」


はぁ~~~、ダメか。


……この人は、根本的な部分が『献身の心』で構成されてる。

こりゃあ、なにを言っても聞きそうに無いな。


じゃあ、不本意だが、武藤方式を使うしかないか。



「解りましたよ。じゃあ、3500円でお願いします」

「あっ、はい、喜んで」


満面の笑顔で即答。

自分の意志が通せて満足の様だ。


俺は、そんな彼女を見ながら、8000×5=40000円を手渡す。

自分の見積もりでは、これが最低価格だと判断したからだ。



「あっ、あの、金額を大幅に間違われてますが」

「あぁ、良いんッスよ。俺も、今後の為に、真上さんに先行投資しただけですから……勿論、真上さんの事を信用しての事なんですから、受け取ってくれますよね」

「えっ?そんなのズルイです。嘘付かれたみたいで哀しいです」

「なんも嘘なんか言ってないッスよ。本気で、そう思ってるからこそ、こうやって金を出すんですよ。俺、こう見えても、人を見る目は有るつもりですよ」

「ですが……」

「真上さん。仕事と報酬は等価交換ですよ。それ以下でも以上でも、どちらかが気分の悪い想いをする。だから、これは受け取らないとダメなんですよ」

「私……倉津さんに、嫌な想いをさせてしまいましたか?」


こう言う風に言われると、非常に辛いな。

俺は、武藤ほど精神力が強くないから、真上さんの、この表情には耐えかねる。


けどだな、此処は心を鬼にして話を続けよう。



「全然してないッスよ」


ハイ、無理でした。


そんな武藤みたいな真似を、俺に出来る訳ねぇじゃん!!



「でしたら……」

「あぁ、もぅ正直に言いますよ」

「えっ?えっ?」

「俺は、真上さんの事が気に入ったから、良い格好をしたいだけなんです。……だから、させて下さい」

「なっ、なにをですか?あっ、あの、私は裁縫職人ですから、Hな事は、ちょっと……そっ、それに、倉津さんとは知り合ったばかりですし、まだそう言うのは……」


だぁあぁあぁ~~~!!


違うちゅう~~の!!


ソッチじゃないッスよ!!



「違うッス!!そう言うんじゃなくて、真上さんに良い格好をしたいだけなんッス」

「へっ?あっ、あの、あの、ごめんなさい、ごめんなさい。あぁもぉ、今、自分で言った事を思い返しただけで、自意識過剰みたいで恥ずかしいです」


あぁ。


恥ずかしさのあまり。

椅子に足を乗せて、体育座り見たいな体勢になって小さく丸まっちゃったよ。


こりゃあ、早くフォローしねぇとな。



「いや、あの、そのッスね。心配しなくても、勘違いは誰にでもあるかと思いますから。それに、俺も言葉足らずだったと思いますし」

「・・・・・・」

「いや、あの……真上さん?聞いてくれてます?」

「……お願いですから、コッチを見ないで下さい」


ダメだ。


小さく丸まったまま、そう言った後。

耳を塞いじゃって、この世界から、完全に自分を遮断しちゃったよ。


こう言うのを見てるとだな。

無粋な男には解らない処だが、女の子にとっちゃあ、相当、恥ずかしいもんなんだろうな。


真上さんの行動も解らなくも無いな。


まぁ真上さんが、この状態になっちまったんだったら、しょうがないか……

このまま待ってても、なにも聞いてくれそうにないし、詳細と、謝罪をメモに書こ。


最低限度では有るが、こうしときゃ、真上さんも納得してくれるだろう。


どうしてでも、真上さんとの、この関係を崩したくないからな。


これで上手く行くと願うしかないな。



……んな訳でだ。

本日も服が完売している様なので。

俺は近くにあった箱から、明日の分のディスプレイを簡単に済まし、店のシャッターを表から閉める。

(↑既に週5で入ってるバイト並)


けど、幾ら、こんな事をしてもだな。

根本の部分が、なにも解決してない様な気分なので。

俺は後ろ髪を引かれながら、丸まったままの真上さんを確認してみたが微動だにしてない。


なら、仕方がない。

此処は諦めにも似た気持ちで、京急川崎駅から帰路に着いた。


いや、着くしかなかった。


しかしまぁ、電車に揺られながら思ったんだが。

今日1日……いや、放課後だけで、ドンだけ問題が発生したんだろうか?


①カジが話したクソ親父の問題に始って。

②カジが、奈緒さんの正体に気付いてしまったので対応策を講じなきゃいけなくなった。

③それに、カジが変なタイミングで千尋に対しての告白したから、それの対処法も考えなきゃいけない。

④んで、川崎に着いたら着いたで、武藤に好きな奴が居る事が判明するし。

⑤俺が余計な事を言ったから、真上さんの気持ちの整理も、いずれ着けなきゃいけない。

⑥んで最後に⑤の心境の真上さんが、メイド服を完成させる事が出来るのか?


文化祭5日前にして、この山積みの問題は何?


まぁ①と④は、直接文化祭に関係ないから良いけどな。

その他の問題は、俺の持って行き方次第では、各々のテンションに関わる問題。


なんとかしなきゃいけないのが現実だな。



全部は無理だろうけど……


いや、ひょっとしたら、俺なんかじゃ1つも無理かも……



俺ってダメ過ぎるな。


最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>

これにて第一章・第八話『多方向に拡大する嵐』はお仕舞に成るのですが……


文化祭の事だけでも、結構手一杯なのにも関わらず。

学校でも、プライベートでも、次から次へと問題が発生してきてるみたいですね(笑)


まぁでも、問題があると言う事は、解決方法もあると言う事。

ならば、倉津君自身が色々考えて、全ての問題を切り抜けて行って欲しいものですね♪


……っとまぁ、そんな訳でございまして。

次回第九話では『これ……ダメ過ぎんだろ』っと言うお話が始まります。


どんな話になるのかは、まだ秘密ですが。

結構、来るものがある話に成ると思いますので、良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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