最後まで奏でられなかった音楽

どこかお間抜けDQNな不良さんのゆったり更生日誌(笑)
殴り書き書店
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293 不良さん、武藤マジックに見惚れる

公開日時: 2021年11月26日(金) 00:21
更新日時: 2022年12月18日(日) 14:42
文字数:3,639

●前回のおさらい●


 崇秀が女子更衣室に堂々と入って行った後。

武藤要と言う、恐ろしく可憐な子供遭遇する倉津君。


だが、その可憐な子供の正体は……逗子市で名を馳せた不良だった。


そして、そんな見た目に勝手に騙された倉津君は、武藤ととある勝負をして……武藤の舎弟にされてしまう(笑)

その武藤からの最初の指示で、奴の鞄を持ち、倉津君は一緒に女子更衣室に入って行くのだった。


すると……

「きゃああぁあぁ~~~ッ!!可愛い。この子なに?この子なに?どこの子?」


一瞬、そんな悲鳴が上がり、俺に対する悲鳴かと焦ったのだが……それは、俺に対しての悲鳴ではなく、武藤とか言う奴に向けられた賞賛の悲鳴だった。


……あぁそう言えば、アホの樫田って『可愛いもの』が、矢鱈と好きだったな。

あの反応は、素直の件を思い出せば頷ける話だ(2話参照)。


けどなぁ……樫田のこの行為には、一抹の不安が残る。


なんせ相手が……



「おい、糞ブス。……俺様に気安くベタベタ触ってんじゃねぇよ。ブスが感染ったら、どうしてくれんだ?」

「へっ?」

「オマエの事だよ、ブサイク。ミットモネェ面を晒して、恥ずかしげも無く生きてんじゃねぇぞ」

「えっ?えっ?なに?」

「わかんねぇ、ブサイクだな。オマエの事を言ってんだよ、ブサイク。……俺様に気安く触んなよ」

「ちょ、ちょっと抱き付いただけなのに……酷い」


やっ、やっぱりだ……

武藤は、容赦なく、樫田に罵詈雑言を投げかけた。

しかも『ブス』『ブサイク』等と言う、女が一番言われて嫌な言葉を平然と言ってのけてやがる。


なんだコイツ?

デリカシーってもんがねぇのか?


樫田の奴、完全に凹んじまったじゃねぇか。



「オイオイ要。誰が千尋のテンション下げろつったよ。……オマエ、此処に、なにしに来たか忘れてねぇか?」

「うん?あぁ、そういやぁそうだったな。俺は、此処に居るブス共を綺麗にする為に来たんだった。……悪ぃ。あんまりにも鬱陶しかったもんで、つい、本音が出ちまった。悪ぃ悪ぃ」

「まぁ良いけどな。……思い出したんなら、さっさとやれな。時間ねぇぞ」

「はいはい、面倒臭ぇ」

「それとだ。……テメェでやった事だから、責任もって千尋のテンション戻しとけよ」

「はいよ。……面倒臭ぇ」


奥で、慌しく女の子のヘアーのセットをしていた崇秀が、武藤の樫田に対する暴走を止めた。

恐らく、これ以上の交流は時間の無駄だと踏んだのだろう。

実に『効率重視』のアイツが言いそうなセリフだ。


にしても……今、武藤の奴『綺麗にする』って言ったが、こんな性格の悪いクソチビに、なにが出来るんだ?

どう見積もっても、コイツの存在は、この場では、ただのマイナス要素にしか思えんのだが……


俺がそう考えながら、武藤と樫田を見ていると、武藤が口を開き始めた。



「おい、オマエ」

「……私?」

「あぁ、オマエだ」

「なっ、なに?」

「オマエさぁ。ブスだけど、良く見たら、思ったより悪くねぇな。だから俺が、今からもっと綺麗にしてやるから、ブスだって事をもう卑下しなくて良いぞ」

「えっ?綺麗にするって……なにするの?」

「メイキャップだ。オマエの潜在的な綺麗さを引き出してやる。ありがたく思え」


メイクアップ・アーティスト?


つぅかコイツって、確か、俺と同い年だったよな。

なのになんで、こんな偉そうなクソチビが、そんな高等な真似が出来るんだ?



「『ありがたく思え』って言われても……」

「イチイチるせぇメスだな。ゴチャゴチャ言ってねぇで、サッサと、そこに座れ。……これは命令だ」

「へっ?あっ、あの」

「るせぇつってんだろ。俺が座れって言ったら座れ。オマエは反抗せずに、俺の言う事だけを聞いてりゃ良いんだよ。……黙って言う事を聞いてりゃ、間違いなく綺麗にしてやるからよ」

「あっ……はい」


樫田は、言われるがままに椅子に座る。


しかしまぁ、こうやってみると、樫田の奴も女なんだな。

意外と『オラオラ系で命令される』と弱い節が見受けられる。


そんなやりとりの後、武藤は、千尋の前に鏡をセットして、ケープを掛けた。


にしても……武藤って、見た目に反して、スゲェオラオラ系だな。

ってかな、この様子からして、奴が生粋のサディストって巷の噂も、満更、嘘でもねぇみたいだな。


なら、俺の同年代の奴って、こんな狂った奴ばっかりなのか?



「オイ、オマエ、名前なんて言うんだ?」

「樫田……樫田千尋」

「千尋な。憶えておいてやる。ありがたく思え」

「あっと、はっ、はい」

「んで、千尋。そんなオマエに質問なんだが、オマエは、此処に居る他のブス共より綺麗になってみたいか?」

「えっ?えぇっと」

「良いから、正直にハッキリ答えろ。オマエは、此処に居る他のブス共より綺麗になりたいか?」

「あっ、はっ、はい」

「そっか。じゃあ綺麗にしてやる。……その代わり『お願いします武藤様』って言え」

「えっ?えぇっと……お願いします、武藤様」

「おぅ、わかった。後は全部、俺に任せとけ千尋」

「あっ、はい」


そう言って武藤は、樫田の頭を優しく撫でた。

そして樫田も満更じゃない様で、少し照れた様な表情をする。


なんだこれ?あの樫田が子猫の様に扱われてるぞ。



「よっしゃ。んじゃあ始めるか。……オイ、デカブツ、俺の商売道具を持って来い」


俺?俺だよな?


まぁ約束だから、一応、持って行ってやるか。



「おっ、ご苦労……序に、化粧ケースを開けて、7番からファンデーションを出してくれ。この女の肌、結構、手入れが悪い」

「おっ、おぅ」

「後な、ナチュラル系を上乗せするから、10番……あぁ16番も、一緒に出して置いてくれ」

「おっ、おい。どっ、どれだ?」


解る奴が聞けば、的確な指示なんだろうが。

俺には、なにを言ってのかさえサッパリわかんねぇ?


一応、ケースを開けてゴソゴソと捜索してはみるが、矢張り、どれが、どれだか、サッパリわからん。


つぅかな。

大体にして……ファンデーションって、なんなんだ?

なにが、どう、ナチュラル系なんだ?


女じゃねぇから、そんなもんわかんねぇよ!!


そうやって、俺がモタモタしていると……



「ちっ……使えねぇ奴だな。もぅ良い、オマエは邪魔だから、向こう行ってろ」


武藤は、俺を押し退けて、素早くファンデーションなる物を取り出す。


んで、思い切り睨んでいきやがった。


いや……これって……俺が悪いのか?

普通、化粧品がどれがどれだなんて、男がわかる訳ねぇと思うんだが……俺の知らない所で、化粧品ってのは、男にも浸透してるもんなのか?


全く、ドイツもコイツも無茶な事バッカリ言いやがるな。


流石にイラつく!!


……とは言ってもだな。

此処で俺が怒って、奴の邪魔する訳にも行かないので、一応、引き下がって様子を見てみる。


もし、何も出来無い様なら、文句の1つも言ってやる。


すると……武藤は、俺の事等、一切気にする素振りも見せずに、千尋のメイクを始める。

しかも奴は、絵の具のパレットの様な物を手に取り、筆みたいなものを口に咥えて、手際良く、樫田のメイクを仕上げていく。


それはまるで、一枚のキャンバスに、なにも下書きしないまま彩色を施していく感じだ。


あんな事、相当な色彩感覚が無きゃ出来ない事だぞ!!


スゲェ……言うだけの事はあるな。

(↑既に文句を言えない俺)



そして……数分も掛からない間に、樫田のメイクを済ませる。



「まっ、精々こんなもんか……オマエの面じゃ、この辺が限界だな」

「えっ?これ……」

「んだよ。なんか気に入らないのか?」

「いや、そうじゃなくて……これ、私なの?」

「ってりめぇだろ。オマエ程度の面でも、俺様に掛かれば、こんなもんだ」

「凄い……」

「『凄い』だと?んな事を言ってるから、オマエはブスなんだよ。こんな簡単なメイクに感心してんじゃねぇぞ」


いや、武藤……オマエ、マジで凄いって!!

千尋のクセに、千尋じゃねぇみたいな可愛さを引き出してるぞ!!



「あっ……そっか」

「それとなぁ。序に、良い事を教えといてやるよ」

「なっ、なに?」

「男でもな、女でもな。生まれた時から美人なんてのは稀なんだよ。『人は美人にゃ生まれない』『自分で考えて美人になるもんだ』……わかったかブス?これに感心して、ちっとは自分で努力しろ」

「あっ、はい」

「良し、良い子だ千尋。……んじゃあ、次のブスに行ってみるか。オイ、そこの根暗そうなブス、コッチ来い」


オラオラ健在。


武藤は、素直を指差して指名する。



「ぼっ、僕ですか?」

「オマエ以外、誰が居んだよ、根暗ブス。面倒臭ぇんだから2回も呼ばすな」

「あっ、あの、すみません」

「謝る暇があったらサッサと来い。どん臭ぇなぁ、根暗ブスは……さっき、仲居間が時間ねぇって言ってただろ。聞いてなかったのかよ?」

「……ごめんなさい」


可哀想に……ボロカスだな。


なにも女の子相手に、そこまで言わなくても良いんじゃねぇか?



「オイ、まだかよ?とれぇんだよ、オマエ」

「ごめんなさい……ぐすっ」


あぁ、泣き出した。


これはもぉ明らかに言い過ぎだろ!!



「ったく、なにビィビィ泣いてんだ、オマエ?オマエ、それでもプロか?他人の足引っ張ってんじゃねぇよ。ナメてんのか?」

「ごめ……ごめんなさい……」

「ったく、時間がねぇってのに、汚い顔を余計に汚くしやがって。……オマエ、もう後回し」

「ごめん……なさい……」


泣き崩れちまったよ。


そこに……



「オイ、じゃあ、そこの意地悪そうな女。コッチ来い」


っと言う声が聞こえる。


まさか……奈緒さんの事か?


もしそうならコイツ……奈緒さんに向って、なんちゅう物の言い方するんだ!!


最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>


口が悪い……

武藤君は、何処のまで行っても口が悪い(笑)


けど、口が悪い以上に、メーキャップの腕は確かでしたね。

この若さで、まさに実力主義の世界を生き抜いて来てるだけの事はあります。


さてさて、そんな口の悪い凄腕メーキャップアーティストである武藤君が、千尋ちゃんの次に指名したのは……奈緒さん。


彼女も大概、口が立つので、大丈夫なのでしょうか?


ですが、そこは次回の講釈。

また良かったら遊びに来て下さいねぇ~~~(*'ω'*)ノ

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