●前回のおさらい●
崇秀が女子更衣室に堂々と入って行った後。
武藤要と言う、恐ろしく可憐な子供遭遇する倉津君。
だが、その可憐な子供の正体は……逗子市で名を馳せた不良だった。
そして、そんな見た目に勝手に騙された倉津君は、武藤ととある勝負をして……武藤の舎弟にされてしまう(笑)
その武藤からの最初の指示で、奴の鞄を持ち、倉津君は一緒に女子更衣室に入って行くのだった。
すると……
「きゃああぁあぁ~~~ッ!!可愛い。この子なに?この子なに?どこの子?」
一瞬、そんな悲鳴が上がり、俺に対する悲鳴かと焦ったのだが……それは、俺に対しての悲鳴ではなく、武藤とか言う奴に向けられた賞賛の悲鳴だった。
……あぁそう言えば、アホの樫田って『可愛いもの』が、矢鱈と好きだったな。
あの反応は、素直の件を思い出せば頷ける話だ(2話参照)。
けどなぁ……樫田のこの行為には、一抹の不安が残る。
なんせ相手が……
「おい、糞ブス。……俺様に気安くベタベタ触ってんじゃねぇよ。ブスが感染ったら、どうしてくれんだ?」
「へっ?」
「オマエの事だよ、ブサイク。ミットモネェ面を晒して、恥ずかしげも無く生きてんじゃねぇぞ」
「えっ?えっ?なに?」
「わかんねぇ、ブサイクだな。オマエの事を言ってんだよ、ブサイク。……俺様に気安く触んなよ」
「ちょ、ちょっと抱き付いただけなのに……酷い」
やっ、やっぱりだ……
武藤は、容赦なく、樫田に罵詈雑言を投げかけた。
しかも『ブス』『ブサイク』等と言う、女が一番言われて嫌な言葉を平然と言ってのけてやがる。
なんだコイツ?
デリカシーってもんがねぇのか?
樫田の奴、完全に凹んじまったじゃねぇか。
「オイオイ要。誰が千尋のテンション下げろつったよ。……オマエ、此処に、なにしに来たか忘れてねぇか?」
「うん?あぁ、そういやぁそうだったな。俺は、此処に居るブス共を綺麗にする為に来たんだった。……悪ぃ。あんまりにも鬱陶しかったもんで、つい、本音が出ちまった。悪ぃ悪ぃ」
「まぁ良いけどな。……思い出したんなら、さっさとやれな。時間ねぇぞ」
「はいはい、面倒臭ぇ」
「それとだ。……テメェでやった事だから、責任もって千尋のテンション戻しとけよ」
「はいよ。……面倒臭ぇ」
奥で、慌しく女の子のヘアーのセットをしていた崇秀が、武藤の樫田に対する暴走を止めた。
恐らく、これ以上の交流は時間の無駄だと踏んだのだろう。
実に『効率重視』のアイツが言いそうなセリフだ。
にしても……今、武藤の奴『綺麗にする』って言ったが、こんな性格の悪いクソチビに、なにが出来るんだ?
どう見積もっても、コイツの存在は、この場では、ただのマイナス要素にしか思えんのだが……
俺がそう考えながら、武藤と樫田を見ていると、武藤が口を開き始めた。
「おい、オマエ」
「……私?」
「あぁ、オマエだ」
「なっ、なに?」
「オマエさぁ。ブスだけど、良く見たら、思ったより悪くねぇな。だから俺が、今からもっと綺麗にしてやるから、ブスだって事をもう卑下しなくて良いぞ」
「えっ?綺麗にするって……なにするの?」
「メイキャップだ。オマエの潜在的な綺麗さを引き出してやる。ありがたく思え」
メイクアップ・アーティスト?
つぅかコイツって、確か、俺と同い年だったよな。
なのになんで、こんな偉そうなクソチビが、そんな高等な真似が出来るんだ?
「『ありがたく思え』って言われても……」
「イチイチるせぇメスだな。ゴチャゴチャ言ってねぇで、サッサと、そこに座れ。……これは命令だ」
「へっ?あっ、あの」
「るせぇつってんだろ。俺が座れって言ったら座れ。オマエは反抗せずに、俺の言う事だけを聞いてりゃ良いんだよ。……黙って言う事を聞いてりゃ、間違いなく綺麗にしてやるからよ」
「あっ……はい」
樫田は、言われるがままに椅子に座る。
しかしまぁ、こうやってみると、樫田の奴も女なんだな。
意外と『オラオラ系で命令される』と弱い節が見受けられる。
そんなやりとりの後、武藤は、千尋の前に鏡をセットして、ケープを掛けた。
にしても……武藤って、見た目に反して、スゲェオラオラ系だな。
ってかな、この様子からして、奴が生粋のサディストって巷の噂も、満更、嘘でもねぇみたいだな。
なら、俺の同年代の奴って、こんな狂った奴ばっかりなのか?
「オイ、オマエ、名前なんて言うんだ?」
「樫田……樫田千尋」
「千尋な。憶えておいてやる。ありがたく思え」
「あっと、はっ、はい」
「んで、千尋。そんなオマエに質問なんだが、オマエは、此処に居る他のブス共より綺麗になってみたいか?」
「えっ?えぇっと」
「良いから、正直にハッキリ答えろ。オマエは、此処に居る他のブス共より綺麗になりたいか?」
「あっ、はっ、はい」
「そっか。じゃあ綺麗にしてやる。……その代わり『お願いします武藤様』って言え」
「えっ?えぇっと……お願いします、武藤様」
「おぅ、わかった。後は全部、俺に任せとけ千尋」
「あっ、はい」
そう言って武藤は、樫田の頭を優しく撫でた。
そして樫田も満更じゃない様で、少し照れた様な表情をする。
なんだこれ?あの樫田が子猫の様に扱われてるぞ。
「よっしゃ。んじゃあ始めるか。……オイ、デカブツ、俺の商売道具を持って来い」
俺?俺だよな?
まぁ約束だから、一応、持って行ってやるか。
「おっ、ご苦労……序に、化粧ケースを開けて、7番からファンデーションを出してくれ。この女の肌、結構、手入れが悪い」
「おっ、おぅ」
「後な、ナチュラル系を上乗せするから、10番……あぁ16番も、一緒に出して置いてくれ」
「おっ、おい。どっ、どれだ?」
解る奴が聞けば、的確な指示なんだろうが。
俺には、なにを言ってのかさえサッパリわかんねぇ?
一応、ケースを開けてゴソゴソと捜索してはみるが、矢張り、どれが、どれだか、サッパリわからん。
つぅかな。
大体にして……ファンデーションって、なんなんだ?
なにが、どう、ナチュラル系なんだ?
女じゃねぇから、そんなもんわかんねぇよ!!
そうやって、俺がモタモタしていると……
「ちっ……使えねぇ奴だな。もぅ良い、オマエは邪魔だから、向こう行ってろ」
武藤は、俺を押し退けて、素早くファンデーションなる物を取り出す。
んで、思い切り睨んでいきやがった。
いや……これって……俺が悪いのか?
普通、化粧品がどれがどれだなんて、男がわかる訳ねぇと思うんだが……俺の知らない所で、化粧品ってのは、男にも浸透してるもんなのか?
全く、ドイツもコイツも無茶な事バッカリ言いやがるな。
流石にイラつく!!
……とは言ってもだな。
此処で俺が怒って、奴の邪魔する訳にも行かないので、一応、引き下がって様子を見てみる。
もし、何も出来無い様なら、文句の1つも言ってやる。
すると……武藤は、俺の事等、一切気にする素振りも見せずに、千尋のメイクを始める。
しかも奴は、絵の具のパレットの様な物を手に取り、筆みたいなものを口に咥えて、手際良く、樫田のメイクを仕上げていく。
それはまるで、一枚のキャンバスに、なにも下書きしないまま彩色を施していく感じだ。
あんな事、相当な色彩感覚が無きゃ出来ない事だぞ!!
スゲェ……言うだけの事はあるな。
(↑既に文句を言えない俺)
そして……数分も掛からない間に、樫田のメイクを済ませる。
「まっ、精々こんなもんか……オマエの面じゃ、この辺が限界だな」
「えっ?これ……」
「んだよ。なんか気に入らないのか?」
「いや、そうじゃなくて……これ、私なの?」
「ってりめぇだろ。オマエ程度の面でも、俺様に掛かれば、こんなもんだ」
「凄い……」
「『凄い』だと?んな事を言ってるから、オマエはブスなんだよ。こんな簡単なメイクに感心してんじゃねぇぞ」
いや、武藤……オマエ、マジで凄いって!!
千尋のクセに、千尋じゃねぇみたいな可愛さを引き出してるぞ!!
「あっ……そっか」
「それとなぁ。序に、良い事を教えといてやるよ」
「なっ、なに?」
「男でもな、女でもな。生まれた時から美人なんてのは稀なんだよ。『人は美人にゃ生まれない』『自分で考えて美人になるもんだ』……わかったかブス?これに感心して、ちっとは自分で努力しろ」
「あっ、はい」
「良し、良い子だ千尋。……んじゃあ、次のブスに行ってみるか。オイ、そこの根暗そうなブス、コッチ来い」
オラオラ健在。
武藤は、素直を指差して指名する。
「ぼっ、僕ですか?」
「オマエ以外、誰が居んだよ、根暗ブス。面倒臭ぇんだから2回も呼ばすな」
「あっ、あの、すみません」
「謝る暇があったらサッサと来い。どん臭ぇなぁ、根暗ブスは……さっき、仲居間が時間ねぇって言ってただろ。聞いてなかったのかよ?」
「……ごめんなさい」
可哀想に……ボロカスだな。
なにも女の子相手に、そこまで言わなくても良いんじゃねぇか?
「オイ、まだかよ?とれぇんだよ、オマエ」
「ごめんなさい……ぐすっ」
あぁ、泣き出した。
これはもぉ明らかに言い過ぎだろ!!
「ったく、なにビィビィ泣いてんだ、オマエ?オマエ、それでもプロか?他人の足引っ張ってんじゃねぇよ。ナメてんのか?」
「ごめ……ごめんなさい……」
「ったく、時間がねぇってのに、汚い顔を余計に汚くしやがって。……オマエ、もう後回し」
「ごめん……なさい……」
泣き崩れちまったよ。
そこに……
「オイ、じゃあ、そこの意地悪そうな女。コッチ来い」
っと言う声が聞こえる。
まさか……奈緒さんの事か?
もしそうならコイツ……奈緒さんに向って、なんちゅう物の言い方するんだ!!
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>
口が悪い……
武藤君は、何処のまで行っても口が悪い(笑)
けど、口が悪い以上に、メーキャップの腕は確かでしたね。
この若さで、まさに実力主義の世界を生き抜いて来てるだけの事はあります。
さてさて、そんな口の悪い凄腕メーキャップアーティストである武藤君が、千尋ちゃんの次に指名したのは……奈緒さん。
彼女も大概、口が立つので、大丈夫なのでしょうか?
ですが、そこは次回の講釈。
また良かったら遊びに来て下さいねぇ~~~(*'ω'*)ノ
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