●前回のおさらい●
崇秀と遊んでいる時、突然、仕事の依頼の電話が。
それに伴って、何故か、2人の楽器を取りに行く羽目に……
そんな感じで奈緒さんの家に着いた後。
自身が写るガラスを見た私は、妙に髪形が気になって身嗜みを整えてから再び崇秀の元に戻って来たのだが……
「おっ……漸く、出て来やがったか。満足行く、髪のセットは出来たか?」
「あぁ、うん、まぁなんとか。……あぁ、でも、なんか急いでるみたいなのに、ごめんね」
「いいや、身嗜みは大切だ。その為なら、別に構わねぇよ」
「だよね。……あっ、あのさぁ、崇秀。所で、今から、本当にどこ行くの?」
「あぁ、悪いが、その話は後だ。どうしても、急がなきゃなんねぇ用事があんだよ。故に、喋ってる時間がねぇんでな。……あぁ、因みに、行き先は、さっきも言ったが『横浜アリーナ』。取り敢えずは、そこまでカッ飛んで行くぞ」
言うな否や。
崇秀は、ベースと、ギターをゴムの紐で私の背中に括り付け、完全に動かない様に固定。
軽くSMッポイ感じが嫌なので、少し苦情を言おうとしたら……
その瞬間に崇秀は単車のイグニッションを廻し、バイクのエンジンに再度点火をしていた。
そこで思いっ切り3回程吹かせ『早く乗れ』と言わんばかりに、私を煽る。
「ほらほら、詳しい事情を知りたいんなら、さっさと行くぞ。早よ乗れ」
「あっ、あっ、うん」
結局、なにも苦情を言えず仕舞いのまま、NSRの後ろにピョンっと飛び乗り。
またまた、ウィリーしながら急発進する。
だからさぁ。
基本的に、荷物を背負ってバランスが悪いんだから、この急発進怖いって……
***
上星川から、急ぎ超加速で『横浜アリーナ』に到着。
此処で、初めて時刻を見るんだけどPM16:49を差していた。
でも、距離と、時間の逆算は怖いからしない。
だってさぁ、此処に着くまで、何回死ぬ想いをした事か……
崇秀って……2人乗りなのに、思いっ切りギリギリのラインを責め過ぎだって。
それに車のすり抜けするのも、車との車間距離が滅茶苦茶狭いし。
直線の加速の仕方も、このバイクの馬力は異常過ぎるって……
ほんとにもぉ。
大型トラックの大気に吸い込まれて、何回、地面に振り落とされそうになった事か……
……まぁ、そうは言ってもね。
この男、異常にバランス感覚と、空間認識能力が優れているのか。
そんな状態にあっても、全く事故をする気配が無いって言うのが、一番怖い所なんだよね。
なんか、単車の後ろに乗ってて思ったんだけど……
メットの下で『ほくそ笑み』ながら、バイクを運転してる様な気がしてならない。
いや、寧ろ『嘲笑うか』の様に、車や、単車を追い抜いていた気がする。
まぁそんな訳でね。
崇秀の運転を総合評価すれば。
地元から、この横浜アリーナまでの道のりで『恐怖心が全く感じられない様な走りだった』って事だね。
ヤッパリ、この男、かなり重要なネジが吹っ飛んでるみたい。
人としては大切ななにかが、なんか沢山、欠落してるみたいなんだよね。
***
……そんな人間失格な崇秀は、横浜アリーナ到着後。
機嫌良く、鼻歌交じりに、バイクをスタッフ専用の駐車場に停めて、私を単車から降ろし。
背中に背負っていた荷物を、一旦、下に置いてから、私に、こう一言だけ言った。
「さてさて、今日の遊びの締めくくりだ。……最後まで張り切って行こうぜ、眞子」
言葉を発すると同時に、私の手を引っ張って行こうとするんだけど。
……これじゃあ、なにがなんだか、全然、意味がわかんないままなんだけど?
流石に、説明も無しに、これ以上は付き合えない。
それに、この崇秀の傍若無人な態度にも、いつまでも『良い子の眞子』でも居られない。
ちょっと『ムッ』っとした顔で、引っ張る崇秀の手を離す。
「ちょっと待ってよ!!なにがなんだか、サッパリ解らないから、先に、ちゃんと説明してよ。じゃないと、もぉ此処から動かないから!!」
なにか理由があるって言ってたから、此処までは黙って着いては来たけど、これじゃあ、勝手が過ぎるよ……
此処までの行程で、私の意思は、一体、どこにあるの?
『遊ぶ』ってところ以外、なにも無くない?
「はぁ?オマエ……まさか、マジで、まだ此処になにしに来たか解ってねぇの?」
「わかんないよ!!自分勝手にさぁ、1人だけ妙に納得しちゃってさぁ!!私は、崇秀の彼女じゃないんだからね!!理由があるなら、ちゃんと説明してよ!!」
「オマエ……壊れてんじゃねぇの?」
「へっ?なにがよ?」
「それが解ってて、テメェの彼女を助ける為に、此処まで一緒に来たんじゃねぇのかよ?じゃねぇなら、脳味噌が膿んでるとしか思えねぇ状況だぞ」
自分の彼女って言えば……私の場合、どう考えても奈緒さんだよね?
でも、仮にそうだとしても。
なんで、この横浜アリーナって場所と、奈緒さんが関係があるのよ?
関係なくない?
なに言ってんだろ、この子?
「そっちこそなに言ってんのよ?この崇秀の暴挙と、奈緒さんは関係ないでしょ」
「バカタレ。さっきカラオケボックスで電話を掛けてきた張本人は、その向井さんなんだよ。……ってか、いい加減気付けつぅの」
「なにをよ?なにを気付けって言うのよ?」
「オマエ、ホント、馬鹿の極みだな。……あのなぁ眞子。今日、此処『横浜アリーナ』で、向井さんのライブが在るんじゃねぇのか?オマエ、まさかとは思うけど、本当に知らなかったとか言う壮絶なボケをかます気じゃねぇだろうな」
「えっ?……えぇっと……知ッテタヨ(棒読み)」
「オマエって、ほとほと最低な恋人だな」
あぁ……そうだねぇ。
確かに、これは崇秀に言われてもしょうがないぐらい、私は最低な恋人ですね……
あぁ、そう言えば今朝。
奈緒さんが『ポテッ』っと二度寝する際に『アリーナ』が、なんとか、かんとか言ってた様な気が……するね。
……あれ?
でもでも、言い訳する訳じゃないんだけど、話が、ちょっとおかしいくない。
奈緒さんが、此処横浜アリーナでライブするのと、私達2人が、ただ単に遊ぶのって、基本的な部分で関係無くない?
なんだろ、この嫌な違和感は?
「あの~~~」
「はいはい、もぉなにも言うな。オマエの質問は、全部お見通しだ」
「あっ、あい」
「だからもぉゴチャゴチャと余計ない事は考えなくて良いから、チャッチャと着いて来い。その辺についての説明は歩きながらしてやるよ……ったくもぉ」
「あっ……はい。重ね重ねすみません」
この口振りからして、間違いなく心を読まれた。
ってことは。
私って……眞子って状態で在っても、崇秀に心理を読まれるのだけは、なにも変わらないんだね。
なんか非常に安い女みたいで……悲しいなぁ。
ははっ……
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>
そうだったんですよ。
実は崇秀に仕事の依頼をして来たのは奈緒さんだったからこそ。
眞子を連れたまま、急いで此処横浜アリーナにやって来てたんですね(笑)
まぁ、それにしても眞子は……どうやら、そんな奈緒さんの予定を全然把握していなかった様なのですが。
やっぱり、この辺に関しては、倉津君のままの様です(笑)
さてさて、そんな中。
少々事情を理解した眞子なのですが。
次回、当然の様に、また崇秀が無茶な要求をしてきます(笑)
それは一体、何なのか?
その辺が少しでも気に成りましたら、是非、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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