最後まで奏でられなかった音楽

どこかお間抜けDQNな不良さんのゆったり更生日誌(笑)
殴り書き書店
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653 得難い人間

公開日時: 2022年11月21日(月) 00:21
更新日時: 2023年1月19日(木) 21:05
文字数:2,859

●前回のおさらい●


 TS以降、自身の生活態度を変えてきた眞子は、崇秀の中でも評価は高かった。

そう聞かされた後、眞子は『じゃあ、真琴の時は、どう思われていたのか?』が気になりだし。


そこも崇秀に尋ねてみる事に。

「うん?アイツか?アイツは、俺にとっては本当に得難い奴だよ」

「へっ?」

「『へっ?』じゃねぇって……そう言う馬鹿な部分をひっくるめても。アイツは得難い奴なんだよ」

「えっ?でも、馬鹿で、なにも考えてないんだったら……ただの足手纏いなんじゃ」


違うの?


そうじゃないの?

崇秀の観点から見た真琴ちゃんは、本当にそんな風には写ってないの?



「オイオイ、眞子、言うに事欠いて足手纏いってなんだよ?自分が褒められたからって勘違いすんなよ。……そこじゃねぇんだよ」

「えっ?どういう事?」

「自分の親戚の事だぞ。わかんねぇかなぁ」

「えぇ~~~……っ。そんなのわかんないよ」

「そっかなぁ?……いやまぁ、大体してよぉ。アイツは、俺みたいな救い様の無いキチガイを友達だと思ってくれるしよ。俺が、どんなトンデモナイ事をしても、普通に接してくれる。俺にとっちゃあ、これ程、得難い人間は居ない。だから此処だけの話な。……アイツは、俺にとっての『唯一無二の親友』なんだよ」

「えっ……そんな風に……」


嘘……


真琴ちゃんの事を、そんな風に思っててくれたんだね。

今の崇秀の話を聞いて、一番ビックリしてるのは他ならぬ私だよ。


……でもでも、これって、ひょっとして、真顔で、いつもの様にからかってるだけかも知れない。


ははっ……そう考えると、なんか一辺に、信憑性薄くなっちゃったよね。


だって崇秀が、真琴ちゃんの事を、そんな風に思うなんて……イマイチねぇ。

崇秀と真琴ちゃんじゃあ、人としての格が違い過ぎるもん。


ははっ……その辺を、怖いけど確認しよ。



「んあ?なんだよ?」

「ねぇ、崇秀。……それってさぁ……本気で言ってるのかなぁ?冗談だよね」

「あぁ、自信を持って、本気で言ってるなぁ。まぁアイツが、俺の事を、どう思ってるかまでは知らないけどな」

「えぇ~~~っ、でもさぁ、でもさぁ。親戚の私が言うのもなんだけど。……真琴ちゃんだよ。真琴ちゃんなんだよ。馬鹿で、どうしようもないヤクザの真琴ちゃんだよ。崇秀とじゃ格が違うじゃん」

「関係ねぇな」

「なんで?真琴ちゃんと付き合いが有っても、なんのメリットも無いよ」

「イラネェな、そんなチャチなもん。つぅか、アイツは、そんなメリットなんて、犬の餌にもなら無い様な糞みたいなもんじゃなく。もっと大切な物を、俺にくれてる。それだけで十分だ」

「えっ?えっ?なに……それ?」


真琴ちゃんは、そんな風に思って貰える様な人間じゃないよ。

崇秀に迷惑ばっかり掛けて、いつもいつも、そこに胡坐を掻いてるだけのダメ人間だよ。


どこをどう見ても、良い所なんて何所にもないじゃん。



「アイツな。ハァ~~~……あぁ、もぉ、アイツがな、オマエに成った時。アイツは、取り返しの付かない事をしたかもしれない俺に、こうハッキリ言ってくれたんだよ。……『女だとか、男だとか、今更どうだって言うんだよ。俺が女になったら、テメェは、今まで通りの付き合い出来ねぇって言うのか?そうじゃねぇんだろ。……だったら、生きてる限り、俺とオマエの関係は、なんも変わんねぇよ』ってな」

「あぁ、うん……私、確かに、そう言ったけど。それがなに?」


そんなの当たり前だよ。

ズッとズッと長い付き合いなのに、そんな事ぐらいで切れる縁じゃないって。


それだけの事なのに……ただの馬鹿げた話だよ。



「『なに?』じゃねぇよ。大体、そうなったのは、俺の責任かも知れないし。それにアイツには、向井さんって大切な彼女が居るんだぞ。それにも関わらず、俺に、そう言ってくれたんだぞ」

「だから?」

「いや『だから?』じゃなくて……俺はな。あの時、マジで生まれて初めて、人の言葉で感動したんだよ。あの言葉だけは、俺の心の中でズッと響いて鳴り止まねぇ。……だからな眞子。俺には『オマエしか親友って呼べる奴は居ねぇ』んだよ。オマエ程、得難い人間なんて……この世の中に誰1人として存在しねぇよ」


ホント、そんな事ぐらいで……


そりゃあ確かにね。

私だって、お気楽に、この姿を受け入れられた訳じゃないけど。

奈緒さんや、崇秀は、直ぐにこの姿を理解してくれて、直ぐに受け入れてくれた。


だからこそ私も、そう言う決断も出来たんだと思うよ。


それにね。

一番の決断に至ったのは、他でもない崇秀。


こんな馬鹿話を、最初から、なに1つとして疑いもせずに、私の事を真正面から信じてくれて、まずは理論的に物を考えてくれた。

その上で、自分に責任が有るかも、どうかも解らない状態なのに、全ての予定をキャンセルしてまで、私を『男に戻そう』してくれてる。

しかも、全てのタイミングを計った様に、私が悩んでたりしたら、電話してきてくれたり『生理』が始まって、誰にも相談出来ずに困っていたら、忙しいにも拘らず、家にまで来てくれて臨機応変に対応してくれた。


……それに一番驚いたのはね。

私が女に成った姿を、自分の眼で目視した時……気持ち悪がる処か、直ぐに『倉津眞子』って存在が、まるで昔から居た様に接してくれた。


それも、変に特別扱いするんじゃなくて。

最初から『倉津真琴』が女だったら『こんな風に接して来たんだろうな』って事さえ想定してくれて。


此処までしてくれた上に、馬鹿の私なんかを『親友』なんて言って貰えるなんて、思ってもみなかったよ。


だから、本当に嬉しいのは私の方。


こんなに想ってくれてる崇秀に、それぐらいの言葉を掛けられなくて、どうするのよ?


感謝するのは、私の方だよ。



……でも、そうは思ってても、こう言うのって、意外と上手く伝えられないよね。


なにも言葉が出て来ないや。



「・・・・・・」

「あぁ、ヤッパ、沈黙してドン引いたかぁ。……まぁ、実際の話で言えば、そんなもんだな。俺なんぞ、本性を知ってしまえば。ただの、ロクにツレも作れねぇ様なヘタれた奴なんだよな。……急に、気持ち悪い事を言って悪かったな」


違うって、そうじゃないって。


照れ臭いだけなんだって!!



「……そんな事ないよ」

「んあ?」

「そんな事ないって言ったの!!」

「なっ、なにがだよ?」

「崇秀はね。小さい頃から、私の中では、ズッとヒーローだったんだよ」

「へっ?」

「1人で、なんでも出来てさぁ。他の子が出来なくても、1人で、なんでも努力で切り抜けようとしていた……自分の出自を嘆くばかりの私なんかとは違って、崇秀は、そんな風に私に無い物を全部持ってた。……でも、崇秀は、1度たりとも、それを驕ったりせず。私みたいな馬鹿を、ズッ友達だと思ってくれてた。そんな格好良い奴が、気持ち悪い訳ないじゃない。……馬鹿な事を言わないでよ」


崇秀の馬鹿が、あまりにも馬鹿な事を言うから、激しく語っちゃったね。


ははっ……ちょっと、恥ずかしいなぁ。


でも、本音だったりして……


こう言うのって、同姓だと、思ってても言い難いけど、異性だと言い易いね。


速攻で、さっきの理論が覆っちゃったね。


ははっ……いやはや、いやはや。



「ふっ『なんでも出来た』なぁ。……それな。実は、結構な裏話があんだよ」

「えっ?なに?どういう事?なんの話?」


『努力する天才』にも理由が有るの?


なにそれ?


最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>


矢張り崇秀にとって、倉津君の存在と言うのは、眞子であっても真琴であっても変わらないもの。

これ程得難い人間は、他には誰1人としていない存在、っと思い込める程、倉津君の存在は大きかったようです♪


まぁ実際の話、TS後に倉津君から放たれた『女だとか、男だとか、今更どうだって言うんだよ。俺が女になったら、テメェは、今まで通りの付き合い出来ねぇって言うのか?そうじゃねぇんだろ。……だったら、生きてる限り、俺とオマエの関係は、なんも変わんねぇよ』って言う言葉が、一番友情を感じた所なのでしょうが。

それ以前からも崇秀は、倉津君の事を『唯一無二の親友』っと思っていたからこそ、今までの協力的な行動もあったのかもしれませんね(笑)


さてさて、そんな中。

次回は、最後に崇秀が口にした言葉。

「ふっ『なんでも出来た』なぁ。……それな。実は、結構な裏話があんだよ」について言及していきたいと思いますので。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾


果たして、この言葉は、どう言う意味なのでしょうね?

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

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