●前回のおさらい●
偏屈者のホランドさんは、眞子を相手にしようとしない。
そんなホランドさんに対しても、絶対にライブに引き摺り出したい眞子は、意地に成って彼の家の前で10時間ほど待っていたのだが。
最悪な事に、この状況下で雨が降り出して来た。
……もぉ諦めるべきなんだろうか?
あれから、またまた2時間もの時間が経過した。
それに振り出した雨はドンドンとキツクなる一方で、止む気配は無く……今では、スッカリ本降りの様相すら呈してきた。
私も、流石に傘まで用意していなかったので、ホランドさんの家の小さな雨よけに身を小さくして置いて、なんとか雨を凌いでいる始末。
まぁ……そうは言ってもね。
所詮、家の雨よけだから、店に付いてる様な大きな物じゃなく。
物自体が小さいものだから、着ている服はドンドンと雨でビチャビチャ濡れて行くし、髪は雨の水分を含んで見事なまでに乱れてボサボサになってくる。
それに時間も深夜の2時……
体が冷えてきて……最悪だよ。
でもさぁ、変り者の人を説得するのって、ホント大変だぁね。
このまま死んだりして……
・・・・・・
『ガチャ』
あっ……扉が開いた……
「君に、どうしても1つ聞きたいんだがね」
「……なんですか?」
「私は、12時間程前に『帰りなさい』っとキッチリと君とは別れた筈だが。何故、君は此処に居る?君は、なにがしたいんだ?」
「あぁっと、少しで良いんで、ホランドさんにお話を聞いて欲しくて……ただ、それだけです」
「はぁ……傘をあげるから、早くホテルに帰りなさい。私は、君の話を聞く気は一切無いよ」
「あぁ、じゃあ、傘は結構です。お話を聞いて貰えるまで、此処で待ちますんで」
「そうか。では、もう勝手にしたまえ」
「あぁ、はい、勝手にします」
『バタン』
はぁ~~~、良かったぁ。
ほんの少しだけだったけど、ホランドさんと会話が出来た。
それに、時間が掛かったとは言え、ホランドさんにも人の心が残ってるのが確認出来た。
これならまだ、もぅ少しぐらいなら待てるかな。
なんか、ホント意地になって来ちゃったよ。
ははっ……
***
……深夜4時。
幾らなんでも、流石にホランドさんも、もぉ寝ちゃったかな?
それとも崇秀系の変態さんだから、結構、まだ起きていて、なにかゴソゴソやってたりしてね……
この考え……甘いかなぁ?
でもさぁ、もぉこんな時間だし、雨もザーザーに降ってるから、道路にタクシーも一台も走ってない。
それに、これだけの大量の雨が空から降り注いで来ている以上、ホテルまで歩いて帰るには少し距離が遠すぎる。
故に、迷惑だろうけど、朝日が昇るまでは此処で待つしかないよね。
ははっ……今更だけど、なんでこんな事やってるんだろ?
意地になって……馬鹿みたいだね。
『ガチャ』
「君。悪いが、いい加減にしてくれないか?迷惑なんだが」
あっ……ヤッパリ、まだ起きてたんだ。
「あぁ、すみません」
「迷惑だと解ってるなら、何故、帰らない?」
「これには、少し訳がありまして……ははっ……気にしなくて良いですよ」
「全く気にはしていないが。此処で、君に死なれても迷惑なんだがね。本当に帰ってくれないか?」
「すみませんが。それは出来かねます」
「何故そこまでする?その必要性はなんだ?」
「これは、人に言う様な話じゃないんで……気にして頂かなくても、結構ですよ」
それは言えないよ。
私が勝手に思い込んでいる『崇秀の件』を此処で言ったら、当て付けがましくなっちゃうだけだからね。
だから……何があっても、それだけは言えない。
それに、私が勝手にやってる事だから、どう思われても構わないもんね。
「君ねぇ、常識ってものが無いのかね?」
「あぁ、余り無いですかね。……それに目的を達しないまま、帰るなんて嫌なんで」
「そんなクダラナイ事の為に、14時間も此処で私を待っていたって言うのか?時間の無駄使いも甚だしいな」
「全然、クダラナク無いですよ。私、それ程までにホランドさんとは一緒にライブやりたいですもん。その為なら、幾らでも待ちますよ」
「馬鹿げてる。……そんなもの、別に私に拘る必要などない話だろ。それに第一、君とは知り合ったばかりで、君は、私の事を良く知らない。当然、私も君の事を良く知らない。……ライブの為と言ったが、実力も解らない者の為に、何故そこまでする?」
こう言う不可思議な行動は、理屈でモノを考える人にとっては疑問でしかないんだろうなぁ。
まぁ解らなくもないなぁ。
でもね、私、馬鹿だから、自分のしたい事の為には手段は選ばないんだよね。
それに、さっきホランドさんは、私がホランドさんの実力を知らないと言ったけど……そんな事ないよ。
全て『GUILDランク』が、ホランドさんの実力を語ってるじゃないですか。
まぁ……それに比べれば、私の実力は『ヘチョ』ですから、本来なら見合ってないんですけどね。
「えっ?だって、一緒に弾けたら楽しいじゃないですか」
「君は、本物の馬鹿なのか?」
「あぁ……よく言われますね。でも、弾きたいものは弾きたいです」
変なところだけ我欲に従順で、意地っ張りですから……
ご迷惑をお掛けしてます。
「訳が解らない。……兎に角、帰ってくれ。なにを言われても、私は、君と演奏する気は更々ないからね」
「あぁ、じゃあ、もぅちょっと頑張ってみますね」
「いや、幾ら頑張っても、私は君とは弾かない。……そうハッキリ言ってるんだが」
「でも、気変わりするかも知れないじゃないですか」
「しない。……神に誓ってでも、絶対に気変わりはしない」
うわっ!!嫌われたもんだなぁ。
まぁまぁ、此処も想定内。
こう言う類の人って、絶対そう言うと思ってたよ。
「あの、1つだけ良いですか?1つだけなんで……でも、聞いて貰っても帰らないですけど」
「なんだね?」
「あの、ホランドさんって、神様を信じてますか?もし信じてないなら、誰に誓ったんですか?」
「なにを聞くかと思えば。……今のは、解りやすく覚悟を言っただけの話だ。神を信じる信じないは関係ない」
「なるほど、上手い言い廻しですね。今度どこかで使います。……あぁじゃあ、約束なんで、後は気にしなくても結構ですよ」
「君ねぇ。……本当に迷惑だから」
「あぁ、はい。それは、さっきから何度も言われてるので重々承知してます。でも私も、ちゃんとホランドさんに覚悟を言った筈ですよ。……『一緒に弾いてくれるまで帰らない』って」
こう言うのって、ストーカーみたいで気持ち悪いだろうね。
私がこんな事をされたら、100%ドン引きするレベルの行為だからね。
でも……完全に意地を張ってるから帰らないですよ。
私は、迷惑この上ない我儘女ですから。
「何故そこまでして、私と一緒に弾きたい?訳が解らないぞ」
「別に意味なんてないですよ。ただ……」
「『ただ』?……ただなんだ?」
「あぁ、いや、崇秀が認めるギタリストって、どんな音を奏でるのかなぁって思って」
「たったそれだけか?……それなら、こんな無駄な事をワザワザしなくても、私の音源なら、どこかのライブハウスにでも残ってるだろうに」
「あぁ、そう言うんじゃなくてですね。……生で聞きたいんですよ。CDやMD、それにネットの映像じゃ意味がないんです。私は、自らの耳で、ホランドさんの音が聞きたんです」
「理屈は解らなくもないが……それ以前に、君の行動は、あまりにも常識から外れてる。そんな人に聞かせる音は無いな」
本当に、聞きしに勝る意地の悪さだ。
性格捻じ曲がってるなぁ。
……でも、そう言う人、嫌いじゃないんだよね。
だって、こう言う人って、絶対的に自分の音に拘りを持ってる筈だから、普通の人には出せない様なビックリする様な良い音を出したりするんだよね。
うんうん、そう考えたら、俄然、興味が湧いてきた。
「じゃあ、お聞きしますが『人に逢ってくれ』って頼まれて『顔を合わせて、家に帰る』のは常識的なんですか?」
「うぐっ……君に答える義務は無い。それに此処は、私の私有地だ。雨宿りされても迷惑だから、いい加減帰ってくれ」
「そうですか。……わかりました。じゃあ、そこで雨に打たれて待ってますね」
「ちょ……君!!」
私は、結構な雨が降ってる中に身を投じた。
うわっ、寒い!!
「此処なら、ホランドさんの私有地じゃないから、なにも文句ないですよね。どうぞ、お気になさらず」
「正気か君は?そこで本当に待つつもりなのか?」
「道に居るだけなのに、答える義務があるんですか?」
「狂ってる。……君は、完全に狂ってるよ。君の行動は正気の沙汰じゃない」
「私『崇秀の親友』ですよ。マトモな訳ないじゃないですか」
「かっ……勝手にしたまえ!!」
「あぁ、はい。……勝手にします」
『バタン』
これでもダメか……
はぁ~~あぁっ、それにしても『ライブ出演の交渉』ってホント難しいなぁ。
この人を手懐けるなんて……ヤッパ、崇秀は天才だよ。
私は、まだ懲りずにそんな事を考えながら、大雨に打たれ続けた。
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>
とうとう、眞子の狂気が炸裂してきましたね!!(笑)
まぁ、この行為自体は、今の置かれてる状況的な物もあるのですが。
若さ故の狂気と言いましょうか……やり始めてしまったら、変に辞められないって言うのもあるのかもしれませんね。
っとまぁ、そんな風に、若さ溢れる狂気を丸出しにしてる眞子なのですが……心と体は別物。
こんな大雨の中で待って、体の方は大丈夫なのでしょうかね?
次回は、その辺を書いて行こうと思いますので。
良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾
読み終わったら、ポイントを付けましょう!