最後まで奏でられなかった音楽

どこかお間抜けDQNな不良さんのゆったり更生日誌(笑)
殴り書き書店
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479 人を羨む心を減らす方法

公開日時: 2022年5月31日(火) 00:21
更新日時: 2023年9月10日(日) 14:57
文字数:5,397

●前回のおさらい●


 倉津君の必死の努力の甲斐あって、更生に向かい始めた青山さん。


そんな彼女との帰り道の話。

 さてさて。

そんな俺の妄想に塗れた馬鹿な話は、どこかの異次元に置いといてだな。

あの後1時間程、真上さんと、青山さんと、俺の3人で、病室内で小声で楽しく話し込んでいたんだけどな。

病院の消灯時間が過ぎていたので看護婦さんに怒られて、青山さんと2人で帰る事になったんだよ。


つってもだな。

最初は青山さんを駅まで送って、そのまま彼女とは別れるつもりで居たんだけどな。

なんか時間が時間だけに、中学生の彼女を、そのまま1人で帰すのも悪い気がして、一応『送ろうか?』って聞いてみたんだ。


するとな。

青山さんは、一旦、神妙な顔をして、俺の事をジッと見ながら『お願いしても良いの?』って言って来たんだよな。


まぁ最初は、そのつもりではなかったにせよ。

言葉に出した以上、引っ込みも付かなくなって、一旦、俺の実家まで行って車で送る事にしたんだよな……これが。


……んで、現在、彼女の実家がある川崎に向ってる、車を走らせてる途中な訳だ。



「なんか、疲れてるのに、ごめんね」

「いや、気にしなくて良いぞ。こんなの毎度の事だからな」

「毎度って……そんなに車の運転してるんだ」

「まぁなぁ。親父の仕事の手伝いの時は遠方が多いからな。車で移動する事が多いんだよな」

「今更、こんな事を聞くのも変なんだけど……免許は?」

「ちゃんとあるぞ。ほら」


財布から、偽造塗れの免許書を取り出し、そのあま青山さんに手渡した。


それを受け取ると、俺に嫌な視線を送ってきた。


まぁそんなもんだな。



「あの、倉津さん。名前から年齢まで、全部おかしな事になってるんだけど」

「そりゃあそうだろ。この年で免許は取れねぇんだから、そうなってもおかしかないだろ」

「偽造?」

「あぁ、偽造だ。……つっても、あれだぞ。写真以外は、全部本物と同じ仕様になってるから、本物に限りなく近い偽造品だぞ」


ヘヘヘ……そうなんでゲスよ。

この、いつも携帯してる偽造免許書ってのは、実在する人間の免許を基に作ってるから、全くの偽物って訳でもねぇんだよな。


まぁ、早い話だ、借金塗れになった奴の免許書を取り上げて、それを基にして作ってるんだよな。



「えぇっと、自慢になってないんだけど」

「まぁ、そう言うなって。これでも安全運転を心掛けてるから、一回たりとも警察に捕まった事がねぇんだからよ」

「そうなんだ。……なんか、もっとバリバリ飛ばしてるイメージがあったんだけどなぁ。真面目なんだね」

「アホか?偽造の免許を使ってるのに、誰がそんな馬鹿な真似するかよ。それによぉ。車に人を乗せてる時は、安全運転を心掛けるのが常識だ。罷り也にも人の命を預かってんだからな」


これどぉ?


『人の命を預かってる話』って、さっきの話と上手く重なってね?


命の重さを知れ。



「そっか……そうだよね」


うわっ!!

これは思ってた以上の効果が出て、完全に青山さんが下を向いちゃったよ。


どうすっかな?



「あのよぉ、青山さん。終わった事は、もぉ気にしなくて良いと思うぞ」

「えっ?」

「いやな、真上さんって、あぁ言う人だから、もぅ過去の事なんてなにも気にしてないと思うんだよ。だから、そこは問題じゃないと思うぞ」

「うん……けどね。自分のやった事に対してキッチリ反省しないと、また同じ事を繰り返しちゃいそうなのよ。人の嫉妬って、簡単に制御出来無いから……」


偉い!!

それだけ反省してれば、多分、もう大丈夫だ。

今の青山さんなら、もぉそんなそんな悪い方向にはイカネェよ。


まぁけど、本人が懸念してる以上、1つだけ適切な助言しておいてやるか。

(↑偉そうな俺)



「いや、そうでもないぞ」

「えっ?なんで?」

「いや、なんでって聞かれてもなぁ。単純な話、嫉妬の本質ってもんが解れば、そんなもん、なにも感じねぇよ」

「どういう事?嫉妬しないで済むって事?」

「まぁ、俺もツレに聞いた話だから、小難しくは説明出来ねぇけどよぉ。単純に言っちまえば、嫉妬ってのは、自分の自信の無さから来るもんなんだとさ。だから、自分を磨いてりゃ、嫉妬なんてしないんだってよ」


……って、奈緒さんが言ってた。


あの人が言ってんだから、間違いねぇだろ。

(↑THE無責任な俺)



「その人って、どれだけ自分に自信がある人なの?」

「果てしなく。……但し、自信過剰じゃねぇ、節度のある自信だ」

「節度が必要かぁ。私には、ちょっと難しいかな?」

「じゃあ、別の意見」

「なに?まだ他にも意見が有るんだ?」

「いや、これも単純な話なんだけどよぉ。嫉妬ってよぉ。人のせいにするからこそ、生じる負の感情なんだろ。だったら一切合切、なにがあっても、人のせいにしなきゃ良いじゃねぇか。全部、自分のせいにすりゃあ、嫉妬なんて生まれねぇよ」


……って、真上さんが行動で示してた。


あの人がやってんだから、間違いねぇだろ。

(↑またしてもTHE無責任な俺)



「それも難しくない?それに、そんな人って、本当に居るもんなの?」

「あぁ100%居るなぁ。……つぅか。俺のツレって、みんな、そんな感じだぞ」

「えっ?レベル高過ぎる」

「そうじゃなくてよ。それが奴等にとっちゃあ自然なんだよ。そう言うの、変に意識する事じゃないらしいんだよな」

「凄いね。……そんな人達が居るんだ」

「なに言ってんだかな。青山さんだって、身近に真上さんって友達が居るじゃねぇか。あの人が、他人のせいにしないナンバー1だぞ」

「あっ、そっか。……ホントだね」

「だろ。青山さんの一番身近に、参考に出来る人が居るだろ」


ふふふ……これで、青山さんの中で、真上さんの株がSTOP高ぐらい上昇した筈だ。


参考にしたまえよ。



「けど、倉津さんが、そう言うって事は。真上って、そんなに自分に自信を持ってるの?」

「いや、あの人に関しては真逆。自信云々以前に『慢心』しない様にしてるんだよ。だから、あんな人並み外れた優しさが持てる。彼女は、俺が知り合った中でも、かなり特殊な人間だ」

「それって、人それぞれって事?」

「単純に言やぁ、そう言うこったな。まぁ人の成長の仕方なんざ、100人居りゃあ、100通りある訳だから、自分に合ったものを模索するのが一番なんじゃねぇの」

「じゃあ、他にも成長の仕方は有るって事?」

「あぁ、有るな。飛びっきり、とんでもない奴が居るからな」


言わずと知れた馬鹿秀。



「どんな人なの?」

「『退屈出来無い奴』だ」

「えっ?退屈出来無いのが、嫉妬や、成長と関係が有るの?」

「あぁ、凄まじく関係が有るぞ」

「なんで?」

「まぁ、コイツに関しては、俺も理解の範疇を超えてる奴だから、本当にキッチリとは説明出来ねぇんだが。兎に角、なんに関しても貪欲なんだよ。自分に出来ない事が有るのが許せない様な奴でな。嫉妬なんかする暇さえも惜しんで、自己の成長を促してる。まぁ、そんな死ぬ程、傍迷惑な奴だ」

「けど、人として成長はしてるんだよね」

「あぁ、トップ・スピードのまま好き勝手な人生を送って、今じゃ何億って金を稼いでるよ」

「凄いね……」


だよな。

そう言う反応になるわな。



「いや、心配しなくても、基本的には傍迷惑な奴なだけだ」

「けど、倉津さんも、凄いって認めてるんでしょ?」

「まぁなぁ……幼馴染だから、あんま認めたくねぇんだけどな」

「幼馴染?……って、まっ、まさか同い年とか言わないよね」

「そう、残念ながら同い年だ」

「うっそ、有り得ないだけど」


まぁ有り得ないな。



「あぁ、けどよぉ。その馬鹿が言ってた話なんだけどな。精神面や、文科系の事なら、努力すりゃ、大半の事は出来るらしいぞ」

「体育会系はダメなんだ」

「あぁ、そいつが言うには、体育会系は努力の仕方が違うんだとさ。それと絶対的な才能が要るんだとさ」

「ふ~~ん……っで、その人って、体育会系が苦手なの?」

「全然。つぅか、寧ろな、なにをやらせても卒なくこなす男だな」

「嫌過ぎる。なに、そのパーフェクト超人?何所まで嫌味に出来てるの?」


うぉ!!『パーフェクト超人』とは、中々面白い事を言うな。


それってキン肉マン・ネタだよな。


ひょっとして青山さんって、結構オタク系?


違いますね。

はい、すんません。



「いや、それがよぉ。全然、嫌味じゃねぇんだよ」

「なんで?他の男子とかに妬まれたりしないの?」

「しねぇなぁ。つぅかアイツは、その辺に関しても強かな野郎だから、誰からも反感を買わねぇんだよな。全てを上手く廻してやがるよ」

「なに、その人?慢心とかしないの?」

「全然しねぇな。ってか、その機能が生まれた時から付いてねぇみたいだな」

「うわあぁ~~~」


メッチャクチャ嫌そうな顔してるな。


まぁ、これも然りだよな。


けどな。

こう言う子に限って、あの馬鹿に逢ったら、一目惚れとかしちゃうんだよな。


ヤルセねぇ~~!!



「まぁまぁ、その馬鹿は、本当に特殊な奴だから捨て置くとしてだな。他の嫉妬しないやり方ってのは、少しぐらい、なんか参考になったか?」

「ごめん。……その人に限らず、全員が特殊過ぎて、全然参考になってない」

「ダメか。……あぁ、けど、あれだぞ。人間なんてよ。そんなそんな一辺に変われるもんじゃねぇんだから、まずは、誰かを目標にすりゃ良いんじゃねぇか」

「それって、ちょっとづつでも良いって事?」

「いや、寧ろな。それが一番大事なんじゃねぇの」

「なんで?」

「うん?一足飛ばしでモノをやるとな。飛ばした分、解らない事が生じるんだよ。その時に出来る『綻び』ってのが、結構、厄介でな。飛ばした分だけ、中々解答に行きつかねぇんだよ。だから、必要以上に背伸びをせずに、自分の出来る事から、ゆっくりやりゃ良いんじゃねぇかな」

「でもさぁ。それだと、みんなに置いて行かれない?」

「置いてかれりゃ良いじゃん。問題ねぇよ」

「なんで?みんなに置いてかれちゃうのって、嫌じゃない?」


うむ、言いたい事はわかる。


けどだな。

それこそが、他人に対する嫉妬生む負の感情の元だから、崇秀でもない限り、そう言う感情は必要ねぇの。



「青山さんって、頭悪いな」

「あれ?なんでだろう?凄く悔しい」

「あっ、ひょっとして、俺の事、本能的に馬鹿だと思ってっからじゃね?」

「うぅん、全然そんな事を思った事ないよ。どっちかと言えば、頭良いし、優しい人だなって思ってる」


まっ……まっ……マジでか!!


こんな俺の事を、そうやって見てくれる人もいるもんなんだな。


生きてて良かった。



「いやいやいやいや、頭は良くねぇぞ。それに青山さんが言う程、優しくもねぇ。あんな酷い事をした人間が優しい訳ないだろうに」

「そうかなぁ?自分が嫌がられる様な事、普通はしないんだけどなぁ。それが出来るだけでも十分良い人だと思うけど」

「あっ、まぁ、いや、そう取ってくれるなら、それはそれで良いんだけどな」

「じゃあ、そうする。私の中で倉津さんは良い人だって認定。……っで、さっきの答えは?」

「あぁ悪ぃ、話が逸れたな。……いやな、実は、そんな大層な話じゃねぇんだよ。最終的な所を見れば、人間の行き着く先なんて、早々は変わらねぇのな。だったら、慌てる必要なんかないんじゃねぇかなって思ってよ」

「あぁ、でもさぁ、人より早く出来る様になった方が、得な事が多いんじゃない?」

「いやいや、穴だらけで出来る気になってるのが一番性質が悪いから、出来れば、堅実にやって行くのが一番だと思うんだけどな」

「そっか。……確かに、そうだよね」


妙に納得したよ。


しかしまぁ、あれだな。

此処最近の間、人の相談事バッカ受けてたから、それ相応に対応が出来る様になったもんだよな。


特に女の子に対して、此処までベラベラ喋れる様になるとは思っても見なかった。

実際、半年ぐらい前までは、ロクに女の子とも話せなかったもんな。


俺にしちゃあ、大した進歩だ。



「まぁまぁ、慌てずに行けば、なんとかなるさ」

「それって、倉津さんの考えなの?」

「あぁ、まぁなぁ。基本的に俺は、無理な事が嫌いだから呑気にやってるよ」

「そっか。じゃあ、私も、それでやってみようかな」

「進歩が遅くても良いなら、それも有りなんじゃね」

「ふふっ、じゃあ、そうしちゃお」


あらま、そこに行き着いちゃった訳な。


まぁけど、俺のやり方って、基本的な部分でお気楽だからな。

最初の入り口として、肩肘張らないのも有りだよ有り。



……っとまぁ、此処まで『嫉妬』と『対応策』について、青山さんに話をしていた訳なんだが。


実は俺な、この話をしたのには、れっきとした理由があんだよな。


いやいや、勿論、そんな仰々しい話じゃないんだぞ。

ただ単にな、彼女が本気で抱えてる悩みを、少し話し易い様な状況に変えたかったんだよな。


要するに、リラックスした状態だな。


―――『なんで、そう思ったか?』って言うとだな。


この車で送る事を言った時、青山さん、妙に神妙な顔をしただろ。

あれが多分、彼女からの信号だったと思ってるんだよ。


まぁ当初はな、俺に危険を感じて、あんな表情をしたものだと思ってたんだが、どうにも、それが理由としても、釈然としない部分が多かったんだよ。

『乗る』『乗らない』以前に、俺が『送ろうか?』って口に出した時点で、彼女の意思は明らかに『乗る』提示していた。


なら、なんで、あんな表情をしたかって話なんだよ。


―――答えは簡単『抱えた悩み=真上さんの虐めの件で、まだ話してない事がある』


……って、俺は判断をした訳だな。


まぁそんな訳でだ。

まずは、彼女の悩みの1つを作為的に解決したって訳だぁな。



さてさて、此処から、どう切り出したもんかな?


最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>


『嫉妬が人を変えてしまう』なんて事は、よくある話なのですが。

『少しでも嫉妬を減らす方法』を書かれた小説は少ないなぁ……って思いまして、更にこの苛め問題を掘り下げて行こうと思います。


苛めや嫉妬を題材にした演出をするなら、矢張り、ちゃんと打開策も書かないとね(笑)


……とまぁ、そんな訳でして、次回もこの続きを書いて行こうと思いますので。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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