●前回のおさらい●
倉津君の必死の努力の甲斐あって、更生に向かい始めた青山さん。
そんな彼女との帰り道の話。
さてさて。
そんな俺の妄想に塗れた馬鹿な話は、どこかの異次元に置いといてだな。
あの後1時間程、真上さんと、青山さんと、俺の3人で、病室内で小声で楽しく話し込んでいたんだけどな。
病院の消灯時間が過ぎていたので看護婦さんに怒られて、青山さんと2人で帰る事になったんだよ。
つってもだな。
最初は青山さんを駅まで送って、そのまま彼女とは別れるつもりで居たんだけどな。
なんか時間が時間だけに、中学生の彼女を、そのまま1人で帰すのも悪い気がして、一応『送ろうか?』って聞いてみたんだ。
するとな。
青山さんは、一旦、神妙な顔をして、俺の事をジッと見ながら『お願いしても良いの?』って言って来たんだよな。
まぁ最初は、そのつもりではなかったにせよ。
言葉に出した以上、引っ込みも付かなくなって、一旦、俺の実家まで行って車で送る事にしたんだよな……これが。
……んで、現在、彼女の実家がある川崎に向ってる、車を走らせてる途中な訳だ。
「なんか、疲れてるのに、ごめんね」
「いや、気にしなくて良いぞ。こんなの毎度の事だからな」
「毎度って……そんなに車の運転してるんだ」
「まぁなぁ。親父の仕事の手伝いの時は遠方が多いからな。車で移動する事が多いんだよな」
「今更、こんな事を聞くのも変なんだけど……免許は?」
「ちゃんとあるぞ。ほら」
財布から、偽造塗れの免許書を取り出し、そのあま青山さんに手渡した。
それを受け取ると、俺に嫌な視線を送ってきた。
まぁそんなもんだな。
「あの、倉津さん。名前から年齢まで、全部おかしな事になってるんだけど」
「そりゃあそうだろ。この年で免許は取れねぇんだから、そうなってもおかしかないだろ」
「偽造?」
「あぁ、偽造だ。……つっても、あれだぞ。写真以外は、全部本物と同じ仕様になってるから、本物に限りなく近い偽造品だぞ」
ヘヘヘ……そうなんでゲスよ。
この、いつも携帯してる偽造免許書ってのは、実在する人間の免許を基に作ってるから、全くの偽物って訳でもねぇんだよな。
まぁ、早い話だ、借金塗れになった奴の免許書を取り上げて、それを基にして作ってるんだよな。
「えぇっと、自慢になってないんだけど」
「まぁ、そう言うなって。これでも安全運転を心掛けてるから、一回たりとも警察に捕まった事がねぇんだからよ」
「そうなんだ。……なんか、もっとバリバリ飛ばしてるイメージがあったんだけどなぁ。真面目なんだね」
「アホか?偽造の免許を使ってるのに、誰がそんな馬鹿な真似するかよ。それによぉ。車に人を乗せてる時は、安全運転を心掛けるのが常識だ。罷り也にも人の命を預かってんだからな」
これどぉ?
『人の命を預かってる話』って、さっきの話と上手く重なってね?
命の重さを知れ。
「そっか……そうだよね」
うわっ!!
これは思ってた以上の効果が出て、完全に青山さんが下を向いちゃったよ。
どうすっかな?
「あのよぉ、青山さん。終わった事は、もぉ気にしなくて良いと思うぞ」
「えっ?」
「いやな、真上さんって、あぁ言う人だから、もぅ過去の事なんてなにも気にしてないと思うんだよ。だから、そこは問題じゃないと思うぞ」
「うん……けどね。自分のやった事に対してキッチリ反省しないと、また同じ事を繰り返しちゃいそうなのよ。人の嫉妬って、簡単に制御出来無いから……」
偉い!!
それだけ反省してれば、多分、もう大丈夫だ。
今の青山さんなら、もぉそんなそんな悪い方向にはイカネェよ。
まぁけど、本人が懸念してる以上、1つだけ適切な助言しておいてやるか。
(↑偉そうな俺)
「いや、そうでもないぞ」
「えっ?なんで?」
「いや、なんでって聞かれてもなぁ。単純な話、嫉妬の本質ってもんが解れば、そんなもん、なにも感じねぇよ」
「どういう事?嫉妬しないで済むって事?」
「まぁ、俺もツレに聞いた話だから、小難しくは説明出来ねぇけどよぉ。単純に言っちまえば、嫉妬ってのは、自分の自信の無さから来るもんなんだとさ。だから、自分を磨いてりゃ、嫉妬なんてしないんだってよ」
……って、奈緒さんが言ってた。
あの人が言ってんだから、間違いねぇだろ。
(↑THE無責任な俺)
「その人って、どれだけ自分に自信がある人なの?」
「果てしなく。……但し、自信過剰じゃねぇ、節度のある自信だ」
「節度が必要かぁ。私には、ちょっと難しいかな?」
「じゃあ、別の意見」
「なに?まだ他にも意見が有るんだ?」
「いや、これも単純な話なんだけどよぉ。嫉妬ってよぉ。人のせいにするからこそ、生じる負の感情なんだろ。だったら一切合切、なにがあっても、人のせいにしなきゃ良いじゃねぇか。全部、自分のせいにすりゃあ、嫉妬なんて生まれねぇよ」
……って、真上さんが行動で示してた。
あの人がやってんだから、間違いねぇだろ。
(↑またしてもTHE無責任な俺)
「それも難しくない?それに、そんな人って、本当に居るもんなの?」
「あぁ100%居るなぁ。……つぅか。俺のツレって、みんな、そんな感じだぞ」
「えっ?レベル高過ぎる」
「そうじゃなくてよ。それが奴等にとっちゃあ自然なんだよ。そう言うの、変に意識する事じゃないらしいんだよな」
「凄いね。……そんな人達が居るんだ」
「なに言ってんだかな。青山さんだって、身近に真上さんって友達が居るじゃねぇか。あの人が、他人のせいにしないナンバー1だぞ」
「あっ、そっか。……ホントだね」
「だろ。青山さんの一番身近に、参考に出来る人が居るだろ」
ふふふ……これで、青山さんの中で、真上さんの株がSTOP高ぐらい上昇した筈だ。
参考にしたまえよ。
「けど、倉津さんが、そう言うって事は。真上って、そんなに自分に自信を持ってるの?」
「いや、あの人に関しては真逆。自信云々以前に『慢心』しない様にしてるんだよ。だから、あんな人並み外れた優しさが持てる。彼女は、俺が知り合った中でも、かなり特殊な人間だ」
「それって、人それぞれって事?」
「単純に言やぁ、そう言うこったな。まぁ人の成長の仕方なんざ、100人居りゃあ、100通りある訳だから、自分に合ったものを模索するのが一番なんじゃねぇの」
「じゃあ、他にも成長の仕方は有るって事?」
「あぁ、有るな。飛びっきり、とんでもない奴が居るからな」
言わずと知れた馬鹿秀。
「どんな人なの?」
「『退屈出来無い奴』だ」
「えっ?退屈出来無いのが、嫉妬や、成長と関係が有るの?」
「あぁ、凄まじく関係が有るぞ」
「なんで?」
「まぁ、コイツに関しては、俺も理解の範疇を超えてる奴だから、本当にキッチリとは説明出来ねぇんだが。兎に角、なんに関しても貪欲なんだよ。自分に出来ない事が有るのが許せない様な奴でな。嫉妬なんかする暇さえも惜しんで、自己の成長を促してる。まぁ、そんな死ぬ程、傍迷惑な奴だ」
「けど、人として成長はしてるんだよね」
「あぁ、トップ・スピードのまま好き勝手な人生を送って、今じゃ何億って金を稼いでるよ」
「凄いね……」
だよな。
そう言う反応になるわな。
「いや、心配しなくても、基本的には傍迷惑な奴なだけだ」
「けど、倉津さんも、凄いって認めてるんでしょ?」
「まぁなぁ……幼馴染だから、あんま認めたくねぇんだけどな」
「幼馴染?……って、まっ、まさか同い年とか言わないよね」
「そう、残念ながら同い年だ」
「うっそ、有り得ないだけど」
まぁ有り得ないな。
「あぁ、けどよぉ。その馬鹿が言ってた話なんだけどな。精神面や、文科系の事なら、努力すりゃ、大半の事は出来るらしいぞ」
「体育会系はダメなんだ」
「あぁ、そいつが言うには、体育会系は努力の仕方が違うんだとさ。それと絶対的な才能が要るんだとさ」
「ふ~~ん……っで、その人って、体育会系が苦手なの?」
「全然。つぅか、寧ろな、なにをやらせても卒なくこなす男だな」
「嫌過ぎる。なに、そのパーフェクト超人?何所まで嫌味に出来てるの?」
うぉ!!『パーフェクト超人』とは、中々面白い事を言うな。
それってキン肉マン・ネタだよな。
ひょっとして青山さんって、結構オタク系?
違いますね。
はい、すんません。
「いや、それがよぉ。全然、嫌味じゃねぇんだよ」
「なんで?他の男子とかに妬まれたりしないの?」
「しねぇなぁ。つぅかアイツは、その辺に関しても強かな野郎だから、誰からも反感を買わねぇんだよな。全てを上手く廻してやがるよ」
「なに、その人?慢心とかしないの?」
「全然しねぇな。ってか、その機能が生まれた時から付いてねぇみたいだな」
「うわあぁ~~~」
メッチャクチャ嫌そうな顔してるな。
まぁ、これも然りだよな。
けどな。
こう言う子に限って、あの馬鹿に逢ったら、一目惚れとかしちゃうんだよな。
ヤルセねぇ~~!!
「まぁまぁ、その馬鹿は、本当に特殊な奴だから捨て置くとしてだな。他の嫉妬しないやり方ってのは、少しぐらい、なんか参考になったか?」
「ごめん。……その人に限らず、全員が特殊過ぎて、全然参考になってない」
「ダメか。……あぁ、けど、あれだぞ。人間なんてよ。そんなそんな一辺に変われるもんじゃねぇんだから、まずは、誰かを目標にすりゃ良いんじゃねぇか」
「それって、ちょっとづつでも良いって事?」
「いや、寧ろな。それが一番大事なんじゃねぇの」
「なんで?」
「うん?一足飛ばしでモノをやるとな。飛ばした分、解らない事が生じるんだよ。その時に出来る『綻び』ってのが、結構、厄介でな。飛ばした分だけ、中々解答に行きつかねぇんだよ。だから、必要以上に背伸びをせずに、自分の出来る事から、ゆっくりやりゃ良いんじゃねぇかな」
「でもさぁ。それだと、みんなに置いて行かれない?」
「置いてかれりゃ良いじゃん。問題ねぇよ」
「なんで?みんなに置いてかれちゃうのって、嫌じゃない?」
うむ、言いたい事はわかる。
けどだな。
それこそが、他人に対する嫉妬生む負の感情の元だから、崇秀でもない限り、そう言う感情は必要ねぇの。
「青山さんって、頭悪いな」
「あれ?なんでだろう?凄く悔しい」
「あっ、ひょっとして、俺の事、本能的に馬鹿だと思ってっからじゃね?」
「うぅん、全然そんな事を思った事ないよ。どっちかと言えば、頭良いし、優しい人だなって思ってる」
まっ……まっ……マジでか!!
こんな俺の事を、そうやって見てくれる人もいるもんなんだな。
生きてて良かった。
「いやいやいやいや、頭は良くねぇぞ。それに青山さんが言う程、優しくもねぇ。あんな酷い事をした人間が優しい訳ないだろうに」
「そうかなぁ?自分が嫌がられる様な事、普通はしないんだけどなぁ。それが出来るだけでも十分良い人だと思うけど」
「あっ、まぁ、いや、そう取ってくれるなら、それはそれで良いんだけどな」
「じゃあ、そうする。私の中で倉津さんは良い人だって認定。……っで、さっきの答えは?」
「あぁ悪ぃ、話が逸れたな。……いやな、実は、そんな大層な話じゃねぇんだよ。最終的な所を見れば、人間の行き着く先なんて、早々は変わらねぇのな。だったら、慌てる必要なんかないんじゃねぇかなって思ってよ」
「あぁ、でもさぁ、人より早く出来る様になった方が、得な事が多いんじゃない?」
「いやいや、穴だらけで出来る気になってるのが一番性質が悪いから、出来れば、堅実にやって行くのが一番だと思うんだけどな」
「そっか。……確かに、そうだよね」
妙に納得したよ。
しかしまぁ、あれだな。
此処最近の間、人の相談事バッカ受けてたから、それ相応に対応が出来る様になったもんだよな。
特に女の子に対して、此処までベラベラ喋れる様になるとは思っても見なかった。
実際、半年ぐらい前までは、ロクに女の子とも話せなかったもんな。
俺にしちゃあ、大した進歩だ。
「まぁまぁ、慌てずに行けば、なんとかなるさ」
「それって、倉津さんの考えなの?」
「あぁ、まぁなぁ。基本的に俺は、無理な事が嫌いだから呑気にやってるよ」
「そっか。じゃあ、私も、それでやってみようかな」
「進歩が遅くても良いなら、それも有りなんじゃね」
「ふふっ、じゃあ、そうしちゃお」
あらま、そこに行き着いちゃった訳な。
まぁけど、俺のやり方って、基本的な部分でお気楽だからな。
最初の入り口として、肩肘張らないのも有りだよ有り。
……っとまぁ、此処まで『嫉妬』と『対応策』について、青山さんに話をしていた訳なんだが。
実は俺な、この話をしたのには、れっきとした理由があんだよな。
いやいや、勿論、そんな仰々しい話じゃないんだぞ。
ただ単にな、彼女が本気で抱えてる悩みを、少し話し易い様な状況に変えたかったんだよな。
要するに、リラックスした状態だな。
―――『なんで、そう思ったか?』って言うとだな。
この車で送る事を言った時、青山さん、妙に神妙な顔をしただろ。
あれが多分、彼女からの信号だったと思ってるんだよ。
まぁ当初はな、俺に危険を感じて、あんな表情をしたものだと思ってたんだが、どうにも、それが理由としても、釈然としない部分が多かったんだよ。
『乗る』『乗らない』以前に、俺が『送ろうか?』って口に出した時点で、彼女の意思は明らかに『乗る』提示していた。
なら、なんで、あんな表情をしたかって話なんだよ。
―――答えは簡単『抱えた悩み=真上さんの虐めの件で、まだ話してない事がある』
……って、俺は判断をした訳だな。
まぁそんな訳でだ。
まずは、彼女の悩みの1つを作為的に解決したって訳だぁな。
さてさて、此処から、どう切り出したもんかな?
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>
『嫉妬が人を変えてしまう』なんて事は、よくある話なのですが。
『少しでも嫉妬を減らす方法』を書かれた小説は少ないなぁ……って思いまして、更にこの苛め問題を掘り下げて行こうと思います。
苛めや嫉妬を題材にした演出をするなら、矢張り、ちゃんと打開策も書かないとね(笑)
……とまぁ、そんな訳でして、次回もこの続きを書いて行こうと思いますので。
良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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