最後まで奏でられなかった音楽

どこかお間抜けDQNな不良さんのゆったり更生日誌(笑)
殴り書き書店
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034 不良さん 苦悩する(自業自得)

公開日時: 2021年3月11日(木) 22:23
更新日時: 2022年11月6日(日) 23:31
文字数:2,114

●前回のおさらい●

国見さんに身内の話を淡々とされて、うんざりする不良さん。

そんな不良さんを見た向井さんから『身内の話が嫌なら、楽器の話でもしてみれば』と言う提案を受け、楽器の話をしてみるが。

カツアゲしたベースが『500万』するものだと聞かされて、驚く不良さん。

そして、向井さんも、その金額に対して『なんで初心者の不良さんに、こんな高いベースを譲ろうとしたのか?』を疑問に思われ。


不良さんは大ピンチ!!


此処を、なんとか誤魔化し切れるか!!

 国見のオッサンの口から吐き出され続ける『俺の糞親父の昔話』

そんな糞話をいつまでも聞いていられないので、奈緒さんに対処法を教えて貰ったら。

『オッさんに楽器の話』をする事を勧められ、俺のカツアゲしたベースについて話してみたら……このベース、500万以上の価値がある事が判明。


それを聞いた奈緒さんは、俺に疑いの目を向け始めるのだが……此処1つ、誤魔化す方向で。



「はぁ、そうッスね」


取り敢えずは、そんな風にベースにそこまで興味がない様な風に話してみた。

何と言っても此処で変に動揺して、俺のやったカツアゲの事が奈緒さんにバレたら最悪だからな。


兎に角、なんとしてでも取り繕わないと。



「ねぇ、クラ。その譲ってくれた人って、クラには何も言ってなかったの?」

「あぁまぁ、特には何も言ってませんでしたね」

「ふ~ん。……ねぇクラ、疑う訳じゃないけど、それって幾らしたの?」

「はぁ、それがッスね。元々が借金のカタで譲渡されたもんなんで、金額は俺も良くは知らないんッスよ。でもまぁ、多分、多く見積もっても100万程度だと思いますよ」


ほぼ嘘は言ってないぞ。


アイツみたいなボンボンのカードパンクさせたら、100万や200万ぐらいなら簡単に引き出せるからな。

それを辞めてやったんだから、このベースの価値は、その100~200万の価値は有る筈だ。


それにまぁ、カツアゲされた本人も『100万ぐらい』って言ってたしな。

だから、この辺りが順当だろう。



「ふ~ん……一応、聞くけど。それ、ホントだよね?」

「まぁ、詳しい事情までは、俺もよく解りませんけどね」

「そっか。疑って、ごめんね」

「いや、別に良いですよ。まぁ、俺ん家が、俺ん家ですからね。疑われてもしょうがないッスよ」

「えっ?あっ、ごめん。今のは、そう言うつもりで言ったんじゃないんだよ」

「あぁ大丈夫ッス、大丈夫ッスよ。そんなの気にしないで良いですよ。そう言うの言われ慣れてますし」

「ホント、ごめんね」


奈緒さんが俯いちゃったよ。


あぁ、なんかこう言うの嫌だよな。

元を正せば、不機嫌だった事を理由に、俺がロクデモナイ・カツアゲなんぞをしたのが原因。

しかも、現状じゃ嘘まで付いてる有様。


それで他人が凹んじゃったら、流石にクズの俺でも心が痛む。

謝らなきゃいけないのは、俺の方なのにな。


しかしまぁ、昔これに良く似た事があったんだが、それを思い出すな。


小学生の頃。

クラスの河田って奴の給食費が無くなって、真っ先に俺が疑われたんだがな。


俺は、その件に関しては、思いっきり正当な理由で反論。

『そんな小銭を奪わなきゃいけないほど、うちは貧乏じゃねぇ』

……って言ったところ、みんなは、妙に納得した。


っで、結局の所、その給食費泥棒は見つからないまま、教師が自腹を切って、この話は一応の終焉を迎えた訳なんだけど……


実は、その犯人って俺なんだよな。

遊び金欲しさに、ちょっとした小遣い稼ぎだと思っていた当初の俺は、罪悪感も糞も無く。

全部、その日に使っちまった訳なんだが……今にして思えば、俺って、その頃から『クズ』だったんだな。


もぅほんと、カツアゲとか悪事は辞めよ。


結構、後腐れ悪いもんな。


***


 そうしてる間に、今度は大き目の高そうなアンプを抱えたオッサンが、この場に帰って来た。



「なんだなんだ?どうした?喧嘩でもしたのか?」

「いや、なんでもねぇよ。ちょっとした話の喰い違いだ」

「そうか……まぁ若いってのは、ちょっとした事で食い違うもんだ。なぁ、奈緒ッペ」

「そう……ですね。……あっ、あの、すみません。今日、なんか、練習がないみたいなんで、私、そろそろ帰りますね」

「奈緒さん……」

「ごっ、ごめんね……クラ」


奈緒さんは俯いたまま席を立ち。

謝罪の言葉だけを残して、そのまま扉に向かって歩いて行った。


俺が思っていたよりも、彼女はズッとダメージを受けていたみたいだ。


こう言った事に、何らかのトラウマでも有ったのだろうか?

もしそうなら、俺は自己防衛をしたいが為に、また余計な事してしまったに違いない。


心が痛い……


追い駆け様としたが、此処はオッサンに止められた。



「なにが有ったかは知らんが。今は、そっとして置いてやれ」

「けっ、けどよぉ」

「そう言う時もある。少しは察しろ、少年」

「チッ」


オッサンの言う事を聞いて、止まった訳じゃない。

ただ、オッサンの意見を聞いて、そうすべきなのかとは思った。


人間、一人で考えたい時もあるもんな。



「はぁ……しかし、少年よ。その歳で女泣かせとは、あまり感心はせんな」

「あぁ、そうだな。自分でもそう思う……ただなぁ」

「その原因が、人から奪ったベースだと、流石に心が痛いか?」


はい?



「ちょ!!なっ、なんでオッサンが、そんなことを知ってやがんだ?」

「こんな有名なベースをガキが持ってたら、誰だって疑う。少年、このベース、どこで手に入れた?それが原因の喧嘩なら、正直に言ってみろ」

「そうだな」


親父の昔の仲間なら、悪事については良く知ってるはずだ。

それなら、この状況も打破出来るかもしれない。


そんな仄かな期待と共に俺は、オッサンのペースに巻き込まれて、ベースの入手経緯を正直に話し始めた。


これで、どうにか良い方法を教えてくれればいいんだが……


最後までお付き合いありがとうございました<(_ _)>


馬鹿な真似(カツアゲ)をした代償を払う事に成ってしまいましたね。

しかも、保身の為に奈緒さんに嘘まで付いてしまった有様。

それで彼女に『不良さんに酷い事を言ってしまった』とすら思わせてしまいました。


まさに身から出た錆、最悪の展開ですね。


さてこの後、彼は、この最悪な状況を打破するつもりなのでしょうか?

そして国見さんの助言は、彼の窮地を救う事が出来るのか?


それはまた、次回の講釈でございます。


また遊びに来てねぇ(*'ω'*)ノ

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