最後まで奏でられなかった音楽

どこかお間抜けDQNな不良さんのゆったり更生日誌(笑)
殴り書き書店
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281 不良さん、恐怖の忠告を受ける

公開日時: 2021年11月14日(日) 00:21
更新日時: 2022年12月16日(金) 14:58
文字数:2,216

●前回のおさらい●


 崇秀の言う、奈緒さんの中にあると言われている【悲劇のヒロイン的な心情】とは一体何なのか?


それが今、明らかに成って行く。


そして……

「あのよぉ、崇秀。こう言っちゃなんだが、奈緒さんそう言うの、結構、馬鹿にしてる所があるぞ」

「ほぉ。そう言うって事は、なんか、それに対する例え話でも有るのか?」

「イヤな。例え話って程の話じゃねぇんだが、以前、素直の恋愛観の話が出た時に『恋愛小説かなんかを読んで【悲劇のヒロイン】とかに憧れてるんじゃないかな?』って言った事があんだよ。だから、そう言う感覚は奈緒さんにはないと思うぞ」

「なるほど……そう言う事なら、逆に、尚更確定だな」

「はぁ?なんでだよ?なんでそうなるんだよ?」

「いや、俺が逆に聞きたいんだが……もし、その話が本当なら、なんでそんな願望がない向井さんが、そんな心境がわかんだ?」

「あっ」

「まぁ、そう言う感情が有るからこそ、そう言う風に言えるんだろうし。そう言う願望が無きゃ、言葉には出ない。とどのつまり、女の心理ってのは、そんなそんな変わるもんじゃねぇんだよ」


裏返しだったって事か?



「ところでよぉ。奈緒さんの中に住んでる『悲劇のヒロイン』ってなんだ?」

「まぁそうだな。これは予想の範疇でしかないが、彼女の基本は『母性本能』と『無茶』だな」

「『無茶』だと?……母性本能は解るが、なんで『無茶』なんて言葉が出るんだ?」

「オマエなぁ、ちょっとは向井さんの行動から察しろよな。彼女の常軌を逸した行動力は、一体、なにから来てる?……まず第一は、オマエを守る為だ。今までの数々の奇行から、それは明白だろうに。付け加えて、さっきの話にプラスしてやりゃ解り易いんだが。彼女は、そう言った無茶を平気でする。……っとなればだ。肉体関係の話も通じてくる訳だ。『クラが成功するなら』って言う前提でな」

「あっ……そう言う事か。だからオマエは、執拗なまでに俺に忠告してたのか」

「まぁ、それも有りきなんだがな。実例的に女の心理を考えりゃ。『好きな男の為に体も張れる』なんて事を思う奴も多いからな。んで、その時の思考が『相手の為にそこまで出来る私って凄い』って思う訳だ。……更に言えば、そこで反論されたら『なんで?』ってなる訳だ。だから俺は、最初から全て受け入れろって言ったんだよ」

「女の人に、そんな心理があったとはな」

「まぁ、その辺を上手くやるのが、男の甲斐性ってもんだ。んな訳で、オマエは、向井さんの心理を良く理解してやる必要が有る訳だな」


・・・・・・ムズイ。


しかしまぁ、なんかあれだな。

奈緒さんが作ったチャンスを有効活用するって事は、バンドにもプラスになる話だから、有りと言えば有りなんだが……


そんなに上手く感情をコントロール出来るか、どうかは自信が無いな。



「なんかよぉ。俺、そんなに上手くやれるか?」

「さぁな。それは、オマエのみぞ知る世界だから、俺は、オマエじゃないから、なんとも言えねぇな」

「ふむ……自信ねぇな」

「そんなもんだ。……けどな、心構えが有ると無いとじゃ雲泥の差がある。心構えが有れば、悪くても対応は出来るが。心構えが無ければ、感情でグダグダの罵り合いになっちまうからな。この話だけでも、最低限、心に留めて置けば、最悪の事態だけは免れると思うぞ」

「……なるほどな」


ふむ……お節介な話だが、得心のいく話だな。


ただなぁ、こう言う事って、本来は、自分で気付かなきゃいけないんだろうけどな。



「にしてもよぉ。なんで、こんな話をしたんだ?」

「ほぉ。流石に、オマエでも気付いたか」

「なんだよ。なにがあんだよ?」

「例の『苦行』だよ苦行」

「はぁ?オイ、苦行って、まさか……オマエの言ってた、あれの事か?」

「そうだ。それ以外なにがあるってんだよ?」

「ちょオマ、なにをさせる気だよ!!」

「さぁな、それは秘密だ。……ただ1つだけ忠告してやれるとしたら、このライブを全力で乗り切れ。そうすりゃあ、苦行なんぞする必要はねぇ。但し、乗り切れなきゃ、想像も絶する様な『苦行』が待ってる。ただ、それだけのこった」


なんだ?


言われなくても、ライブは全力でやるつもりだが『乗り切れる』『乗り切れない』の意味が、サッパリわからねぇぞ。

観客に『受ける』とか『受けない』若しくは『盛り上がる』とか『盛り上がらない』の話で良いのか?



「オイ、崇秀、それって……」

「さぁてね。なんの事だかね。……おっと、イケネェ。そろそろ、俺の出番の様だ」


……出番だと?


なに?もぅそんなに時間が経っていたのか?


それにコイツの出番って事は、ライブの経過としては2時間もの間、この会話を続けていた事になるな。


って事は、最初の『Baby×Killer』はおろか、2~4組目のバンドも、全然見ていなかった事にもなるな。


俺は、不意に会場の温度が不安になり、ステージ裾から、再度客席を見回してみる。



すると……思った以上の熱気を持っており、一応は順調に、事が運んでいる様だった。



「オッ、オイ……」

「じゃあな。ちょっくら遊んでくらぁ」


崇秀は、俺の言葉に軽い返事だけを残して、Ibanez/UV-7を片手に担いで、ステージに上がっていく。


しかも、その姿は堂々としたもので、まるで遊びに行く子供。

この大舞台に対しても、緊張の欠片すら感じない。


矢張り、コイツの度胸は並大抵のものではない。



その姿に反して俺は……崇秀が言い残した言葉が引っ掛ってしょうがなかった。

あの、アイツが言った『苦行』って言葉が引っ掛ってしょうがなかった。


結局、その件に関してだけは、何も教えてくれないままだったからな。



一体、なにが有るって言うんだよ?


最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>

これにて第四十七話『バックステージ』はお仕舞なのですが……皆さんは、このバックステージってタイトルの意味は解りましたか?


このタイトル、実は隠してた意味がありましてね。

『バックステージ=観客には見えていない裏側』って意味があり。

少し飛躍気味の意見なのですが『芸能界の裏側』って意味でもあったんですね(笑)


まぁ気付く方はいないとは思うんですが、ちょっとした言葉遊びでしたぁ(*'ω'*)b


さてさて、そんな遊びも此処まで。

崇秀が大舞台へ上がって行く以上、此処からはガチでライブをお伝えしたいと思いますです♪


なので次回の第四十八話のタイトルは……

『魔王のライブ』でごじゃります(笑)


どんなライブが繰り広げられるのか?

少しでも興味を持って頂けたら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(*'ω'*)ノ

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