最後まで奏でられなかった音楽

どこかお間抜けDQNな不良さんのゆったり更生日誌(笑)
殴り書き書店
殴り書き書店

069 不良さん、山中君を勧誘するが……

公開日時: 2021年4月15日(木) 21:32
更新日時: 2022年11月12日(土) 17:54
文字数:3,251

●前回のおさらい●


 山中君をバンドに誘おうと企む倉津君。


そして、その方法は……

『崇秀をライバル視している所に目を付け、気持ちを煽る』と言う物だった。


さて、その作戦はうまく行くのか!!

「オイ、山中……『One is for the guys, one for everyone』って意味知ってるか?」

「……おい、マコ。オマエ、それどこの『スクールウォーズ』やねん。しかも、なんか微妙に間違うとるで。それを言うなら『one for all,all for one』なんちゃうんか?」


がぁ~~~……

英語の文法自体は間違っちゃいないと思うんだが……そう来るか。


まぁ日本じゃ、そんなラグビーの青春ドラマが有ったから、そっちの言い方の方がそうしてもメジャーな言い方になっちまうんだろうな。


お陰で、早くもしくじった……か?



「まぁ、その、なんだ、あれだあれ」

「みんなで掛かれば、あのアホも倒せるって腹か?まぁアイディアとしては悪くはないな。……ほんで、そんなオマエは、俺をどないしたいねん?」

「そこまで解ってんなら、もぅ言う事はねぇ。後はオマエの良い返答を待つだけだな」

「さよか。ほんだら俺の答えを教えたるわ」

「なんだよ?」


真面目な顔をしている所を見ると、どうやら冗談を言うつもりは無いらしい。


いつになく真面目な顔で山中は話し始めた。



「まぁ、オマエのアホな頭で考えたにしては、おもろい計画では有る。がや、それだけやと崇秀を倒すのには、あまりにも可能性が薄い。……やから正直言えば、あんまりそそらん話やな」

「なんでだよ?」

「よぉ考えてみぃよ、マコ。オマエはドの付く素人。向井さんは俺と被るドラマー。後、ボーカルも居なきゃ、ギターも居れへん。そんなもんじゃあ話にもならんやろ。……オマエ、なんぞあの子に唆されたんか?」

「オマエねぇ、人聞きの悪い事を言ってじゃねぇぞ。奈緒さんは純粋に『崇秀越え』を狙ってんだよ」

「アホ臭い。それに青臭いわ。序に言うなら、オマエ等は、なんも解ってへん……アイツは、マコが思てる以上に怖い男やで」


山中の顔は、更にマジ顔だ。


しかし、不思議な事を言う。

俺なんかよりズッと付き合いが短いオマエに、アイツの何が解るんだ?



「なにが怖いんだかな?所詮、馬鹿秀は馬鹿秀だろ」

「ホンマ、お前は悉く甘い男やな。ほんだら逆に考えてみぃ」

「なにをだよ?」

「敵は何も崇秀1人やないんやで。何所でどうやって手懐けたんかは知らんが、崇秀には既に『アリス』って言う最終兵器みたいなボーカルが付いとんねん。お前もよう知っとるやろ、話を聞いてだけでも、あの女も大概やぞ」

「はぁ?たかがギターと、ボーカルだろ。んなもん、どうにでもなるだろうに」

「オンドレはアホか!!そのギターとボーカルが一番問題なんじゃ。早い話、崇秀に勝とう思たら、自動的にアリスも相手にせなアカン。こんなもん秀2匹と戦うのと同じやぞ」


勘違いするなよ、山中。


アイツの才能って言うのはな。

オマエの思ってる『天才的な感性』があるかも知れないが、どちらかと言えば『努力の結晶』で勝ち得たものなんだぞ。


それを、何も始まってない時点でウダウダウダウダ言いやがって……オマエのやってる行為なんざ、所詮は、崇秀にビビって物事を先延ばしにしてるだけだ。

こんなもん、なんだかんだ因縁をつけてるだけじゃねぇかよ。


こりゃあ残念だが、コイツとは、どうも縁が無かったみたいだな。



「あぁ解った、解った。じゃあ、この話はご破算って事で良いな」

「クククッ……アホ抜かせよ。誰もやらんとは一言も言うてへんやろが。こんな無謀な挑戦……おもろ過ぎるやんけ」


破格の笑顔で笑ってやがる。


って事はコイツ。

わざと弱気な言動を吐いて、俺の本気具合を試しやてやがったな。



「なんだよ。じゃあ、やってくれんのかよ?」

「えぇで。やるのはかまへん……ただし条件付や」


なんだなんだ?

今度は、やけに悪い顔になってるぞ。


関西人ってのは、本当に表情が豊かだな。

&ただ、この表情には嫌な予感しかしないんだがな。



「条件だと……なんだよ、その条件って?」

「俺が満足する様な『アリスクラス』のごっついボーカル連れて来い。ほんだらバンドに入ったるわ」


オイオイ、それまた無理難題を……

冷静に考えなくても、俺に、そんな凶悪な知り合い居る訳が無いだろに。


居たとしても、喧嘩出来る人間しか知らねぇんだぞ。


それともなにか?

足を棒にして全国を駆けずり回ってでも、そんな凄いボーカルを探して来いとでも言いたいのか?


流石に、この条件は無茶苦茶だ。


『ガチャ』



「おはよう……」


そんな無謀な条件を突き付けられた所に、まだ少し眠たそうな奈緒さんが帰ってきた。



「おぉ、おはようさん、なんや自分、もぅ起きたんかいな?」

「……うん……今起きた」


小動物の様に眠そうに目をクシクシ擦りながら、ややフラフラした足取りで椅子に、ちょこんと座る。


その後は、何故か、山中の顔をジィ~っと見てる。


なんだ?奈緒さん寝惚けてるのか?

反応が、いつもと違ってやけに緩慢な気がするぞ。



「……ねぇ……山中君、さっきの話ほんとなの?」

「さっきの話?あぁ、なんの事かと思ったら、バンドの話かいな」

「……うん」

「あぁホンマやで。但し、マコが条件をクリアー出来たらの話やけどな」

「……ハイ、じゃあ、私が唄う」


まだうつら・うつらしながら、真っすぐに手を上に挙げて山中の難題に答える。



「ちょ……向井さん。向井さん、確かに歌は上手いけど。あの子ほどやないやろ」

「……さぁ」


首を傾げて、まだ寝惚けたままの様だ。


これじゃあ、ただ単に、山中の言葉に反応してるに過ぎない。



「『さぁ』って」

「……あの子より上手いかは解んないけど……昔コーラスで、スカウトされた事ならあるよ」

「なっ、なんやて?……それ、ホンマか?ほんで、その話はプロの話なんか?」

「……プロの話じゃなきゃ。ここで、そんな話はしないよ」

「ほんだら、なんでプロになれへんかってんな?おかしないか?」

「……ん?だって、歌は嫌いじゃないけど、そこまでの思い入れが無いのよ。……でも、クラのバンドに山中君が入ってくれるって言うなら話は別。喜んで唄わせて貰うよ」

「マジか。なんやねん、それ。アンタなぁ……」

「……なに?」

「腹立つ位えぇ女やな……」

「……へぇ?」

「ハハッ……まいった、まいったわ。アンタにゃあかなわへん。こりゃあ飛んだ伏兵がおったもんやわ。男の為に自分の身を切るなんて、今時の女子には中々出来るこっちゃない。気に入ったで。アンタがそうしてくれるにやったら、俺もその心意気に応える事にするわ」

「……ほんと?……ありがとカズ」


山中寛和=カズ。


なんとも解り易い渾名だが。

なんで山中が名前の方で、俺が苗字の方なんだろうか?


なんか、ちょっと腑に落ちない気分だな。


まぁまぁ、そんな事よりもだ。

山中の奈緒さんを見る目が、おかしな事になってないか?


まさかコイツ……



「オイオイ山中。バンドに入ってくれんのは有り難いがな。オマエ、絶対に奈緒さんには手を出すなよ」

「そんな無茶言うなや、マコマコ」

「誰がマコマコだ!!」

「こんなえぇ女を目の前にして、惚れんなって言う方が無理な話なんちゃうか?」

「ちょ、オマエ……」

「なんや、マコマコ?」


ニヤニヤ笑いながら、なに言ってやがんだオマエは?


まさか、本気で奈緒さんに惚れたのかコイツ?


なら、こちら側としても対応策を講じるしかないな。



「いや、あぁヤッパ、オマエ、ウチのバンドにはイラネェわ。俺、他当たるしよ」

「そない邪見に扱うなや。今さっき、なったとことは言え『打倒崇秀』を誓ったバンドの仲間やんけな。仲ようやろうぜ~、マコマコ」

「コイツ、マジでうぜぇ~~~っ」


喜んで良いのやら、悲しんで良いのやら。


確かに山中の参入は、バンドを成立させるには不可欠な存在だ。


かと言ってだ。

奈緒さんを見るコイツの目は『女誑し』の本質的な目。

奈緒さんの傍に置いておくだけで危険極まりないし、なんか奈緒さんが穢れそうだ。


んでだ。

当の本人の奈緒さんは、まだ寝惚けたままで、コンビニ袋から何かを取り出そうとしている。

しかも、それが上手く取れないのか、ズッとゴソゴソ弄くってる。


狼に狙われてるというのに、この可愛い羊は危機感0。


こんな状態で大丈夫なのか、このバンド。


最後までお付き合いありがとうございました<(_ _)>


奈緒さんのお陰で、山中君の勧誘に成功しましたね。

もう一度言います『奈緒さんのお陰で、山中君の勧誘に成功』しましたね(笑)


冷静に考えると、倉津君、条件を引き出しただけで、実は何もしてないんですよね(笑)


まぁまぁ、その辺は結果オーライ、と言う事で。


さてさて、そんな中。

奈緒さんは、寝ぼけたまま、なにやらコンビニの袋をごそごそしていますが。

この後すぐに、ある恐ろしい出来事が起こります!!


それはもぉ恒例になっている……次回の講釈と言う事で(笑)


また遊びに来て下さいねぇ~~~(*'ω'*)ノ

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート