最後まで奏でられなかった音楽

どこかお間抜けDQNな不良さんのゆったり更生日誌(笑)
殴り書き書店
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146 不良さん 奈緒さんの気持ちを知る

公開日時: 2021年7月2日(金) 00:21
更新日時: 2023年9月4日(月) 16:24
文字数:3,390

●前回までのあらすじ●


 話の流れから、奈緒さんが書いて来た曲の話題に成りました。


おわり(笑)

「うん?憶えてないかなぁ?以前、仲居間さんがクラに、曲を作る際のコツを教えてくれたでしょ」

「はぁ……けど、あの時って、俺と、アイツしか居ませんでしたよね」

「うぅん。私、ズッとアソコに居たよ」

「いや?へっ?何所に居たんッスか?奈緒、何所にも居なかったじゃないッスか?」

「それがね、居たのよ。丁度、私が階段から降りてる途中、仲居間さんが作曲の話をし始めたから、悪いとは思ったんだけど、勝手に2人の話を聞かせて貰ったのよ。……ほら、だから、クラがステージ1人でベース弾いた時、直ぐに拍手出来たでしょ」

「あぁなるほど、あの時のは、そう言うカラクリだったんッスね。……けど、なんで、直ぐに声掛けてくれなかったんッスか?一緒に喋れば良かったじゃないッスか」

「だって、折角2人で話してるのに、私が入っちゃ悪いでしょ」


奈緒さんって、妙な所まで気を使うんだな。


あの馬鹿との会話なんぞ、いつでも出来るのに。



「そんなの、気にしなくて良かったのに」

「う~~ん、ごめん。今のは、ちょっと嘘付いた」

「へっ?どういう事ッスか?」

「実はね。話し掛けなかったのは、それだけじゃないんだ。……仲居間さんが、クラに、どんな教え方するのか興味が有ったのよ」

「あぁ、あの『下向くな』とか『ストレートに表現しろ』とか言う、あれですか?」

「そぉ。簡潔に説明して、大きな成長をさせる、あの独特の言い回し。後に、なんかの役に立つかなっと思って、隠れて聞いてたのよ」

「あぁ、なるほど」


崇秀程じゃないが、この人も大概、貪欲な人だな。


『学ぶ』機能が付いてる人って、みんな、こんな感じなのか?



「……で、まぁそんな感じで、コソコソ2人の動向を見て色々学んだ訳よ」

「はぁ」

「その中でも秀逸だったのは、仲居間さんの言ってた作曲の心得。『組み合わせ』『ストレートな表現』『英語』『感情』って言う項目。っで、折角、そうやって学んだんだから、これをお題目にして、今回の作曲にチャレンジしてみたのよ。それが今回の真相。……どぉクラ、理解出来た?」

「けど、話を聞いただけで。そんな簡単に、真似が出来るもんなんッスか?」

「だ~か~ら~、それも、さっき言ったじゃない。此処最近イライラしてたって」


そっかそっか。

確かに、そう言ってたな。


それにしても奈緒さん、イライラしながらでも出来るって、何気に凄くないッスか?

俺だったら、少し上手く行かないだけで、絶対、紙を破り捨ててますよ。


ヤッパ、才能の有る人って、諦めない事から始まるんだな。



「ところで奈緒」

「うん?なに?」

「何曲ぐらい書いて来たんッスか?」

「うんとね。メンバー全員分の曲を書いたから5曲かな」

「まっ、まじッスか?」

「うん、マジ……聞く?」

「そりゃあ、勿論!!……って!!その前に服を着て下さい!!」

「あっ、そうだね。忘れてた、ごめん」


ホント、この人だけは……直ぐに、話に夢中になるんだから。


俺以外の前で、そんな事しちゃダメっすよ!!

他の男なら、間違いなく襲われるから、少しは自覚して欲しいもんッス。


しかしなんだねぇ。

女子の着替え(?)って、凄くエロいッスなぁ。


奈緒さん、先にシャツだけ着るからチラチラパンツ見えるし、スカート履く時だってパンチラ。


本当なら、その可愛いお尻に顔を埋めたいぐらいッスよ。


***


 着替え(?)が終わった奈緒さんは、俺の横にチョコンと座り。

以前同様、左のイヤホンを俺に渡す。


それで自分は右にイヤホンを付けて、俺の肩に頭を乗せる。


思わぬ行動にドキドキしている俺を尻目に、奈緒さんは『聞いて』っと一言添えて、PLAYボタンを押す。


だが、ドキドキして動揺していたのは此処まで。

直ぐに、耳に心地の良い音が流れ始めた。


●1曲目は素直の曲●

曲名は「Please look at me」(私を見て下さい)


少し切ないバラード。


好きな男の為に、必死に努力して振り向いて欲しいって言う、素直の感情が上手く構成されている。


聞いているだけで感情移入しそうなぐらい、心理描写が表現されていた。



●2曲目は嶋田さんの曲●

曲名は「Serious stress」(重いストレス)


バンドに対しての不満をぶつけたパンク。


内なる気持ちが爆発して、全てをぶち壊しそうな感じが良い。

奈緒さんから見た嶋田さんのストレスは、これ程までに溜まっている様に見えたのだろう。



●3曲目は山中の曲●

曲名は「Original intention accomplishment」(初志貫徹)


固い意志を貫く山中にピッタリのロック。


奴の性格を見事に再現した曲は、ドラムの早いビート、ギターの早弾き等で構成されている。

兎に角、曲全体が早く、アイツのセッカチな性格も、序に、表現されていたのには思わずニヤってなってしまった。



●4曲目は奈緒さんの曲●

曲名は「Miserable fellow」(情けない奴)


イメージに合わないブラックメタル。


だが聞いてみると、何故かピッタリなイメージが沸く。

ただなんて言うのか……これって、翌々聞くと『俺批判じゃねぇのか?』っと言う疑問が残る程、1人の男を批判している。


……俺が聞く事を前提にした虐めか、これは?


まぁけど、なんとも奈緒さんらしい表現だ。



んでだ。

●問題は、この5曲目●

曲名は「Troubling」(四苦八苦)


恐らくは、俺の為に奈緒さんが書いてくれた曲なんだが。

聴いた瞬間……思わず噴出してしまった。


ジャンルはアニソンっぽい曲。


馬鹿な主人公が、曲名通り、四苦八苦している様なPOPな曲なんだが……兎に角、その男はドン臭い。

必死にやっても、なにも好転せず、空回りばかり。

そして学習能力もなく、同じ過ちを何度も繰り返す……なんとも馬鹿な男が笑える。


……けど、よく考えたら、これって俺の事だよな。


気付いた瞬間、アッサリ凹む。


しかしまぁ、よくも、こんなに上手く曲が作れるもんだ。

総称的にみれば、崇秀の作り方を忠実に守って作られた作品だし、ジャンルも多い。

この事から、奈緒さんの音楽の幅の広さを思い知る。


ホントに、凄い人だよ。



俺は自分の受けた感動を、彼女に伝えようと自分の肩口を見た。



「くぅ~~~~、くぅ~~~~」


……っと書いた本人は、俺の肩にのっかかったまま眠りに付いていた。


この様子だと、相当、疲れてるんだろうな。

作曲する人って、いつもこんな感じで疲労困憊してるんだろうな。


そんな彼女を見て、起すのも悪いと思い。

俺は、このままの体勢で、少し彼女が目覚めるのを待つ事にした。



すると……終わった筈のMDから、奈緒さんの声が聞こえてきた。



『えぇっと、えぇっと、最後まで聞いてくれて、ありがとうね、クラ。奈緒です。今回の曲は、どうだった?愉しんで貰えた?』

「笑えないのが、2曲ほど有りましたよ」

『私ね。今回のこの作曲、結構、苦労したんだけど、かなりの自信作なのよ。気に入って貰えたら嬉しいな。まぁけど……人には、それぞれの感性が有るから、あんまり気に入らなかったかもしれないけどね』

「そんな事ないッスよ」

『さて、議題が1つ上がった所で、君に宿題。……この5曲、全てのベースパートを2日間で、自分が思った様にアレンジしなさい』

「なっ!!」

『1つの感性で作った曲より、沢山の意見で曲を完成させた方が、より良いものが出来るからね。勿論、アレンジが出来ないは聞きません。……じゃあ頑張ってみてね、クラ。諦めない君が大好きだよ。向井奈緒でした』


はぁ~……相変わらず、みんな無茶振りが好きだなぁ。


アレンジなんて俺、やった事ねぇのに……


けど、弱音を吐いてる場合でもねぇよな。

こんなに必死になって頑張った奈緒さんをみて、そんな間抜けな事を言う程、俺も腑抜けた人間じゃない。


兎に角、出来る、出来無いとかはド返しにして、まずはやってみなきゃな。

ダメならダメで、誰かにやり方を聞けば良いだけだし、まずは始める事が肝心だよな。



そんな訳で俺は、大切な奈緒さんを、そっと畳の上に置いて、掛け布団をかけた。

そして、奈緒さんに出されたアレンジと言う課題をやるなら、今からだ。


俺はつまらない事で、恋愛も、バンドも、もう悩まない。

深く考える前に、もっと行動した方が俺らしいしな。


そんな訳でだ。

ベースとアンプを繋ぐシールドをぶち込んで、ヘッドホンを付け、早速アレンジを開始した。




「頑張れ……クラ」



必死に頑張ってる俺に、後ろで寝ている奈緒さんが、そう言ってくれた様な気がした。


最後までお付き合い下さり、ありがとうございますです<(_ _)>

これにて第二十六話『奈緒の気持ち』はお仕舞なのですが……如何だったでしょうか?


私自身は、少々我儘でも、奈緒さんの気持ちを上手く表現出来たと思っているのですが、皆様には、どう感じて頂けたでしょうか?


元々自暴自棄に成ってた時代があって「援助交際」をする様な子なのですが。

彼女は、倉津君と出会ってから、出来る限り、自分を倉津君に見合う女にしようと考え、必死に努力を繰り返して、更生して行ってるみたいですね。


過去がどうあれ、私は、こうやって現在頑張る子が好きです(笑)


さて、そんな感じで、次回からは。

第二十七話『ライブ前日の試練・発動編』が始まる訳なのですが……一体、どんな試練が待ち構えているのでしょうね?


奈緒さんが課題として出した「アレンジ」が試練なのか?

それともまた、何か困った事が倉津君の身に起こるのか?


それは次回の講釈。


また良かったら遊びに来て下さいねぇ~~~(*'ω'*)ノ

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