●前回のおさらい●
崇秀が倉津君に放った提案は『今現在の記憶を取り出し保存』すると言う提案。
一見すればSFの様な発想だが。
もし仮に、それが可能だったとすれば、今の倉津君にとって、それはどう言う効果があるのか?
「『記憶の固定化』?……なんの為に、そんな事をするんだ?」
「なぁに、至って単純な話だ。オマエが、自分で、さっき言った様に、今のオマエの状況は『女性化』がかなり進み。これを『夢』だと思えるギリギリのラインに立っている。だから、此処で『記憶を固定』しちまえば、男に戻っても『女の意思=倉津眞子』は完全にデリート出来る。その為に『脳をセーブ』するんだよ」
そうか……そう言う事か。
確かに、考えてもみたら、そうだよな。
このまま女性化が進めば、幾ら俺が必至に抵抗した所で限界は有る。
恐らくは、放って置いてもドンドン女性化が進むだろうし、それになによりも、男に戻った時、眞子の楽しかった記憶を引き摺らないとも限らない。
俺は、体が戻る事しか考えてなかったが、ハードとソフトが違えたら意味がないって事か。
けど……
「なぁ、崇秀。仮に、それを受けるとして、その『記憶を取り出す』成功率って何%ぐらいのもんなんだ?」
「約7割だな。……但し、残りの3割は、記憶を引き出せなかったってだけで、被験者に、なにかしろの障害が出た試しは1度もない。だから、その辺に関しては安心して大丈夫だ」
「そうか。……けどよぉ、眞子って存在はどうなる?」
「それに関しては、さっきも言ったが、完全に白紙になる。初めから全く存在しなかったって事だな」
「そうか。……なぁ、崇秀。もぉ1つだけ聞きたいんだが、なんでこんな事を思い付いた?」
此処が最大の謎なんだよな。
女性化に於ける『記憶の保護』の意味は、今の崇秀の説明で、よくわかるんだが。
何故、そんな危険な事を、急に思いついたのかまではサッパリだ?
勿論、そうは言っても、スムーズに『男の生活』に戻る為って事は解ってるんだけど……
その他にも、何か重要な訳がある様に思えるんだが……
「ふむ。正直言って、これは、今のオマエに言って良いものなのか、悪い物なのかは、俺には判断しかねる部分ではあるんだがな」
「あぁ」
「もし仮に俺が、オマエの体を戻せなかった場合、オマエは『男女の壁』で苦悩しながら、一生、生きなきゃいけないだろ。それは想像を絶する苦痛になる事だろうよ。……なら、もぉいっそうの事、女である間は、女としてだけ認識して生きた方が、オマエも生き易いんじゃないかって思ってな。だからまぁ、これに関しては、俺が、オマエを戻せなかった時の『体の良い保険を掛けてる』と思ってくれれば良い」
えっ?
それって……
「オマエ……そんな事まで考えてくれてたのかよ」
「当たり前だ。当事者の可能性が消えない限り、自分で犯した罪ぐらい自分で償う。……だからオマエは、下手に『倉津真琴』を意識せず『倉津眞子』としてだけ生きりゃ良いんだよ。これは、その為の保険だ」
なんて奴なんだ……
結局コイツは、果てしなく、俺の事だけを考えてくれてたんだな。
『男の心』と『女の心』が混在したままで生きるなんて、精神がもたない。
なら、いっそうの事、一旦は『倉津真琴』を完全に捨てて、完全に『倉津眞子』として生きて行く方が、全てに置いて、俺に負担が掛からないって思ってくれてたんだな。
俺が、これからの人生を快適に暮らせる様に、こんな事まで考えてくれてたのか……
・・・・・・
なんなんだよコイツは……
責任を取るって言う事は、此処までして、初めて責任が取れるって言う事なのか?
そんなにボロボロに成ってまで『戻そう』としてくれてるのに、その上、そこまで、人の事が心配が出来るものなのかよ……
くそ~~~、口惜しいな……
こんなに深く想ってくれてる友達が、俺にも居るんだな……
嬉しくて、涙が止まらねぇよ……
馬鹿……野郎……
「ぐすっ、オマエ……ずるいよ。……なんだよそれ?……ぐすっ、俺、この10日間、遊んでバッカリいただけなんだぞ。……なのに、オマエは……ぐすっ、ズゥ~~っと一睡もせずによぉ。……そんな事バッカリ考えてやがって……馬鹿じゃねぇのか……」
「今更なに言ってやがる。……それが格好良く生きる為の、俺のスタンスだろ」
「ホント……最低だよ。……ぐすっ、この女泣かせが……」
「なんだよ?なに泣いてるのかは知らねぇけど。俺が格好良過ぎて感動したか?」
「グスッ、泣いてねぇし」
……泣いてるけどな。
滅茶苦茶、感動して泣いてるけどな……
ってか……こんなの卑怯だろ。
「どこが泣いてねぇんだよ?可愛い顔が台無しになってるぞ。……モブ」
「全然……モブじゃねぇし……ってか、オマエ、嫌い……」
「あっそ。んじゃあ、嫌われ序に、オマエを綺麗にしてから帰るわ」
「ぐすっ……なんで?」
「あほモブ。……なんで俺が、オマエだけの望みを叶えにゃ成らんのだ?俺は、向井さんの望みも叶えてやるつもりだぞ。……全てが自分の為だけにやって貰えてる行為なんて思うなよな。調子乗ってんじゃねぇぞ、この糞モブが」
「ぐすっ……モブって言うな。さっき、可愛いって言ったクセに……」
「知らねぇな。……ってか、んな事より、とびっきり良い女にしてやっから、ゴチャゴチャ言ってねぇで、サッサと来いつぅの。この馬鹿モブ」
「だから、モブって……言うなつぅの。モブじゃねぇし……」
結局、崇秀は、俺の事だけに留まらず『男に戻らない間は、女として綺麗でいて欲しい』と言う奈緒さんの希望まで、考慮に入れていての発言だった様だな。
ホントコイツだけは、どこまでもスゲェ男だよ。
ホントまいった……
もぉギャフン……って言う言葉しか出ねぇよ。
今回も最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>
崇秀が言い放った『今現在の倉津君の記憶を取り出す』っと言う作業の真意は。
今の女性の体のままでは、倉津君が男女の狭間に生き続けなければならない宿命を背負ってしまい。
今後、それが影響して『その内、倉津君の精神が崩壊しかねないのではないか?』っと言う考えの元、それを避ける為に崇秀が考えた安全策だった様ですね。
実際の話、こういったTSが突然起こった場合。
体云々の話よりも、此処のメンタル面ケアを一番考慮しなきゃいけない部分だと思いますしたので、こう言った非人道的な話も書かせて頂きました。
まぁ本来なら、こう言う話は書くべき話ではないのかもしれないのですが。
この本件に於ける大事な事は、そんな『何の助けにも成らない倫理観を振りかざして、正義感ぶる事』ではなく。
自身が、どんな誹謗中傷を浴び様とも『倉津君が本当の意味で助からなきゃならない意味がない』っと言う崇秀の意思を尊重した感じですね。
そしてこうやって崇秀が、一番迷惑を掛けているであろう奈緒さんの件も考慮して置かなければならないのも、当然の事ですしね。
これ等全てが出来て『初めて少しは責任の取れてる』と言う事に成ると思いますです。
さてさて、そんな話を終えた後。
崇秀の行動に感動し、かなり女性として生きる事を納得してくれた倉津君の為。
今度は、眞子としての女性の価値をあげる為に、崇秀が次の段階に移行していきます。
次回は、その辺を書いて行こうと思いますので。
その辺を少しでも気にして頂けたら、是非、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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