●前回のおさらい●
倉津君から得た情報で、早くも仮説を構築する崇秀。
インターセクシャルから生じた、その内容とは?
「良いか倉津?仮にオマエが、さっき言った『インターセクシュアル』だったとしよう。じゃないと、この仮説は成立しないからな」
「おっ、おぉ、了解」
「でだ。その『インターセクシュアル』であるオマエが『俺が渡した睡眠薬』を飲んだ。此処までは大丈夫か?」
「おぉ」
「っで、突然だが、此処で奇跡的な事が起こる訳だ」
オイオイまさか……
このインターセクシャルと言う条件が加わるだけで、睡眠薬を飲めば女性に変化する可能性があるって言うのか?
もし仮に、そうなのであれば、世界中にそう言った前例もあると言う事か?
「『奇跡的』って事は……まさか、それだけで『女になる』って事か?」
「あぁ、そう言う事だ。ただ、これじゃあ、オマエも納得出来る内容じゃねぇだろ」
「確かにな。これじゃあ、訳わかんねぇだけだもんな」
「じゃあ、そのプロセスを話すぞ。但し、これは漫画みたいな仮説だからな。口酸っぱく言うが、あんまり鵜呑みにするなよ」
「わかってるって」
心配するだけ無駄だったな。
仮説には、ちゃんとプロセスが付いていた。
そして『これはどこまで行っても仮説でしかない』っと言う事を肝に銘じて置かなければな。
「んじゃま、自分でも頭がおかしいと思ってる仮説を話すぞ」
「おぉ」
「まず、この『俺が渡した睡眠薬』を飲んだオマエは、効き目が出始める1時間程で深い眠りに付く」
「そうだな。確かに、ジャスト1時間でコロッと寝ちまったな」
「だろ。だがな、問題なのは、オマエが、こう言う系統の薬を1度も飲んだ事がない事なんだよ」
「あぁ、まぁ、確かに、眠剤は一度たりとも飲んだ事ねぇけど、なんで問題なんだ?」
「いやな。実は、この睡眠剤ってのが厄介でな。親父が製法したものだから、市販の物とは比べ物になら無い位、効果の高い代物なんだよ」
いや……だからって、睡眠剤には変わらないだろうに。
「だったとしてもだな。所詮は、眠剤だろ。多少、深い眠りに付くだけじゃないのか?」
「いや、それがな。思考を有る程度まで抑える為に、ほぼ仮死状態にまで持って行く様な代物なんだよ」
「仮死だと!!オイオイ、下手したら死んじまうじゃねぇかよ!!」
「いやいや、言い訳する訳じゃねぇんだけどな。死ぬ事だけは絶対にない。なんせ俺が、この1年間服用し続けてるんだから、その辺については、俺の体で立証済みだ」
「そっ、そうか」
なんか『仮死』についてはイマイチ納得出来ねぇ様な話だけど、此処は敢えて我慢して話を進めよう。
こんな姿に成っちまったとは言え。
俺が空気を吸って生きてる以上、今は、そんな生死の話は、どうでも良い話だからな。
「まぁ、それはそうとしても……今の話だと、眠剤と、俺の体の関連性が全くないんじゃねぇか?」
「いや、そうじゃねぇんだよ。最も重要な関連性は、此処なんだよ」
「なんでだ?」
「オマエの体の方が眠剤の効果に付いて行けなくなっちまって、脳味噌が『オマエが死んだ』って思い込んだ可能性が有るんだよ」
「いや、でも、俺、現にこうやって生きてるぞ」
「だからこそ、違う意味で、大きな問題が起きたんだよ」
「どういう事だ?」
「『男のオマエが死んだ』と認識した脳味噌が、急遽、予備に有った『女の細胞を活性化』させて蘇生を試みた可能性。脳が『死んでしまった』と感じた『男のXY染色体』を早急に排除して、眠っていた『女のXX染色体』に全て入れ替え『蘇生』を試みたって事だ」
「えっ?」
「解り難いか?」
「すまん、ちょっと意味が解らん」
「そっか。じゃあ、もっと解り易く言えばな。オマエが男女の性腺を両方持つインターセクシャルであるが故に、睡眠薬での死の危険性を感じた脳が、ホルモンバランスを調整して、元より合った『XXの染色体を利用して体の構造を作り変えた』。そして、それにより『蘇生に成功した』と感じた脳が、そのままの姿で固定して放置している、って仮説だな」
なっ!!
そんな馬鹿な事が起きるのか?
有り得ねぇだろ!!
「ちょ、ちょっと待てくれ崇秀。そんな事が可能なのか?」
「そうだなぁ。確かに、オマエの様に睡眠薬による性転換についての前例は1つもねぇ。……ただ、似た様な状況下での性転換の例は、幾つかあるな」
「マジでか」
「あぁ。因みにオマエ『アナフィラキシーショック』って知ってるか?」
「アナフィラキシーショックだと?……って、あれか、スズメバチとかの毒虫なんかに、何度か刺されて死亡しちまうケースの話か?」
確か、そんな感じだったと思うんだがな。
所謂、アナフィラキシーショックって、アレルギーの一種だったと記憶してるんだがな。
「それだ。まぁ、正確に言えば、かなり違うんだが、大体の認識はそれで合ってる」
「そうか……けど、それと、今の現状が、なんの関係性があるんだ?」
「いや、それがな。関係あるかもしれねぇんだよ」
「どう言う事だ?」
「このアナフィラキシーショックによって、一旦は生死を彷徨った女性が、なんとか一命を取り留めたんだが、その後、後遺症としてホルモンバランスが崩壊して男性化しちまった、って例があるんだよ」
「なっ!!」
そんな話を聞くまでは半信半疑だったんだが、そんな馬鹿げた事が現実的にあるんだな。
「まぁ、そうは言っても、今のオマエみたいに、完全に性転換しちまった訳ではないんだがな。女性なのに髭が濃くなって、体毛が増えたり。体も筋肉質に成って、ゴツゴツした男性の様な体型や、顔の造りに成って行った訳だから、これも原因の1つである可能性が高い。だから此処も考慮すべきだと思うんだよ」
「そっかぁ」
「それにオマエの場合はインターセクシャルである可能性が高い分、この男性化した女性よりも性転換する条件が揃い過ぎているから、その可能性は0とは言い切れないんだよな」
「けどよぉ……」
「まぁ、そうやって疑いたい気持ちは解るがな。こんな風に脳ってのは『生存本能』に過敏に反応する器官だから、人間が考えも付かない様な不思議な事が起こす事があるのも事実なんだよ」
「じゃあ、結論的に言っちまえば、俺は一生このままって事か?……どうなんだ?この際、隠さずハッキリ言ってくれよ、崇秀」
「まぁ、そぅ結論を急ぐなって、さっきも言ったが、これは俺の立てた仮説に過ぎねぇって、最初から言ってんだろ」
「けど……妙に話が生々しかったぞ」
「そりゃあまぁ、親父のラボにも何度か足を運んで、遺伝子の勉強を多少してたからな。全くのド素人って訳じゃねぇけど。……こんなもん、本職から比べたら、戯言レベルだと思うぞ」
「……そっ、そうだよな。大丈夫だよな」
そっか……
崇秀自身は、今の現状を鑑みて、俺の精神的な負担を減らす為に、あんな事を言ってくれてるみたいだが。
話の内容が内容なだけに、こりゃあ俺自身、相当な覚悟が要りそうだな。
なんせ、アナフィラキシーショックによる似た様な案件が確かにあるにせよ。
結果的に言えば、それはどこまで行っても似た様な案件であり、俺の女体化に関する前例もないみたいだしな。
それに何より、その男性化した女性が、この後治療に成功して『完全な女性に戻った』と言う言葉すら崇秀の口からは出なかったからな。
付け加えて言うなら、そんな前例のない物の理論を1から構築して、成功に導くのは難しいのも現実。
所謂、それだけでも現状は絶望的な感じだ。
そっか……
そっか、そっか……
俺が、そんな風に思っていたら……
「……すまん、倉津」
突然、何の前触れもなく、電話口から聞こえて来たのは崇秀の謝罪の言葉?
なんだよ?
急に、どうしたんだよ?
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>
仮説を立てている内に。
どう言う形であれ、この倉津君の女体化の案件に関しては『自分に責任がある』と感じた崇秀は、倉津君に対する謝罪を口にしました。
勿論、こんな風に、倉津君を女体化をさせる為に「睡眠薬」を渡した訳ではないのですが。
経緯がどうあれ、結果は結果。
崇秀には、事を起こしてしまった者の責任として、これは一生を掛けてでも償わなければなりません。
そんな崇秀の心境に対して、この後、倉津君は、どう言った対応を見せるのでしょうか?
それは次回の講釈。
この事の顛末が気に成って下さいましたら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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