●前回のおさらい●
本番での最後の新曲『Epitaph(墓碑)』
この高難易度の曲に向かい、覚悟を決めた眞子だったが……
その曲が奏で始められた瞬間、崇秀の一言『Lever10Energy-drain』と共に起こった現象は……
……えっ?
……えっ?えっ?
なっ……なにも感じない?
曲を奏で始めた筈なのにも拘らず、その演奏している感覚すら、何も感じない。
そっ、それに……さっきまで極度の疲労感を感じていた筈なのに、肉体的にも、精神的にも、その疲れすら全くなにも感じない。
それ処か、五感の全てが、なにも反応してない。
なっ、なにこれ?
所で、私は……今なにしてるの?
観客の皆さんは、なにを、そんなに必至になるほど盛り上がってるの?
それよりも、私……今ベースを弾いてるの?
山中君は、ドラムを叩いてるの?
奈緒さんは……唄ってるの?
なっ……なにこれ?
***
「「「「「わあぁあぁぁぁああぁぁぁ~~~~~~!!最高おぉぉぉぉぉ!!」」」」」
観客の皆さんが、曲の終了を教えてくれ。
状況を把握出来無いまま演奏をしていたであろう私の正気を取り戻させてくれた。
でも……今の私には。
さっき、この会場でなにが起こってたのかサッパリ理解出来ないでいた。
それは、私だけに留まらず。
メンバーを見回した感じで、奈緒さんも……山中君も……私と、全く同じ状態らしく。
ただ眼を白黒させ、周りをキョロキョロと見ているだけで、コチラも、なにも状況が把握出来ていない様子だ。
今の時間に……本当に、なにがあったの?
……痛い!!
なに?なに、この激痛?
突然、降って湧いた様に、体の全身が悲鳴を上げ始め。
体の隅々まで、隈なく、なんとも言い難い痛みが走り始めた。
重点的に言えば、手足が千切れそうなぐらい痛い。
それに……一気に体調が……
気持ち悪い……
なに……これ?
そんな中。
「きょ……今日は、みんな……ありがとう……またね……」
奈緒さんにも、私と同じ症状が出てるらしく。
息も切れ切れに本番最後の挨拶をして、少しフラ付きながらステージの脇に移動して行く。
……けど、奈緒さんは気丈にも、その痛みを堪えて、出来るだけ笑顔のままステージを降りて行った。
だったら、私も戻らなきゃ……
それに本番の最後ぐらい、キチンと笑顔で応えないとね。
私は、無理矢理にでも笑顔を作りながら、ステージを降りて行った。
***
バックステージに戻ったものの。
奈緒さん、山中君、それに私は、完全に茫然自失な状態。
口を開く事すら出来無い程の痛みが、継続的に全身を襲い続け。
疲労度も、それに付随して、極限にまで高まっていた。
兎に角、少しでも気を抜いたら、意識が切れてしまいそうなぐらい……気持ちが悪い。
しかも、視界すらハッキリしない。
酷い状態だ。
ただ……私を含めた3人が、そんな意識の糸が、今にも切れ掛けてる状態なのにも関わらず。
崇秀一人だけは……少々の疲れは見え隠れしているものの。
私達とは明らかに違う明るい表情で、なにやら楽しそうにしていた。
そして崇秀は……突然、私達を見ながら『ニタァ~~』っと笑って、話し掛けて来る。
「さてさて、みなさんよ。此処までは、タップリとアンタ等に協力してやったぞ。そんじゃあ、そろそろ、俺も本気で勝負に行きたいと思うんだが。……もう行っても良いか?もう良いよな?」
……えっ?
「なっ、なんやて……オマエ、今、なんて言うた?まさか、あれでまだ、本気やなかったって言うんか?」
「本気だと?……冗談キツイぞ。今までは、精一杯オマエ等のバックアップしてやってただけだろ。だから、本気なんざ寸分も出しちゃ居ねぇ。……なに言ってんのオマエ?」
「おい、オマエ……今ので、一体、本気の何%や言うつもりなんや?」
「まぁそうだな。かなりセーブして演奏してたから、精々40%って所が良い所だな。……その証拠に、今日は一回も『Brain-vision=脳天映像』すら使ってないだろ」
「アッ……アホな……」
しっ……信じられない。
あれ程の強烈なギタープレイだったって言うのに、まだあれでセーブして演奏してたって言うの?
これ以上の演奏なんて、もぉ、そんなの正気の演奏じゃないよ。
……そんな音楽、既に狂ってるよ。
「あの……仲居間さん。40%は解ったんですけど。最後のあれは、一体なんなんですか?」
「あぁ、あれか。あれは『Lever10Energy-drain』って言ってな。脳に直接的に限界値を勘違いさせて、いつも以上の力を引き出してやっただけの事だ。まぁ、掛けられた相手の体力消費が尋常じゃないから、この名前が着いたって話だな」
「そんな漫画みたいな事……」
「いやいや、これが意外と可能なんだよな。しかも、やり方さえ知っていれば、人の脳波を狂わせる事なんて至極簡単な事だ。人間は、聴覚が異常に弱い生き物だからな」
「仮にそうだとしても。なんで?……なんで、そんな事を知ってるんですか?仲居間さん、まだ中学生なのに、おかしいですよ!!」
「全然おかしかねぇよ。……なぁ、向井さん。因みにだが、俺がなんの為に、中学生には、一見、必要のない勉強までしてると思ってるんだ」
「一見、必要の無い勉強?……まさか……」
あれって……
「そう言うこった。アンタ等が芸能界でヌルイ暮らしをしている間に俺は、1段づつ色々な知識を積み重ねて来た。だからこそ出来る、その『複合原理』で、こう言う奇妙な真似が出来んだよ。……どうだ?二の句も出ないだろ」
そうかぁ。
あの一見、無駄だと思われていた知識の収拾は、この為の布石だったんだぁ。
だからこそ、無駄だと思われる知識でも、なんでも吸収しようとしてたんだ。
でも……それだけの事で『色々な原理』が見えて来るものなの?
そんなの……
「さぁさぁ、俺のツマラナイ話は、これで終わりだ。今まではHELPに徹して、アンタ等に付き合ってやったんだから。今度は、俺の演奏にも、全面的に付き合って貰う番だぜ。……ラスト3曲。約束通り、死ぬ気で、血反吐を吐きながらでも、最後まで全力で演奏して貰うからな。……さぁ、此処からが本当のParty始まりだ。覚悟は良いか?」
「ちょ!!冗談やないぞ!!そんな事したら死んでまうがな!!」
「なぁにぃ、心配すんな。人間ってのは、そう簡単に死にゃあしねぇよ。1週間程、病院で、ゆっくり休養でもとりゃあ、万事元通り。……回復すっからよ」
「アホ言うな!!俺と、奈緒ちゃんは、今後の予定がシッカリ組まれとんねんぞ。そんな勝手が許されるかぁ!!」
「あっそ。……なら、もうオマエはイラネェわ」
「なっ!!」
「此処でリタイアでもなんでも好きにしろ。それで尻尾を巻いて、とっと家にでも帰れ、この守銭奴が。家で、端金でも数えて、明日の人生設計でもしてな。山中、オマエはもぉ用なしだ、失せろ。……さて、他の2人方も、此処に居る負け犬同様にGIVE-UPか?」
……挑発してる。
だったら!!
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>
さてさて『複合原理』なる物が出て来て、少々ややこしい展開に成って来ましたね。
ですがこれ自体は、一見、漫画の様な技術に見えても、実際は、普通の研究者さん達がやっている事と同じで。
まずは、ある効果を目標に定め。
それとは別のジャンルから、その効果を得る為に近い知識を沢山使い。
それを複合させ、練り上げた物が、今回、崇秀の使った技ですので。
彼自身は、特に浮世絵離れした様な変わった事をしている訳ではないんですよね(笑)
もっと解り易く説明するなら……
『似た効果のある別ジャンルの多くの知識の組み合わせ』+『楽器の演奏の効果』=今回の『Lever10Energy-drain』
……っと言った感じでしょうかね♪
まぁ、この『複合原理』を使った所で、こうやって『その完成』まで持って行くのは非常に難しいので。
そこに関してだけは、崇秀が【異常】だと言っても過言ではないですけどね(笑)
さてさて、そんな異常者と対峙する3人なのですが。
あの負けず嫌いな山中君が折れてしまった状態の中、眞子は崇秀に対して、一体、どんな態度を示すのでしょうか?
次回は、その辺の『各々の覚悟』を書いていきたいと思いますので。
良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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