最後まで奏でられなかった音楽

どこかお間抜けDQNな不良さんのゆったり更生日誌(笑)
殴り書き書店
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第二十話 Nightmare stage

103 不良さん 現状説明をする

公開日時: 2021年5月20日(木) 00:21
更新日時: 2022年11月18日(金) 22:08
文字数:2,511

第二十話『Nightmare stage』が始まるよぉ(*'ω'*)ノ

 020【Nightmare stage】


 ステージからは、かなりの熱気が流れてくる。

同時に、会場自体からも、熱気で作られた得もいえぬ人の汗の臭いも流れてくる。


会場は、俺と素直がステージの縁に辿り着いた時には、以前以上の盛り上がりを持ったライブに一変していた。


勿論、この第二部がスタートした直後から、ライブは異様な盛り上がりを見せていた。

この第二部に出場する人間は、ある一定以上の演奏レベルが要求されるのだから、これは当然の事だ。


ただ……山中の乱入以降、著しく状況が変化した様だ。


先刻、俺が見ていた様に山中は、先に居たバンドのドラムをノックアウトした後、ステージ上から客席に放り投げ、ドラムの定位置を占拠。

この状態のまま一曲弾いた後に、噛み合わなかったベースを退場させる。


此処までは俺も見ていたので、納得出来る内容なのだが。

崇秀と揉めていた奈緒さんがステージに上がれず、代わりに天才の嶋田さんがステージ上に登場する。


予定外の乱入構成になってしまったが、これはこれで好評だったらしい。

彼には『死神』『バンド潰し』と言った多くの悪い風評があるが、ギターの腕は確か。

悪評に対する部分は、どうにもならないが、嶋田さんのあの性格と、ギターPLAYを慕う人間も少なくはない。


故に彼の登場は、山中の登場以上に会場をヒートアップさせる。

更に、此処で嶋田さんを加えたメンバーで、前メンバーの課題曲を演奏する。


だが、これは、中々居た堪れないものだった。

嶋田さんのギターの演奏は、なにを取っても果てしなく上手い。

自分の演奏と、嶋田さんの演奏を比べてしまった前のギターリストは、あまりのレベルの違いに、その場に居るのを良しとせず、自らの足でステージから降りる事になる。


この潔い行為を見た前ボーカルも、後を追う様に同時に退場しようとした。


……が、ボーカルは引き止められた。

楽屋の揉め事が長引いていると察した山中が、悪態をついて彼の継続を促した為だ。


渋々継続を了承したボーカルを合わせて、この時点でのバンドのメンバーは、ボーカル・ギター・ドラムとなるが、少々の無理なんざ、山中と、嶋田さんは、お構いなし。


即座に、次の課題曲を演奏し始める。

……が、過度のプレッシャーの為か。

曲の終了と共にボーカルは意識を失い、白目を剥いてダウン。


恐らくは、この技巧者2人の演奏に耐え切れなかったのだろう。


だが、これは大きな問題だ。

まずにして、歌詞を覚えていない2人には歌を唄えない。


どれだけの腕を持とうと、ボーカル不在では表現が半減してしまうのも事実。

流石に2人も困り果てたのだが……此処でタイミング良く、崇秀との揉め事を、俺に任せた奈緒さんがステージに姿をが現わす。


勿論、彼女は、ステージ上に出るだけで華がある。

自分の彼女だからと言って贔屓目で見る訳では無いが、奈緒さんは超絶器量良しだ。


それを見るだけでも、男共の興奮度を更に加速させる。


しかも彼女は、ライブ第1部を見た人間なら、先刻実力も承知の上。

歌を唄いながらでも、ベースを演奏出来る器用なアーティストだと知られている。


そんな奈緒さんは、堂々と中央マイク・スタンドの位置に立ち。

前のボーカルを観客側に軽く蹴り落とすと言う、エゲツないパフォーマンスをこなした後。


冷たい視線を観客に投げつけながら。


『BRAINEATERS』

『Blitzkrieg Bop』

『Scream』

っと、短い曲を3曲連続で唄う。


演奏もさる事ながら、特筆すべきは奈緒さんの声だ。


崇秀の言う通り、本当に彼女の声は『万能』らしく。

この奈緒さんの顔とは、まったく合わなそうなパンクな歌ですら、彼女はそつ無くこなしていった。


この時点で、山中のドラム・嶋田さんのギター・奈緒さんのベースと歌唱。

3人だけでも、完全にバンドとして成立していた上に、相性の良さを上手く表現されていた。


当然そうなれば、オーディエンスは馬鹿みたいに盛り上がり、完全に火が着いた状態。

踊り狂う者。

頭を振りヘッドスパンキングをする者。

更に加熱した者は、ステージに駆け上っては、モッシュダイブを何度も敢行する者まで出る始末。


しかも1部の女の子に至っては、この会場の熱気にやられたのか、上半身裸で胸を曝け出している子まで出た始末だ。


まるで、このライブは『狂気の宴』だ。


そんな異様なまでの大盛り上がりの中。

漸く揉め事を終えた俺と素直が、此処ステージの裾に到着したって寸法だ。


正直、これだけ盛り上がっていると、此処に乱入するのは結構キツイ。

入るタイミングがわからない俺と、素直は、その場に立ち竦んでいた。



そこでなにを思ったのか、突然、奈緒さんがMCを放棄。

客を一切無視した形で、汗を拭く為にステージの端にタオルを取りに来る。


此処からは、少し離れた位置なのだが、この状況を打破する為に、俺は必死に目で合図を送った。



するとだ。

2人の『愛の奇跡が起こった』とでも言うべきなのだろうか。

奈緒さんは、俺の存在に気付き、コチラの意図を汲み取ってくれたのか、小さく手を振って合図に応えてくれた。


しかも、ライブの好調で機嫌が良いのか、笑顔のオマケ付きだ。


その汗を掻いた笑顔は、汗が照明に反射してキラキラ輝き、彼女自体が輝いて見え。

俺は、当初の目的も忘れ、奈緒さんに見蕩れる事になる。


こんな笑顔を見せられると、先程の素直との件が居た堪れないが、俺は無理に作った笑顔で、これに応える。


すると上機嫌な彼女は嬉しそうに笑顔のまま、口パクで『行・く・よ・ク・ラ』と言う。

俺は、これに対して『ウッス』っと、口パクでガッツポーズで応える。


が、内心では……

『一瞬でも浮気を考えて、ホントすみません』

……っと、ミットモナイ謝罪を奈緒さんに対して繰り返していた。


此処に関しては、本当に反省の念が尽きない。


だが、俺のそんな心境には気付かず。

『ウッス』の言葉に満足した奈緒さんは、足早にマイクスタンドに位置の戻り、スタンドからマイクを抜き取る。


それだけで客達は、何かを期待する様に奈緒さんを見詰ているんだが。

それはまるで、お預けを食らった犬が、飼い主になにかを期待する様な、そんな眼だ。


さてさて、こんな状態の中、この後は一体どうなる事やら。


最後までお付き合いありがとうございました<(_ _)>


現状のステージは良い感じに盛り上がってるみたいですね(笑)


でも此処からが本番。

倉津君とアリスちゃんを加えた状態で、どんな化学反応を起こすのかが見物ですね(*'ω'*)


倉津君じゃないですが『さてさて、どうなる事やら』


また良かったら、遊びに来て下さいねぇ~~~(*'ω'*)ノ

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