第二十七話『ライブ前日の試練・発動編』始まるよぉ~~~(*'ω'*)ノ
027【ライブ当日の試練・発動編】
奈緒さんが、我がヤクザの家へ来訪してから6日間。
その間、練習の為に、学校や、スタジオにだけは顔を出してはいたが、それ以外の時間、俺は、比較的、家に篭りっきりな状態だった。
毎日毎日ベース片手に、奈緒さんに与えられた課題曲のアレンジ三昧。
他には何もせず、ただただ只管、それにだけに集中する毎日が続いていた。
だが、それだけ必死になってアレンジをしたのにも拘らず、奈緒さんの出した期限に間に合う事はなかった。
規定のノルマが2日間だったのに、実質完成したのは倍の4日後。
期日を2日もオーバーした形に成ってしまったからな。
この辺は情けない限りだ。
だがまぁ、それを嘆いていても埒が開かないもの現実。
その遅れを取り戻さなきゃいけない訳だから。
その完成した日には、早急に全メンバーに召集を掛けて、スタジオで各々のパートを発表した。
そんで此処からは、全員のアレンジ意見を取り入れながらも更に曲にアレンジを加え、奈緒さんの作った曲は完成させていった。
これが一昨日前の話だ。
んで、完成した曲を、此処2日間程オールでスタジオを借り、練習。
必死に頑張った結果、なんとか観客に聞いて貰える様なレベルにはなったと思われた。
のだが、こんな調子で練習したものだから。
明日がライブ本番だというのに、みんなボロボロの状態になっていたのも事実。
正に『地獄に住んでいるのか?』と錯覚する様な6日間を、俺は過ごす羽目に成った。
(因みにだが素直は、良家のお嬢様だから一定の時間には帰宅する)
しかも同時に、もう1つ此処で思い知らされた事があった。
こんな風に俺がヘロヘロになってるのに、他のメンバーは全員、多少の疲れは見え隠れするものの、そんなに疲れている様子ではなく。
俺なんかより、十分な程に体力が有ると言う事だ。
この地獄の様な日々にも関わらず、誰1人として『学校をサボる』や『仕事を休む』事をせず。
それどころか練習が終わった後、平然として、そのまま学校や、職場に直行。
これは驚愕すべき体力だ。
俺の中でバンドマンと言うのは、もっとヒョロヒョロの貧弱なものだと思ってたんだが、この様子からして、この認識は大きく間違っていた様だ。
バンドマンの体力は普通じゃない。
その中でも群を抜いて体力があるのは山中。
練習もさる事ながら、その練習中でも、いつもの調子でベラベラ喋り。
それでも、何事もなかった様に学校に行く。
普通なら、あれだけ喋りながら激しく練習したら、俺の様にボロボロになりそうなもんなのに、全く、その気配すら感じさせない。
全く持って、不思議な奴だ。
あの細身の体の何所に、そんな無限の体力が有るって言うんだろうな?
げに恐ろしい男だ。
そんな体力馬鹿の山中が、練習後の片付けを終え。
学校に行く準備を整えたのかして、俺に声を掛けてきた。
つぅか、さっきまで少しはボロボロになってやがったのに、もぅ回復してやがるよ。
「オイ、マコ。オドレ、いつまでへばっとんねん。そろそろ学校行かな遅刻すんで」
「ちょっと待てな。俺、まだヘロヘロなんだよ」
「はぁ?なんやねん、オマエ?情けないやっちゃなぁ。こんな程度の練習でへばってて、どうすんねん。オール言うたかて、たかが2日間やぞ。これやったら、奈緒ちゃんの方が体力あんのんちゃうか」
そうなんだよなぁ。
山中の言う通り……奈緒さんも大概なんだよな。
さっき、少しは休憩してたと思ってたんだけど。
一定の時間が経ったら、サクサクと学校に向って行くんだもんな。
山中の言う通り、ひょっとしたら俺なんかより、奈緒さんの方がズッと体力があるかも知れない。
兎に角、彼女もタフだ。
ってか、ドラマーって言うのは、みんな、そんなに体力があるもんなのか?
(忘れがちだが彼女はドラマー)
「俺で普通だつぅの。オマエ等、どんな体力してるんだよ?」
「アホぬかせ。この程度の体力なんぞ、ミュージシャンやったら持ってて当たり前じゃ。文系の体力なめんなよ」
「オマエ……それ、言ってる事おかしいぞ」
「なんでやねん?なにが、そんなにおかしいねんな?言うてみぃ」
「いや、普通に考えたらわかんだろ。文系の人間は部屋に篭ってばっかりだから、大体、貧弱って相場が決まってるもんじゃねぇのか?」
「アホクサ。そんなもん、飛んだ偏見の塊やな。確かにのぉ、マコの言う通り、インドアの奴より、アウトドアで運動する機能は、体育会系の方が優れとるかも知れん。そやけどなぁ、長時間集中するのや、持久力なら文系も全然引けを取れへんで」
「なんでだよ?」
「よぉ考えよ、マコ。アイツ等、体育会系の人間は、決まった時間の枠の中で戦うんが仕事や。体力や集中力なんぞ、その程度あれば良ぇ。そやけど文系には、基本的に終わりはない。必要と有れば、何時間でも、何日でも戦わなアカン。長時間に耐えうる体力と精神力を兼ね備えてへんかったら、文系は勤まらん言うこっちゃな」
自信満々に、そんな事を言う。
確かに見方を変えれば、そう言う見方も有るな。
特に文系の人間の集中力は異常な奴が多い。
なにをするにも、やり込まなければ気が済まない気質の奴も少なくはない。
そう考えれば、こう言う見解も有りか……
「それって、ペース配分が上手いって事か?」
「そや。ナンデモカンデモ我武者羅にやったら良ぇ言うもんやないんや。文系の作業って言うのはな。マラソンみたいに、此処一集中してやる事が大事なんやな。ナンデモカンデモ全力疾走するのは、秀ぐらいのもんや」
出たよ馬鹿秀。
山中は、必ずと言って良い程、馬鹿秀を例に挙げる。
まぁ俺もそうなんだが……説明する時アイツって使い易いんだよな。
馬鹿だから。
「って事はなにか?アイツは、どっちにも優れてるって事か?」
「いや、ちょっとちゃうな。アイツの場合は、普通の人間よりも集中力がズバ抜けて長いんや。これって決めたら、完成するまで永遠に集中しよる。それこそ何日でも何ヶ月でもな……まぁ言うたかて、こんなもん一日千秋で身に付くもんやない。アイツの一番恐ろしい所は、それをガキの頃から自分自身に課して、習慣付けとる事や」
「あぁそう言う事な。しかしまぁ、アイツの評価は誰に聞いても高いな」
「まぁ実際、そんだけの事を平然とやってのけとるからなぁ。まぁこれはしゃないわな。反論の余地も無いわ」
そう言いながらも、山中は、少し曇った表情をする。
同い年なんだから、当然なんだが。
アイツが相手と言うのは、かなり相手としては悪すぎる。
あんな人間離れした奴、早々は居ねぇもんな。
「さて、登校前の糞話も終わりにしようか。こんだけ話したら、オマエの体力も回復したやろ。そろそろ学校行くで、マコ」
「だな」
喋っていたお陰で、さっきより少しだけ体力の回復した俺は。
重い体を動かしながら、ノタクタと準備をして、山中とスタジオを後にした。
だが、この時には、学校で恐ろしい試練が待ち構えている事を、俺達はまだ知らない。
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございました<(_ _)>
前回、奈緒さんから出された『アレンジ』という課題は、苦労しながらでもなんとかこなせたみたいですね。
……っと言う事は、意外と、良い耳を持っているのかもしれませんね。
アレンジって、音の変化を繊細に捉えないと、結構、出来ない物ですからね(笑)
さてさて、そんな感じで。
アレンジの件や、文科系の体力の高さを山中君と話した後、学校に向かう2人なのですが……
この様子からして、学校で、なにかが起こる気配がありますね。
一体、何が起こるのかは、次回の講釈(笑)
また良かったら、遊びに来て下さいねぇ~~~(*'ω'*)ノ
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