最後まで奏でられなかった音楽

どこかお間抜けDQNな不良さんのゆったり更生日誌(笑)
殴り書き書店
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1504 承認欲求と常識

公開日時: 2025年3月18日(火) 00:21
文字数:2,048

●前回のおさらい●


 奈緒さんが作った夕飯を、みんなで食べた後。

彼女の気遣いに、男性陣が称賛の声を上げていたら。

何故か突然、沙那ちゃんが不機嫌そうな表情を浮かべ始め……


「どうした?どうかしたか?」

「奈緒お姉ちゃんだけ、ズルイ」

「へっ?」

「沙那も頑張ったのに、奈緒お姉ちゃんバッカリ褒められてる。沙那の事、誰も構ってくれない。みんなに無視されてる」


何事かと思えば、そう言う事か。


沙那ちゃんは、小さい子也に、矢鱈と女の子女の子してる部分が有るから、同性として、奈緒さんだけに注目が集まるのが嫌なんだな。


自分も注目されたいんだな。


俗に言う「承認欲求」って奴が、顕著に表れちまったって事だ。


特に昨日から、突然、みんなから注目の的に成ってたもんだから、余計に、そういう感覚に陥っちまっても仕方がないってもんだ。

それに沙那ちゃんは、沙那ちゃん也に、リフォームとは関係ないが『リペア』作業をしてた訳だから、それを無視されたんじゃ気分が悪いわな。


気付いてやれずに、可哀想な事したな。



「なに言ってんだよ。誰も、沙那ちゃんの事を無視なんかしてないだろ」

「みんな無視してるよ。沙那、頑張ったのに、誰も気にも掛けてくれない。……ギター一生懸命直したのに……」

「いや、みんな、ちゃんと知ってるし、気にも成ってるんだぞ」

「……ホント?ちゃんと気にしてくれてる?」

「当たり前だろ。でもな」

「でも?」

「その話題を振るにしてもタイミングって奴が有ってな。幾らギターの話が気に成っていても、先に出た話題を解決しなきゃ、そこには行けないんだよ。みんなが好き勝手に喋ったら、場の雰囲気がグチャグチャになっちゃうだろ」


子供には、ちょっと小難しい話をしちまったけどな。


話題には、必ずしも転機って言うものがあるから。

そこまでは、自分のしたい話をグッと堪えながらも、先に出た話題を上手く解決し、その転機を待たなきゃいけない。

そんで、その転機が訪れた際に、やんわりと話題を変更すれば、最初の話題を振った人にも失礼に当たらない。


まぁ、これが一般的に言う「話の流れ」ってもんなんだが。

普通、こう言うのってのは、学校なんかで友達なんかと接していたら、順を追って自然と身に付いて行くもんなんだが。

沙那ちゃんの場合、学校に行っておらず、友達も居なかった訳だから、これ等の基本が、殆どと言って良い程、理解出来ていない。


だから、こう言う結果に成っちまったって話だな。



「そうなの?」

「そうそう。沙那ちゃんの話を、ちゃんと聞いてあげたかったからこそ、そこには、誰も触れなかっただけだ。決して、無視してた訳じゃないんだぞ」

「ふ~~~ん。なんか不思議な話だね。聞いてくれるから、触れなかった。良く解んないや」


むむっ、矢張り、少々言い回しが難しかったか?


じゃあ此処は、もっと噛み砕いて説明する必要性があるな。


『例の沙那ちゃんにも解り易い説明の仕方』を折り混ぜてな。



「そうか。じゃあ、沙那ちゃん」

「うん?」

「自分の振った話題を中途半端に流されたら、気分はどうだ?もっと解り易く言ったら『誰かが演奏をしてる時に、沙那ちゃんも、突然、全然関係ない音を入れたりしない』だろ。昨日、みんなと演奏して、そう思わなかったか?」


ちょっと微妙にニュアンスが違うんだけどな。

それに昨日は、みんなに音を合わせて貰っていたから、此処を沙那ちゃんが納得出来るか、どうかも微妙ではあるんだが。


まぁけど、少なからず、なにか昨日の演奏で感じてる所は有ったと思うから、こういう説明を入れてみた。


音楽に例えるのが、沙那ちゃんには一番理解しやすいだろうしな。



「あぁ、うん。それはダメだね。みんなとの調和がないと、全然良い音に成らないもん」

「だろ。だったら、楽器も、会話も一緒だ。その場、その場に合った話をしなきゃいけないって話だ。解ったか?」

「うんうん。それなら解った」

「じゃあ、解ったら、どうするんだ?奈緒お姉ちゃんや、山中のお兄ちゃんや、池上のお兄ちゃんに酷い事を言っちゃったんじゃないか?」

「あぁ、うん!!そうだね!!沙那、間違ってたね。……あっ、あの、お兄ちゃん、お姉ちゃん、我儘言って、ごめんなさい。怒らないで」


良いですな。

この自分が悪いと思ったら直ぐに謝れる、この姿勢。

素直な気持ちを表現するのは、いつ見ても凄く良い事ですな。


それに、こうやって子供が素直に謝れるって事は、聞かされた話に納得出来た証拠でもあるからな。


納得出来無ければ、意固地に成って捏ねるだけだし。


これは沙那ちゃんの理解力が高い証拠だ。



「怒ってない、怒ってない。なにも怒ってないよ」

「ホント、奈緒おねえちゃん、怒ってない?沙那、みんなの調和を乱したのに怒ってない?」

「大丈夫、大丈夫。誰も怒ってないよ」

「ホント?じゃあ沙那の事、嫌いじゃない?」

「嫌いな訳ないやろ。なんやったら、コッチに来て座るか?怒ってない証拠にも成るやろ」

「あぁ、それは嫌だ。倉津おにぃちゃんの所が良い」

「ブッ!!」


なっ、なんかスマンな山中。


こっ、子供は、正直な生き物だからな。


それに、沙那ちゃんは、特別、素直な子だからな。

ファラリス・ビショップの称号持ちだし。


それにしてもオマエ……なんか知らねぇけど、今日一日ズッと不幸だな。


最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです♪<(_ _)>


この事態を切っ掛けに、1つ沙那ちゃんが成長しました♪


特にこれから学校に通うにあたって、この会話のリズムを含むコミュニケーション能力と言うのは、必須条件になってきますし。

此処を弁えていないと、相手から『自分勝手な奴だなぁ』とか思われて無視されたり。

運が悪ければ、それが切欠になって、苛めに発展する事すらあり得るので、今、この時点で、それを回避する方法を教えられて良かったと思います。


ホント、些細な事が苛めの原因になる事が多いですからね。


さてさて、そんな中。

少し常識を身に着けた沙那ちゃんから、最後に痛烈な一撃を喰らった山中君。


彼は、精神的に生き残る事が出来るの?(笑)


次回は、その辺を書いていこうと思いますので。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾


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