●前回までのあらすじ●
嶋田さんの彼女である『上条椿さん』との無意味な死闘(?)の末。
漸く嶋田さん家の扉が開く。
そしてそこには予想もしない物が……
「ぶっ!!」
「うん?」
……扉が開いたのは良い。
部屋の中に入れて貰う為には必要な行為だから、勿論、これにはなんの問題も無い。
寧ろ、こんな事で問題があっちゃ困る。
ただ、今、俺が直面してる事態は、そんな些細な問題じゃない。
此処で問題なのは、彼女の格好だ。
上着にTシャツをキッチリ着ているんだが、下は黒い布キレしか見えない。
そぉ……彼女の下半身には黒い布切れしか見えないんだよ!!
早い話がだな……椿さんはパンツ丸出しなんだよな。
しかも、その下着の色が黒って、アンタ……またシックな色をチョイスしたもんですな。
そんな心境とは別に、俺の視線は、そこから一切離れてはくれない。
こうやって、人の彼女のパンツをジッと見てるのもなんだとは思うんだが。
一時になってしまったら、そう言うのが気になって仕方が無いのが男の悲しい習性。
意識を逸らそうとすればする程、そちらに目が行ってしまう。
自然に視線が、そこに集中してしまう。
「えっ?なになに?どうかしたの?」
「いっ、いや、あっ、あのッスね、椿さん。パン……」
「パン?……うん?……あぁ!!後輩さんお腹空いたんだね。うんうん、食パンで良かったら、明日の買い置き分が有るよ。それなら、後輩さんが食べても良いよ」
「いやいやいや、そうじゃなくてですね。あの、なんって言うかパンツが……その……」
「パンツ?パンじゃなくてパンツ?そんなの食べれないよ」
「じゃなくてですね。椿さんのパンツが見えてるというか、なんと言うか……」
「……えっ?えっ?あっ!!あぁああぁぁぁぁあぁ~~~!!ちょ、ちょっと待っててね、後輩さん」
俺の視線は、その魅惑の布切れから外れないから、彼女の表情は見えない。
……が、一連の彼女の言葉から察するに。
恐らくこれは、俺の言葉で、ゆっくり自分の視線を落として、自分の格好を確認しての結果なんだろうな。
相当、恥ずかしかったのか、再び勢い良く扉が閉まる。
この人、ホント天然だな。
……にしてもだな。
黒のパンツを履いてる女性なんて、生まれて初めて見た。
これはまさしく、眼福ですな眼福。
***
数分して扉が三度開く。
つぅか、扉が開いたのは良いが、今度こそ大丈夫なんだろうな?
また『良からぬ事が起きるんじゃないか?』と言う、得も言えぬ不安が過ぎる。
「えへへ、ごめんね、ごめんね。椿、後輩さんにパンツ見られちゃったね」
「えっ?」
また驚く羽目になった。
先に言って置くが、またパンツの話で驚いた訳じゃねぇぞ。
俺が驚いたのは、照れながら頭をポリポリ掻いている彼女の容姿にだ。
てっきり俺は、もっとロリロリした人が出てくるんだろうと予測していたんだが、現実は、その予想に反して、全くの逆。
切れ長の眼に、細い顎。
鼻筋の通った高い鼻。
少し幼さは残るが『可愛い系』と言うより、どちらかと言えば『美人』
いや……確実に、美人系の人だ。
しかも、身長も高い。
俺の見立てでは165cm以上は確実にある。
なのにだな。
この人は、こんな話し方をするんだよな。
まるで『無限の住人』にでも出てきそうなタイプの女性だ。
……また此処に来て、漫画の世界の住人に出逢うとは、一体なんなんだろうな、こりゃ?
「えっ?なになに?椿、また変な事してる?」
「いやいやいや、そうじゃないんッスよ。ただ単に、椿さんが、あまりにも綺麗な人だったもんで、吃驚してたんッスよ」
「へっ?……えへへ、そっかなぁ?でもでも、椿みたいな子だったら沢山居るよ」
「・・・・・・」
居ねぇよ。
つぅか、この人も自覚が無いまま生活してるんだな。
まぁ最近は、そう言う奴バッカリを見てるから、此処については、そんなに気にはならないんだがな。
「ねぇねぇ、それよりね、後輩さん。中に入らないの?」
「あぁそうッスね。そうッスね」
まぁそんな訳で、漸く、部屋に入って行く訳なんだが。
此処で俺は、また馬鹿な事に気がついた。
―――なにかって?
いやな、実に格好の悪い話なんだが。
今の俺の視線って、椿さんの尻ばっかり見てるんだよな。
さっきの黒パンツが、俺の中で相当影響してるみたいでだな。
あのスカートの下に黒パンツがあると思うと……なんつぅ~かさぁ、こうやって、ジッと見てしまっとる訳だな。
なんか透けて見えそうな気がしてで、ガン見しちまってるんだよなぁ。
『奈緒さんが構ってくれない』からと言って、人の彼女を、そんな風に見てるなんて、俺どうかしてるんじゃないか?
欲求不満なのか?
「あっ!!」
「ぶっ!!」
ハイハイ、お約束。
神様って奴は、どうにも俺を、からかうのがお好きらしいな。
若しくは、俺の欲望に塗れた念力がなせる業なのか?
眼前に起こった事……それは。
言うまでも無く、椿さんのスカートがズレ落ちて、彼女は、それに足を取られて、思い切り廊下でコケた。
当然そこには、俺の心を惑わす黒パンツが丸見え。
これはまた、どこぞのエロゲーより酷い展開だな。
「だっ、大丈夫でふか?」
んで、格好つけて解説してる割にヘタレな俺は、眼前で起こった、あまりにも漫画的なベタな展開に焦り。
『でふか?』等と言う訳の解らない新言語を作ってしまう始末。
……ダッサ。
「イタタタタタタ……」
「つっ、椿さん、だっ、大丈夫ですか?」
「えへへ……コケちゃった」
笑顔でデコを抑えながら、椿さんはコッチを向くんだが……鼻血が出てる。
恐らくは、デコと同時に、その高い鼻を打ったんだな。
「『えへへ』じゃないッスよ。鼻血が出てるじゃないですか!!」
「あぁ、ホントだね。えへへ、ドン臭いね、椿って」
普段から、よくコケるのかして、彼女には動揺はない。
鼻血を出してるくせに、寧ろ、妙な余裕すら感じる。
あのねぇ椿さん、そんな余裕作ってないで、早く鼻血を拭きなさい。
「もぉティッシュはどこッスか?どこにあるんッスか?」
「うん?ティッシュなら、そこに有るよ。なんで?」
「もぉ~~~」
「??」
キョトンとした表情をコチラに向けて、一切動く様子が無いので、仕方なく俺自身が、奥の部屋に入ってティッシュを探す。
……なにやってんだよ俺?
普段なら、此処まで人に対して世話を焼く事なんぞないんだが。
どうにも、この人は、世話を焼かざるを得ない状況を作る人物の様だ。
スゲェ綺麗な人なんだけど、これじゃあ嶋田さんも色々と大変だろうな。
そんな事を考えながら、必死に捜索を繰り返し。
暫く、奥の部屋を探して目的のティッシュを発見。
それを持って、慌てて廊下に戻る。
「椿さん、はい、ティッシュ」
「ありがとぉ」
ニコニコしながらティッシュを受け取り、クシクシと鼻を拭く。
なんとも言えない光景だな、こりゃあ。
アンタは、木の実を喰ってる子リスか?
容姿と行動が、此処まで一致しない人は珍しい。
「はぁ~~」
「ありがとぉね、後輩さん」
鼻を拭き終わったのか、再度感謝。
「ホントに大丈夫ッスか?」
「うん?大丈夫だよ。椿、馬鹿だから、こんなのしょっちゅうだし」
「そうなんッスか?でも、気をつけて下さいよ」
「は~~~い」
そうやって、手を上げながら元気よく返事する。
のは良いんだが……なんか、この人、少し変じゃないか?
漫画の世界なら、こんな無邪気系のキャラクターが、沢山居ても、おかしくはないが、それが現実の世界となれば話は別だ。
いくら子供っぽいとは言え、普通は成人した大人が、此処まで子供っぽい言動をする筈が無いと思うんだが。
もし居るとすれば、それは狙って演技している女。
だが、俺には、そんなものなら、直ぐに見破る自信がある。
そう言う女は『100%いやらしいオーラ』が出捲くってるからな。
けど、彼女からは、そう言う人間的な『いやらしいオ-ラ』は全く感じない。
所謂『素』で、これなんだろう。
……っとなると、逆に言うと、ちょっと病的な感じだな。
気付けば俺は、椿さんを観察する様にジッと見ていた。
「うん?どうかした?」
「あっ、いやいや、なにも無いッスよ」
「そぉ?じゃあさっ、此処暑いから、部屋に入ろ、後輩さん」
「うっ、ウッス……って、ブッ!!」
俺が何故噴いたかは、もうお解りだと思う……そう、それ。
椿さんは勢い良く立ち上がったまでは良かったんだが、当然スカートは脱げたままの状態でキッチリとは履いてない。
だから、またしてもパンツ丸出しのままな訳だ。
その上、長身な彼女は足が長い。
……っとなれば自動的に。
俺の眼前には、あの俺を誘惑してやまない黒パンツが有るって言う事だな。
しかも、超至近距離だしよぉ。
どうやら今度は、椿さんに替わって、俺が鼻血を噴く番の様だ。
「だっ、だから椿さん!!ちゃんとスカートを履いてから、立ち上がって下さい!!またコケますよ」
「うん?あぁ~やっちゃったね。また、後輩さんにパンツ見られちゃったね。えへへ」
「ホントにもぉ」
イソイソと照れながらスカートを上げる。
けど、チャックを上げたら、それで終わり。
それ以降は、何もしない。
「つっ、椿さん」
「うん?」
「スカートのホックを留めて下さい」
「うん?あっ、そっかそっか。ホックを留めてなかったから、さっきもスカートがズレたんだね」
「・・・・・・」
これじゃあ『子供っぽい』って言うより、完全に子供じゃないか?
なんか、小学校低学年の頃に話してた女の子と話してるみたいな感覚だな。
ヤッパこの人、なんかおかしいぞ。
なんか事情でもあんのか?
「あの、椿さん……」
『ガンガンガン!!』
「嶋田さ~ん、居ますかねぇ?俺ッスよ俺、期日だから、ワザワザ集金に上がりましたよぉ」
……っと、俺が椿さんに質問をしようとした瞬間。
荒っぽく扉を叩く音と共に、なにやらキナ臭い奴の声が聞こえてきた。
んだ?
人が重要な事を聞こうとしてる時に、誰だよ?
……にしても、変な感じだな。
って言うのもな。
普通、時間的にも21時を回ってるので、銀行の集金なんか来る訳ないし。
そんな柄の悪い言葉で、近所迷惑な集金をする銀行マンは居ない。
基本的に、んな事態は有り得ねぇ。
じゃあ、自ずと答えは、何処かの街金の借金取りと言う事に成るわけだが。
何所のアホだ?
最後までお付き合い下さり、ありがとうございますです<(_ _)>
椿さん、ちょっと病的におかしな子の様ですね。
そう成っているのには、何か理由があるのか?
そして最後に扉を叩く男の正体は?
それは次回の講釈。
また良かったら、遊びに来て下さいねぇ~~~(*'ω'*)ノ
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