●前回のおさらい●
完全に男女の狭間で心が彷徨う倉津君。
そんな折、一本の電話が。
この電話は、彼にとっての救いと成るか!!
それとも……
正直、今の心境では、相手が誰であっても電話に出たくない。
しかも満が悪い事に、ナンバーディスプレイの文字は……『非通知』
今の俺には、見知らぬ誰かと話す気力なんかない。
現状では、非通知で電話されると言う行為が、それ程、嫌な気分でしかなった。
けど、結論から言えば、眞子と言う仮初の存在が、此処に居る事を知ってる奴も居るので、下手に電話を放置する訳にもいかない。
故に、諦めにも似た気持ちで、ゆっくりと立ち上がり。
いつも以上にノロノロとした緩慢な動きで、電話が切れてくれる事を望みながらも受話器にまずは手置く。
その間に、体裁を繕う為だけに、気を取り直して、此処数日同様に『眞子モード』を起動してから嫌々電話に出る。
『ガチャ』
「あっ、はい。向井ですけども」
「よっ、お疲れ。俺だ」
「『俺だ』って……って、崇秀か!!」
「あいよ。間違いなく俺ですよ」
俺とは逆に、なんだか妙にハイテンションな感じだな。
しかし、なんでコイツは、俺が凹んでる時を狙って電話してこれるんだろうか?
ひょっとして、この家の中に、盗聴器でも仕込まれてるんじゃないか?
俺は、崇秀の明るい声を聞いて少し安心したのか。
ちょっとだけだが、男の時の、いつもの調子で自分を取り戻し始めた。
「なんだよ?急に電話してくるって事は、なんか解ったのか?」
「当然だろ。……オマエさぁ、俺を、誰だと思ってやがんだ?」
マジかよ……
この男、たった5日間で、この全く原因不明な病気のヒント掴んだって言うのか?
相変わらず、規格外で常識外れな男だ。
「はぁ~~~、相変わらずスゲェな……オマエわ」
「別にスゴかねぇよ。それにまぁ、解ったつっても、原因に成りうる可能性があるってもんが見付かっただけの話で、そんなもんじゃ、この難問に対しての初期部分が少し解ったかもしれねぇって程度に過ぎねぇからな」
「にしても、たったの5日だぞ。……普通の人間じゃ有り得ねぇスピードだろ」
「まぁ、まぁ、そんな大層な話じゃねぇんだけどな」
大層じゃないと言われても、過度に期待してしまう自分が居る。
何故なら、コイツの『大層じゃない』は、絶対に『大層な事』だからだ。
誰が、そう簡単に騙されるか!!
何年の付き合いだと思ってやがんだよ!!
けど……
「ってかオマエ……まさか、あれから一睡もしてねぇんじゃねぇだろうな?」
「あぁ、してないな。だから、なんだよ?」
なんて野郎だ……5日も寝ない連続徹夜状態で、頭の回転が衰えず回り続けるなんて、どうかしてるぞ。
まぁコイツにとっては、普段から、そんな生活スタイルだから、こんな程度の事だったら極当たり前の日常茶飯事なんだろうけどな。
尋常じゃねぇな。
「オマエなぁ……」
「いやいや、正直、俺も、此処まで時間が掛かるとは思ってなかったんだよ。まいった、まいった。大見得切った割りに、時間が掛かっちまって悪ぃな」
「いやいやいやいや『悪ぃな』じゃなくて、褒めてるだけだから」
「そうなのか?そりゃあどうも。……あぁ、つぅかよぉ、倉津。どうだよ?ちょっとぐらいは、女として生きる生活には慣れたか?楽しくやってるか?」
「あぁ、まぁな。それなりにはな」
この質問って……
まさかコイツ……
「そっか、そっか。そいつは良かった。実を言うとだな。まだちょっと、オマエを男に戻すには時間が掛かりそうな雰囲気なんだよな。だから女の生活に慣れてねぇと、精神的に病むかなって思ってよ。……んで、研究も一段落付いたから、取り敢えず、オマエに現状報告だけでもしようと思ってな」
矢張りか。
矢張り崇秀には、完全に俺の思考回路が読み切られてやがるな。
恐らくコイツは、そろそろ俺が精神的にも参って来るだろうと思って、心配して電話をしてきてくれたんだな。
はぁ~~~……ガキの頃から、ホント変わんねぇなコイツだけは。
いつもいつも、お節介な奴だよ。
……けど、逆に言えば、今の現状の悩みを聞いてやるって事でもあるよな。
全く……自分がボロボロになるまで研究してたって言うのに、どこまでお節介に出来てるんだよ。
まいったな。
「あのよぉ……」
「はいはい。どうせ、今の生活の事でなにか悩んでるんだろ。その悩みとやらを全部聞いてやるから、早く言ってみろよ」
「いや、でも、あのよぉ。オマエだって研究で疲れてんだろ。俺の悩みなんか聞いてる余裕なんて有るのかよ?つぅか、体の方は大丈夫なのか?」
「んあ?あぁ、んなもん、全然大丈夫だが?なんでだ?」
いぃぃいぃ~~!!
精神だけじゃなくて、体も頑丈なんだな。
オマエの体の細胞は、一体、なにで出来てるんだ?
ホントどうなってるんだコイツ?
「いや、だって、オマエ、5日間も、ぶっ通しで寝てないんだろ。そんな状態で、人の悩み相談なんか聞ける状態なのかよ?」
「あぁ、別に、この程度だったら、普通に聞ける状態だけど」
さも当たり前の様に、ケロッと返答してきたがったな。
でも、これってよぉ。
俺の相談如きなら、眠りかけの眠い頭でも十分解決出来るって言われてんのか?
だとしたら、俺って、相当、痛い子な扱いされてんだな。
悲し過ぎる悲劇だぞ……オイ!!
「なぁ……ホントに、今のオマエの状態で、俺の悩みなんかを聞いて貰っても良いものなのかよ?」
「あぁ、もぉ、面倒臭ぇなぁ、オマエわ。……どうせ、この時期に悩むオマエの悩みなんぞ『向井さんとの関係を、どうするか?』っての事ぐらいのもんだろ。そんなもん、聞かなくても、既に想定済みなんだよ」
「うそ~~ん」
なんでわかんの、君は?
オィちゃんの精神分析って、そんな誰にでも解るぐらい簡単なん?
ねぇねぇ、なんでわかんの先生?
「当たりかよ。……信じらんねぇ様なガキの悩みだな」
「……って事は、なんだ?解決策が、ちゃんと用意されてるのか?」
「当たり前だつぅの。そんなもん、オマエの気の持ち方1つで、直ぐにでも解決すんだよ。俗に言う、誰にでも出来る『朝飯前』って奴だ」
「なんですと!!」
「ハッ、漸く、らしくなってきたじゃねぇか」
そこも気付いてるのかよ!!
まぁまぁ、精神分析が出来てるなら、当たり前か……
「まぁ良い。んな事より、先にオマエの悩みとやらを、ちゃんと聞くのが先決だったな。つぅか、聞くのも面倒だから、なんなら、先に解答を教えてやろうか」
「オイオイ、オマエ、そんな真似まで出来る様になってるのかよ」
「出来る様なったじゃなくて、元から出来るの……こんなもん常識だろ」
常識なんッスか、これ?
「常識ねぇ。……じゃあ、それを証明する為にも、先にその答えとやらを言ってみろよ」
「良いぜ。……答えは簡単『なにも気にしなきゃ良い』んだよ」
なんだよそれ?
適当な言葉を並べて、言ってるだけじゃん。
そう言うのは決して、明確な解答とは言わねぇんだぞ。
「いやいや、なにその、如何にも誤魔化した様なアヤフヤな答え?」
「いいや、全然アヤフヤじゃねぇよ。寧ろ、明確な答えだ」
あれ?
この後に及んで、明確って言いやがったな?
つぅか、どこが明確なんだよ?
そんなんじゃ、メッチャ適当な答えなんじゃね?
「なんでだよ?」
「なんでって……オイオイ。向井さんが、オマエの事が好きだからに決まってんだろ。なら、この質問に対して、それ以外に、どんな解答が有るんだよ?」
「いやいやいやいや、そうじゃねぇだろ。そうやって奈緒さんが好きで居てくれてるからこそ、問題なんじゃねぇのかよ」
違うか?
男女間の話は、それ程難しいんじゃぞ。
恋愛を安易に考えるのは、危険極まりない行為なんだぞ。
此処ん所を、シッカリ頭の中に記憶して置き給え。
(↑安易に考えて、何度も失敗した人の、とても有り難い言葉)
「あのなぁ。……じゃあ、逆に聞くが、向井さんは、オマエのチンコに入れ込んで付き合ってんのか?」
ブッ!!
「オマエねぇ。……人の彼女を捕まえて、なんちゅう失礼な事を言ってんだよ!!奈緒さんは、そんなんじゃねぇつぅの!!」
「だったら、それが答えじゃねぇかよ。……馬鹿かオマエ?」
「なにがぁ?」
「良いか、倉津?確かに、オマエの思ってる通り、向井さんは、女であるオマエに惚れた訳じゃねぇから、今のオマエには、沢山の不満がある。……此処までは良いか?」
「おっ、おぉ」
まぁ、本人も欲求不満が有るって、美樹さんに愚痴を呟いてたみたいだしな。
そう言う意味では、今の俺に対して、以前より増して『不満』が有るのは確実だろう。
解らなくもないな。
……続き聞こ。
「だが、それと同時に、向井さんが惚れたオマエと言う人物は、オマエが女になったからと言って冷める訳じゃない。何故なら、体は変わっても、オマエの人格まで変わる訳じゃないからな」
あら、この子。
俺の予想に反して、やけに良い事を言うじゃ有りませんか。
オィちゃん、ちょっと嬉しいぞ!!
「まぁ、有り難い事に、確かにそうだな」
「だろ。……だから結局な。向井さんが、此処までオマエの事を想うって事は、男女に関わらず、オマエって人物が好きだって証明だ。だったら四の五の考えず、一緒に居りゃあ良いじゃねぇかよ。それが、向井さんにとっての幸せって奴なんだからよ」
「……ですね」
彼氏でもない奴に説教された。
ヤッパ、俺の理解力って、かなり貧弱なもんなんだな。
『まるで、理解力がゴミの様だ』
……って、某ジブリの作品に出ていた、某ムスカに言われそうだな。
「それと、この件については、注意事項がもう一点だ」
故に、こう言う注意点がある事にすら気付いてないっと……
どうしょうもねぇな俺。
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>
敵に回せば、地上最悪の魔王となる崇秀ですが。
味方に成れば、これ程心強い勇者は他には居ませんね(笑)
まぁ言うて。
崇秀自身は、一度たりとも倉津君の敵に成った事って、実際ないんですけどね。
さてさて、そんな崇秀に悩みを解決して貰った倉津君なのですが。
この後は、それについての注意点と、いよいよ『女体化』の原因に成り得るものが発表されますので。
そこに少しでも興味を持って頂けたら、是非、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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