●前回のおさらい●
青山さんの口から次々に語られる『真上さんの悪行』
倉津君は、そんな話を、感情的に成らない様に我慢しながら聞き続けてます。
……自身の耳で、真実を見極める為に。
「けどよぉ。なんでそんな嘘を付いてまで、岡田に、そんな真似をさせる必要が有ったんだよ?付き纏われてないなら、真上さんが気にする事ねぇんじゃねぇか?」
「そこがね……真上の怖い所なの」
「はぁ?怖い所って、なんだよ?」
「あの子ね。自分に興味が無い男子が居るなんて事を許せる様な子じゃないのよ」
オイオイオイオイ、聞けば聞く程、真上さんは悪女扱いだな。
それに聞き方を変えれば、この言葉、まるで何かを恨んでる様にも聞こえなくないな。
なら少し牽制を入れる為にも、反論してみるか。
「はぁ?流石に、それは、無理が無いか?真上さんが男を寄せ付けるのは、生来の生まれ持ってのもんだろ。青山さんの言い分じゃ、まるで真上さんが、男を寄せ付けるのが当たり前だと感じてるみたいな言い様に聞こえるんだが。……これは、気のせいか?」
「じゃあ、仮にだけど、倉津さんが言う様に、本人が、それに気付いてたとしたら……どうなると思う?」
「いや、有り得ねぇだろ……」
「本当に、そうかな?あれだけ男子にチヤホヤされて生きてきてるんだから、私は、真上が、自分の持ってるモノに気付いてると思うよ。寧ろ、気付いてないと考える方が変じゃないかな?」
「なんで、そう思うんだよ?」
「あの笑顔よ。あの、なにがあっても絶やさないあの笑顔。なんで、いつもあんな笑顔が居られると思う?」
「笑顔?……そりゃあ、オマエ。人に苦労をしている所を見せたくないから、耐えてるとかじゃねぇの?」
「全然違う。あの子が笑顔で居られる理由は、他人がしてくれる、自分への評価から生じる余裕の証なのよ。決して、人を笑顔にする為のものじゃない」
矢張り、さっき言った違和感が消えないな。
いや、寧ろ、違和感は、さっきより強まってきている。
勿論、自分の主観でモノを聞いてしまっている部分は否めないんだが。
真上さんが、人を利用してまで、そんなセコイ真似をするとはどう考えても思えない。
それに、どうしても、この青山さん発言からは、真上さんに対する恨みっぽいものも感じる。
仮にそうだとしたら、一体、この2人の間には、なにがあったんだ?
「……少しだけ聞いて良いか?」
「なにかな?なんなりと聞いて貰って良いよ」
「いや、午前中な。俺と別れた時があったろ。その時、青山さんと、真上さんは仲が良さそうに見えたんだが。そこは、どうなんだ?」
「それって『私が作り話をしてる』って、思ってる?」
「そうじゃないんだがな。青山さんの意見には、少し私情が絡んでる様に感じるんだが……これは気のせいか?」
「うん……そうだね。少し私情は有るかな」
「どういうこったよ?……あぁっと、言い難い話だったら、深くは聞かねぇけどよ」
此処まで深く聞いて、安易に答える様なら、相当な恨みがあると思われる。
これは、自分の経験上の話なんだが、1度、嘘を付き始めると、後は泥沼。
ひっきりなしに、話をでっち上げるか、自分の経験を話に織り交ぜて、リアリティを出そうとしてくるのが人間心理っと言う物だ。
要するに、嘘を嘘で塗り固め様とする訳だな。
まぁ、この辺は、話の内容にも因るんだがな。
此処で痴情の縺れの話が出た場合は、それが原因だと言っても過言じゃないからな。
「……取られたのよ」
「へっ?」
「真上に、岡田君を取られたの。……だから、知らず知らずの内に、私情が出てないとは言い切れない……かな」
ほらな。
ヤッパリ、そんなこったろうと思ったよ。
この青山さんがした話は、これで明らかに『嘘』と断定出来る。
何故なら、この話を通すって事は『岡田と真上さん』の両方共を一片に悪者に出来るからな。
第一にして、彼氏を奪われたのに、なんで仲良く出来た?
そんな寛大な心は、女子の感覚では早々に有り得ないだろうに?
「って事は、なにか?真上さんの事が嫌いなのか?」
「嫌い……に成りきれないのよ。あの子ね。そう言う恋愛関係以外は、凄く良い子なのよ。だから、嫌いには成りきれない」
「・・・・・・」
「だからね。今日、久しぶりに真上に逢って、その『悪い癖が、少しは治ったかな』って確かめたかったんだけど。確かめる間もなく、真上は、どこかに行っちゃったのよ。それで倉津さんから、真上が約束を破ってる話を聞いて。真上は、なにも変わってなかったって、再度、認識しちゃってね。……それが結構、私の中じゃショックだったのかなぁ。だから余計な事まで、倉津さんに言っちゃったのかも……」
上手く纏めたつもりなんだろうが、冷静に聞けば、穴だらけだ。
これ自体が、既に茶番の域だな。
「けどよぉ。アンタと俺は、知り合ったばかりだよな。だったら、なんでそこまで言う必要があったんだ?」
「ただのお節介。……倉津さんには、岡田君みたいな『真上依存症』になって欲しくないからかな。彼の様な人を目の当たりにするとね。そうなる前に、手を打ちたくなっちゃうもんなんだよ。だから『真上とは深く関わらない方が良いよ』って、忠告したかっただけなのかも。それが本心……」
ふむ、百歩譲って、そう言う捉え方さえすれば、そう言う言い方も可能だな。
けど、青山さんの言ってる事は、内容が生々しい割りに。
さっきも言った様に、岡田と、真上さんに対する私情しか見えてこない。
ただ唯一、此処で断言出来無い理由があるとすれば。
『俺が、真上さんの普段の行動を良く知らない事だ』
彼女の学校での生活態度が解らないだけに、これが真実なのか、どうかを、確認する術が無い。
かと言ってだ、真上さんが、そんな卑怯な真似をする様な人とは、どうしても思えないのも事実だな。
「・・・・・・」
「兎に角、倉津さんが異性である以上は、真上に深入りは禁物。此処だけは、十分に気をつけてね」
「あっ……あぁ」
「それじゃあ、私達、そろそろ行くね。……また、次の機会が有ったら、今日みたいな感じじゃなく。今度は、ちゃんと遊んでね」
「あっ、あぁ……そうだな」
「じゃあ、また……」
そう言い残して青山さん一行は、深々と頭を下げて、この場を去って行くんだが……話が話だけに、どうにも後腐れが悪い。
俺は、このモヤモヤした気持ちを払拭知るためにも、その場で真上さんに電話を掛けてみた。
まず、電話を掛けたのは家の方だ。
イキナリ、携帯電話の方に電話掛けても良かったんだが、そうしないのには大きな訳がある。
仮に、真上さんが家に居れば、話をする為に、そのまま家に直行すれば済むだけの話、特に問題はない。
だが俺は、正直な所、さっきの青山さんの話を聞いて、真上さんが家に居ない事を確信していたからだ。
その確認の為に、先に家に電話を掛けた訳だ。
―――『何故こう思ったか?』と言えばだな。
彼女達の歩いた後には、水で濡れた足跡が残ってたんだよ。
これがなにを意味するのかは、正確には、まだわかっていない。
だが、イヤな方向へ予測をする事だけは安易に出来る。
俺の予想が間違ってなかったら、恐らく、これは『水を使った虐めの痕跡』だ。
単純に、こう決め付けるのは良くないんだが、どうにも先程の青山さん達からは、胡散臭い匂いが一度も消えなかった。
だから、これは本能的な話だ。
だが、もし、この仮説が正しければ、真上さんが、この近くに居るのも確実。
水滴は、いつまでも靴には付いては居ないから、水滴が着いた現場までの、ある程度の距離が測れる。
それに俺は、どうしても、さっきの青山さんの話で納得出来無い部分があって、この発想に行き着いたんだ。
―――それがなにかって言うとだな。
さっきも言ったが『彼氏を取られた女子が、取った女を許す筈が無い』としか、どうしても思えなかったんだよな。
それに+αの要素が有るとすれば、午前中にあった、俺との別れ間際に取った、真上さんのチラチラこちらを見ていた態度。
あの時点では、単純に『気を遣ってくれてる』っと思っていたんだが、これを発想転換して違う方向に考えれば、俺に対して、必死に助けを求めていたとも捉えられる。
現時点では、俺は、どちらかと言えば、後者の線が濃いと思っている。
そんな訳で、まず家に電話をしたのだが、矢張り、誰も電話に出る事もなく、そのまま留守録が起動し始めた。
これでほぼ、確信を得たも同然だ。
―――あの子達は『嘘』を付いている。
気に喰わない真上さんを孤立させる為に、あんな嘘を付いていたんだろう。
そんな風に考えながらも俺は、慌てて、この旧校舎に有る、水を使う場所へと移動しながら、真上さんの携帯電話に掛けてみる。
丁度、そこに到着した位に電話が繋がり。
その場所から……
『ピリリリリリリィ……ピリリリリリリィ……ピリリリリリリィ……』
……っと言う、電子音が鳴り響いた。
ビンゴであって欲しくはなかったが、どうやらこの場所でビンゴの様だ。
そのビンゴの場所って言うのは、言わずと知れた『女子トイレ』
一見、漫画みたいに思われるかも知れないが、此処は事実、女子達にとっては、男子と唯一隔絶された空間。
そしてそこは、異性の目を気にせずに言いたい事を言える『女子達の社交の場』であり、また、やりたい放題出来る『無法地帯』とも言える。
そんな女子達の無法地帯とも言える女子トイレの一番奥の個室から、電子音が鳴り響いているんだから、こう確信をせざるを得ない。
その証拠に、一番奥の個室には、モップや、バケツ。
それに掃除道具をしまって置く大きな箱で、扉が完全に封じ込められていて、中からは、どうやっても出られない様になっており、床には、なにかに使ったホースが散乱している。
その上で『此処を開けた人には、最高のプレゼントが入っていますので、御自由にお使い下さい』等と、ゲスな事を書かれた張り紙まで、ご丁寧にして有る始末。
此処までするとはな……これはもぉ酷く悪質で、陰湿な虐めのやり方だ。
俺は、そんな扉を開く為に、それ等を乱雑に投げのけて扉を開く。
すると……そこには、絶対に見たくもなかった光景が目の中に飛び込んでくる。
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>
もし、次回、此処に閉じ込められているのが真上さんだった場合。
青山さんと、そのお友達達は、なんて残酷な真似をするんだと思われるかもしれませんがね。
これが子供特有の残虐性と言う物なのです。
相手を陥れる為なら手段を選ばず。
どんな残酷な真似をしていても「ちょっとした仕返し程度」や「こんなの私の負った心の傷に比べれば痛くもかゆくもない筈』っと言う、全く罪の意識がない意識こそが、この残虐な仕打ちが出来る子供の心と言う物なのです。
そんな風に罪の意識が軽いからこそ、先程、平然と倉津君に『真上さんの悪口を語れてる』訳ですしね。
まぁ、そんな風に、ほぼ青山さんは『黒』だとは解ったものの。
そんな些細な事よりも、今は真上さんがどうなってるかを心配すべき時。
さてさて、どんな事に成っているのやら。
それは次回の講釈。
また良かったら遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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