●前回のおさらい●
ただの歌謡コンクールであっても、普通では終わらない。
倉津君が懸念していた『素直ちゃん達以外のライバル』が、矢張り存在した(笑)
その名も……『Junk・Science』!!
「いやいやいやいや、なんだ、これは?思いも拠らない様な凄いバンドが出て来たねぇ。素直ちゃん」
「いや、本当に凄いですよ。僕も、こんな凄いバンドが居るなんて、知りませんでしたから」
「あぁ、素直ちゃんも大絶賛する位、感動しちゃったんだ。じゃあ、ちょっとだけ、リーダーの佐藤君に、その辺の話を聞いてみようか。……佐藤君、このバンド凄いね」
「ありがとうございます。そんな風に、音楽好きの山本さんに褒めて頂けるなんて、本当に光栄です」
グワッ!!なんだよコイツ?
爽やかな上に、ケン山本の下調べまでも十分にしてやがるじゃねぇか。
こりゃあ、相当、強かな奴みたいだな。
それだけに、嫌な野郎ではあるな……
「あぁ、佐藤君は、俺が音楽好きなの知ってたんだ?」
「勿論ですよ。ライブとかにも、時間が有れば、しょちゅう行かれてるって話は、よく耳にしますしね。ミュージシャンの間じゃ、結構、有名な話ですよ」
「なるほど、なるほど。じゃあ君は、僕のストーカーじゃないって事だね?」
「そうですね。……っと言いますか、山本さんのファンの女の子が怖くて、そんな恐ろしい真似は出来無いですよ」
「いやいや、なに言ってんの?俺なんか、さっき、女の子の声援処か、ブーイングを浴びただけだよ」
「あぁ……でも、それって逆に美味しいシュチュエーションなんじゃないんですか?」
「うんっとねぇ。それは、さっき素直ちゃんにも言われた所なんだけど。芸人としては、やっぱ、そう思わないとマズイかなぁ?」
「そうですね。そう思った方が得かも知れないですよ」
「して、その心は?」
「無関心でいられるより。良くも、悪くも、関心を持って貰えた方が嬉しいじゃないですか。だから、美味しいと思った方が良いですよ」
「なるほどねぇ……」
この佐藤とか言う奴、マジでムカツク野郎だな。
演奏は変態的な上に、滅茶苦茶社交的でやんの。
しかも、頭良さそうだし……キィ~~口惜しいザマス!!
「ところで佐藤君は、幾つなの?」
「あぁっと自分は、こんなナリですけど。まだ中3なんですよ」
「うわっ!!そうなんだ。凄いね君」
「なんか褒めて頂いてるのか、どうかは微妙な反応ですけど。一応、ありがとうございます」
「褒めてる、褒めてる。……って事で、音楽の話は、結局、全然聞けなかったけど。『Junk・Science』の皆さんでした。拍手!!」
『パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ……』
こうやってケン山本の言葉通り、鳴り止まない拍手が、再び起こった。
たった一曲弾いただけにも拘らず、凄い盛り上がり方だ。
けど、こうでなくちゃあ、面白くねぇのも事実だ。
とんでもない奴を、ぶっ壊してこそ、このコンテストに出た甲斐が有るってもんだからな。
なんか、久しぶりに面白くなってきたじゃねぇかよ!!
「さて、素直ちゃん。次は、素直ちゃんの番だけど。今の『Junk・Science』は、ちょっと強烈なライバルの出現なんじゃない?」
「ははっ……その辺は、一生懸命頑張ってみせますよ。それに優勝するのは、絶対に僕達ですからね」
「おっ!!此処で優勝宣言とは……しかも、これまた言い切っちゃったね」
「だって、そうじゃないですか。負ける気持ちでコンテストに望む人なんていませんよ。だから、勝つのは僕達なんです」
おっ!!矢張り、素直もプロの顔になってきたな。
何事にも恐れぬ、鉄の心臓が構築され始めたみたいだ。
けどのぉ、少し寂しいぞ、おっちゃんは……今の素直も良いが、昔の素直も良かったからのぉ。
(↑何故か妙に余裕な俺)
「じゃあ、勝算は有るって事だね」
「勿論ですよ。その為にも強烈なメンバーを用意させて貰いましたからね」
「そっか、そっかぁ。じゃあ、そろそろ新ユニットの紹介をさせて貰っても良いかい?」
「お願いします」
「じゃあ、行ってみようか!!この学校が生んだスーパーユニット!!素直ちゃん率いるこのユニットは、全員がクラスメイトと言う超異色のユニット。『2B―GUILD』!!宜しく!!」
「みんな!!宜しく!!」
♪♪-♪-♪-♪-♪---♪-♪--♪♪♪-♪♪♪---♪-♪♪♪--♪-♪--♪-♪-♪--♪-♪--……
そう言って素直は、着ていた上着を投げ捨てて、例のメイド姿になる。
それだけでも、会場の熱気は上昇するんだが。
素直の声に呼応して、クラスメイトの女子達が全員メイド姿で駆け足で出て来る。
しかしまぁ、こりゃあ見てるだけでも、中々壮観だな。
現に、この女子達の登場により、男共の熱気が異常なまでに高くなり。
制御不能な程の男の熱視線が、ステージに向けられるんだもんなぁ。
これは、質は違えど、先程同様の凄い盛り上がり方だ!!
『あぁっと……これ、仕掛けたの俺な俺!!』
ただ素直の奴……完全に出し抜いてくれやがったよ!!
あの野郎、俺に内緒で、奈緒さんをベースに置き、山中をドラムに配置。
その上、嶋田さんをギターに据え付けて、音を出して貰ってやがるなんだもんなぁ。
くそ~~~素直の奴!!此処は、録音の予定だったじゃねぇかよ!!
汚ねぇぞ素直!!そんなのどう考えても、究極の反則技じゃねぇか!!
まぁつってもだ。
バンドのメンバー自体は裏で演奏してるだけで、表に出て来てる訳でもないから『奈緒さん達の人気にあやかろう』って訳じゃ無い様だな。
罷り也にも、真っ向勝負を挑んできているのが解る。
此処ら辺に関しては、潔しとすべきだろう。
それにだ。
自身が使えるコネを使うってのも、これも大人の社会じゃ極当たり前の事だ。
だから俺は、この件で素直を責めたりはしない。
けど、負ける気はねぇぞ。
あぁ……にしても、あれだな。
素直の奴、ホント良い感性してるよな。
木根の出来が良いのを見て、即座に、自分の横のセンターに持って来やがった。
それに由佳と舞歌を横に据えてるのも、正解だな。
……ってか、最終チェックの時より、全員が全員、動きが良くなってるし、歌もダンスも可愛い感じで、曲のイメージに合ってるな。
しかも、緊張して失敗する奴もいない。
その中でも、特に、素直と、木根の出来が頗る良くなってる。
アイツ等、意外と良いコンビなのかもな。
こりゃあ、マジで手強いな。
んで最後には、驚く様な熱気をステージから発して、全員で可愛い決めポーズで、曲の最後を飾る。
それに対して観客の男共は、有らんばかりの声を上げて、手が腫れ上がる勢いの拍手を、ウチのクラスの女子全員を賞賛する。
やったな皆の衆!!
これをステージの袖で見ていた山さんも、ご満悦の様だし、これでスリーストライプのバックアップが約束されたも同然だな。
うん、売れるな、これは。
(↑結局そこな俺)
……けどな素直。
そうやって、出来が良かったのは認めてやるが、此処だけはハッキリ言って置くぞ。
その程度じゃ、俺達から『優勝を奪う事は出来ねぇな』
これは、予言じゃなくて確信だ。
何故かって言うとだな。
オマエが急造で、山中と、奈緒さんに演奏を頼んだのが、完全に仇になってるぞ。
確かに、その2人は、一般人よりは数倍良い感性を持ってるがな。
急造で曲を仕上げた場合にのみ『少々演奏のレベルが下がる』って弊害があるんだよ。
特に山中は、演奏をドラムを叩き込んで熟成させるタイプだから、演奏に結構な無理が出ている。
俺の見たところ、奴の演奏は、本来の力の60%位も出せちゃあいない。
それに釣られて奈緒さんも、ベースの宿命としか言えない様なミスを犯してる。
変に山中の音を拾いに行ってしまったから、彼女自身も本来の60%の力も出せていない。
間近で奈緒さんのベースを聞き続けた俺が言うんだから、この辺は、絶対に、間違いは無い自信がある。
要するに、演奏を頼むタイミングを、完全に間違った様だな素直。
頼むんなら頼むで、ユニットの結成当時から2人に頼むべきだったんじゃないか?
まぁ、嶋田さんが演奏してくるのは予想の範疇だったから、別に問題じゃないしな。
だから、悪いんだけど、一切合切、オマエ等に負ける気はしねぇ。
だってよぉ。
ウチのボーカルであるカジの歌唱力は、元々水準より高いものだし、千尋の件もあって、今じゃあ気合が十分程に満ち溢れてる。
まぁグチは、少々不安要素になるものの。
基礎が出来てる状態で、一ヶ月間『Blinded by me』のみを叩き倒させた。
それに山中が教え込んでくれたお陰で、最終での追い込みは凄まじいモノが有ったからな。
(↑但し、グチには悪いが素人レベルの話でな)
そんで最後にステラだ。
コイツは、元々が凶悪な実力を持っているなギタリストだし。
強引に崇秀に連れられてアメリカに行った以上、アイツの持ち曲は、全部、かなり弾き込まさせられてる筈だしな。
だから『Blinded by me』に関しては問題無い。
それに、此処に来て悪いんだが。
奈緒さんとは別に、前もって用意していた『最終兵器』を、これから投入するからな。
これだけの要素が揃ってるんだから、100%負けはねぇ。
まぁ見てろって……『Junk・Science』も『2B―GUILD』も、俺の敵じゃないって処を証明してやるよ!!
汚い勝利ってのは、こうやって得るものだと教えてやる!!
今の内に、仮初の勝利にでも酔っとけ。
ゲ~~~スゲスゲスゲスゲス……
(↑結局、偉そうな事は言ってても、最後まで他人任せな俺)
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございましたぁ<(_ _)>
これにて第一章・第十四話・表裏文化祭【突】は御仕舞なのですが……如何でしたでしょうか?
佐藤さん率いる『Junk・Science』に、素直ちゃん率いる『2BーGUILD』
中々に手強い相手が出て来たにも拘らず、倉津君には、まだ勝利を確信出来る程の何かがあるみたいですね(笑)
まぁ言うて、それは全てが思い通りに上手く行けばの話。
そう簡単に上手く行くのかどうかは、次回から始まる『表裏文化祭【絆】』にてお話していきたいと思いますので。
また良かったら遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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