最後まで奏でられなかった音楽

どこかお間抜けDQNな不良さんのゆったり更生日誌(笑)
殴り書き書店
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451 フッ……お主等やるな、やりおるな

公開日時: 2022年5月3日(火) 00:21
更新日時: 2023年1月2日(月) 15:31
文字数:3,747

●前回のおさらい●


 ただの歌謡コンクールであっても、普通では終わらない。

倉津君が懸念していた『素直ちゃん達以外のライバル』が、矢張り存在した(笑)


その名も……『Junk・Science』!!

「いやいやいやいや、なんだ、これは?思いも拠らない様な凄いバンドが出て来たねぇ。素直ちゃん」

「いや、本当に凄いですよ。僕も、こんな凄いバンドが居るなんて、知りませんでしたから」

「あぁ、素直ちゃんも大絶賛する位、感動しちゃったんだ。じゃあ、ちょっとだけ、リーダーの佐藤君に、その辺の話を聞いてみようか。……佐藤君、このバンド凄いね」

「ありがとうございます。そんな風に、音楽好きの山本さんに褒めて頂けるなんて、本当に光栄です」


グワッ!!なんだよコイツ?

爽やかな上に、ケン山本の下調べまでも十分にしてやがるじゃねぇか。


こりゃあ、相当、強かな奴みたいだな。


それだけに、嫌な野郎ではあるな……



「あぁ、佐藤君は、俺が音楽好きなの知ってたんだ?」

「勿論ですよ。ライブとかにも、時間が有れば、しょちゅう行かれてるって話は、よく耳にしますしね。ミュージシャンの間じゃ、結構、有名な話ですよ」

「なるほど、なるほど。じゃあ君は、僕のストーカーじゃないって事だね?」

「そうですね。……っと言いますか、山本さんのファンの女の子が怖くて、そんな恐ろしい真似は出来無いですよ」

「いやいや、なに言ってんの?俺なんか、さっき、女の子の声援処か、ブーイングを浴びただけだよ」

「あぁ……でも、それって逆に美味しいシュチュエーションなんじゃないんですか?」

「うんっとねぇ。それは、さっき素直ちゃんにも言われた所なんだけど。芸人としては、やっぱ、そう思わないとマズイかなぁ?」

「そうですね。そう思った方が得かも知れないですよ」

「して、その心は?」

「無関心でいられるより。良くも、悪くも、関心を持って貰えた方が嬉しいじゃないですか。だから、美味しいと思った方が良いですよ」

「なるほどねぇ……」


この佐藤とか言う奴、マジでムカツク野郎だな。

演奏は変態的な上に、滅茶苦茶社交的でやんの。


しかも、頭良さそうだし……キィ~~口惜しいザマス!!



「ところで佐藤君は、幾つなの?」

「あぁっと自分は、こんなナリですけど。まだ中3なんですよ」

「うわっ!!そうなんだ。凄いね君」

「なんか褒めて頂いてるのか、どうかは微妙な反応ですけど。一応、ありがとうございます」

「褒めてる、褒めてる。……って事で、音楽の話は、結局、全然聞けなかったけど。『Junk・Science』の皆さんでした。拍手!!」



『パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ……』


こうやってケン山本の言葉通り、鳴り止まない拍手が、再び起こった。

たった一曲弾いただけにも拘らず、凄い盛り上がり方だ。


けど、こうでなくちゃあ、面白くねぇのも事実だ。

とんでもない奴を、ぶっ壊してこそ、このコンテストに出た甲斐が有るってもんだからな。


なんか、久しぶりに面白くなってきたじゃねぇかよ!!



「さて、素直ちゃん。次は、素直ちゃんの番だけど。今の『Junk・Science』は、ちょっと強烈なライバルの出現なんじゃない?」

「ははっ……その辺は、一生懸命頑張ってみせますよ。それに優勝するのは、絶対に僕達ですからね」

「おっ!!此処で優勝宣言とは……しかも、これまた言い切っちゃったね」

「だって、そうじゃないですか。負ける気持ちでコンテストに望む人なんていませんよ。だから、勝つのは僕達なんです」


おっ!!矢張り、素直もプロの顔になってきたな。

何事にも恐れぬ、鉄の心臓が構築され始めたみたいだ。


けどのぉ、少し寂しいぞ、おっちゃんは……今の素直も良いが、昔の素直も良かったからのぉ。

(↑何故か妙に余裕な俺)



「じゃあ、勝算は有るって事だね」

「勿論ですよ。その為にも強烈なメンバーを用意させて貰いましたからね」

「そっか、そっかぁ。じゃあ、そろそろ新ユニットの紹介をさせて貰っても良いかい?」

「お願いします」

「じゃあ、行ってみようか!!この学校が生んだスーパーユニット!!素直ちゃん率いるこのユニットは、全員がクラスメイトと言う超異色のユニット。『2B―GUILD』!!宜しく!!」

「みんな!!宜しく!!」


♪♪-♪-♪-♪-♪---♪-♪--♪♪♪-♪♪♪---♪-♪♪♪--♪-♪--♪-♪-♪--♪-♪--……



そう言って素直は、着ていた上着を投げ捨てて、例のメイド姿になる。


それだけでも、会場の熱気は上昇するんだが。

素直の声に呼応して、クラスメイトの女子達が全員メイド姿で駆け足で出て来る。


しかしまぁ、こりゃあ見てるだけでも、中々壮観だな。


現に、この女子達の登場により、男共の熱気が異常なまでに高くなり。

制御不能な程の男の熱視線が、ステージに向けられるんだもんなぁ。


これは、質は違えど、先程同様の凄い盛り上がり方だ!!



『あぁっと……これ、仕掛けたの俺な俺!!』



ただ素直の奴……完全に出し抜いてくれやがったよ!!


あの野郎、俺に内緒で、奈緒さんをベースに置き、山中をドラムに配置。

その上、嶋田さんをギターに据え付けて、音を出して貰ってやがるなんだもんなぁ。


くそ~~~素直の奴!!此処は、録音の予定だったじゃねぇかよ!!


汚ねぇぞ素直!!そんなのどう考えても、究極の反則技じゃねぇか!!


まぁつってもだ。

バンドのメンバー自体は裏で演奏してるだけで、表に出て来てる訳でもないから『奈緒さん達の人気にあやかろう』って訳じゃ無い様だな。


罷り也にも、真っ向勝負を挑んできているのが解る。


此処ら辺に関しては、潔しとすべきだろう。


それにだ。

自身が使えるコネを使うってのも、これも大人の社会じゃ極当たり前の事だ。


だから俺は、この件で素直を責めたりはしない。


けど、負ける気はねぇぞ。


あぁ……にしても、あれだな。

素直の奴、ホント良い感性してるよな。


木根の出来が良いのを見て、即座に、自分の横のセンターに持って来やがった。

それに由佳と舞歌を横に据えてるのも、正解だな。


……ってか、最終チェックの時より、全員が全員、動きが良くなってるし、歌もダンスも可愛い感じで、曲のイメージに合ってるな。


しかも、緊張して失敗する奴もいない。


その中でも、特に、素直と、木根の出来が頗る良くなってる。

アイツ等、意外と良いコンビなのかもな。


こりゃあ、マジで手強いな。


んで最後には、驚く様な熱気をステージから発して、全員で可愛い決めポーズで、曲の最後を飾る。


それに対して観客の男共は、有らんばかりの声を上げて、手が腫れ上がる勢いの拍手を、ウチのクラスの女子全員を賞賛する。


やったな皆の衆!!


これをステージの袖で見ていた山さんも、ご満悦の様だし、これでスリーストライプのバックアップが約束されたも同然だな。


うん、売れるな、これは。

(↑結局そこな俺)



……けどな素直。

そうやって、出来が良かったのは認めてやるが、此処だけはハッキリ言って置くぞ。


その程度じゃ、俺達から『優勝を奪う事は出来ねぇな』


これは、予言じゃなくて確信だ。


何故かって言うとだな。

オマエが急造で、山中と、奈緒さんに演奏を頼んだのが、完全に仇になってるぞ。


確かに、その2人は、一般人よりは数倍良い感性を持ってるがな。

急造で曲を仕上げた場合にのみ『少々演奏のレベルが下がる』って弊害があるんだよ。


特に山中は、演奏をドラムを叩き込んで熟成させるタイプだから、演奏に結構な無理が出ている。


俺の見たところ、奴の演奏は、本来の力の60%位も出せちゃあいない。

それに釣られて奈緒さんも、ベースの宿命としか言えない様なミスを犯してる。


変に山中の音を拾いに行ってしまったから、彼女自身も本来の60%の力も出せていない。


間近で奈緒さんのベースを聞き続けた俺が言うんだから、この辺は、絶対に、間違いは無い自信がある。


要するに、演奏を頼むタイミングを、完全に間違った様だな素直。

頼むんなら頼むで、ユニットの結成当時から2人に頼むべきだったんじゃないか?


まぁ、嶋田さんが演奏してくるのは予想の範疇だったから、別に問題じゃないしな。


だから、悪いんだけど、一切合切、オマエ等に負ける気はしねぇ。


だってよぉ。

ウチのボーカルであるカジの歌唱力は、元々水準より高いものだし、千尋の件もあって、今じゃあ気合が十分程に満ち溢れてる。


まぁグチは、少々不安要素になるものの。

基礎が出来てる状態で、一ヶ月間『Blinded by me』のみを叩き倒させた。


それに山中が教え込んでくれたお陰で、最終での追い込みは凄まじいモノが有ったからな。

(↑但し、グチには悪いが素人レベルの話でな)


そんで最後にステラだ。

コイツは、元々が凶悪な実力を持っているなギタリストだし。

強引に崇秀に連れられてアメリカに行った以上、アイツの持ち曲は、全部、かなり弾き込まさせられてる筈だしな。


だから『Blinded by me』に関しては問題無い。


それに、此処に来て悪いんだが。

奈緒さんとは別に、前もって用意していた『最終兵器』を、これから投入するからな。


これだけの要素が揃ってるんだから、100%負けはねぇ。



まぁ見てろって……『Junk・Science』も『2B―GUILD』も、俺の敵じゃないって処を証明してやるよ!!


汚い勝利ってのは、こうやって得るものだと教えてやる!!


今の内に、仮初の勝利にでも酔っとけ。



ゲ~~~スゲスゲスゲスゲス……

(↑結局、偉そうな事は言ってても、最後まで他人任せな俺)


最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございましたぁ<(_ _)>

これにて第一章・第十四話・表裏文化祭【突】は御仕舞なのですが……如何でしたでしょうか?


佐藤さん率いる『Junk・Science』に、素直ちゃん率いる『2BーGUILD』

中々に手強い相手が出て来たにも拘らず、倉津君には、まだ勝利を確信出来る程の何かがあるみたいですね(笑)


まぁ言うて、それは全てが思い通りに上手く行けばの話。

そう簡単に上手く行くのかどうかは、次回から始まる『表裏文化祭【絆】』にてお話していきたいと思いますので。


また良かったら遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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