最後まで奏でられなかった音楽

どこかお間抜けDQNな不良さんのゆったり更生日誌(笑)
殴り書き書店
殴り書き書店

第十話 真の悪人

050 不良さん、テロかと焦る

公開日時: 2021年3月27日(土) 23:26
更新日時: 2022年11月9日(水) 19:32
文字数:1,699

第十話始まりますよぉ~~~(*'ω'*)ノ


はい、そこ『まだやってたのかよ?』とか言わない様に(笑)

 010【真の悪人】


 別に慌てる事など、なにもない。

崇秀の性格上、山中が言うほど、この問題は深刻なものではないからな。


何故なら奴は、寧ろ、あの事態にさえ『何も気にしていない』と言う可能性すら簡単に想定されるからだ。


俺とアイツは長年の付き合いだけに。

こう言う事だけは、なにも言わなくても、な~んとなくだがわかる。


そんな理由から、奴を追ってノロノロと外に出た俺は、あの馬鹿を探して、一応、の~~びりと周囲を確認してみた。


そして、そんな単純作業だけで、奴をアッサリ発見する。


しかも案の定、矢張り、アイツは、なにも気にしていない様子。

ライブ・ハウスのちょっと横で地べたに座り込み。

凹むどころか、今までの事など何も無かった様に鼻歌交じりで、楽しそうにギターのペグを弄りながらチュ-ニングしている。


その表情は、まさにオモチャを与えられた子供の様な感じだ。


この行動からも解る様に。

アイツは精神構造上『基本的に意味のない事には一切拘らない』様な仕様になっている。

故に今は、会場内であった出来事などスッカリ忘れて、既に、何か次の新しい遊びでも思い付いた感じしか見受けられない。


しかしまぁ、凹む機能の付いていないなんて、なんとも羨ましい精神だな。


そんな奴の姿を見て一安心した俺は、早速、声を掛け様として近付いていくんだが……

奴は、何を思ったのか、突然、手にしたギターを座ったままで構え、路上でライブでも、やりはじめそうな様相を漂わせ始めている。


オイ……ちょっと待て。

オマエ、まさかとは思うが、こんな横浜の中心街で演奏しようとか思ってないよな……


そして、ヤバイと思った俺が止める間も無く。

あの恐ろしく器用な指が動き出し、直ぐ様ギターを弾き出した。


-♪-♪-♪-♪-♪---♪♪♪--♪-♪-♪♪-♪--♪-♪-♪--♪-♪--♪-♪-♪--♪-♪--♪-……


ちょ!!オイオイ、マジでやりやがったよ、あの馬鹿!!

普通に考えてもヤバイだろ、それ!!

アイツは、多くの人が行きかう街の通りで、なんちゅう危険なテロ行為をかましやがるんだ!!


そうやって、お気楽なのは結構だがな。

オマエは、自分のギターの危険性が判ってないのか?


それともなにか?

横浜駅周辺をピンポイントで狙ったマジの『テロ活動』でもするつもりなのか?


慌てて奴の元に向かったが、奴の手は止まらない。

そしてソレと同時に、俺は先程の事もあって、咄嗟に手で耳を塞ごうとする。


さっきの酷い体験の二の舞はゴメンだ。



だが……それは直ぐに間違いだったと知らされる。


奴が弾き始めた曲は、俺の予想を反して、なんともPOPな感じの楽しげな曲。

それこそ『みんなのうた』とかでも掛かっていても、おかしくはない様な曲を歌い始めた。


そう……解り易く言えば。

1996年、去年発売されたJUDY&MARYの『そばかす』みたいな感じだ。


奴は、その場に座ったまま、声を大にして、そんな曲を唄う。


♪~~~


そんな曲を聞いていて、まず思った事は、

歌に関しては、正直ビックリするほど上手い訳ではないが、ただ決して下手ではないって感じだな。

普通に上手いってレベルの歌唱力で、声もバランス良く声を散らしている。


ただ、それは歌声だけの話であって、矢張り、ギターの音色の方は次元が違う。

奴の奏でる音色には、バブル崩壊によって、少し荒んだ大人達に、小さな癒しを与え始めている様子だ。


なんと言うか、聞いてるだけで『ほっこり』する感じだな。


その証拠として、こんな真夜中にも拘らず。

奴のギターの音色を聞いた者は、歩く足を、その場で一旦止め。

誰もが崇秀の元に惹きつけられる様に歩み寄り、その場に座り込む。


その光景はまるで、火に向かって虫が集まっている様だ。

奴のギターに焼かれると解っていても、その魅力的な音色からは、決して逆らう事は出来無いのだろう。


こんな事が起こり始め、6分程の曲の間に、見る見る人だかりが出来て、あの馬鹿の姿は見えなくなっていく。


だが、そんなに人が集まり始めていると言うのに、一切その『人の目』を気にする素振りも見せず。

奴は,黙々と自分の思うがままにギターを弾き続けていた。



そして、その数分後、奴の演奏は終わった……


最後までお付き合いありがとうございます<(_ _)>

皆様のおかげをもちまして、とうとう投稿50連投しながらも第十話に到達しましたぁ♪


さてさて、そんな感じで、此処まで来させて頂いたのですが。

第十話の冒頭で倉津君が焦って止めようとした『崇秀のテロ活動』に関しては、実は、何も問題なかったりするんですよね。


一見すると、崇秀の持つ技能と言うのは『非常に危険な技能』に見えるのですが。

それは、その技能を悪用しようとした時に限られており、悪用さえしなければ、逆に『癒しの効果』を齎す事が出来るんですね。


要するに『使う本人の心の問題』と言う事です。


……っで、次回は。

そんな別のスキルの使い方をした崇秀に対する反応を描かせて頂こうと思います。


どういう効果が出るのかは……次回の講釈(笑)


良かったら、また遊びに来て下さいねぇ(*'ω'*)ノ

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート