最後まで奏でられなかった音楽

どこかお間抜けDQNな不良さんのゆったり更生日誌(笑)
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1548 沙那ちゃんの説得

公開日時: 2025年5月1日(木) 00:21
文字数:2,263

●前回のおさらい●


 奈緒さんが『アメリカに帰る』っと言った瞬間。

ギターを弾いて待っていた沙那ちゃんが、突然、血相を変えて駆け寄って来てた!!


今度は、何が起こった!!


「えっ?えっ?えっ?奈緒お姉ちゃん、これから、どっかに行っちゃうの?こんな時間から何所に行くの?」

「えぇっと『何所?』って言われても……アメリカに帰るだけなんだけど」

「帰る?……えっ?嫌だ、嫌だ。帰っちゃヤダ。沙那と一緒に居よ。何所にも行っちゃ嫌だよ」

「えっ、でも、お姉ちゃん……」

「行かないで。なんで、どっか行っちゃうの?もっと此処に居ようよ。沙那のお願いを聞いてくれたら、お姉ちゃんも一緒にディズニーランドに連れて行って貰える様に、おにぃちゃんに頼んであげるから、ねっ、ねっ、行かないで、行かないで」


あぁ……奈緒さん。

俺の事が言えないぐらい、沙那ちゃんに懐かれてるじゃないですか。


きっと、この様子じゃあ。

一昨日の晩から、今日までズッと一緒に居たから、奈緒さんの事も好きに成っちゃったんだな。


自分が行きたかったディズニーまで引き合いに出してまで、必死に縋り付いてるんだもんなぁ。



「沙那ちゃん……」

「あのね。沙那ね。お姉ちゃんの言い付けを、ちゃんと守るよ。どこかに出て行く時は、ちゃんとお姉ちゃんに言ってから出て行くよ。だからお願い、一緒に居て」


かと言って、奈緒さんを此処に留めるのは難しいよな。

それこそ、此処に留まるだけで、恐ろしい様な違約金が発生しかねないしな。


まぁ、そんな風に金の汚い話を除いたとしても。

今後の信頼関係なんかも壊す様な結果に成っちまいかねないから、此処はどれだけ頑張っても無理な話だろうな。


なんて『こりゃあ、どうしたもんかなぁ?』って真剣に考えていたら……



「ごめんね、沙那ちゃん。……お姉ちゃん、お仕事があるから、どうしても行かなきゃダメなのよ」

「えっ?お仕事なの?……あぁそうなの?仕事なんだ。じゃあ、いってらっしゃい」

「へっ?」

「えっ?」

「えっ?なに?仕事だったら、帰って来るから大丈夫」


……ってな事を言い出したんだが。


うん?

なんだ、その珍妙な方程式は?


一体、どういう理屈で、そうなったんだ?

あんなに焦ってたのに『仕事に行く』と聞いた途端、一気に落ち着いた態度に成ったな。


・・・・・・


うん?


あぁ!!解ったぞ!!

これって、あれだわ。

さては沙那ちゃん、今日の別れが、奈緒さんとの今生の別れだと勘違いしたんだな。


だから、あんなに慌ててたんだ。



「そうだな。帰って来るなら大丈夫だな」

「うん♪」

「えっ?なにそれ?どういう事?」

「いや、あれッスよ。沙那ちゃん。今が奈緒さんと永遠の別れだと勘違いしたんッスよ」

「あぁ……」

「だから、奈緒さんとは、もぉ2度と逢えないと思って必至になってたんッスよ」

「そう言う事ね。……でも、仕事だったら大丈夫なんだ」

「そうッスね。因みになんッスけど、沙那ちゃんの中じゃ『仕事だったら、家に帰ってくる』って法則があるんッスけどね。それ=此処にも奈緒さんが来るって話にも成るから、一気に安心したって事にも成るんッスよ」


そして、良く考えたら。

この法則を、沙那ちゃんに教えたのって……俺自身だよな。


橘家の引っ越しの件で沙那ちゃんに説得をした際。

親父さんが『どれだけ遠くで仕事をしてても、此処に家があったら、絶対に帰って来るから寂しくはないよ』って話を沙那ちゃんにしたのって、俺だからなぁ。


完全に忘れてやんの。


アホだな、俺。

それで動揺してたら世話ねぇわな。



「なるほどねぇ。そういう理屈なんだぁ。それなら理には適ってるね」

「そうっしょ」

「そうっしょ」


また真似してるし。


俺が右手の人差し指を上げてそう言ったら。

横で同じ様なポ-ズを取りながら真似してるし。


沙那ちゃんって、ホント俺の真似するの好きだよなぁ。


あぁけど、あれだな。

こうやって今後も真似してくれる可能性があるなら、沙那ちゃんの前では変な事をしない様に細心の注意をしないとな。


おかしな事まで真似する様に成ったら大変だし。


……っと、此処でも、そんな事も考えていたら。



「あぁでも、沙那、奈緒お姉ちゃんをお見送りしたい」

「えっ?えぇっと……あぁ、そうだね。だったら、お願いしようかな」

「じゃあ、おにぃちゃんも一緒に行こ。ねっ、良いでしょ?」

「えっ?ははっ……そうだね。じゃあ、クラにもお願いしようかな」


沙那ちゃんのお見送りをしたいって意見を言い出し。

しかも済し崩し的にではあったが、奈緒さん、その意見をアッサリ認めちゃったな。


あれほど頑なに『見送りは此処までで良い』って言ってたのに。


( ´,_ゝ`)プッ



「奈緒さんも、沙那ちゃんには敵わないッスね」

「そっ、そうだね」


そうやって奈緒さんを門まで、沙那ちゃんと送る事が決まったので。

まずはタクシーに電話して、到着の連絡が有ってから奈緒さんを2人で見送った。


……んだけどな。

なんか、そんな沙那ちゃんのお陰で、お互い、別れが寂しい雰囲気には成らなかったので。

意外な事に、笑ったまま手を振って、まるで普通に仕事に行くかの様に、奈緒さんを見送る事が出来たりしたんだよなぁ。


ホント、ナイス沙那ちゃん。


それにしても奈緒さん。

子供には、結構、甘いんッスね。


俺も大概、人の事を言えた義理じゃないけど。

奈緒さんが、此処まで子供好きだとは予想外だったよ。


どちらかと言えば、実家の事があるだけに『あまり子供が好きではない』ってイメージがあったんだけどなぁ。


意外にも、そうじゃないらしい。


あぁでも、ひょっとしたら、子供好きと言うより。

奈緒さんにとって『沙那ちゃんだけが特別な存在』って事なのかもしれないな。


沙那ちゃん、凄く素直で、約束を守る子だから、理想の子供と言っても過言じゃないしな。


その辺の影響もあるのかもしれんのぉ。


最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです♪<(_ _)>


何事かと思えば。

ただ単に沙那ちゃんが『今生の別れ』だと勘違いしただけでしたね(笑)


まぁでも、こういう現象って結構よくあると思いまして表現してみましたぁ♪


いりませんね。


はい、すみません。


さてさて、そんな事がありながらも。

これで、親父さんに会うまでにやって置くミッションも全てコンプリート。


なので、次回からは。

橘家の引っ越しについての最終段階の話を書いていきたいと思いますので。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾



あぁ、これは余談なのですが。

奈緒さんは「基本的には子供が好きじゃない」です(笑)


ただ、あの件で揉めて落ち込んでる時に、偶然とは言え、ズッと一緒に居てくれ。

横で楽しそうに倉津君の話を一杯してくれた沙那ちゃんだけは、特別視してる面があります。


あの時の奈緒さんにとって沙那ちゃんは、倉津君との縁を繋ぐ最後の希望の光でもありましたしね♪

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