最後まで奏でられなかった音楽

どこかお間抜けDQNな不良さんのゆったり更生日誌(笑)
殴り書き書店
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111 不良さん 奈緒さんの真意を知る

公開日時: 2021年5月28日(金) 00:21
更新日時: 2022年11月20日(日) 13:48
文字数:3,043

●前回のおさらい●


 倉津君が、音に込めた『奈緒さん以外の女性』に対しての音が問題に成り。

必要以上に奈緒さんに、激しく罵られ、罵倒され続ける倉津君。


だが、その言葉の真相が、今明らかに成る。

「……私にだって、君が、あの曲を弾いた気持ちぐらいわかるよ。男の子なんだから、あぁ言う気持ちになるのは仕方がない。でも、君には、あの曲を弾いた責任はある。君が対象にした女性は、あの曲を聴いて、どう思ったと思ってるの?……咲・千尋・アリス・私……私が知ってるだけでも、君が対象にした女子は、あの会場内に4人は居た。君は、これを、どう責任を取るつもりなの?……甘えないでね」


これが彼女の本心だ。


彼女は、元々責任感が強い。

この人は、さっきの曲を聞いて、その責任感から、俺から身を引くつもりでいたんだ。


わかったから言う訳じゃないが、少しおかしいとは思っていた。

幾ら自称『嫉妬深い』と言う奈緒さんでも、ここまでゴネるのは変だとは思っていた。


俺は、なにを勘違いしていたんだろうか?


間抜けにも程がある。



「せっ、責任なんて取りませんよ。大体にして、俺は、ただ単にライブで曲を弾いただけですよ。それを、誰がどう受け取ろうと、そんなの俺の知ったこっちゃないッス」

「そう言うのはダメだよ、クラ。……私、君には、ちゃんと教えた筈だよ。女の子を泣かしちゃダメだって」

「そんなの無理に決まってるじゃないですか」

「どうしてよ?」

「俺が一番大切に想う、奈緒さんが泣くからッス」


自然に出た言葉だが。

何故、こんな厚かましい言葉が出たんだろう?


冷静に成って考えれば。

その大事な彼女を泣かそうとしている張本人が、こんな事を言って、なんになるんだろうか?


自分でも、もぉ頭がおかしいとしか思えないな。



「なに言ってるのよ。そんな程度の事で、私が泣く筈ないでしょ。それに泣くのは君だけ。こんなツマラナイ諍いで、私と別れなきゃいけないんだから」

「ちょ、奈緒さん……なに言ってんだよ?」

「私は、自分の彼氏がやった酷い仕打ちの責任はキッチリと取るつもりだよ。それに自分の言った事は、絶対に曲げない。だからカズには悪いけど、このバンドは辞める。これだけは変わらない」


意地っ張りだとは思ったが、此処まで意地っ張りだったとは……



「なっ、なら、俺がバンドを辞めます。ベースだって、奈緒さんの気を引きたいから始めた事ですし」

「ダメ。……それは、私が許さない」

「なんでッスか?」

「クラ……男が、一度口に出した言葉を引っ込めるなんてミットモナイ真似はしないで。私は、そんなダラシナイ男を好きになったつもりはないよ」

「けど……それじゃあ」

「オイオイ、なに、揉めてんだよ?」

「崇秀……」


突然、声を掛けられたと思ったら、そこには崇秀が居た。

そして崇秀の背後には、嶋田さんと、山中も一緒に居る。


嶋田さんはさて置き。

山中は、路地から強制的に連れて来られたのか、機嫌は悪い様だ。


いや、寧ろ、それよりも、今の会話を聞いて怒っている様にも見える。



「なぁ、奈緒ちゃん。あんたが今言うてた『辞める』って言うんは、一体どう言う意味や?解る様に、キッチリ説明して貰おか?」

「バンドを辞めるって言ってるだけ。カズには関係ないでしょ」

「あんま勝手な事を言いなや。自分かって、そこに居る『アホを倒す』って言うた責任はあんねんで。何があったかは知らんけど。バンドを勝手に抜ける言われても、そんなんじゃ俺は納得せぇへんで。それにアンタが、このバンド抜けんねやったら、俺も、このバンドに居る理由は無い。後はマコが1人になって、最初からメンバー集めたらえぇだけやねんからな。……奈緒ちゃんが辞める言うんやったら、これも当然やんな」


案の定、山中の怒りは、奈緒さんに向けられていた。


俺の責任で、一体、何人の人間が攻められるんだろうか?



「まぁそう言うこったな。この件について、向井さんがバンドを辞めるのは、お門違いな話だな。辞めるんなら、倉津、オマエが辞めろ。……それが筋ってもんだ」

「ちょっと待って、突然、入って来て勝手な事を言わないでよ」

「なに言ってんだかな。勝手なのは、山中の言う通り、向井さんの方だろ。……それとも、それって、あれか?俺には敵わないと見て、倉津を出汁に使って戦線離脱するつもりか?負け犬的な奴か?」

「ふざけないでよ。私が仲居間さんに勝てないって、なに?私、アナタに負けたつもりなんて毛頭無いんだけど」


奈緒さんはムキになっている。

こうやって感情的になってるって事は、完全に、崇秀の術中に嵌っている証拠だ。


そんな奈緒さんの態度を見て、崇秀は、何時もの嫌な笑いをする。



「ククッ……なんだそれ?悪いが、そんな戯言は聞けないな。向井さんは、もう少し現実的な話をする人だと思ったけど。こりゃあ、飛んだ見込み違いだったみたいだな」

「なに?それ、どういう意味よ?」

「まだわからないんだな。俺は机上の空論や、妄想塗れの絵空事を聞く気は無いって言ってるの」

「なに言ってるのよ?仲居間さんの方こそ、おかしな事を言わないでよ。現実の話でするなら、アナタが、私達に勝ったって話だって眉唾物だわ。あれは、私達の演奏を上手く使っただけじゃない」


確かに、そう言う捉え方もある。

だがこれは、きっと間違っていると思う。


この確証を、崇秀は語り始めた。



「ふ~ん。なら聞くけど、あの音を、アンタ達だけで出せるんだな」

「そっ、それは……」

「もし『出来る』って言ったとしても、そんなもんは、後付の逃げ口上だ。それに第一俺は、演奏を強制した憶えないぞ。……向井さん自身も『弾かない』を選択する事も出来た筈だ」

「そんなの……」

「『そんなの……』なに?向井さんが弾いたのも勿論、嶋田さんも、山中も、アリスも演奏に参加したのは事実なんだろ。この時点で、俺の音の誘惑には勝てなかったって証拠なんじゃねぇの?だから、向井さんが、この場でなにを言おうと、この現実だけは何も変わらない。それに事前に倉津には『勝つ為なら、どんな手でも使う』って言った筈なんだがな」


勝負の話か……そう言えば、そんな話も有ったな。



「オイ、秀。……それ、なんの話や?」

「なぁ~にな、他愛もない話だよ。倉津とライブで、どっちが多くオーディエンスの喝采を浴びれるかって、賭けをしてたんだよ」

「ふ~ん。ほんで、勝負に負けたらどないなんねん?」

「あぁソイツは、俺の言う事を、何でも聞かなきゃならないってルールだ」

「待て待て。まさかとは思うが、それは、俺等も含まれとるんちゃうやろな?」

「いいや……含まれてねぇよ。俺の言う事を聞かなきゃならないのは『勝負に負けた倉津』だけだ」

「そぅか。ほな、俺は関係無いねんな」

「当然、関係ない」

「さよか。……ほな、俺には、もぉ用は無いな」

「まぁ待てよ。折角、この話が出たんだ。最後に、俺が、倉津に出す条件だけでも聞いてかねぇか?」

「はぁ?……まぁえぇけど」


なにをさせる気なんだよ。


勝負に負けたのは事実だから、オマエの言う事は聞くが。

なんで山中まで、この場に残す必要が有るんだよ?



「じゃあ、時間の無駄を省く為に、さっさとオマエのやる事を言うぞ。倉津、オマエには……アリス・嶋田さん・山中・向井さんを纏めてバンドをしろ。これは約束通り、厳守してもらうからな」


はぁ?なに言ってやがんだよ。

そんなの無理だろ……無茶ぶりも良いところだ。


今現在ですら、空中分解間際のこのバンドを、一体どうやって纏めろって言うんだ?

素直はまだ、頼めば何とかなる可能性はあるが、奈緒さんは辞める気満々だし、山中は、こんな話、絶対に受けない。

それに嶋田さんだって、海外に行く方向で意思が固まっている筈だ。


どう考えても、みんなの意思は明後日の方向に向いている。


不可能だ。


最後までお付き合いありがとうございました<(_ _)>


更にややこしい事に成ってきましたですね(笑)

この空中分解待ったなしのバンドを、崇秀は倉津君に纏め上げろと言ってきましたね。


さて、この後、それを命じられた倉津君は、一体、どうするのでしょうか?


それはまた、次回の講釈。


良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(*'ω'*)ノ

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