最後まで奏でられなかった音楽

どこかお間抜けDQNな不良さんのゆったり更生日誌(笑)
殴り書き書店
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574 上辺は取り繕えても……

公開日時: 2022年9月3日(土) 00:21
更新日時: 2023年1月12日(木) 22:31
文字数:2,618

●前回のおさらい●


 ワイワイと騒がしい女子会に参加し。

それ也に上手く、真子と言う存在を演じきった倉津君でしたが……


風呂場で1人きりに成った時、彼は何を思うのか?

 そんな風にネタみたいな仕草を取りならがも、まずは洗面所に向かい。

今朝は目ん玉が飛び出しそうになった自身の姿を鏡で確認してみるんだが……流石に少しは慣れたのかして、朝程の衝撃はもぉ受けない。


まぁ勿論、現状を決して割り切れてる訳ではないんだが。

今朝は、あれ程までに嫌がっていた女性物の服も、今鏡に映る自分を見て、そんなに違和感すら感じなくなっている。


なので、その気持ちの変化を調べるが如く。

女性物の服を脱ぐ際、鏡に映る自分を見ながら一枚一枚ゆっくり脱いで行ってみたんだが。

「なんだろうな?」

服を脱ぎ、下着姿に成った時ですら『あぁ、これが今の俺なんだなぁ』っと言う程度の認識しか湧いて来なかった。


そして考えて出てきた結果は……恐らく、この精神の変化は、先程まで参加していた女子会のお陰なのかもしれないな。


眞子の正体を知る奈緒さん以外にも。

この眞子と言う姿のままで、素直や、千尋や、美樹さんの中に入っても、俺なんかでも、なんとか良い子の眞子でやって行けた。

それが原因と成って、今の眞子と言う姿でも『みんなに受け入れて貰えた』と言う気持ちが俺の中で芽生え。

その気持ちが顕著に表れてるからこそ、今、こうやって、自分自身の姿を受け入れられてるのかもしれない。


まぁ、その後、風呂に入ってから、再び思うんだがな。

相も変らず、この湯船に浮かぶ、豊満に膨らんだ自分の胸ってもんにだけは違和感しか感じ得ないけどな。


***


 ……っでまぁ、そんな事を考えながら湯船に浸かっているとだな。

俺の中で、ある1つの考えが浮かんで来てしまった。


これだけみんなに眞子を受け入れて貰えてるなら『もぉ性別なんて、どうでも良いかなぁ』って思い始めてる困った自分が居た。


確かに俺としては、この姿のまま一生終えるのは、あまり好ましくはないし。

どれだけ、みんなに良い様に扱われ様が、一生涯、男に戻りたいって意思だけは、絶対に消えないんだろうけど。

今日1日を通して、思ってた以上に、女性としての楽しさも解った様な気がするからなぁ。


多分、そこが原因に成って、こんな考え方が顕著に表れているのだと思う。



いや……そうじゃないな。


嘘偽りない気持ちで、本音だけを言うのであれば……今、俺は卑怯にも『真琴』『眞子』の、どちらの立場も捨てがたいと思い始めているんだろう。


何故なら、真子で人と接すると同様に、男である『真琴』と言う人生は滅茶苦茶楽しいからなぁ。


まぁコチラは、家庭環境やら、なにやら無茶苦茶問題のある面も多いのだが。

ベースを弾き始めた事を切欠に、色んな人との出会いをさせて貰い。

こんなヤクザの組長の息子であるロクデモナイ俺に対してでも、普通に接してくれる様な人達との交流が出来る様になって来ていた所だしな。


そうやってヤクザの組長の息子であっても、頑張れば、ちゃんと評価して貰える事を知ったが故に、俺は『真琴』であり続けたいと考える。


こう言う言い方をすると、少し調子に乗ってる様に聞こえるかもしれないが。

こうやって、少しづつ自信が積み重ねて来た実績を認めて貰っているからこそ『真琴』と言う存在に固執しているのだと思われる。


これだけは間違いない事実だろう。


これは、そんな家庭環境の話を抜いた話なんだが。

文化祭の時みたいに、見知らぬ大道具のにぃちゃんと馬鹿をやったり。

奈緒さんの入浴を覗いて、石鹸をぶつけられたりするのも楽しいしな。


変な意味じゃなくて、こう言うのって、男の醍醐味じゃんかよ。


そう言うのを満喫出来るってのは、やっぱ男ならではなんだよな。


それに男であれば、誰かにムカついたら躊躇なく喧嘩出来るし。

男として、奈緒さんと接する時間には、なんとも言えない緊張感が有って、スゲェ楽しい。


そしてなにより、此処が一番重要な部分なんだが。

男なら、なんの隔たりも無く『奈緒さんとも異性として正式なお付き合いが継続していける』訳だから、実に、男である事には大きな意義がある。



……けどな。

それに反して『眞子のままでも良いかなぁ』って困った意識が、俺の中で芽生え始めてるのも否めないんだよ。


これは『女になりたかった』とか言う『女性変身願望』何て言う物では、決して無く。

本気で眞子のままなら、俺の『トラウマ的な悲願』を解決する事が出来るからなんだよ。


勿論、女である『眞子』で在り続ければ『みんながチヤホヤしてくれる』し『凄く可愛がってくれる』なんて打算がない訳じゃないんだけど、そんな小さな事より、なにより、俺にとっちゃあ一番嫌な『倉津家』って言うヤクザの看板を下す事も可能なんだよ。

ある意味、このまま眞子になっちまえば、この『余計な看板』を背負わず、一生自由に生きる事が出来るんだ。


まぁ当然、どんな理由があろうが、奈緒さんが一番大事なのには、なにも変わらないんだがな。

この『倉津の家を捨てれる』ってのは、俺の『達成出来る筈もない悲願』でもあるんだよ。


そこに、この『倉津真琴と言う存在を消せる』っと言う奇跡が、俺の元に転がり込んできた。


……俺は、崇秀が昔言った通り。

『本当は、絶対にヤクザになんかなりたくねぇんだよ』

『もっとみんなと、普通に接して生きて行きたいんだよ』


それに奈緒さんも……

『姿、形の問題じゃない。クラが私のもので、私がクラのもの。なにも変わらない』

そう言って、この変わり果てた姿の俺の存在を認めてくれてる。


その上で、崇秀の奴も……

男女の枠を超えて、なにも変わらず、俺と普通に接してくれる。


だから……今では、これ等の要因が都合良く重なって『女である自分を認めて貰えた』とさえ錯覚し始めているのかもしれないな。


その証拠に、口では男だと言い張りながらも。

こうやって自分を女だと認識していたからこそ、あれだけスムーズに『女言葉』が使えていたんだろうしな。


いや、寧ろ、これが『本来の俺のあるべき姿なのでは?』とすら思っているのかもしれない。



……もぉな。

今までは人前に居たから、なんとか冷静を装えていたけど……

風呂場で1人になっちまったら。

俺、自分の頭の中での判断で『何が正しいのか?』さえ、理解出来なくなっちまって来た。


今でさえ、何故、こんな事を考えてるのかすら理解出来ねぇよ……


俺は、一体『何者』であるべきなんだろうか?


これは、神様が与えてくれたチャンスだと認識して、この女性の姿を受け入れてしまうべきなんだろうか……



俺は、そんな風に混乱しながらも、湯船に頭まで浸かって、今後の自分について悩み続けた……


最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>

これにて第一章・第二十四話『女子会(男と女)』はお仕舞なのですが、皆様は、このお話、どう感じられましたか?


実際の話、突然、自身が女体化なんてものをしたら。

『女性に成りたい願望』がある人間でもない限り、そう易々と飲み込めるもんじゃないと私は考えます。


特に倉津君は、男であっても、漸く『人との繋がりを構築出来てきた』部分もありますしね。


そして大半のTS物と言うのは『女性の良い所』ばかり描かれるのですが。

あんな物は『男性が勝手に思い込んでいるだけの妄想』に過ぎず。

『日々の女性の苦労』っと言うものを、まったく理解していないものだとも私は考えます。


例を挙げるとするならば。

『金銭面』『毎日の美容関係』『男性への恐怖』っと言う3つ。


まず『金銭面』に関して言えば。

日本を基準に一般的に考えても、男性に比べて、女性の給料と言うのはやや少ない。

昨今は、少しマッシには成って来ているのですが。

それでも男性の給料には、中々追い付けていないのが現状ですからね。


そして、そんな金銭状況の中にあって。

2つ目の『日々の美容関係』っと言う項目が浮かび上がるのですが。

そのやや少ない給料の中で、男性よりも美容関係にお金の掛かる女性はやりくりをしなきゃいけません。

しかも、毎日のルーティンの中であっても、その美容に掛ける時間は、男性に比べて非常に長くなりますからね。


……っでまぁ、最後に『男性への恐怖』っと言うものがあるのですが。

一般的な女性は、男性よりも腕力が劣る事が多く。

そんな男性に乱暴でもされ様ものなら、宿したくもない子供を宿してしまうと言う恐怖。


こう言う女性の苦労が、大半のTS物では『ちやほやされるだけ』で一切書かれてないんですよね(笑)

しかも、この苦労も知らずに『のほほ~~~んっと生きてたり』『男性感覚のままファンタジー物なら女性1人旅』とかしてる始末。


馬鹿なの?


まぁまぁ、そんな風にTS作品が多いので。

当作品では、女性の楽しさを表現した上で、徹底的にその苦労も再現して行こうと思いますので、良かったらお付き合い下さいです(笑)


まぁ一応、女性の良い部分を先に描いてから、その苦労が身に染みて来る仕様にしていますので、最初は倉津君も勘違いして、結構良い思いをする事になるかもですね(笑)


辞めろぉ!!チヤホヤだけしろ!!( ゚Д゚) ('ω'*)嫌です(笑)


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