●前回のおさらい●
漸く眞子が納得した上で、新曲アレンジの依頼を受ける事を了承したので、奈緒グリのメンバーも準備を開始。
さてさて、どんな新曲が飛び出してくるのか?
……この後、ステージに奈緒ネェが戻り。
マイクポジションに立って、全ての準備は完了。
その間にディックさんが、コッチに向って……『Good!!』って右手の親指を立てながら、子供みたいな笑みを零していた。
だから私も同じ様に『Good!!』ってして微笑み返した。
ホント、お気遣いありがとうございます……だね。
***
……さて、これで全ての準備が整ったけど。
奈緒ネェ達が明日発表する新曲『Blood-Rain』って、一体どんな曲なんだろうね?
ジャンルは何?
曲調は、どんな感じ?
どんな歌詞を含んだ曲?
その全てが謎に包まれたまま、曲がスタートする。
♪♪--♪-♪♪--♪♪♪♪♪--♪-♪♪♪♪-♪♪♪--♪♪-----♪♪♪♪--♪♪♪-♪-♪……
うわ!!
曲名から、私が想定していたよりも、かなりド派手な音を鳴らすハードロック系だ。
しかも、結構な早打ち系。
これは早速、結構、厄介な曲だぞ。
って言うのも、こういう系統の曲って、リズムに一定のルートが決まってるだけにアレンジが異様にしにくいし。
何所も彼処も、ある程度、曲が完成しきってるから、変化を齎し難い感じなんですよね。
それに、曲調と同様、歌詞にも、かなり大きな問題がある。
曲自体が、どうやら『血の雨』が降る様な凄惨な戦争を唄った歌みたいなんだけど、何故か時折、官能的な言葉が混じっている。
それで更に、所々で、その雨を見た民衆が、悲しみや、喜びを滲み出させてるパートが散りばめられてる。
これも、また変化が付けにくい。
何故なら、その民衆の感情パートに成ると、曲調が露骨に変化するんですよね。
だから、例えそれに沿ってアレンジを加えたとしても『余り大したアレンジには成らない』って問題が浮き彫りになる。
これは、全体的に難易度の高い曲だね。
まぁただ、此処で1つだけ言える事が有るとすれば。
『これは、確実に奈緒ネェが作った曲じゃないね』と言うのだけは確信が持てる。
曲の中に、奈緒ネェが持つ曲の癖が、全く見受けられない。
だから敢えて、この曲を作った人の名前を上げるとすれば。
俺ちゃんマン事……ディックさんが作った可能性が高そうだ。
しかしまぁ、ホント、困った曲を作ってくれる人だよ。
そして……そう思った瞬間、7分程の曲は派手なまま終わった。
***
「うっひょ~~~う!!どうだったよ姫ちゃん!!良い曲だろ、良い曲だろ!!この曲、俺ちゃんが1人で書いたんだぜ」
曲の終了と同時にディックさんは、感想を待ちきれない様子で、ドラムの椅子から立ち上がってステージから飛び降りる。
……だからぁ~~~!!
気持ちわ解るけど、ステージから飛び降りるのヤメテって!!
このペンギン・バンドめ……
「あぁ、私もソッチに行く!!」
「おぉっと、奈緒ちゃん。ソイツは戴けねぇな。この曲は、俺ちゃんが個人的に作った曲だから、まず姫ちゃんの感想を聞けるのは、俺ちゃんだけの特権。奈緒ちゃん達は大人しく、そこについてる階段でもゆっくり降りて来な。……俺ちゃんが、姫ちゃんの感想を聞き終えた位にな。それが筋ってもんだろ?クカカカカカ!!」
偉い!!
ステージから飛び降り様としたメンバーを制して、ペンギンダイヴをさせない様にするなんて、偉いよディックさん!!
あれ……本当に危ないから、しちゃダメなんだよね。
だからディックさんも、ピョンって2度としちゃダメですよ。
【奈緒グリ】は、世界が注目するバンドで、もう既にメンバーだけの体じゃないんですからね。
ダメですよ。
まぁ……そうは言ってても、それを言ってる本人ですら、どうせダイブするだろうけどね。
「ちぇ」
「セコイよ、ディック」
「ちぇ、こんな事なら、僕も曲を作って置けば良かった」
「そうだな。けど、それだけにデクが言うのも、筋な話だな」
そぉそぉ、そうやって納得したんなら、大人しく階段を降りてきなさい。
本当に、変な所だけは子供なバンドなんだから。
……って思ってる間に。
少しだけ息を切らせながら、ディックさんは、私の前まで来ていた。
「……っで、姫ちゃんどぉだったよ?良い仕上がりの曲だろ」
挨拶無しか。
まぁ、ディックさんの場合は、音楽に関してだけは、他になにも見えくなるから、これはもぉしょうがないんだけどね。
だから此処は1つ、相手のペースに合わせよう。
「あぁ、そうですね。凄く良い曲ですね」
「だろだろ。幾ら姫ちゃんでも、アレンジする部分なんてなかっただろ?」
かなりの自信作って奴なんですね。
でも、確かにディックさんが言うだけの事はあって。
普通だとアレンジを入れ難い、とても完成度の高い良い曲だと思いますよ。
「そうですね。本当に、アレンジのし難い曲ですね」
「ほぉ……『し難い』ねぇ。って事は、アレンジが可能な部分が随所に渡って見受けられたって事だな」
「あぁ、いえいえ。そうじゃなくてですね。これから、そこを模索しようと思ってるんですよ」
「なるほどなぁ。俺ちゃんが、どういう心境で、この曲を作ったのかを、今から探ろうって腹か?」
「そぉ、正解です。……それでなんですけど。どんな状態で作りましたか」
「聞きたいかい?」
「勿論」
「じゃあ、教えてやるよ。実はな……」
ディックさんは、曲を作った時の状況及び、心境を語り始めた。
でも……その話は『それはないんじゃないの?』って思う様な最低最悪の酷い話だった。
なんでこの人は、そんな心境で、こんな曲が書けるんだろうね?
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです♪<(_ _)>
なにやら、またアレンジし難い曲を、ディックさんが書いたみたいですね(笑)
まぁでも、曲を聞いただけでアレンジの方向性を決める訳ではないので、ある意味、此処からがアレンジの本番!!
果たしてディックさんは、どんな心境で、この曲を書き上げたのか?
そして、眞子が最後に呆れた様な雰囲気を醸し出した理由は、なんだったのか?
次回は、その辺を書いて行こうと思いますので。
良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
読み終わったら、ポイントを付けましょう!