●前回までのあらすじ●
病室に崇秀乱入。
その後、崇秀のキッチリとした評価を聞いた上で。
良いライブをしたから、ステラさんと、ジミーさんをバンドのサブに使って良いと言って来た。
けど、今、新加入のメンバーを必要と感じなかった倉津君は断る。
すると2人は少々凹んだ様子で。
その2人に、しょうがないから、またツア―ミュージシャンをして貰うと言い出す崇秀。
だが2人はやけに嫌そうな顔をする……その理由とは?
「あぁ悪いな、ジミー。俺もまさか、コイツが、こうもアッサリ断るとは思って無かったもんでな……所謂、予定外って奴だ」
「仕方ガナイデスネ……すてら、諦メテ行キマショウカ」
「そうですね。縁が無かったと言う事で……」
なんだよ?なんだよ?
あの罵詈雑言を吐くステラまで、ショボクレやがって。
一体、なにが不満なんだよ?
・・・・・・
チッ……しょうがねぇなぁ。
事情を聞く気はなかったが、少しだけ、その辺の事情を聞いてやるか。
あぁ一応言っとくが、これが崇秀の手口だって事ぐらいは解ってんぞ。
「オイ……」
「ナンデスカ、真琴乃助サン?」
「オマエ等よぉ。なんで、そんなにツアーミュージシャンになるのが嫌なんだよ?少し変じゃねぇか?普通ならよぉ、もっとこう、喜んでやるもんじゃねぇのか?」
「嫌ッテ訳ジャナイデスヨ。……タダ、ツマラナイト思ッテルダケデス」
「ツマラネェだと?」
「ハイ。つあー・みゅーじしゃん程、ツマラナイ音楽ハナイデス」
なにが、そんなにツマラナイんだ?
ヤッパリ、訳がわかんねぇぞ?
「なにがつまんねぇんだよ?プロになる為の最短ルートじゃねぇか」
「音楽ヲ作ッテル気ガシナイデス。アンナモノハ、他人ノ作ッタ曲ヲ、タダ弾イテルダケ。ソンナモノ音楽ジャナイデス」
「うん?オイ、崇秀、こりゃあ、どう言うこったよ?コイツじゃ、言ってる意味がわからねぇよ」
「あぁっとなぁ。まぁ、なんつぅ~かな。ジミーは、元々作曲家志望の人間なんだよ。だからよっ。自分の作った曲じゃなく、認めてもいない他人の作った曲を演奏するのが嫌なんだよな。……まっ、要するに、大人気ない、困った性分って奴だ」
あぁ、なるほどな。
作曲をしない俺には、よくわからねぇ感覚だが。
確かに、そりゃあ、本人にしたら苦痛を伴うかもシレネェな。
……かと言ってだな。
ウチのバンドに入ったからって、好き勝手出来る訳でもねぇぞ。
奈緒さんも、嶋田さんも作曲する人間だから。
少なからず、あの人達も、ジミーと似た様な感性を持ってると思うぞ。
それによぉ。
売れちまえば、その後は好き勝手出来るじゃねぇか。
なら、そっちの方が十分魅力的な話じゃねぇか?
「なるほどな。そりゃあ厄介な性格だな。……っで、ステラの方も、なにか嫌だって理由でもあんのか?」
「私は、別に無いですよ」
「おいおい、ステラ。オマエなぁ。空気を吐く様にスラスラ嘘言ってんじゃねぇぞ。オマエにゃあ、どうしようもねぇ最大の欠点があんだろ」
「私に欠点なんてありませんが」
「チッ、もぉ面倒臭ぇ……あぁっとな。コイツはな。まっ、言わねぇでも解ると思うが、口が最上級に悪い。だから、その口が災いして、どこのバンドに所属しても長続きしねぇんだよ。イラネェ事を、直ぐ口に出して言いやがるから、バンドを即脱退させられる……だからまぁ、正直言っちまえば、ツアーミュージシャンですら勤まらねぇのな」
まぁ……十中八九そうだろうな。
基本的にコイツには、協調性って物が皆無だ。
なにがなんでも、自分の意見を通そうとする傾向があるからな。
それに妙に理屈っぽいから、話を聞いてる方としてはイライラするのは間違いない。
第一、初対面の人間に、あれだけ大量の文句を言っちまう様な性分だったら、大概の奴は、コイツと関わりを持ちたくなくなるってもんだ。
俺も、コイツの参入を断った連中同様、そう思うぞ。
……けどな。
実際は、そんな酷い話バッカリって訳でもねぇんだよ。
コイツの言ってる事って、実は、そんなに間違った事を言ってる訳でもないんだよな。
話をキッチリ聞いてりゃあ解る話なんだがな。
口の悪いのを除けば、結構、的を得た事を言ってるのも多い。
まぁ、単純に数値でモノを見たり、頭が固かったりするけど、基本的な事は外してない。
客観的な見方をすれば、正確な判断していると言って過言じゃない。
こう言う感覚の人間が居てもおかしくないし、必要性がない訳でもない。
だったら、どうしたもんかな?
「なるほどな。そりゃあ、そうもなるわな」
「まっ、そういうこった」
なんかなぁ。
この分だと、ステラも、ジミーも好きな音楽が、全然出来無いって事だよな。
確かに、片や我儘で、片や口が悪いじゃ、どうしょうもないと言えば、どうしようもないんだがな。
にしても、ちょっとなぁ……可哀想な気がしないでもないんだよなぁ。
なんか良い手がないもんだろうか?
多分、崇秀が、この調子じゃ。
コイツ等2人共、やりたくもない嫌な音楽をしなきゃイケナイって事になるしな。
少し同情するんだよな……
・・・・・・
あぁもぉ……しゃあねぇか。
「おい、ジミーよぉ」
「再ビ、ナンデスカ?真琴乃助サン?」
「オマエよぉ。自分の音楽を聞かせたいとか言ってたが。一体、どんな音楽がしたいんだよ?」
「私、別ニ、シタイ音楽無イ……タダ、自分ノ作ッタ曲ヲ聴イテ欲シイ」
「じゃあ、序に、もう1つ聞くが。ジャンルは、何でも作れるのか?」
「ぶるーす無理……後、ソレ以外ナラ、大体、作レルデス」
「そっかぁ、わかった……っで、それとステラ、オマエの音源を聞かせてみろよ」
「私の音源?そんなもの聴いて、どうするんですか?意味が有るとは思えませんが」
またコイツは……
そう言う余計な事を言うから、バンドで、ハミ子にされるんだよ。
少しは従順にモノが出来ねぇのか?
ホント、馬鹿な奴だな。
もぉマジで勘弁してくれよぉ。
最後までお付き合いくださり、誠にありがとうございますです<(_ _)>
ジミーさんのツアーミュージシャンに成りたくない理由は『認めてもいないミュージシャンの楽曲を演奏したくない』と言う物。
そしてステラさんは……もぉ言うまでもなく、口が悪いので、いざこざをすぐに起こしてしまう事。
こんな2人を、少々同情する倉津君は、一体、どうするのか?
それは次回の講釈。
また良かったら、遊びに来て下さいねぇ~~~(*'ω'*)ノ
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