最後まで奏でられなかった音楽

どこかお間抜けDQNな不良さんのゆったり更生日誌(笑)
殴り書き書店
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1418 沙那ちゃんについての説明

公開日時: 2024年12月22日(日) 00:21
文字数:2,130

●前回のおさらい●


 沙那ちゃんと素直ちゃんと話してる内に、3歳からギターを弾き始めた沙那ちゃんのギター歴が7年である事が判明。

……っとなると、当然、その実力が気に成る所なので。

「いや、あのよぉ、沙那ちゃん」

「なに?おにぃちゃん」

「話の途中で悪ぃんだけどよぉ。ちょっとだけ、此処でギターの演奏してみてくれないか?」

「えっ?無理だよ。ムスタング持って来てないもん」

「そっか」

「あぁ、でも、おにぃちゃんが聞きたいって言うなら、車から取って来るよ。店の前に、お父さんの車も停めてるし」

「じゃあ、少しだけ頼んで良いか?」

「うん、良いよ。でもね。調整もしてくるから、ちょっと時間掛かるよ。それでも良い?」

「あぁ勿論、勿論」

「うん、じゃあ、取って来るね」


そう言った後、沙那ちゃんは、元気にピョンっと、俺の膝から飛び降り。

テポテポと急ぎ足で、店を出て行った。


提案したまでは良かったが……その反面、なんか聞くのが怖い様な気がしないでもないな。


***


「……あの、真琴君」

「なんだ?」

「あの子って、どういう子なんですか?幾つかは知らないですけど。あの年で、毎日ギターの練習に6時間も使うなんて、ちょっと普通じゃないですよね?」

「あぁ、まぁなぁ。元々音楽が凄い好きな子だから、練習してるって意識が薄いんじゃないか。そうなりゃあ、自ずと、そこに集中するだろうしな」

「そうですか。でも、それだけで、そんなに毎日、練習出来るもんでしょうか?」

「いや、それ以外にも理由は、もう一個あるぞ」

「なんですか?」


環境だな。


あの子の置かれてる特殊な環境こそが、そうさせてる部分が多岐に渡って見受けられるからなぁ。


だから、そこを簡単に説明しとくか。



「いやな。実は、あの子な。ちょっと特殊な環境で育ってる子でだな。あの子の親父さんが楽器のビルダーなんだよ。だから、余計ギターに固執するんじゃねぇか」


勿論、説明するとは言ったが、余計な家庭の事情までは言わんぞ。


そこは、別に素直が知らなくて良い部分だからな。


認識的には『音楽好き』で『環境が整ってる』から、練習を重ねる子って認識を持って欲しい所だからな。



「だからですか」

「まぁ、なんと言うか。そんな環境なだけに、あの子にとってギターは、きっと生活の一部なんだろうな」

「へぇ。でも、学校に行きながら、6時間も練習をすると成ると、家に帰ってからの時間が、殆ど、そこに費やされてますよね」

「まぁそうだな。多分、友達と遊ぶより、ギターを練習してる方が、本人にとっては楽しいんだろうな。それに、生活自体が、基本的に放浪生活だしな」

「放浪生活って、どういう事ですか?」


いや、先に言って置くがな。

口を滑らせて、こんな事を言ったんじゃないんだぞ。


環境についての良い口上を思い付いたから、これは狙った上で、わざと言ったんだぞ。


マジだからな。



「うん?あぁ、それはな。親父さんの仕事に、沙那ちゃんが付いて行ってるから、場所を転々としなきゃ成らないんだよ。だから、実際は、友達を作ってる暇もないんだよな」

「えっ?そんな生活って……」

「まぁ、そんなに驚くなって。そう言う環境で生活してる奴って、結構いるんだからよ」

「そうですか?僕は、そう言う子を知らないですけど」

「そうか?これって、親と一緒にサーカスとか、地方巡業をしている劇団に所属してる子供みたいなもんなんじゃねぇか。だから、遊んでる暇なんかないから、手元にあるギターを主体の生活に成ってるだけだと思うんだけどなぁ」

「あぁ……」


ほらほら、偶に居るじゃねぇか。

親と一緒に仕事をしてて、何度も転校を繰り返すガキって言うのがさ。


考え方によっちゃあ沙那ちゃんは、あれとよく似た環境なんだよな。


まぁ、沙那ちゃん自身は学校行った事がないから、これが正しい例だとは言わないが。

友達と遊ぶより、ギターに集中してるって意味では、比較的良い例には成ったと思う。


……けど、そんな沙那ちゃんの環境に、素直は少し同情したのか、悲しそうな顔をしている様だが。

これが、今の沙那ちゃんの置かれている一番近い現実的な状態だと思うんだがな。



「まぁ、そうは言ってもな。そんな放浪生活も、もぉ直ぐ終わりになるんだけどな」

「どうしてですか?」

「いやな。まぁ、こう言うのを、俗世間一般では『縁』って言うんだろうな。親父さんと話してる内に、ウチの近所で工房を構えてくれる事になっってな」

「あぁ、そう言えば、嶋田さんが、引越しのお祝いって言ってましたよね。あれって、そう言う意味だったんですね」

「おぅ。だからな。沙那ちゃんのこう言う生活も、もぉ終わりに出来るんだよ」


……っとまぁ、学校の事には一切触れずに、なんとか最後まで纏め切った訳だな。


……とは言っても。

素直ぐらい、素直な奴じゃなきゃ、この話は、こうは上手く行かなかっただろうけどな。


***


 ……さてさて。

そうこう素直と話してる内に沙那ちゃんが、愛機であるムスタングと、小さなアンプを持ってテポテポとこの場に帰って来たんだが。


戻って来た瞬間、アンプにチョッケルをかますと、指定席の様に俺の膝の上に座る。


俺としては嬉しいんだが……ギターを弾くには、此処じゃあバランスが悪いんじゃねぇのか?


……なんて思っていたんだが。

本人は、全くと言って良い程、気にしてる様子もなく。

座ったまま振り向いて、イキナリ俺に、曲のリクエストを聞いてくる。


さてさて、沙那ちゃんの実力が解らない以上、これにはなんと返答したもんかな?


最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです♪<(_ _)>


沙那ちゃんの実力は、次回と言う事に成ったのですが。

素直ちゃんに、沙那ちゃんについての説明が上手くできたのは良かったですね♪


1人に説明が出来たと言う事は、他の人にも説明する方法が見つかったと言う事ですし。


さてさて、そんな中。

次回は、とうとう沙那ちゃんの実力のお披露目となる訳なのですが。


果たして、どれ程の実力を兼ね備えているのか?

そして、倉津君は、その沙那ちゃんの実力を、どう評価するのか?


……ってな話を書いて行きたいと思いますので。

良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾


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