最後まで奏でられなかった音楽

どこかお間抜けDQNな不良さんのゆったり更生日誌(笑)
殴り書き書店
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642 覚悟を奏でる新曲

公開日時: 2022年11月10日(木) 00:21
更新日時: 2023年9月12日(火) 12:28
文字数:2,020

●前回のおさらい●


 崇秀の技の強力さにより、眞子は完全にグロッキー状態。

なので⑪⑫曲目は、奈緒さんと崇秀の2人よって奏でられる事に成り。

眞子は少しの時間、ライブを二人に任せて体力の回復に専念する羽目になったのだが……

 私は、山中君の肩を借りて、一旦ステージから退く事にした。


故に⑩⑪の2曲分……約15分の中間休憩を貰った事になる。

此処で早急に、本番ラストの新曲やアンコールの為に、出来る限り、楽屋で体の回復に勤めたいと思う。


……でも、実際は、そうも言ってられなかった。


体の不調や、体力の限界からか『楽屋に戻ろう』って意識とは別に、体が思った以上に言う事を聞かず、楽屋にすら辿り着く事は出来なかった。

ステージの縁にある階段をフラフラとした足取りで降り切ったら、直ぐに軽い貧血を起し、完全に動けなくなり。

その場に『ペタン』っと、ヘタリ込んでしまう。


でも、ステージの出入り口付近で、そのままヘタリ込んでたのではスタッフさんの邪魔になると思い。

出来る限りの気力を振り絞って、なんとか、その場から立ち上がり。

別の誰も使わなさそうな階段の一番下の段に腰かけて、誰の邪魔にもならない様に端の方に座る。


後は、こんなミットモナイ顔を、誰にも見られたくないから、タオルを頭の上からかけて、俯き、顔を隠したまま、此処で動く事すら出来無くなった。


……そんな中。

私は……崇秀の音楽に対する『妥協』の無さ、または『容赦』の無さを思い知る事になる。


今現在、ステージで演奏中の崇秀は……今まで私に掛けていた『個人的なブースト』を、今度は奈緒さんに向ってやっている。

当然、奈緒さんの声の伸びや、声量は、抜群に向上しているんだけど、その分の負担は、実体験から言って計り知れない。


それに崇秀は、私をバックアップする時の様な『ぬるいブースト』を掛けているのではなく。

正真正銘、なんの容赦もない『奈緒さんの限界値ギリギリまで引き上げるブースト』を使っている。


これは……此処からでも聞こえて来る奈緒さんの声を聞いてるだけでも、瞬間的に、彼女の体力が限界まで削られている様子が目に浮かぶ。


そんな『ブースト』の掛け方だ。


また私が不甲斐無いせいで、崇秀の『拷問の様なブースト』に、奈緒さんは耐え忍ぶ羽目に成っている。


……けど、今のままの私じゃ、まだなにも出来無い処か。

ステージに出て行った処で、ロクに動く事すらままならない。


だから……なんとかしてあげたい気持ちを極限まで抑え付け。

此処は、心を鬼にしてでも『自身の体力回復』に専念する事にした。


ごめんね、奈緒さん……


こんな不甲斐ない私で……


***


 ⑩⑪と唄った奈緒さんの歌は、今までにない程、素晴らしい物があった。


彼女の出す声が全て澄み渡り。

会場全体を包み込む様な感触が、観客の皆さんに伝わり。

この場から聞いていても、その完成度の高さが手に取る様にわかった。


……でも、その分、私には、その声が、苦しみを伴う『悲痛な叫び』とも聞こえていた。


だからせめて、なんとしても残り4曲で、奈緒さんに、この大きな借りを返さなければならない。


私は、ほぼ0に近かったヒットポイントが、奈緒さんから貰った15分の休憩で、ほぼHP0からHP10位までには回復した。


だから後は『決死の覚悟』で、再度ステージに向って行くだけだ。


『今度こそは、崇秀に絶対に屈しない!!』


そう心に堅く誓いながら。

悪夢のライブが行なわれているステージに向かう階段を、再び、登り始めた。


 ライブ本番最後の曲『Epitaph』(墓碑)


『どこで死んでも良い。そこが自分の墓標だ』

……っと言う、なんとも西部劇の様な『アウトロー』で『ならず者』的なコンセプトの元にして作られた新曲。


でも……この曲は、今の私には、まさにピッタリな曲。

私が、今なにをやるべきなのかを指し示している様な曲だ。


……でもね。

こんな時に不謹慎かも知れないけど。

奈緒さん曰く、実は、この曲って、元々『アニメ』の為に作られた曲なんだって。


だから『アニメ』に全く思い入れが無い奈緒さんにとったら、あんまり気乗りしないから『適当に作った曲』らしいんだよね。


それ故に、手抜きで作られてるのを知ってるから、なんとも言い難い心境なのよね。


更に、付け加えて言うならね。

実際、奈緒さんの家で、練習がてらに、この曲をベースを弾いた時は『なんて完成度が低い曲なんだろう』って、つい思っちゃう様な曲でもあったんだよね。


……けど、今の、この曲は違う。

そんな軽い気持ちで、簡単に弾ける様な甘い曲じゃない。


崇秀が『困った程の完璧なアレンジを加えてしまった』為に、曲自体の完成度が、ほぼ神の領域に踏み込んだ様な曲になってるし。

それに伴い、演奏の難易度も、とんでもなく上昇している。


更に、上手く曲に深みが加わってしまっているので、果てしなく、意味深な曲にも変貌してしまっている。


この辺は、どうやって、あんな『覚悟を重視した様な曲』に作り変えたのかまでは、謎のままなんだけどね。

アニメの制作会社が『奈緒さんに望んでいた物以上の物に成っている』事だけは違いない。


……にしても『どこで死んでも良い。そこが自分の墓標だ』かぁ。


まぁ、奈緒さんの為なら、それも一興……悪くないのかもね。


ははっ……


最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>


体力の回復をさせる事と共に眞子は、どうやら本気で崇秀と言う名の化け物に挑む決意が出来た様です。

まぁ、その結果が、この話の冒頭でも言った様な状態になるフラグとなるのですが。


一体、この後、何が起こるのでしょうね?


次回は、その辺の恐怖体験を書いて行こうと思いますので。

宜しかったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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