最後まで奏でられなかった音楽

どこかお間抜けDQNな不良さんのゆったり更生日誌(笑)
殴り書き書店
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046 不良さん 山中に対する奈緒さんの冷たい態度の理由に驚く

公開日時: 2021年3月23日(火) 22:22
更新日時: 2022年11月8日(火) 22:08
文字数:4,265

●前回のおさらい●

不良さんが奈緒さんに告白した後。

奈緒さんのイマイチはっきりしない態度に謎を感じながら、目的地であった『横浜Live-oN』に到着する2人。


そこには山中が待ち構えていたのだが、何故か奈緒さんは、山中に対して冷たい態度を取り続ける。


その冷たい態度を取り続ける理由が、今、明かされる!!

 そんなこんながありながらも、奈緒さんと一緒にライブ会場へと向かう通路を歩いている。

ただ、その間に、なんとかして奈緒さんの山中に対する冷たい態度の理由を聞きたかったので、此処で質問をしてみる事にした。


疑問に思った事は、直ぐに聞く。


これは一種の子供の定義なんだが、俺は、まだ中学生=子供っと言う自分勝手な定義の基。

さっきの山中の件を、奈緒さんに、直接、聞く事にした。



「あの」

「んっ?なに?」

「奈緒さんは……」

「クラ……そこは奈緒だよね?」


また、そう言う細かい事を指摘するぅ。

別に今は質問してるだけなんだから、奈緒って呼び捨てにしなくても良いじゃないですかぁ。


俺は『奈緒さん』って呼びたいんだしさぁ。



「やり直し……なに?」

「なっ、奈緒は……」

「うん、よろしい♪それでなに?」

「なっ、奈緒は、なんで、あんなに山中を虐めるんッスか?嫌いなんッスか?」

「別に嫌いじゃないよ……なんで?」


えぇえぇぇぇえぇ~~~!!これはまた衝撃に事実だな、オイ!!

特に嫌いでもないのに、あんな酷い態度を取り続けてるって言うんッスか?


それは流石に、ちょっと酷過ぎやしませんか?

ウザイの代表格と言えども、山中だって、一応は人間ですよ。


それに第一、最初に逢った時、俺とは普通に喋ってたじゃないッスか。

なんで、そんなに対応に開きが有るんですか?



「けど、あれは、ちょっと酷いッスよ」

「えっ?酷い?……あぁ、なんだ、クラは知らないんだぁ」

「なっ、なにをッスか?」


おっ?なんだ、この言い方は?

この言い方からして、山中と奈緒さんの間には、なんか、そう言う取り決めみたいなもんが成立してるのか?



「良いクラ。あの子は関東の人間じゃなくて、関西の人間なんだよ」

「はっ、はぁ……、まぁ、そうッスねぇ」

「だったら、周りが彼を美味しくなる様に気を遣ってあげなきゃダメなんじゃないの?」

「へっ?はぁ?」

「なに?その生返事は?……もぉ、ホント、わかってないなぁ、クラは」

「だから、なにをッスか?」


あぁ、この様子だと、またなんか変な事を言い出しそうだな。


明らかに、そんな雰囲気を醸し出してるぞ。



「だからぁ。例えば、彼が必死に喋ってる時に、横から話を潰せば『なんでやねん!!』ってなるじゃない。……それを関西の人は『美味しい』って言うんだよ。だから私は、あの子が『なんでやねん!!』ってなる様に頑張ってる訳……関東人にしたら上手いでしょ」


奈緒さんは『むふ~』っとか言う、音が聞こえそうなぐらい鼻息荒く。

自信タップリに言葉を紡いでいるんだが……


これは明らかに……奈緒さんは酷い勘違いしている。

この人、関西の人全員に謝らなきゃいけないぐらい、関西人を偏見の目で見てるな。


確かにな。

関西の人はボケと突っ込みをこよなく愛す人種で、お笑いが好きな傾向にはある。


これは統計的に見れば、大半の人がそうなんだから否めない事だ。


ただ、今言った様に大半は、何所まで行っても『大半』でしかない。

関西人の全員が全員、お笑い好きと言う訳では決してない。

中には、ボケと突っ込みを出来無い人も居るだろうし、メンドクセェなんて言って、この行為を拒否する人も居る筈だ。


その上で考えても……まぁ山中は、お笑いが好きな関西人っと言っても、ほぼ間違いではない。


だがな。

親切でやってるつもりの奈緒さんのこの行為は、彼女の言う『相手を美味しくさせる』って行為には程遠く。

どちらかと言えば、お互いの面識が浅い故に『冷たくあしらってる』若しくは『嫌ってる』って、部類にカテゴリー分けされても、なにもおかしくはないんだよな。


それでいて関西の人は『関東人は冷たい』って言う逆イメージが有る訳だ。


こうなると結果は、最悪のパターンしか考えられない。

山中→奈緒さん=意味も無く嫌われてる。

奈緒さん→山中=彼は美味しくなってる。

……が、満の悪い事に、お互いの勘違いが上手くかみ合って、成立してしまってる訳だ。


いやいや、しかしまぁ、この2人酷い誤解をしてるな。

取り敢えずだが、応急処置として、最低限度の事は奈緒さんに教えてあげよう。



「あの……」

「なに?」


良い事をしたと思っている奈緒さんは、笑顔でご機嫌だ。


それだけに、現実を突きつけるのは、少々言い難い。



「あのッスね」

「だからなに?……あぁ、そぉそぉ、クラ。さっきの山中君の件、上手く出来てた?」


ブッ!!この人、本当に間が悪いよな。


今、この状況で、それを聞いちゃいますか?



「あの……上手いとは思いましたよ」

「そぉ、それは良かったぁ」

「けっ、けどッスね」

「けど?けど、なに?なんか失敗してた?」

「いや、上手いとは思ったんですが。多分、俺の予想だと……あれ、山中には、なにも伝わってませんよ」

「えっ?」


自分では好意でやってるつもりなんだから、そりゃあ驚くはな。


悪意のない善意ほど、性質の悪いものはないって言うぐらいだからな。。



「いや、非常に言い難い事なんッスけど……」

「なに?なに?えっ?えっ?どういう事?」

「はぁ、平たく言えば、奈緒さんは、凄い勘違いをしてるんッスよ」

「えっ?私、何か勘違いしてるの?」


あっ……此処での『さん付け』気付かなかった。


つぅ事は奈緒さん、この件に関しては、相当、動揺してるみたいだな。



「あぁっと……1つだけ」

「それは、なに?」

「はぁ、まぁ、多分なんッスけど……奈緒さん、関西の人って初めから、誰でも『親しい』っとか思ってませんか?」

「あっ、うん」

「それ……まずにして、違いますよ」

「えっ?違うの?TVとかだと、関西のオバサンって、直ぐに、誰とでも仲良くなってるよ。ほらほら、関西系の街頭インタビューとかでも、オバサン、直ぐに、アナウンサーの肩をパンパン叩いたりするじゃない」

「あぁ、あれはですね。オバサン特有の行為なんですよ」

「えぇぇえぇぇ~~~、そうなの!!あぁ、でもでも、手で拳銃の形をさせて『バンッ』って言ったら。みんな、死んだフリとかしてたよ。……ひょっとして、あれも、やらせって事なの?」

「いや、決して、やらせではないですけどね。そう言うネタにも、わかり易いものと、わかり難いものが有るんッスよ。そんで、奈緒さんの奴は、物凄くわかり難い方なんですよ」


いやはや、それにしても。

少し前になんだが、山中に関西のお笑いについて聞いてて良かった。

アイツが転校して来た時、俺も、奈緒さんと同じ質問したからな。


ある意味、テレビの影響って怖いよな。



「えぇっと、関西の人って、みんな芸人気質だから。みんなお笑いのレベルが高いんじゃないの?」

「それも……偏見ですよ」

「嘘!!」


やっぱりな。

この件については、どこまでも予想内で話しをしてくれる人だ。



「えぇっとッスね。じゃあ、その辺を纏めて説明しますよ」

「はい」

「確かに、奈緒さんの思う通り、関西の人は、お笑い好きです」

「はい」

「それで居てですね。極稀にではあるんですが、関西の人の中にも、お笑いが嫌いな人も居ます」

「えっ?あっ、あぁ、はい」


此処等辺が納得いかないんだろうな。


ハイの前に『えっ?あっ』と言う、ちょっとした疑問が残っている。



「まぁそれでもですね。山中は、レベルの高いお笑い好きです」

「そう……だよねぇ」

「ですが。イキナリ奈緒さんの『醒めた攻撃』には対応出来ません。何故なら、奴は、奈緒さんの事を良く知らないからです」

「あっ」

「故に、アイツはですね。奈緒さんの事を……」

「私の事を……」

「自分の事を『嫌ってる』と思っています」

「えっ?えっ?えぇえぇえぇぇ~~~!!そうなの?」

「付け加えるなら、奈緒さんの事を『扱いづらい冷たい女』だとも思っています……以上です」

「あぁそうか。そこが食い違ってると、そうなっちゃうんだぁ……あぁでも、それって、なんか嫌だなぁ」


あぁ凹んだ。


善意でやってただけに、滅茶苦茶可哀想だな。



「あぁでもですね。勿論、対応策は考えて有りますよ」

「ほんと……?」


今度は、上目遣いで俺を見ながら、ちょっと喜んだ。



「はい、完璧な奴です」

「じゃあ、それを教えてよ……あっ、ひょっとして誤解を解くって奴?」

「いいや、そんな事はしませんよ。寧ろ、奈緒さんが、山中の思ってるキャラを演じ続ければ良いんですよ」

「えっ、じゃあなに、これからも山中君には、ズッと冷たく接しろって事?」

「そうッス。アイツも、その内、慣れるか、気付くかしますよ……大丈夫ッス」

「出来る……かな?」

「大丈夫ッス。奈緒さんなら出来るッス」


満面の笑顔で、奈緒さんには、そんな事を言う。


でも、俺の腹の奥底では、ドス黒い得も言えぬ何かが、のた打ち回っていた。


『誤解なんて解かさせねぇよ』


それこそ、あの陰獣馬鹿が勘違いして、奈緒さんに変な興味でも持ったら面倒な事になるッスからね。

そんなもん、ただただ危険なだけじゃないッスか。


だから俺は、みすみす奈緒さんを、そんな危険に晒す様な真似はしませんよ。


アイツは、性欲の権化・淫獣なんですから……


とは、酷い事を言っても、勿論、後で俺の方から山中には事情を話す。

親切でやっていた『冷たい態度』で、奈緒さんが山中に嫌われるのは、あまりにも可哀想だからな。


但し!!この話は、俺と奈緒さんが付き合ってる事を前提に話すがな。


実は、独占欲(奈緒さん限定)が強い、俺。



「なんや自分等、まだこんなトコに居ったんかいな?なにイチャイチャしとんねん」


グォ!!タイミング悪ッ!!


どのタイミングで山中に説明しようかと思考してた所なのに、その考える暇もないまま、オマエが、また現れるとはな。

ほんと、ドイツも、コイツもタイミング悪いよな。


どうなってんだ?


そんな俺の思考を尻目に。

奈緒さんは、再び、復活を遂げた山中に、例の一瞥をくれる。


ちょ!!その態度、早くも対応してるって事か?


イヤイヤ、ちょっと待て。

って事は、まさか……オイオイ。



「クラ……行こ。ウザイ」


うぉ、ヒドッ!!

さっきより言葉の厳しさがパワーアップしてるじゃないッスか!!


山中は、奈緒さんの一撃で、一瞬にして『ピキッ』っと言う変な音と共に、完全フリーズする。


1日に、こう何度も冷たい攻撃を喰らっては、流石の山中も、もぉもたないか。


しかし、奈緒さん。

口では、あんなこと言ってましたが、ホントは愉しんでませんか?


この人は、素直と言うか、何と言うか、ホント飽きない人だな。



俺は、フリーズする山中に、手だけで謝罪して、奈緒さんに付いて会場に向かう。



「早く行こ……なんか此処、急に嫌な雰囲気なったし」


この一言を放った上に、俺の手を引っ張って、ワザと足早に会場に向かう。


どこまで徹底してるんだよ、この人は……


最後までお付き合いありがとうございました<(_ _)>


奈緒さんは、山中君を嫌ってるのではなく。

彼女は彼女なりに山中君に気を使って、親切心で、あんな冷たい態度をとってたんですね。


ただ、酷い勘違いでしたが……(笑)


さて、そんな茶番を踏まえつつも。

次回からは崇秀が開催予定のライブの話に移って行こうと思います。


崇秀が、どんな特殊なライブをするのか、是非、楽しみにしてください。


でわでわ、ま~~~たねぇ~~~(*´▽`*)ノ

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