●前回のおさらい●
思わぬ所で、バンドの解雇を崇秀から宣告された倉津君。
必死に抵抗する為に、もう一度チャンスを願い出るが……崇秀は、首を縦には振ってくれなかった。
そんな崇秀の頑なな態度に業を煮やした倉津君は、最後の手段として『奈緒さんを連れて逃げる』っと言いだした。
すると……
『ドゴ~~~~ン!!』
そんな強烈な音と、意識が飛びそうに成る程の強烈な衝撃と共に、俺は一気に楽屋の壁まで吹き飛ばされる。
一瞬、なにが起こったか解らなかったので目を白黒させていたが……この衝撃は、過去に一度だけ喰らった事のある。
コイツは、マジで怒った時の崇秀のパンチの衝撃だ。
「テメェなぁ、いい加減にしろよな。人に企画を頼んで置いて、自分の旗色が悪くなったからって『その女を連れて逃げる』だと……人を、なめんのも大概にしろ!!」
「うっ、うるせぇ!!……るせぇ!!るせぇ!!こんな事、納得出来るか!!」
「あぁそうかよ。だがな、納得出来ねぇのはテメェの勝手だがな。その勝手な思いに向井さんまで巻き込むな。今度、彼女の未来を潰す様な失言をしたら、幾らテメェとは言え容赦しねぇぞ」
「『容赦しねぇ』だと……面白ぇやってみろよ。但し、俺が勝ったら、奈緒さんの事は、俺の好きにさせて貰うからな」
「あぁ、良いだろう……なら、悔いて死ね」
こうして俺と崇秀のガチの殴り合いが始まってしまった。
コイツとは、小学校1年からの腐れ縁で7年の付き合いだが、こんな事は初めてだ。
出来れば、こんな日が来なければ良かった……
だが……そんな気持ちとは裏腹に、それをぶち壊してでも、この話だけは、納得出来無い事が多過ぎる。
俺は問答無用に数発パンチ繰り出し、崇秀に、その全てをくれてやった。
だが……何発も何発も必死に打ち込むが、奴は、それを受けても、効いた素振りさえ見せない。
まるで、実体の無い幻覚でも殴っている様な感覚に陥らせる。
コイツには、こんなパンチじゃ効かないのか?
「なんだそれ?気持ちが入ってるなら、もっと本気でやれよ。こんなもんじゃ笑えないジョークにもなんねぇぞ」
「クソッ!!くそっ!!糞!!……なんなんだよ、オマエは!!なんで効かねぇんだよ!!なんで怯まねぇんだよ!!」
殴っても殴ってもダメだ……
命中しているのも関わらず、いつまで経っても、奴にダメージを与えられない。
それ処か、俺に不敵な笑みを浮かべたまま見下してる。
……コイツ、一体、何なんだ?
「俺にパンチが効かねぇのも、怯まねぇのも、テメェとは覚悟が違うからだ。……それがパンチの重さに出てるんじゃねぇか」
「ふざけんな!!なにが覚悟だ!!偉そうな事を吹いてんじゃねぇよ!!」
「そうかよ。……そんな事の意味もわからねぇなら、もぉ死んじまえ」
「がはっ!!」
顎の下から良いのを喰らって、頭をかち上げられた。
俺は、体の浮遊感を感じると同時に、急速に近付いてくる天井を見ながら色々な思考が混じり始めた。
なんだよ、それ?
なんだよ、この威力?
こんな常識外れな威力、どうやったら出せるんだよ?
コイツの言う通り『覚悟』が威力になるとでも言うのか?
馬鹿馬鹿しい……んな事がある訳ねぇ……
だから、これは幻覚だ……
『グシャ!!』
そう思っていたが……矢張り、現実は厳しいな。
俺は天井に顔面を撃ち付け、意識が飛びそうになる。
……やっぱ、コイツには、何をやっても勝てないんだな。
『ズル……』
俺は急速に落下して行く自分を感じながら、そんな事を考えていた。
「がはっ!!」
そこに、崇秀は追い討ちを掛けてくる。
宣告通り、奴は容赦がない……
落下し終わると同時に、何発も何発も糞重たいパンチを、俺の顔面にめがけて落としてくる。
ダメだ……これは死んだな……
『ガチャ』
「お疲れ様ぁ……って、ちょ!!なっ!!なにやってるんですか、仲居間さん!!やめて!!」
「んあ?あぁ、なんだ向井さんか。けど、少し黙っててくれるかな?……向井さんも、こうなりたくなかったら、下手にしゃしゃり出ない方が身の為だぞ。これは、俺と倉津の話だ。誰の干渉も許さない」
「なかっ、仲居間さん?どうしちゃったんですか?」
「どうもこうもねぇよ。俺は、絶対に、コイツを許さないだけの話だ。こんな情けねぇ事を言うコイツは許さない……十万億度を踏んで悔いさせてやる」
「仲居間さん、ヤメテ!!クラが死んじゃう!!」
「向井さん。もぅ1回だけ忠告するな。『今は、なにがあっても干渉するな』……次、干渉したら、幾らアンタでも殴り殺すぞ」
「ダメダメダメ!!絶対ダメ……なんで仲居間さんと、クラが喧嘩しなくちゃいけないんですか?そんなのおかしいですよ!!」
……奈緒さんが、崇秀を止めてる。
けど危ないッスよ、奈緒さん。
ソイツは、本物の規格外の化物なんッスから……
それに……そいつの相手は俺ッスよ。
邪魔しないで下さい。
「離せ!!……コイツは、男として、絶対に言っちゃいけない事を言った。だから、そのケジメをとる。そうしなきゃ、コイツは成長出来無い」
「だから!!なにがあったんですか!!せめて話を聞かせて下さい!!」
「悪いが、これは誰かに語る様な話じゃない。……それに、アンタがそうやって、コイツを甘やかすから、コイツがダメになる。アンタも、それに気付け」
「この喧嘩……私の責任なの?」
「いいや、違う。責任は、本人だけのものだ。甘やかされて、甘えるのは、本人のせいだ」
「……そう言う事ッス。これは俺が招いた結果。奈緒さんには関係ないッスよ」
「そう言うこった」
「クラ……仲居間さん……」
どうやら崇秀は、俺の意識が戻っていた事に気付いていた様だ。
その上で、奈緒さんに、さっきまでの話を隠した。
『武士の情け』って奴か……
なら、せめて……敵わないまでも、ケジメを付けねぇとな。
俺は、足元が覚束ない状態のまま、余力を振り絞って立ち上がり。
足も頭の中もフラフラしながらも、なんとかファイティング・ポーズを取った。
これだけは、なにがあっても負けられないからな……
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです<(_ _)>
崇秀は矢張り、規格外の化け物。
……とは言え。
崇秀が言った様な『想いや覚悟が、威力や防御力に繋がる』様な事なんて、現実的には有り得ない話なので。
本当の事だけを言えば『崇秀は、倉津君の強力なパンチを、やせ我慢してでも、何事もない様に見せかけてる』だけなんですね。
ですから、本当な『かなり痛い筈です』
ですが、相手になにか物を教える時と言うのは、絶対的に余裕がある様に見せなければいけないのも事実。
この辺は、倉津君の将来の事を考えての行動なのでしょうね。
さてさて、そんな中。
崇秀のそんな意思に気付いてか、気付いていないかは別として立ち上がった倉津君。
この後、その自身の意地を崇秀に見せ付ける事が出来るのでしょうか?
そこは次回の講釈。
また良かったら遊びに来て下さいねぇ~~~(*'ω'*)b
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