最後まで奏でられなかった音楽

どこかお間抜けDQNな不良さんのゆったり更生日誌(笑)
殴り書き書店
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249 不良さん、崇秀の手際の良さに呆気に取られる

公開日時: 2021年10月13日(水) 00:21
更新日時: 2022年12月12日(月) 15:52
文字数:4,295

●前回のおさらい●


 昨晩からバタバタと動き回る崇秀を尻目に、のんびりとした朝を迎えた倉津君。


当然の如く怒られて、そのまま女子達を送迎するバスに放り込まれた(笑)

 ボロボロの状態の俺を乗せて、バスは海岸に向って移動を開始する。


さっきの出来事で、俺は少々不機嫌に成りながらも、なんとかボケたままの頭を修正。


今現在、バスの一番前の席に座らされてる。


そんな中だな。



「はいよ、おはようさん。……昨日は良く眠れたかぁ?緊張してねぇかぁ?」

「仲居間さん、アナタは、意外と低脳なんですか?あのスタッフさん達が深夜中バタバタした状況で、グッスリ眠れる人が居るとお思いですか?もし居るとすれば、相当な無神経な人ですよ」


俺……少しの時間だが爆睡してたぞ。


って事は、無神経なのか?


あぁまぁ、無神経だな。



「おぉそうか、そうか。そりゃあ悪ぃ悪ぃ。なんかな、このメンバー見てたら、やりてぇ事が、次から次に湧いて出て来てよぉ。気付いたら、あんな状況になっちまってた。ホント悪ぃな」

「別に構いませんが……それよりも仲居間さん、そろそろ今日のイベント内容を教えてくれませんか?」

「おっ、そいつは良い質問だな、ステラ……んじゃま、時間がねぇから、そろそろ企画の全容をバラすかな」


コイツ……まだ、誰にも企画の内容を言ってなかったんだな。

勿論、奈緒さんを救出する作戦だと言う事ぐらいは解るが、俺自身も、それ以外は何も知らされていない。


一体、なにをする気なんだ?


脳に酸素が廻り切っていない俺は、1度、呑気にも欠伸をしながら、崇秀の話を聞く事にした。


―――自分で言うのもなんだが、なんと言う体たらくだろうか。



「えぇ~~~っとだな。まずは、どこから話すかなぁ……あぁそうだ、そうだ。えぇっとな、簡潔に、今回の企画内容を話すとだな。此処に居る女子全員、今日から芸能人になって貰います。頑張ってな……以上」


あぁなるほどな。

此処に居る女子を全員芸能人にして、なにかしろの奈緒さん救出プランが……


発動……


うん?……芸能人?


……はっ?はぁ?なんで芸能人に……


……はぁ?はぁ~~~~~~?つっ、つぅか、なっ、なに言ってんだコイツ!!


俺を含めた此処に居る全員が目を見開いて、奴の言葉に呆気にとられて言葉を失っている。


ただ……それを言った張本人は、それだけでなにやら満足したらしく、椅子に座って寛ごうとしている。


オイオイオイオイ……マジで、なに考えてんだオマエ?



「あっ、あの、ヒデ君……芸能人になる以前に、ウチの両親が、そんな事を許す筈が無いと思うんですけど」

「んあ?……あぁ、なにかと思えば、そんな事か。なら心配しなくても良いぞ、アリス。その辺については、もう昨日の時点で手は打ってある。……オマエの両親って、意外と話が解るよな」

「へっ?えっ?嘘?……あっ、あの、ウチの両親が、本当に僕の事を許してくれたんですか?」

「あぁ、ある事を言ったら、アッサリ承諾したな。……あぁそうだ、序に言っておくが、他の子も、全員、キッチリと両親からの承諾は取ってあるからな。安心しろ。」

『『『『『『『『『『えぇ~~~~~ッ!!』』』』』』』』』』

「なんでだ?……なんか変か?」


さも当たり前みたいに、そんな大それた事を言ってるが……オマエ、それ、十分、頭おかしいぞ。


なんでこんな話が、変人とは言え、中学生のオマエに出来んだよ?

しかも、こんな短時間で、その交渉をまとめ上げたって言うのかよ?


そんなの明らかに、おかしいだろ!!



「えっ?えっ?ちょ、ちょっと待って、待って、仲居間さん。わっ、私、芸能人になるつもりなんて、微塵もないんだけど」

「あっ、そうなの?まぁ、だったら、人生経験の一環とでも思えば良いんじゃね。第一、芸能人なんて言っても大半はお登りさんの雑魚バッカ。大した奴なんて、そんなそんな居ないからさ。大丈夫、大丈夫」

「ちょっと待ちなよ、ヒデ。百歩譲って、芸能人になるのは良いけどさぁ。なんの為に、そんな必要が有るのよ?」

「んあ?わかんねぇか?」

「全然、わかんないわよ」

「あっそ。千尋……オマエ、相当な痛いな」

「ちょ!!なんでそうなるのよ?」

「オマエねぇ。向井さんとは友達なんだろ?だったら、オマエ自身も芸能人になって、同じ立場を共有してやれよ。それ位しても罰は当たらないぞ」

「あっ……そっか。そう言う事か」

「……それによ。芸能界に入ってさえいりゃ、海外進出なんてのも有り得る訳だろ。そこで向こうに行った向井さんに逢う事も有るだろうに。……要はな、友達のオマエ等が向井さんと同じ立場じゃなきゃ、中々逢えなくなる。そこを考慮するのが、現状じゃあ一番大事なんじゃねぇの」


あぁそう言う事か。

コイツの言う『奈緒さんを手元に置く』って言うのは『心』の話だったんだな。


同じ境遇を共有する事で、辛い時間や、寂しい時間を『みんなも頑張ってるんだ』とか奈緒さんに思わせて、相手の事を思い遣る気持ちを感じさせる事が、この企画の趣旨だったんだな。


付け加えるなら、芸能人になりたくない奴なんて、早々は居ない。

特に女の子なら『一生に一度ぐらい、スポットライトを全身に浴びたい』なんて願望もある筈だからな。


果てしなく、上手いやり方だな。


しかしまぁ、コイツだけは……あの短時間で、ホントなんて事を考えやがるんだ。

相も変わらず、有り得ねぇ野郎だな!!



「どうだ?これで納得出来たか?」

「仲居間さん」

「んあ?」

「あの、芸能人になるのは、あたし自身は大歓迎なんですけど。……それって、どうやってなるんですか?」

「あぁ、私もそれは思った」

「ふむ。どうやら、まだ、誰も気付いてないか……」

「どういう事ですか?」


来たな。


またどうせ、規格外のロクデモナイ事を言うに決まってる。

自分のやりたい事には手段を選ばないのが、コイツの専売特許だからなぁ。



「んとな。一応、まだ仮契約の段階で止めてはいるんだがな。……実は、昨晩の内に数社が競合して、此処に居る女子全員の所属事務所は、もぅ決まってんだよな。勿論、給料面なんかで揉めるのは非常に面倒だから『どの事務所にも契約金は一律』って話で条件を飲んで貰っている。……まぁ一応、一年契約って事になってるから、そこの事務所が気に入らなきゃ。別の事務所に移籍すりゃ良いだけのこった」

「そっ、それって、かっ、勝手に決めたって事?」

「んにゃ。だから俺は、最初に仮契約だって言っただろ。嫌なら、契約せずに、やらなきゃ良いだけのこった。……流石に、俺も、そこまで勝手はしない」

「じゃあ、やらないって選択肢も有るって事?」

「もち、もち……まぁけど、俺としては、一度はやる事をお薦めするけどな」

「どうして?」

「そりゃあ、こんな機会、早々お目に掛かれないからだ。……今回は、これだけ粒揃いのメンバーが集まったからこそ、事務所の方も向こうから動いてくれる気になったけど、単独じゃ、普通はこうはならない。素人なら、新人オーディションから受けなきゃならないのが、世の常だからな」

「あぁ、そっかぁ」

「まぁまぁ、そんなに神妙に考えなくっても良いって、相手さんも凄い喜んでた事だしさぁ。……あぁなんなら、みんなの仮の契約所属事務所を言おうか?」

「あっ、はい。じゃあ一応」


有野素直 :スリーストライプ指名……ソロで売り出す。

樫田千尋 :JOY企画指名……ソロで売り出す。

上条椿  :JOY企画指名……ソロで売り出す。

清水咲  :スリーストライプ指名……ソロで売り出す。

瀬川真美 :A-JAX指名……ボイストレーニングの後『Fish-Queen』として売り出す。

塚本美樹 :A-JAX指名……ボイストレーニングの後『Fish-Queen』として売り出す。

長谷川元香:A-JAX指名……ボイストレーニングの後『Fish-Queen』として売り出す。

藤代理子 :A-JAX指名……ボイストレーニングの後『Fish-Queen』として売り出す。

向井奈緒 :(英)Like-Punks契約中……ソロで売り出し。

ステラ  :(英)Like-Punks指名中……ソロで売り出し。


ってオイ!!奈緒さんと、ステラを契約した所は良く知らねぇが……後の『スリーストライプ』『JOY』『A-JAX』って言やぁ、日本屈指の優良大手プロダクションじゃねぇか!!


どこ探しても、弱小企業の名前なんか見当たらねぇぞ。


それとステラに関してなんだが……此処にも、崇秀の上手い策が盛り込まれてる。

海外生活はおろか、海外に行った事が一度も無い奈緒さんの為に、恐らく、海外生活に慣れてるステラを付けたんだろう。


アイツが一緒に居るだけで、安心感が一気に跳ね上がる筈だからな。


マジ、隙がねぇな。



「……っとまぁ一応は、そんな感じなんだが……どぉ?」

「ねぇねぇ仲居間君。椿、あんまり、そう言うの良く解らないんだけど。どうしたら良いかな?」

「あぁ~~~っと、そうッスね。それなら、嶋田さんに相談するとか」

「あぁそっか、そっか。椿は、浩ちゃんに相談したら良いっか♪ねぇねぇ仲居間君、椿が芸能人さんになったら、浩ちゃん喜んでくれるかな?」

「そりゃあ、勿論。……って、言いたい所なんですけどね。流石に、これバッカリは、俺も、嶋田さんじゃないからハッキリとはわからないッスね。だから2人で、ゆっくり相談して貰うのが一番、って言うのが現状ですかね」

「そっか、そっか。うんうん、わかった、わかった♪じゃあ椿は、浩ちゃんに聞いてみるね」

「そうッスね。じゃあ、それでお願いします」

「うん♪」


これは、結構な難問だろうな。


嶋田さん、あぁ見えて、椿さんにベタ惚れだし、赤の他人に、この人を任すのは、かなり無謀だ。

そんな心境が入り混じる筈だから、この問題は、嶋田さんの心1つで決まる。


それだけに難しいのも明白だな。



「さて、じゃあ序に、此処で契約金についての説明もするな」

「えっ?もぅそんな段階まで決まってるんですか?」

「まぁな。なんでも、先持ってやっておいた方が、自分の思い通りに出来るし、後々面倒も少ない。……あぁ因みにだがな。1人辺り、1200万均一で契約金が提示されてる。俺は、この金額が妥当だと思ってるんだが……そんなもんで、どぉ?」

『『『『『『『『『『いっ……1200万!!』』』』』』』』』』

「あれ?少なかったか?」


いやいやいや……少ないとか、多いとか以前にだな。

基本、ド素人に毛が生えた程度の人間に、普通、企業は、そんな大金を支払わねぇだうろによぉ!!

それより、もっと以前に、企業側は『雇ってやる』『芸能人にしてやる』って気持ちが大きいから、初年度の契約に一円たりとも払わない企業すら有るって言うのに、それを1200万って……


本当にコイツだけは……


流石に、この崇秀の行動力に呆れたのか、俺以外の人間も呆気に取られていたのだが。


なにやらここで、素直が声を上げた。


最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございましたぁ<(_ _)>


また崇秀がやらかしましたね(笑)


奈緒さんとの心の繋がりを持たす為に、全員を芸能人にしてしまおうと企み。

仮契約及び、契約金の提示まで、もぉ決めていたとは、倉津君も予想出来なかったみたいですね。


まぁこれが、倉津君が寝ている間にやっていた事なのですが……ほんとメチャクチャですよね、この男(笑)


さてさて、そんな中。

なにやら素直ちゃんが疑問に思って発言をするようですが、次回、どんな発言が飛び出すのでしょうか?


もし気に成りましたら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(*'ω'*)ノ

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