●前回のおさらい●
昨晩からバタバタと動き回る崇秀を尻目に、のんびりとした朝を迎えた倉津君。
当然の如く怒られて、そのまま女子達を送迎するバスに放り込まれた(笑)
ボロボロの状態の俺を乗せて、バスは海岸に向って移動を開始する。
さっきの出来事で、俺は少々不機嫌に成りながらも、なんとかボケたままの頭を修正。
今現在、バスの一番前の席に座らされてる。
そんな中だな。
「はいよ、おはようさん。……昨日は良く眠れたかぁ?緊張してねぇかぁ?」
「仲居間さん、アナタは、意外と低脳なんですか?あのスタッフさん達が深夜中バタバタした状況で、グッスリ眠れる人が居るとお思いですか?もし居るとすれば、相当な無神経な人ですよ」
俺……少しの時間だが爆睡してたぞ。
って事は、無神経なのか?
あぁまぁ、無神経だな。
「おぉそうか、そうか。そりゃあ悪ぃ悪ぃ。なんかな、このメンバー見てたら、やりてぇ事が、次から次に湧いて出て来てよぉ。気付いたら、あんな状況になっちまってた。ホント悪ぃな」
「別に構いませんが……それよりも仲居間さん、そろそろ今日のイベント内容を教えてくれませんか?」
「おっ、そいつは良い質問だな、ステラ……んじゃま、時間がねぇから、そろそろ企画の全容をバラすかな」
コイツ……まだ、誰にも企画の内容を言ってなかったんだな。
勿論、奈緒さんを救出する作戦だと言う事ぐらいは解るが、俺自身も、それ以外は何も知らされていない。
一体、なにをする気なんだ?
脳に酸素が廻り切っていない俺は、1度、呑気にも欠伸をしながら、崇秀の話を聞く事にした。
―――自分で言うのもなんだが、なんと言う体たらくだろうか。
「えぇ~~~っとだな。まずは、どこから話すかなぁ……あぁそうだ、そうだ。えぇっとな、簡潔に、今回の企画内容を話すとだな。此処に居る女子全員、今日から芸能人になって貰います。頑張ってな……以上」
あぁなるほどな。
此処に居る女子を全員芸能人にして、なにかしろの奈緒さん救出プランが……
発動……
うん?……芸能人?
……はっ?はぁ?なんで芸能人に……
……はぁ?はぁ~~~~~~?つっ、つぅか、なっ、なに言ってんだコイツ!!
俺を含めた此処に居る全員が目を見開いて、奴の言葉に呆気にとられて言葉を失っている。
ただ……それを言った張本人は、それだけでなにやら満足したらしく、椅子に座って寛ごうとしている。
オイオイオイオイ……マジで、なに考えてんだオマエ?
「あっ、あの、ヒデ君……芸能人になる以前に、ウチの両親が、そんな事を許す筈が無いと思うんですけど」
「んあ?……あぁ、なにかと思えば、そんな事か。なら心配しなくても良いぞ、アリス。その辺については、もう昨日の時点で手は打ってある。……オマエの両親って、意外と話が解るよな」
「へっ?えっ?嘘?……あっ、あの、ウチの両親が、本当に僕の事を許してくれたんですか?」
「あぁ、ある事を言ったら、アッサリ承諾したな。……あぁそうだ、序に言っておくが、他の子も、全員、キッチリと両親からの承諾は取ってあるからな。安心しろ。」
『『『『『『『『『『えぇ~~~~~ッ!!』』』』』』』』』』
「なんでだ?……なんか変か?」
さも当たり前みたいに、そんな大それた事を言ってるが……オマエ、それ、十分、頭おかしいぞ。
なんでこんな話が、変人とは言え、中学生のオマエに出来んだよ?
しかも、こんな短時間で、その交渉をまとめ上げたって言うのかよ?
そんなの明らかに、おかしいだろ!!
「えっ?えっ?ちょ、ちょっと待って、待って、仲居間さん。わっ、私、芸能人になるつもりなんて、微塵もないんだけど」
「あっ、そうなの?まぁ、だったら、人生経験の一環とでも思えば良いんじゃね。第一、芸能人なんて言っても大半はお登りさんの雑魚バッカ。大した奴なんて、そんなそんな居ないからさ。大丈夫、大丈夫」
「ちょっと待ちなよ、ヒデ。百歩譲って、芸能人になるのは良いけどさぁ。なんの為に、そんな必要が有るのよ?」
「んあ?わかんねぇか?」
「全然、わかんないわよ」
「あっそ。千尋……オマエ、相当な痛いな」
「ちょ!!なんでそうなるのよ?」
「オマエねぇ。向井さんとは友達なんだろ?だったら、オマエ自身も芸能人になって、同じ立場を共有してやれよ。それ位しても罰は当たらないぞ」
「あっ……そっか。そう言う事か」
「……それによ。芸能界に入ってさえいりゃ、海外進出なんてのも有り得る訳だろ。そこで向こうに行った向井さんに逢う事も有るだろうに。……要はな、友達のオマエ等が向井さんと同じ立場じゃなきゃ、中々逢えなくなる。そこを考慮するのが、現状じゃあ一番大事なんじゃねぇの」
あぁそう言う事か。
コイツの言う『奈緒さんを手元に置く』って言うのは『心』の話だったんだな。
同じ境遇を共有する事で、辛い時間や、寂しい時間を『みんなも頑張ってるんだ』とか奈緒さんに思わせて、相手の事を思い遣る気持ちを感じさせる事が、この企画の趣旨だったんだな。
付け加えるなら、芸能人になりたくない奴なんて、早々は居ない。
特に女の子なら『一生に一度ぐらい、スポットライトを全身に浴びたい』なんて願望もある筈だからな。
果てしなく、上手いやり方だな。
しかしまぁ、コイツだけは……あの短時間で、ホントなんて事を考えやがるんだ。
相も変わらず、有り得ねぇ野郎だな!!
「どうだ?これで納得出来たか?」
「仲居間さん」
「んあ?」
「あの、芸能人になるのは、あたし自身は大歓迎なんですけど。……それって、どうやってなるんですか?」
「あぁ、私もそれは思った」
「ふむ。どうやら、まだ、誰も気付いてないか……」
「どういう事ですか?」
来たな。
またどうせ、規格外のロクデモナイ事を言うに決まってる。
自分のやりたい事には手段を選ばないのが、コイツの専売特許だからなぁ。
「んとな。一応、まだ仮契約の段階で止めてはいるんだがな。……実は、昨晩の内に数社が競合して、此処に居る女子全員の所属事務所は、もぅ決まってんだよな。勿論、給料面なんかで揉めるのは非常に面倒だから『どの事務所にも契約金は一律』って話で条件を飲んで貰っている。……まぁ一応、一年契約って事になってるから、そこの事務所が気に入らなきゃ。別の事務所に移籍すりゃ良いだけのこった」
「そっ、それって、かっ、勝手に決めたって事?」
「んにゃ。だから俺は、最初に仮契約だって言っただろ。嫌なら、契約せずに、やらなきゃ良いだけのこった。……流石に、俺も、そこまで勝手はしない」
「じゃあ、やらないって選択肢も有るって事?」
「もち、もち……まぁけど、俺としては、一度はやる事をお薦めするけどな」
「どうして?」
「そりゃあ、こんな機会、早々お目に掛かれないからだ。……今回は、これだけ粒揃いのメンバーが集まったからこそ、事務所の方も向こうから動いてくれる気になったけど、単独じゃ、普通はこうはならない。素人なら、新人オーディションから受けなきゃならないのが、世の常だからな」
「あぁ、そっかぁ」
「まぁまぁ、そんなに神妙に考えなくっても良いって、相手さんも凄い喜んでた事だしさぁ。……あぁなんなら、みんなの仮の契約所属事務所を言おうか?」
「あっ、はい。じゃあ一応」
有野素直 :スリーストライプ指名……ソロで売り出す。
樫田千尋 :JOY企画指名……ソロで売り出す。
上条椿 :JOY企画指名……ソロで売り出す。
清水咲 :スリーストライプ指名……ソロで売り出す。
瀬川真美 :A-JAX指名……ボイストレーニングの後『Fish-Queen』として売り出す。
塚本美樹 :A-JAX指名……ボイストレーニングの後『Fish-Queen』として売り出す。
長谷川元香:A-JAX指名……ボイストレーニングの後『Fish-Queen』として売り出す。
藤代理子 :A-JAX指名……ボイストレーニングの後『Fish-Queen』として売り出す。
向井奈緒 :(英)Like-Punks契約中……ソロで売り出し。
ステラ :(英)Like-Punks指名中……ソロで売り出し。
ってオイ!!奈緒さんと、ステラを契約した所は良く知らねぇが……後の『スリーストライプ』『JOY』『A-JAX』って言やぁ、日本屈指の優良大手プロダクションじゃねぇか!!
どこ探しても、弱小企業の名前なんか見当たらねぇぞ。
それとステラに関してなんだが……此処にも、崇秀の上手い策が盛り込まれてる。
海外生活はおろか、海外に行った事が一度も無い奈緒さんの為に、恐らく、海外生活に慣れてるステラを付けたんだろう。
アイツが一緒に居るだけで、安心感が一気に跳ね上がる筈だからな。
マジ、隙がねぇな。
「……っとまぁ一応は、そんな感じなんだが……どぉ?」
「ねぇねぇ仲居間君。椿、あんまり、そう言うの良く解らないんだけど。どうしたら良いかな?」
「あぁ~~~っと、そうッスね。それなら、嶋田さんに相談するとか」
「あぁそっか、そっか。椿は、浩ちゃんに相談したら良いっか♪ねぇねぇ仲居間君、椿が芸能人さんになったら、浩ちゃん喜んでくれるかな?」
「そりゃあ、勿論。……って、言いたい所なんですけどね。流石に、これバッカリは、俺も、嶋田さんじゃないからハッキリとはわからないッスね。だから2人で、ゆっくり相談して貰うのが一番、って言うのが現状ですかね」
「そっか、そっか。うんうん、わかった、わかった♪じゃあ椿は、浩ちゃんに聞いてみるね」
「そうッスね。じゃあ、それでお願いします」
「うん♪」
これは、結構な難問だろうな。
嶋田さん、あぁ見えて、椿さんにベタ惚れだし、赤の他人に、この人を任すのは、かなり無謀だ。
そんな心境が入り混じる筈だから、この問題は、嶋田さんの心1つで決まる。
それだけに難しいのも明白だな。
「さて、じゃあ序に、此処で契約金についての説明もするな」
「えっ?もぅそんな段階まで決まってるんですか?」
「まぁな。なんでも、先持ってやっておいた方が、自分の思い通りに出来るし、後々面倒も少ない。……あぁ因みにだがな。1人辺り、1200万均一で契約金が提示されてる。俺は、この金額が妥当だと思ってるんだが……そんなもんで、どぉ?」
『『『『『『『『『『いっ……1200万!!』』』』』』』』』』
「あれ?少なかったか?」
いやいやいや……少ないとか、多いとか以前にだな。
基本、ド素人に毛が生えた程度の人間に、普通、企業は、そんな大金を支払わねぇだうろによぉ!!
それより、もっと以前に、企業側は『雇ってやる』『芸能人にしてやる』って気持ちが大きいから、初年度の契約に一円たりとも払わない企業すら有るって言うのに、それを1200万って……
本当にコイツだけは……
流石に、この崇秀の行動力に呆れたのか、俺以外の人間も呆気に取られていたのだが。
なにやらここで、素直が声を上げた。
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございましたぁ<(_ _)>
また崇秀がやらかしましたね(笑)
奈緒さんとの心の繋がりを持たす為に、全員を芸能人にしてしまおうと企み。
仮契約及び、契約金の提示まで、もぉ決めていたとは、倉津君も予想出来なかったみたいですね。
まぁこれが、倉津君が寝ている間にやっていた事なのですが……ほんとメチャクチャですよね、この男(笑)
さてさて、そんな中。
なにやら素直ちゃんが疑問に思って発言をするようですが、次回、どんな発言が飛び出すのでしょうか?
もし気に成りましたら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(*'ω'*)ノ
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