●前回のおさらい●
向井さんが好きだと暴露してしまった不良さんの元に、山中がやって来る。
勿論、山中が鬱陶しいと考える不良さんは、追い払いたいと願っていたら。
崇秀が、不良さんにやらされた『運指運動』を条件にして、その暴露話の内容を教えると言い出す。
だが、結論的には『運指運動』は山中には出来なかったのだが。
崇秀は、そんな山中の音を聞いて『オマエ、なんか楽器が演奏出来るだろう』と言い出し、不良さんを焦らせる。
「はっ?へっ?ちょ……なんでオマエが、それを知ってんねん?」
「知ってるも、なにも、それぐらい音を聞きゃ解るよ……因みにだが、多分、オマエがの出来る楽器は、間違いなくドラムだな」
「おい、オマッ……なんで、そこまでわかんねんな?」
「なぁ~~~にね。リズムを聞きゃ解るよ。リズムをな」
「リズムやて?」
あぁ、そう言えば山中の奴。
音自体は外し捲くってたが、リズムだけは一度たりともズレてなかったな。
しかし、それとドラムに何の関係が有るんだ?
「あぁ」
「どういうことや?」
「なぁにね。オマエの弦の押さえ方は滅茶苦茶だったが、気持ち悪いぐらいにリズムやテンポだけは合っていた。それでいて、弦楽器の基本『運指運動』が出来ねぇとなると、使える楽器は限られてくるんじゃねぇか?」
「ほんで、お前が導き出した答えが、ドラムか……なるほど、えぇ推理しとる」
「しかしよぉ。なんでリズムだけで、そこまでわかんだ?」
「簡単な事だ。バンドなんかで音の基本を作るのはベースと、ドラムだ。この2つが外した音を鳴らしちまったら、一気に音楽が崩壊して、聞くも無惨な音楽になっちまう。……まぁ、まず念頭に置く事は、この2つの楽器は、バンドの基本部分『骨組み』って事だな」
なるほど、そうなのか?
バンドにとって、ベースとドラムはライフ・ラインなんだな。
一応、憶えとこ。
「あぁ」
「じゃあ、それを加味した上で、少しは自分で考えてみろよ」
「そうだなぁ……じゃあ例えばなんだが、リズムがズレる=音が外れるって事になるって事か?……これじゃあ、安易過ぎるか?」
「いいや、それで良い。それが最大のヒントだ」
「やるやんけ、マコ」
「なら、もぉ後は答えが出てるじゃねぇか?リズムが良いのにも係わらず、山中の弦捌きを見みれば、明らかな程にド素人。とてもギターやベースが弾けるレベルじゃねぇ……じゃあ、残るのはなんだ?」
そこまで言われれば答えは簡単だよな。
まぁ複数の回答なんかが有ったら、俺にはわかんねぇがな。
「ドラム……かぁ」
「そういうこった」
「しかしまぁ、お前の推察力には呆れるわ」
「まぁそうは言っても、半分ぐらいは山勘だったんだけどな」
「なんでだ?そこまで行き着いてれば、自ずと答えは出るんじゃないのか?」
「いや、それが、そうでもねぇんだよな」
「なんでだよ?」
今日の崇秀は、おかしな事ばかり言う。
自分の推理を他人に言っておいて、コチラが納得すれば『それは違う』っと言う。
なんのこっちゃ、意味がわかんねぇな。
「……居るんだよ」
「誰がおんねん?」
「世の中には、俺の理屈なんか、平気で覆す様な奴が居るんだよ」
「なんだそりゃあ?そりゃあ一体どんな奴なんだよ」
「何も知らなくても、独自の感覚だけで、それが出来る奴だ」
はぁ?なんだそりゃあ?
そんな奴、本当に居るのかよ。
ありゃあ、漫画の世界の中にだけ存在する、特別な生き物なんじゃねぇのか?
「感覚だけで物が出来るだと……そりゃあ、どんな化物だよ」
「まぁ、普通に考えりゃあ有り得ない話なんだがな。事実、俺は、そう言う奴を何人か知っている。ありゃあもぅな、音楽の神様に愛されてるとしか思えねぇレベルだぞ」
「ほぉ~~~、スゲェなソイツ。俺も是非一度逢ってみてぇもんだな」
「ほぉ、そんなに逢ってみたいのか?」
「なんや、なんや、マジでおんのか?冗談かと思てた」
「居るぜ……しかも、その化け物は、この学校に居る……あぁ因みに、俺じゃねぇぞ」
「そうなんや?お前とちゃうんかいな?俺は、オマエとか言う、メッチャしょうもないオチかと思てた」
「違うな……俺は、結構、地道に努力した方だ」
断言したって事は、多分、本当にコイツじゃねぇ。
それだけは確信出来る。
まぁそれにしても、驚きなのは、コイツとかでも努力してるんだな。
てっきりコイツの事だから、天才肌で、何でも簡単に出来るもんだと思ってた。
「……っとなるとや。マジ、誰やねん?俺、この学校来てから、結構、音楽関係の部活を見て回ったけど、そんな奴、1人も居れへんかったで」
「まぁ、気になるなら、放課後、第二音楽室に来いよ。ソイツは、俺のバンドのメンバーだ」
「オイ、ちょっと待てよ、馬鹿秀!!お前、バンドなんかやってたのか?全然知らなかったぞ」
「あぁ悪ぃ。言ってなかったか?まぁ、つっても、バンドをやり始めたのは、此処最近の話だ。それまでは群れるのが嫌だから、ソロでやってたからな」
「ソロって1人でやる奴だろ。何気にスゲェな、オマエ」
「違ぇよ。俺には協調性がねぇんだよ。ってかな。人数でやると、色々面倒が多いだろ。どうしても『足引っ張った』の『足引っ張られた』って言う奴が出て来る。そういうのウザイから群れるのが嫌だっただけだよ」
この言い様。
コイツ、誰かとバンドを組んで、絶対に、なんかあったな。
恐らくは、コイツの完璧主義な性格から言って、バンドのメンバーと大揉めでもしたんだろう。
「そやろな。俺かて、そうやと思うわ」
「なんだよ?その言い様、オマエもバンドやってたのか?」
「昔、ちょっとだけな……大阪に居る時、遊び程度にはやっとったな」
なぁなぁ、俺のツレって何気に凄くねぇか?
この歳で、バンド経験者が2人も居るぞ。
なんか、俺だけが取り残された気分だな。
「なんで辞めたんだ?」
「転校が一番の理由や。……まぁそれ以前に、音楽性の不一致だの、何だの訳のわからん事ばっかり言いよるから、しょうもななってもうたんも原因の1つやな」
「なるほどな。色々面倒なもんなんだな」
「まぁな。音楽の不一致も、糞も、ソレ以前に『なんやコイツ等?大した腕もないクセに、そんなもん語るにゃあ10年早いわ!!』って、先に俺が思てもうてたからなぁ。これは、もぉどうにもならん話や。やから、そいつ等とは縁が無かったんやろな」
しかしまぁ、バンド1つやるにしても、かなり大変な事なんだな。
崇秀と山中の話を合わせれば解る話なんだが。
『人付き合い』『音楽レベル』『音楽性』
この3つが噛み合わないと、バンドって言うのは上手くいかねぇみたいだな。
こりゃあ、聞いてるだけでも嫌気のさす大変さだ。
特に俺みたいに自分勝手な振る舞いしか出来ねぇ人間には、絶対にバンドは向かねぇな。
まぁなんだかんだ言っても、俺には全く関係ない話だがな。
まずにして俺が、そんな御託を並べられる様な大層なレベルじゃねぇし、ベースを始めた理由も不純だらけの『向井さん目当て』
それにこれは、ただの趣味であって、俺自身、別にバンドがしたいって訳じゃない。
だから、結局は、なんの関係ない話。
まぁ、そうは言ってもだ。
崇秀が惚れ込んだ才能って奴は気になるから、放課後、音楽室には見に行くけどな。
「やめよぅぜ、やめよぅぜ。お互い、こんな湿気た話しててもしょうがねぇ。クダラネェ傷の舐め合いになるだけだ」
「そやな。終わった事をグダグダ言うんは、アホのする事やな」
「そう言うこった……まっ、それはそうとよ。さっき話した、例の奴に興味が有るんなら、後で、音楽室に来いよ。あの話はマジだからよ。ちょっと遊んでみるのも悪くないだろ」
「そうだな」
「ほなまぁ、そういうこって」
此処で丁度チャイムが鳴って、崇秀は自分のクラスに帰って行き、山中は自分の席に着く。
俺はと言うと、ベースをケースに直して、睡眠モードに移る。
この調子だと、今度、目を覚ました時は放課後なんだろうな。
そんな訳で、どうせ起きててもしょうがねぇだけなのので、此処は1つGOOD-NIGHT……
おやすみなさい。
今日も、最後までお付き合いありがとうございました(*'ω'*)
第四話は、これにて終了です。
それで、今回、この第四話で言いたかった事を纏めておきますと……
①倉津君はどうしようもない不良だけど、話し掛けてくれさえすれば文句を言いながらでもキッチリ対応する。
②崇秀は、色んな意味でなんだかヤバい匂いがするキャラクター。
③山中はアホ……なのですが、ただのアホではない(かもしれない(笑))
④楽器を弾くには、相当な時間を費やさないと上手くなれない。
……っで、最後に成りましたが5個目に。
⑤どの職業にも貴賤なんて物はない。
これはちょっとした偏見なのですが。
一見派手でチャラチャラしてる様に見えるバンドと言う仕事。
これ、実は非常に大変な仕事でしてね。
本編でも描いた様に『音楽性』『人間性』『演奏レベル』と言うものが上手く噛み合わないと、全く上手く行かないんですよね。
なのに『バンドマン』や『漫画家』や『小説家』なんかは、世間から軽んじて見られるケースが多い。
これ、ホント大きな間違いなんですよね。
なので、どんな職業であっても苦労してないなんて事はなく。
みんな大変な思いをしながら仕事をしていると言う事を、此処で軽く描いて置きたかったんですよ。
(後に、倉津君の成長と共に、この辺をもっと深堀していくつもりですが(笑))
っと言う感じで、この第四話の纏めでしたぁ。
最後までお付き合い、ありがとうございましたです(*'ω'*)ノ
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